この記事の要点
①原作と台本の権利:原作の著作権は、原則として著作者が亡くなった年の翌年から数えて70年続きます。翻訳は訳した人の没年も確かめ、青空文庫の作品は図書カードの「*著作権存続*」の表示を見ます。台本は書いた人の了解を取ります。
②演者と音の素材:朗読も声の演技も著作権法の「実演」で、出演者には録音の権利と、録音した物を公衆に譲り渡す権利があります。CDにして頒布すること、名前の出し方を取り決め、BGMと効果音は素材の規約で確かめます。
③録音と編集:エアコンやパソコンのファンなど音を出すものを止め、響きの少ない部屋で、マイクとの距離をそろえて録ります。雑音を減らす処理はかけすぎず、44.1kHz・16bitのWAVに仕上げます。
④CDの形:1枚に入るのは約80分で、トラックは99まで。章や場面でトラックを分け、長ければ2枚組にします。プレスかコピーかは、同じ仕様の見積もりで比べます。
⑤ジャケット・盤面と頒布:作品名・著者・訳者・出典・出演者の名前を載せ、1枚目を何台かのプレーヤーで聴いてから配ります。郵便の料金は大きさと重さで決まり、クリックポストは2026年10月1日から240円です。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
1枚から 作れます。 同じ 内容の 追加は 1枚1,000円 (税抜)です。
1枚1,500円(税抜)から・ 1枚から注文できます
練習を重ねた朗読や、仲間と録ったボイスドラマを、朗読会や即売会、通販でCDにして頒布したい。調べ始めると、録音の機材、原作の著作権、青空文庫の扱い、CDに入る長さ、ジャケットの寸法と、決めることが次々に出てきます。
朗読・ボイスドラマのCDは、①原作と台本の権利、②演者の了解と、使う音楽・効果音の規約、③響きの少ない部屋での録音と編集、④CDの形(1枚約80分・99トラックまで)と、プレスかコピーか、⑤ジャケット・盤面と頒布の段取り、の順に決めます。
値段を付けずに配るCDでも、確かめることは変わりません。著作権法の「頒布」は、有償か無償かを問わず、複製物を公衆に譲り渡すことをいい、公衆には特定かつ多数の人も含まれます(第2条)。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
朗読・ボイスドラマのCDの作り方|5つの手順 原作の著作権は、著作者の没年で確かめる|死後70年と翻訳 青空文庫の作品を朗読してCDにするときは、図書カードの表示を見る 出演者の了解と、BGM・効果音の規約 自宅で朗読を録音するには|響きの少ない部屋で、マイクとの距離をそろえる 朗読の編集は、雑音の処理をかけすぎず、音量をそろえる CD1枚に入るのは約80分・99トラックまで|トラック分けと焼き方 プレスかコピーか、何枚作るか 残りの3項目を見る ジャケットと盤面には、出典・訳者・出演者の名前を載せる ボイスドラマ・朗読のCDを頒布するとき|値付けと郵便の料金 よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
朗読・ボイスドラマのCDの作り方|5つの手順
手順
決めることと確かめること
①原作と台本の権利
著作者と訳者の没年。青空文庫は図書カードの表示。台本は書いた人の了解を取る。
②演者と音の素材
読み手・出演者の了解。BGMと効果音は、素材の規約を読む。
③録音と編集
響きの少ない部屋で、マイクとの距離をそろえて録る。雑音の処理はかけすぎない。
④CDの形とプレスかコピーか
1枚に約80分、トラックは99まで。見積もりは同じ仕様で比べる。
⑤ジャケット、盤面、頒布
出典・訳者・出演者の名前を入れる。1枚目を何台かで聴いてから配る。
①と②は、録音を始める前に済ませます。原作に保護期間が残っていると分かったり、出演者と頒布の仕方で折り合わなかったりすると、録った音が使えなくなるからです。④の見積もりも早めに取っておくと、注文先の入稿の締め切りと製造の日数が分かり、頒布の日から逆に数えて、録音と編集の締め切りを置けます。
原作の著作権は、著作者の没年で確かめる|死後70年と翻訳
小説や詩を朗読して録音すれば、作品の複製になります(第2条)。それをCDにして配れば頒布です。保護期間が残っている作品をCDにして配るには、原則として著作者などの権利者の許諾が要ります。人前で読むことも著作者の権利の一つで、文化庁は口述権を、小説などの言語の著作物を朗読などの方法で公衆に伝えることに関する権利と説明しています(第24条)。
朗読会で読むことと、CDにして配ることは、分けて考えます。営利を目的とせず、聞く人から料金を取らず、読む人に報酬を払わない朗読会なら、公表された作品を口述できる例外があります(第38条1項)。ただ、文化庁の説明では、この例外に入るのは上演・演奏・上映・口述だけで、複製と譲渡は含まれません。朗読会で読めた作品でも、録音してCDにし、配るときは改めて確かめます。
保護期間は、亡くなった年の翌年から数えて70年
著作権は、原則として著作者が亡くなった年の翌年の1月1日から数えて、70年続きます(第51条・第57条)。文化庁の著作権テキストは、「死亡年に70年を加算した年の12月31日まで」と考えると分かりやすい、としています。1968年に亡くなった人の作品なら、2038年12月31日までです。何人かで一緒に書き、それぞれの分を切り分けて使えない作品(共同著作物)は、最後に亡くなった著作者から数えます(第51条)。
この70年は、2018年12月30日の改正で50年から延びたものです。文化庁によると、延長の対象は原則として1968年以降に亡くなった人の著作物で、改正の時点で保護期間が終わっていた著作物は対象になりません。計算すると、日本の作家の作品なら、原則として1967年までに亡くなった人の作品は保護期間が終わっています。
翻訳は、訳した人の没年も数える
海外の小説を日本語で朗読するなら、原作の作者に加えて、訳した人の没年も確かめます。翻訳は、原作に新たな創作性を加えた「二次的著作物」で、原作とは別の著作物として保護されるからです(第2条1項11号)。文化庁は、翻訳されたものを第三者が使う場合、翻訳者の了解のほか、原作の著作者の了解も要ると説明しています(第28条)。
原作の作者がずっと昔に亡くなっていても、訳した人の権利が残っていれば、その訳文を読んだCDには、原則として訳した人の許諾が要ります。青空文庫の取り扱い規準も、翻訳された作品は、書いた人の権利が切れていても、訳した人の権利が生きていれば「著作権の切れていない作品」に当たるとしています。同じ原作に別の訳があるなら、使う訳ごとに訳した人を確かめます。
外国の作品は、相互主義と戦時加算で計算が変わる
外国の作家の作品は、日本の作家と同じ数え方になるとは限りません。日本より保護期間が短い国の作品は、その国の保護期間だけ保護されます(第58条・相互主義)。反対に、第二次世界大戦の前や戦中に連合国とその国民が取得した著作権には、戦争の期間の日数が加わります(戦時加算)。加わる日数は、アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・フランスで3794日、10年あまりです。没年だけで「70年たった」と決めずに、迷う作品は出版社などの権利者に確かめてください。
台本・脚本は、書いた人の了解を取る
ボイスドラマの台本も、書いた人の著作物です。著作権法は、脚本を小説や論文と並ぶ言語の著作物の例に挙げています(第10条)。仲間に書いてもらった台本でも、CDにして頒布すること、配信もするか、あとで追加で作るかを、録音の前に書いた人と取り決めておきます。小説を台本の形に直して演じるなら、その脚色も原作の作者の権利です(第27条)。
「フリー台本」として公開されている台本は、配っているページの利用条件で、使える範囲が決まります。CDにして頒布してよいか、有償でもよいか、作者名の書き方、台詞を変えてよいかを読み、そのページを保存しておきます。アニメや漫画、ゲームの二次創作のボイスドラマなら、原作の権利者が出している決まりで、CDにして頒布してよいかを確かめます。
対象
確かめること
原作
著作者の没年。原則、亡くなった年の翌年から数えて70年まで。
翻訳
訳した人の没年も。訳文にも権利がある。
外国の作品
相互主義と戦時加算で計算が変わる。
青空文庫
図書カードの「*著作権存続*」の表示の有無。
台本
書いた人の了解。フリー台本は配布ページの条件。
二次創作
原作の権利者が出す 決まりを読む。
青空文庫の作品を朗読してCDにするときは、図書カードの表示を見る
青空文庫は、収めた作品の使い方を「取り扱い規準」で公開しています。著作権の切れている作品のファイルなら、有償・無償を問わず自由に複製・再配布でき、実演・口述・翻案などにも自由に使えます。そのために青空文庫へ対価を払ったり、了解を求めたりする必要はありません。朗読配信についての案内ページでも、保護期間が満了した作品は、事前の許諾なく、有償無償を問わず使えるとしています。
ただ、青空文庫には著作権の切れていない作品も収められています。見分けるには、作品ごとの図書カードを開きます。著者名の下に赤い字で「*著作権存続*」と出ていれば、著作権の切れていない作品です。その場合、私的使用の範囲を超える利用と複製・再配布は、著作権者の許しがない限りできません。図書カードや作品ファイルなどにクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのような許諾が書かれていれば、その範囲で使えます(取り扱い規準)。
翻訳の作品は、図書カードの「作家データ」も見ます。たとえばアンデルセンの「赤いくつ」の図書カードには、「分類:著者」のアンデルセンと、「分類:翻訳者」の楠山正雄が、それぞれの没年とともに並んでいます。訳した人の権利が生きていれば、原作が古くても著作権の切れていない作品です。
日本の作家なら、原則1967年までに亡くなった人の作品は保護期間が終わっている
「青空文庫」の名前と、出典の書き方
ジャケットに出典を書くなら、「青空文庫」の名前は出所の表示として自由に使えます。ただし、それは青空文庫の関与や認知・許可を示すものではない、と取り扱い規準にあります。「青空文庫公認」と読める書き方は避け、作品名と著者名に、図書カードの「底本データ」にある底本と出版社を添えておくと、どの本文を読んだかが後から分かります。青空文庫は、ファイルに記した作品名・著者名・翻訳者名・底本・入力者・校正者などの情報が、利用や再配布のときに削除されないことを希望しています。
朗読用の台本に直すとき
著作権の切れている作品は、ファイルの形式を変えたり、ルビや傍点などの注記の形を変えたりでき、旧かな・旧漢字を今の表記に改めることも、著作権法(第20条2項4号)に合う範囲でできるとされています(取り扱い規準)。朗読用の台本を印刷するなら、青空文庫のテキストに対応したエディタでPDFを作る方法を、朗読配信の案内ページが紹介しています。同じページは、朗読の配信・投稿サイトに独自の決まりがある場合もあること、個別の法律の判断は法律の専門家に相談してほしいことも案内しています。
出演者の了解と、BGM・効果音の規約
朗読も、ボイスドラマの演技も「実演」
著作権法は、著作物を演じ、歌い、口演し、朗詠するといったことを「実演」と呼び、実演を行う人と、実演を指揮・演出する人を「実演家」としています(第2条)。朗読する人も、ボイスドラマの声の出演者も、実演家です。自分で読んで自分で配るなら、実演家は自分だけです。ほかの人に読んでもらったり、演じてもらったりしたなら、その人の了解が要ります。
実演家には、自分の実演を録音する権利と、録音した物を譲り渡して公衆に提供する権利があります(第91条・第95条の2)。文化庁は、録音の権利は、実演が録音されたCDなどをコピーすることにも及ぶと説明しています。ダウンロード販売や配信もするなら、実演をインターネットで送れる状態にする権利(送信可能化権・第92条の2)もかかわります。クレジットの名前については、実名か芸名か、名前を出さないかを出演者が選べる氏名表示権があります(第90条の2)。
ほかの人が朗読した録音を自分のCDに収める場合も、その人の了解が要ります。実演の権利は、実演の翌年から数えて70年続きます(第101条)。
出演者と取り決めておくこと
取り決めは、録音の前に、あとから読み返せる形で残します。ボイスドラマで演出を担当した人がいれば、その人とも同じように決めておきます。
項目
決めておくこと
使い道
CDにして頒布する。配信もするなら、そのことも入れる。
配り方
有償か無償か、配る場所と枚数。
追加で作る
あとで枚数を増やす ときの扱い。
名前の出し方
本名か芸名か、載せないか。(第90条の2)
編集
言い直しの差し替えや、声の加工をどこまで するか。
謝礼
謝礼の有無と金額。売れたときの分け方。
「追加で作る」と「配信」は、最初の取り決めで抜けやすい項目です。頒布のあとで配信を始めたり、枚数を増やしたりするたびに全員に確かめ直さずに済むよう、はじめから入れておきます。
BGMと効果音は、使う素材の規約で確かめる
フリー素材のBGMや効果音は、配っているサイトの利用規約が使える範囲を決めます。CDなどの録音物に収めてよいか、有償で頒布してもよいか、クレジットの表記が要るか、加工してよいかを読み、規約のページを保存しておきます。規約は素材ごとに確かめ、どの素材をどこで手に入れたかも控えておくと、ジャケットのクレジットを書くときに迷いません。
JASRACやNexToneが管理している曲をBGMに使うなら、無料で配るCDでも、製造の前に申し込みます。JASRACは無料で配布する場合でも利用申請が必要だとし、NexToneも価格の有無にかかわらず申請が必要だと答えています。市販のCDやダウンロードした音源をそのまま流すなら、曲の手続きとは別に、レコード会社など原盤の持ち主の許諾も要ります。申し込みの手順と許諾の表示の入れ方は、同人音楽CDの作り方|音源の仕上げ・曲の権利・プレスとコピー・入稿と頒布 にまとめました。
自宅で朗読を録音するには|響きの少ない部屋で、マイクとの距離をそろえる
自宅で録るときは、マイクを選ぶ前に、部屋とマイクの置き方を整えます。オーディオテクニカは、性能の高いマイクに替えたら雑音を拾うようになったという相談で、実際にはエアコンや扇風機、パソコンのファン、外を走る車の音を拾っていた例を挙げています。マイクの性能が上がって、それまで拾えなかった音まで録れていたのです。
部屋を選び、音を出すものを止める
録る前に、部屋の中で音を出すものを止めます。エアコン、扇風機、空気清浄機、換気扇、パソコンのファン。冷蔵庫のように、ときどき音を出すものにも気をつけます。オーディオテクニカは、キーボードやマウスの操作、机の上で腕を動かした音、隣の部屋の生活音が、振動としてマイクスタンドから伝わり、「ゴソゴソ」「コツコツ」という低い雑音になるとも説明しています。録音中は机に触れず、原稿は譜面台などに置きます。
声の響き方は、部屋によって変わります。候補の部屋ごとに、同じ文を同じ距離で読んで録り、ヘッドホンで聞き比べてください。カーテンを閉める、マイクの後ろに毛布を掛けるといった手を加えたときも、録って比べると違いが分かります。何も話さずに1分ほど録って聞き返すと、その部屋に入ってくる雑音と、静かな時間帯も確かめられます。
マイクとの距離をそろえ、ポップフィルターを立てる
マイクと口の距離は、決めたら録音の間は変えないようにします。オーディオテクニカによると、距離が離れすぎていると、声を拾うために入力の増幅(ゲイン)を上げることになり、周りの音も大きくなって、雑音が目立ちやすくなります。反対に、口を極端に近づけると、コンデンサーマイクでは飛沫が付いてノイズの原因になる場合がある、と同社は注意しています。
「パ」行や「バ」行で出る「ボフッ」という破裂音(ポップノイズ)や、息がマイクに直接かかる音には、ポップフィルターやウインドスクリーンが効果的です(オーディオテクニカ)。ポップフィルターを口とマイクの間に立てておくと、マイクとの距離も保ちやすくなります。原稿を手に持つと体が動いて距離が変わりやすいので、譜面台や書見台に置き、椅子の高さを合わせてから読み始めます。
録音の大きさと、ファイルの形式
録音の大きさ(録音レベル)は、いちばん大きな声を出す場面に合わせます。ソニーのリニアPCMレコーダー PCM-A10 のヘルプガイドは、ピークレベルメーターの−12dBを目安にするとし、大きすぎると「OVER」の表示とピークランプが点いて音がひずむとしています。パソコンで録るなら、録音ソフトのメーターで、叫ぶ台詞や笑い声でも上限に届かないことを確かめます。32bitフロートで録るレコーダーについては、ZOOMが「レベル調整の必要がありません」と説明しています。
形式は、圧縮しないWAVで録ります。CDの音は44.1kHz・16bitなので、WAVの44.1kHz・16bitで録れば形を変えずに済み、48kHzや24bitで録ったときは、CDにする前に44.1kHz・16bitへ変えます。MP3で録ると、省かれた音はCDにしても戻りません。数字の意味はCDの音質はどのくらい?44.1kHz・16bitの意味と配信・ハイレゾとの違い で説明しています。
録るときの段取り
ファイルの頭で、何も話さずに数秒録る。編集で雑音を減らすときの見本になる
読み間違えたら、少し間を置いて文の頭から読み直す。波形に無音の目印が残り、差し替える場所を探しやすい
章や場面ごとに別のファイルにする。後半で声の調子が変わっても、その部分だけ録り直せる
口が乾いたときのために、水を手元に置く
録り終えたら、その日のうちにファイルを別の2か所にコピーする
レコーダーの置き場所や録音レベルの決め方は、演奏会の録音を例に、吹奏楽の定期演奏会をCDにする方法|録音の仕方・曲の手続き・配るまで でも説明しています。
マイクを選ぶ前に、部屋と置き方と録音の設定を整える
朗読の編集は、雑音の処理をかけすぎず、音量をそろえる
雑音を減らす処理は、かけすぎない
無料の音声編集ソフト Audacity のマニュアル(3.7系)は、雑音を減らす機能(Noise Reduction)について、ハム音やファンの音のような一定の雑音には有効な一方、単発のクリックや、車の音のような不規則な雑音には向かないと説明しています。使うには雑音だけが入った区間が必要で、長いほうがよいとされます。録音の頭に何も話さずに録った数秒が、その見本になります。
減らす量は、雑音が許せる程度まで下がる、いちばん小さい値にします。マニュアルは、必要以上に上げると、雑音はさらに小さくなっても、残したい音が傷むとしています。処理の前とあとを聞き比べて、声の聞こえ方が変わっていたら、戻して弱めにかけ直します。Audacity は2026年9月に画面を作り直した4.0が出たため、4.0では機能の場所がマニュアルと違う場合があります。
音量をそろえ、上限を超えない
デジタルの音には、表せる大きさの上限があります。日本オーディオ協会の用語集も、扱える最大値を超える大きな信号はひずむと説明しています。音量を上げるときも、いちばん大きな瞬間が上限に届かないようにします。音の大きさの最大値を決まった値にそろえる処理を、ノーマライズと呼びます。
別の日に録った章は、部屋の状態や声の調子で、聞こえる大きさや音色が変わることがあります。数値だけでそろえず、章の境目を続けて聞いて、急に大きく、または小さく聞こえないかを確かめます。
言い直しのつなぎ目と、間
言い直しを差し替えるときは、息つぎや無音のところで切ります。場面が変わるところや時間が飛ぶところは、録るときに長めに間を取っておき、編集で詰めて整えます。仕上がったら、イヤホン、スピーカー、CDプレーヤーのように聞く環境を変えて、最初から最後まで通して聞きます。ボイスドラマなら、台詞とBGMの大きさの釣り合いも、このときに確かめます。
CD用のファイルに書き出す
CDにするデータは、44.1kHz・16bitのWAVで書き出します。24bitから16bitに丸めるときの誤差を目立たなくする処理(ディザー)は、処理のいちばん最後に1回だけかけるのが基本、とHOFAのマニュアルは説明しています。配信もするなら、MP3などは完成したWAVから別に書き出し、CD用と配信用を同じ元のファイルから分けます。
処理はかけすぎず、通して聞いてからCD用のWAVに書き出す
CD1枚に入るのは約80分・99トラックまで|トラック分けと焼き方
CDプレーヤーで聴くCDは、CD-DAという形式で書き込みます。音楽用のCD-Rは「80min」と表記され、CD-DAの形式で約80分入ります。この約80分には、トラックの間の無音も含まれます(マクセル)。トラックは1枚に99までで、1トラックは4秒以上。1トラック目の前には、2秒以上の無音(プリギャップ)が要ります(HOFA・Sonoris)。
読む長さを先に見積もる
朗読は、同じ字数でも読む人と作品で長さが変わります。確かなのは、自分で計ることです。本番と同じ速さで原稿の一部を読んで時間を計り、全体の字数やページ数に当てはめます。場面の転換で置く間の分も見込んでおきます。青空文庫の作品なら、外部のサービス「ブンゴウサーチ」で読む時間の目安が分かり、音読の場合は黙読の数値の1.5〜2倍くらいが概算になる、と青空文庫が案内しています。
見積もりが80分に近いか超えるなら、2枚組にします。章の区切りで分け、盤面とジャケットに1枚目・2枚目を入れて取り違えを防ぎます。プレスに頼むなら上限は工場ごとに違い、メモリーテックは79分38秒までを保証の範囲としています。
トラックは、章や場面ごとに分ける
トラックを分けておくと、聴く人が聞き返したい章や場面から再生できます。区切る位置は、文の途中を避けて、間の無音のところにします。トラックの頭が欠けないよう、区切りの前後に少し無音を残しておきます。1トラック目の冒頭で作品名、作者名、読み手の名前を読み上げておくと、音だけを聞いた人にも何の録音か伝わります。
トラックとトラックの間の無音は、2トラック目からは長さを変えられ、0にもできます(Sonoris・HOFA)。朗読では章の終わりの余韻や間を自分で編集しているので、書き込みソフトの設定のまま焼かずに、間の長さを確かめます。Macのミュージックアプリなら「曲の間隔」で決められ、「CD-Textを含める」を選ぶと、トラックの名前(章の題など)も入れられます(Apple)。CD-TEXTの文字は対応したプレーヤーでしか表示されず、対応したプレーヤーでも日本語を表示できない機種があります(Steinberg・HOFA)。
自分でCD-Rに焼くとき
少ない枚数を自分で焼くなら、書き込みソフトで「オーディオCD」の形式を選びます。CD-Rに音を記録する場合もCD-DAの形式で書かないとCDプレーヤーでは再生できず、MP3のまま書き込んだディスクは、MP3に対応したプレーヤーでしか再生できません(マクセル)。Macのミュージックアプリなら、トラックを並べたプレイリストを選び、「ファイル」メニューの「プレイリストからディスクを作成」で、ディスクフォーマットを「オーディオCD」にします(Apple)。
ディスクについては、マクセルが、音楽用CD-Rをオーディオ機器向けの録音用、データ用CD-Rをパソコンでのデータ記録用と分け、音楽の録音には音楽用を使うよう案内しています。焼いたCDは、作ったパソコンではなく、CDプレーヤーやラジカセ、車のプレーヤーなど何台かで最後まで聴きます。マクセルは、CD-Rが再生できない原因として、プレーヤーがCD-Rの再生に対応していないこと、書き込みでディスクのクローズの処理をしていないことを挙げています。全部の枚数を焼く前に1枚目を作り、何台かで聴いてから残りを焼きます。
プレスかコピーか、何枚作るか
枚数が多いときや、盤面をきれいに刷りたいときは、業者に頼む方法があります。プレスは、工場がマスターから作った型(スタンパー)の凹凸を樹脂の盤に写す方法で、再生専用の盤ができます。コピーは、CD-Rに同じデータを書き込む方法です。44.1kHz・16bitの同じ音のデータなら、CD-Rでもプレス盤でも記録される音のデータは同じで、違いが出るのは、受け付ける最少の枚数、日数、再生機との相性、盤面の印刷です。
何枚からプレスのほうが安いかに、決まった数字はありません。作る枚数の候補を2〜3通り決め、同じ仕様でプレスとコピーの見積もりを取り、「見積もりの総額÷作る枚数」で1枚あたりを出して比べます。見込みの枚数は、前の頒布の記録や予約の数のように、数えられるものから置きます。初めてなら少なめに作り、追加で作るときの最少の枚数と日数を、最初の見積もりで聞いておきます。比べ方はCD・DVDのプレスとコピーの違い|費用・ロット・納期の比較方法 に詳しく書きました。
何枚からプレスが安いかに決まった数字は無い。同じ仕様の見積もりで比べる
入稿の形も、注文先で決まっています。プレスでは、国内のメモリーテックが音のマスターをDDPで渡すよう推奨していて、DDPの中身と作り方はDDPとは|CDプレスの入稿形式の中身・作り方・渡す前の確かめ方 にまとめています。コピーの業者に頼むときは、完成したCD-Rを送るのか、音のファイルを送るのかを、業者の案内で確かめます。
ジャケットと盤面には、出典・訳者・出演者の名前を載せる
一般的なプラケースなら、ジャケットの表紙は120×120mm、裏面は左右の背表紙を含めて150×117mmが目安です。寸法は用紙や注文先で少し違うことがあるので、最後は注文先のテンプレートに合わせます。部品ごとの寸法はCDジャケットのサイズ|表紙・裏面・紙ジャケ・DVDの寸法と作り方 に、塗り足しや解像度などはDVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方|サイズ・解像度・塗り足し にまとめました。
朗読・ボイスドラマのCDでは、次の情報を載せておくと、受け取った人にも、何年か後の自分にも、何の録音かが分かります。
作品名と著者名。翻訳なら訳者名
出典。青空文庫を使ったなら「青空文庫」と、図書カードにある底本と出版社
読み手・出演者・演出の名前(取り決めた表記で)
台本、BGM・効果音、ジャケットの絵のクレジット(規約が表記を求めるもの)
トラックの一覧と、それぞれの長さ、全体の収録時間
2枚組なら、1枚目・2枚目の区別
JASRAC・NexToneの管理曲を使ったなら、団体の決まりどおりの許諾の表示
制作年と、頒布する範囲に合わせた連絡先
盤面に刷れる範囲は、ディスクの製品で違います。同じ印刷用のCD-Rでも、内径23mmから刷れる製品と、41mmからの製品があります。自分で刷るなら使うディスクの表記を、業者に頼むならテンプレートを見てから作ります。シールのラベルは貼らないようにします。マクセルは、ディスクにラベルや保護シートを貼ると、反りや重心に影響して、機器がディスクを認識できない、読み取れないといった不具合のおそれがあるとしています。
ボイスドラマ・朗読のCDを頒布するとき|値付けと郵便の料金
1枚あたりにかかるお金を積んでから値付けする
頒布の方法は、朗読会や即売会での手渡し、ショップへの委託、自分で受け付ける通販に分かれます。値段を決める前に、1枚あたりにかかるお金を積み上げます。
ディスクとケース。業者に頼むなら見積もりの1枚あたり
ジャケットと盤面の印刷
梱包の封筒や緩衝材
送料(通販や、委託先への納品)
委託するなら、委託先が決めている手数料(委託先の案内で確かめる)
即売会なら、参加費や交通費
手渡しと通販で値段を変えるかどうかも、この一覧から決めます。手数料や送料を引いても原価を下回らない値段にしておけば、あとで頒布の方法を増やしても付け直さずに済みます。即売会での値付けや当日の準備は、即売会でCD・DVDを頒布する準備|申込・部数・搬入・値付けと当日の運営 にまとめています。
郵便で送るときの料金
CDを1枚ずつ郵便で送るなら、大きさと重さで料金が決まります。日本郵便の今の料金表と、発表されている改定は次のとおりです(2026年9月時点)。
送り方
大きさ・重さと料金
定形外(規格内)
長辺34cm・短辺25cm・厚さ3cm・1kgまで。50gまで140円、100gまで180円、150gまで270円。
クリックポスト
240円・2kgまで(2026年10月1日に185円・1kgまでから改定)。大きさは3辺の合計が60cmまで、長辺34cmまで。ポストに入るもの。
クリックポストは、2026年10月1日から運賃が185円から240円に変わり、大きさの上限が「長辺34cm・短辺25cm・厚さ3cm」から「3辺の合計60cm・長辺34cmで、郵便ポストに投函できるもの」に、重さの上限が1kgから2kgに変わりました(日本郵便の2026年7月3日の発表)。10月からは原則として郵便ポストに投函して出します。一度に投函しきれない量を出すときなど、窓口から出せる場合もありますが、窓口で預けられるのは厚さ3cm以下のものに限られます。利用には、Yahoo! JAPAN IDかAmazonアカウントの登録が要ります。
厚さ10mmのプラケースに入れたCDなら、封筒と緩衝材を足した厚さが3cmに収まるかを測ります。重さも包み方で変わるので、梱包したものを量ってから料金表に当てはめます。10月1日をまたいで送るなら、改定後の運賃で値付けを見直してください。
朗読会や収録のようすを、動画でも残すなら
朗読会の舞台や、ボイスドラマの収録のようすを撮った動画を、DVDやブルーレイにして出演者や家族に渡すこともできます。映像にする場合も、読んだ作品の権利と、映っている読み手・出演者の了解は、CDと同じように確かめます。出演者には、実演を録画する権利もあるからです(第91条)。撮影から配るまでの段取りは、発表会・舞台の映像をDVD・ブルーレイに|撮影の決め方から作成・配布まで にまとめています。
当社(ディスクメーカー・大阪市北区梅田)は、動画データからDVD・ブルーレイを1枚から作る、書き込み代行の小さな店です。撮った動画の共有URL(ギガファイル便、Google ドライブなど)を注文フォームに貼っていただき、スマホからも入稿できます。プレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、店舗でお渡しします。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。
ここから始めるなら、最初に、読みたい作品の一覧を書き出します。作品ごとに、著者と訳者の名前と没年、青空文庫なら図書カードの表示、読み手・出演者と台本の担当を並べると、要る許諾と取り決めが分かり、そこから録音の締め切りと頒布の日取りが決まっていきます。
よくある質問
Q1. 朗読・ボイスドラマのCDは、何から決めればいいですか? 原作と台本の権利からです。原作の著作者と訳者の没年、台本を書いた人の了解を確かめ、次に読み手・出演者と、CDにして頒布することや名前の出し方を取り決めます。そのあとで録音と編集、CDの形(1枚約80分・99トラックまで)とプレスかコピーか、ジャケット・盤面と頒布の段取りの順に進めます。権利が先なのは、録ったあとで使えないと分かると、やり直しになるからです。
Q2. 青空文庫の作品を朗読して、CDにして売ってもいいですか? 著作権の切れた作品なら、有償・無償を問わず使えると青空文庫の取り扱い規準と朗読配信の案内にあります。図書カードの著者名の下に「*著作権存続*」と出ている作品は、著作権者の許しか、クリエイティブ・コモンズなどの許諾の範囲でしか使えません。翻訳は訳した人の権利も見ます。「青空文庫」の名前は出所の表示に使えますが、青空文庫の許可を示すものではありません。
Q3. 翻訳された海外の小説を朗読するときは、何を確かめればいいですか? 原作の作者と、訳した人の両方の没年です。翻訳は原作とは別の著作物(二次的著作物)として保護され、文化庁は、翻訳されたものを使う場合、翻訳者の了解のほか原作の著作者の了解も要ると説明しています。外国の作者は、相互主義や戦時加算で保護期間の計算が変わります。訳した人の権利が残る訳を使うなら、その人の許諾を取るか、権利の切れた別の訳を探します。
Q4. 作者が亡くなって何年たった作品なら、許可なく朗読してCDにできますか? 原則として、亡くなった年の翌年の1月1日から数えて70年がたった作品です(第51条・第57条)。70年は2018年12月30日の改正で50年から延びたもので、日本の作家なら、原則として1967年までに亡くなった人の作品は保護期間が終わっています。共同著作物は最後に亡くなった著作者から数えます。翻訳は訳した人の没年、外国の作品は戦時加算なども確かめます。
Q5. ボイスドラマに出てもらった人とは、何を取り決めればいいですか? 声の出演も著作権法の「実演」で、出演者には録音の権利と、録音した物を譲り渡して公衆に提供する権利があります(第91条・第95条の2)。CDにして頒布すること、有償か無償か、あとで追加で作るとき、配信もするか、クレジットの名前(実名か芸名か、載せないか)、編集の範囲、謝礼を、録音の前に読み返せる形で取り決めます。
Q6. 朗読のCDにBGMや効果音を入れても大丈夫ですか? 使う素材の規約しだいです。フリー素材なら、CDなどの録音物に収めてよいか、有償で頒布してよいか、クレジットの表記、加工の可否を規約で読み、ページを保存します。JASRACやNexToneの管理曲なら、無料で配るCDでも製造の前に申し込みます。市販のCDやダウンロードした音源を流すなら、レコード会社など原盤の持ち主の許諾も別に要ります。
Q7. CD1枚に、朗読は何分まで入りますか? 音楽用のCD-Rで約80分で、トラックの間の無音も含みます(マクセル)。トラックは99までです。朗読の長さは読む人と作品で変わるので、原稿の一部を本番の速さで読んで計り、全体に当てはめます。青空文庫は、音読の時間を黙読の目安の1.5〜2倍くらいと案内しています。80分を超えるなら、章の区切りで2枚組にします。
Q8. 自宅で録った朗読に、雑音や響きが入るのはなぜですか? 多いのは、エアコンやパソコンのファン、外の車の音を拾っている場合です(オーディオテクニカ)。マイクから口が遠いと入力を上げることになり、周りの音も大きくなります。机の振動も低い雑音になります。響きは部屋で変わるので、候補の部屋で同じ文を録って聞き比べます。雑音を減らす処理は一定の雑音に有効で、不規則な音には向きません(Audacity)。
Q9. 家族や朗読の仲間に無料で配るCDでも、権利の確認は要りますか? 要ります。頒布は有償か無償かを問わず、公衆には特定かつ多数の人も含まれます(第2条)。私的使用は、家庭内など限られた範囲で、使う本人が複製する場合の例外で(文化庁)、業者に頼んで複製する場合は当たりません。別の家に住む親族に渡す分は、一律には言えません。保護期間の残る作品を読んだなら、許諾を取ってから配ります。
Q10. 朗読のCDを郵便で送ると、料金はいくらですか? 日本郵便の今の料金表では、定形外郵便の規格内(長辺34cm・短辺25cm・厚さ3cm・1kgまで)が、50gまで140円、100gまで180円、150gまで270円です。クリックポストは2026年10月1日から240円になり、大きさは3辺の合計60cm・長辺34cm、重さは2kgまでに変わりました。梱包したものを量ってから当てはめます。
参考にした公式の情報
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法律の運用や、各団体・サービスの決まり、郵便の料金、ソフトや機器の仕様は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月26日時点の法令と各公式ページの記載をもとにしたものです。個別の判断は、作品の権利者や出版社、JASRAC・NexTone、法律の専門家に確かめてください。
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