この記事の要点
2024年7月19日、セキュリティ製品の設定ファイルの更新の不具合で、Microsoftの推定で約850万台のWindowsが起動しなくなった。サイバー攻撃ではない
戻すにはセーフモードなどで1台ずつ作業する必要があり、BitLockerで暗号化された機器では48桁の回復キーを求められる場合があった
回復キーがアカウントや管理の仕組みの中にしか無いと、見るための端末とサインインと通信がそろうまで作業が進まない
回復キーは印刷か書き写しで紙に控え、パソコンと別の鍵のかかる場所に2か所置く。紙にはキーIDの最初の8桁と書いた日付を添える
大事なデータは、パソコンの鍵が無くても読める形で別に控える。焼いた盤はドライブから出して棚に置き、鍵の紙とは別の場所で守る
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2024年7月19日の午後、日本時間の13時すぎから、職場のWindowsのパソコンが次々に青い画面になり、再起動を繰り返して立ち上がらなくなりました。原因はサイバー攻撃ではありません。セキュリティ企業CrowdStrikeの製品に配られた設定ファイルの更新に不具合があり、それを受け取ったパソコンが起動の途中で止まったのです。Microsoftは、影響を受けたWindowsの機器を約850万台と推定しています。
止まったパソコンは遠くから一斉には直せず、1台ずつ人が前に座り、いつもと違う手順で起動して不具合の更新を取り除く必要がありました。そのとき、ドライブをBitLockerで暗号化しているパソコンでは、48桁の回復キーの入力を求められる場合がありました。回復キーが手元に無ければ、その1台の作業はそこで止まります。
備えは二つです。一つは、回復キーをMicrosoftアカウントや会社の管理の仕組みに預けたままにせず、紙に控えてパソコンとは別の場所に置くこと。もう一つは、大事なデータを、そのパソコンの鍵が無くても読める形で、ネットワークにつながっていない場所に別に持っておくことです。鍵の控えとデータの控えは、それぞれ別の置き場所で守ります。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
2024年7月19日に何が起きたか 攻撃ではないのに、止まり方はランサムウェアの被害と似ていた なぜ回復キーが要ったのか|暗号化が設計どおりに働いた結果 1台ずつ48桁を入れる作業が、復旧を遅らせた 回復キーをクラウドだけに置く危うさ 自分のパソコンが暗号化されているかを確かめる 控えてある回復キーは、今の鍵と合っているか 回復キーを紙に控える|書き方と置き場所 残りの15項目を見る USBメモリや盤に回復キーを入れるなら 鍵とデータを切り離す|パソコンが開かなくても困らない控え バックアップのドライブにも鍵を掛けているなら ディスクに焼いて棚に置く控え|役に立つところと限界 数人の事務所や店で決めておくこと 学校・園・団体で使うパソコンは、誰の鍵かを先に決める 大事な日に止まっても、代わりがある形にしておく 青い画面や回復の画面が出た日にすること 止まった日のために、紙を1枚用意しておく 場面で考える|月曜の朝、家族のパソコンが回復の画面で止まった 家庭・事務所・団体ごとの、鍵と控えの組み合わせ 年に一度、鍵と控えを照らし合わせる 動画の記録を、パソコンが止まっても見られるディスクにしておく 今日、パソコンの前でやること よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
2024年7月19日に何が起きたか
78分のあいだに配られた設定ファイル
CrowdStrikeは、パソコンやサーバーに常駐して不審な動きを見張るセキュリティ製品を、主に企業や組織に提供している会社です。Windows向けの製品(Falcon)は、何を不審とみなすかの判断材料を、ソフト本体とは別の設定ファイルとして頻繁に受け取ります。2024年7月19日、その設定ファイルの一つの更新に不具合がありました。
CrowdStrikeが米国の証券取引委員会への報告と根本原因の分析で示した時刻では、不具合のある更新が配られたのは協定世界時の04時09分、取り下げられたのは05時27分です。日本時間に直すと13時09分から14時27分まで、78分間にあたります。この間に更新を受け取ったWindowsの機器が青い画面で止まり、再起動しても同じところで止まるようになりました。
取り下げた後に電源を入れた機器や、そもそも更新を受け取らなかった機器は止まっていません。逆に言えば、78分のあいだに受け取ってしまった機器は、取り下げが済んだ後も自分では起動できない状態で残りました。配る側が更新を止めても、すでに止まった機器を元に戻す作業は、機器の数だけ残ったことになります。
約850万台という数字の読み方
Microsoftは翌7月20日の公式ブログで、影響を受けたWindowsの機器を約850万台と推定し、すべてのWindowsの機器の1%に満たない数だと説明しました。そのうえで、割合は小さくても、多くの重要なサービスを動かす企業がこの製品を使っていたため、経済と社会への影響が広く及んだ、と書いています。
1%に満たない数でも、止まったのが受付や会計、予約や手配のように仕事の流れの真ん中に置かれた機器なら、その職場の仕事はまとめて止まります。台数の多さより、一つの組織の中の機器が同じ時刻にそろって止まったことが、この障害の重さでした。家庭のパソコンにも、Windowsや各種のソフトの更新は自動で届きます。どの更新が原因になるかは選べないので、同じ形の止まり方は、規模を変えてどこでも起こり得ます。
原因として公表されたこと
CrowdStrikeが2024年8月6日に公表した根本原因の分析によると、パソコンの中で見張りをする部分(センサー)は20項目の入力を受け取る前提で作られていたのに、問題の更新は21項目を渡していました。センサーは用意されていない範囲のメモリを読みに行き、そこで止まりました。配る前の検証の仕組みはこの食い違いを見逃し、この種の更新はソフト本体と同じ試験を通していなかった、と同社は説明しています。
同社は対策として、更新を一度に全部の機器へ配らず段階を追って配ること、配る相手と時期を利用者の側で選べるようにすることを挙げました。7月29日の時点で、更新の前と比べて約99%のセンサーが動いている状態に戻った、とも公表しています。原因から対策までが文書で公開されたので、利用者の側も、自分の職場や家庭に置き換えて備えを考えられます。
その後、Windowsに加わった回復の機能
Windows 11には、広い範囲で起動できなくなる問題からの回復を助ける「クイック マシン回復」という機能が加わっています。Microsoftの日本語のヘルプによると、パソコンが起動に何度か失敗して回復の環境に入ったときに、Windows Updateを通じてMicrosoftの修正を当て、回復を助ける仕組みです。設定の「システム」の「回復」にある「クイック マシン リカバリ」で、オンかオフかを確かめられます。
同じヘルプには、BitLockerや回復キーとの関係は書かれていません。この機能があるから鍵の控えが要らなくなる、とは考えないでください。修正が見つからなければ、これまでどおりの回復の手順に戻ります。そのとき回復キーを求められれば、要るのはやはり手元の控えです。
日付と時刻、公表の順番を図に並べました。この記事の事例の日付と数字は、2026年10月時点で、当事者の公表資料と公的機関の発表、報道で確かめられた範囲で書いています。日本国内で止まった機器の台数は、確かめられる資料が見つからなかったので書いていません。
更新が配られていたのは78分間。止まった機器を戻す作業はその後も続いた
攻撃ではないのに、止まり方はランサムウェアの被害と似ていた
CrowdStrikeの障害は、誰かに攻撃されたものではありません。米国のサイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)も、当日の注意喚起で、原因は更新で悪意のあるサイバー活動ではないとCrowdStrikeが確認した、と伝えています。それでも止まり方だけを見ると、ランサムウェアの被害とよく似た形をしていました。
同じ日の同じ時刻に、同じ組織の中の何十台、何百台が一斉に使えなくなる。遠くから一度に直す方法が無く、1台ずつ人が前に座って手を動かす。直るまでのあいだ、紙や電話や別の機器で仕事を回す。ここまでは、攻撃でファイルを暗号化された職場が経験する流れとほとんど同じです。
違うのはデータの中身です。ランサムウェアはファイルを暗号化したり持ち出したりしますが、この障害ではデータそのものは無事で、パソコンが起動しないだけでした。起動さえすれば、ファイルは元のまま出てきます。ところが、その起動のための作業で、持ち主の側の守りであるBitLockerの鍵が要りました。守りのために掛けた鍵を開けないと、戻す作業に進めなかったのです。
止まった組織を責める話ではありません。守りのために入れた仕組みが、思わぬ場面で復旧の手間を増やすことは、どの職場にも起こり得ます。学べるのは、止まった後に戻すための鍵と手順を、止まる前に、その機器の外へ出しておくことです。攻撃で止まった大手企業の経緯と復旧の道のりは、KADOKAWA・アサヒ・アスクルの事例をまとめた記事 で読めます。
戻すための控えが止まった機器と一緒に使えなくなる例は、攻撃による被害の統計にも表れています。警察庁が2026年3月に公表した令和7年の統計では、ランサムウェアの被害に遭った組織のうち、バックアップから復元できたのは有効回答99件中20件でした。復元できなかった理由で一番多かったのは、バックアップも暗号化されたり消されたりしたことです。鍵の控えもデータの控えも、止まる機器から離れた場所にあって初めて役に立ちます。
障害と攻撃で、戻し方が違うところ
止まり方は似ていても、戻し方には違いがあります。CrowdStrikeの障害では、不具合のある更新を取り除いて起動すれば、中のデータはそのまま使えました。ランサムウェアの場合、JPCERT/CCが公開している「侵入型ランサムウェア攻撃を受けたら読むFAQ」は、復旧の前に侵入の経路と考えられる原因をすべて手当てし、ネットワークに戻す前に、攻撃者が残した不正なプログラムや設定が取り除かれたかを確かめるよう書いています。鍵を開けて起動すれば終わり、とはいきません。
控えの選び方も変わります。IPA(情報処理推進機構)が2026年9月に公開したランサムウェアの教訓集は、侵入が始まる前のバックアップは安全だとして、侵入の時期を特定できるよう記録を残すことを勧めています。障害なら直前の控えで足りても、攻撃なら、どの時点の控えまで遡れば安全かを確かめる必要があります。日付の違う控えを何世代か持っておくことは、どちらの場面でも役に立ちます。
なぜ回復キーが要ったのか|暗号化が設計どおりに働いた結果
BitLockerは、Windowsがドライブ全体を暗号化する仕組みです。パソコンが盗まれてドライブを抜き取られても、中身を読めないようにするためにあります。普段は、パソコンの基板にあるTPM(暗号の鍵を守る部品)が鍵を預かっていて、いつもどおりの手順で起動したときは、持ち主が何も入力しなくても自動で鍵が開きます。
いつもと違う手順で起動すると、この自動の鍵開けが働かないことがあります。そのときWindowsは、控えの鍵である回復キーを求めます。Microsoftの日本語のヘルプでは、回復キーは48桁の数字で、Windowsで暗号化されたドライブの鍵を自動で開けられないときに必要になるもの、と説明されています。
この障害についてMicrosoftがサポート記事(KB5042421)で案内した復旧の方法は、セーフモードで起動して作業する方法と、「システムの復元」で前の状態に戻す方法の二つでした。どちらの手順にも、画面でBitLockerの回復キーの入力を求められた場合の進め方が書かれています。いつもの起動ができないパソコンを別の手順で起動しようとしたので、暗号化の仕組みが設計どおりに鍵を求めたのです。
BitLockerが悪かったのでも、使い方を誤ったのでもありません。盗まれたパソコンを他人が別の手順で起動しようとしたときも、まったく同じ反応をするからこそ、中身が守られます。持ち主にとって必要だったのは、その場で回復キーを出せる用意だけでした。
暗号化をやめれば済むのか
回復キーで困るくらいなら暗号化を切ってしまえばよい、と考える人もいるかもしれません。ただ、暗号化を切ったノートパソコンを電車に置き忘れれば、拾った人は記憶装置を取り出すだけで中身を読めます。名簿や家族の写真が入っているなら、その損失のほうが大きくなります。持ち歩くパソコン、人の出入りがある場所に置くパソコンほど、暗号化は残しておく価値があります。
暗号化を残したまま困らないようにするのが、ここで書く鍵の控えです。暗号化を切るかどうかを考える前に、鍵の控えが今どこにあり、止まった日に取り出せるかを確かめるほうが、守りを手放さずに済みます。
暗号化した覚えがなくても、鍵は掛かっていることがある
自分は暗号化などしていない、という人も多いはずです。Windowsには「デバイスの暗号化」という機能があります。Microsoftの日本語のヘルプによると、Microsoftアカウントか職場・学校のアカウントで初めてサインインしたり設定したりしたときに有効になり、回復キーはそのアカウントに結びつけられます。家庭向けのWindows Homeでも使える機能です。ローカルアカウントだけで使っている場合は、自動では有効になりません。
Microsoftアカウントで初期設定をしたパソコンなら、持ち主が意識しないまま暗号化され、回復キーはクラウドの上のアカウントにだけある、という状態になっていることがあります。普段は何の不便もありません。困るのは、回復の画面が出て、しかもそのアカウントにすぐ入れないときです。
回復の画面が出てから鍵を探す順番や、画面に出るIDの見方は、暗号化したバックアップのパスワードを忘れたときの出口に詳しく書きました。ここから先は、そうなる前に鍵をどこにどう控えるか、そしてデータをどう切り離して持つかを書きます。止まったパソコンを1台戻すまでの流れを図にしました。3つ目の段で回復キーが出てこないと、そこから先へ進めません。
3つ目の段で回復キーが出てこないと、その1台の作業はそこで止まる
1台ずつ48桁を入れる作業が、復旧を遅らせた
MicrosoftのKB5042421は、回復キーの入力を求められたときの調べ方として、スマホで職場・学校のアカウントの回復キーのページ(aka.ms/aadrecoverykey)を開き、組織のメールアドレスとパスワードでサインインして、「デバイスの管理」から「BitLockerキーの表示」へ進む道を案内しています。組織で管理しているパソコンなら、回復キーは組織のアカウントの側に預けてある、という前提の手順です。
48桁は長い数字です。1台を戻すには、止まった画面に出ている回復キーのIDを読み、別の端末でそのIDに合う鍵を探し、48桁の数字を止まった機器のキーボードで打ち込む、という手順を踏みます。48桁は6桁ずつ8組に区切られていて、一つでも打ち違えれば通りません。読み上げる人と打つ人が分かれていれば、声で数字を伝え合う時間もかかります。
社員20人の事務所で、昼すぎに15台が同時に止まった場面を考えてみます。組織の管理の画面に入れるのは総務の一人だけで、その人の机のパソコンも止まっています。スマホで管理の画面に入り、1台ずつIDを照らし合わせて数字を読み上げる。1台に10分かかるとすれば、それだけで2時間半です。途中で一人が打ち違えれば、そのたびに読み直しになります。
手順が分かっていても、時間は台数に比例して延びます。Microsoftは手作業を助ける道具も公開しましたが、止まった機器の前に人が立つことは変わりません。回復キーをどこで見るかが決まっていない職場では、まず鍵の在りかを探すところから始めることになり、その分だけ作業の始まりが遅れます。
打ち違いを減らす読み上げ方
48桁を人から人へ伝えるときは、6桁ずつ区切って読み、打つ側がその6桁を読み返してから次の組へ進みます。読む側は、読み終えた組に鉛筆で印を付けていきます。8組のどこまで進んだかが紙の上で分かれば、途中で電話が鳴っても続きから再開できます。「ゼロ」と「オー」のような言い方の揺れは最初に決めておき、数字は一つずつ区切って読みます。
何台も続けて戻すときは、終わった機器の管理番号と時刻を、台帳の横に書きながら進めます。どの機器が済んで、どの機器がまだかを、作業する人全員が同じ紙で見られるようにしておくと、同じ機器を二度触ったり、1台を取り残したりせずに済みます。
戻す順番を決めておく
何台も止まった日は、戻す順番で仕事の再開の早さが変わります。最初に戻すのは、鍵を調べたり管理の画面に入ったりするための機器です。次に、電話の受付や会計、予約のように、止まっていると外の人を待たせる機器。社内の書類作りにしか使わない機器は最後に回します。順番を平時に決めて台帳に書いておけば、当日は上から順に進めるだけで済みます。
家庭では「鍵を見るための別の端末」が要る
家庭のパソコンで同じ画面が出た場合も、回復キーは別の端末で探します。Microsoftの日本語のヘルプは、別のデバイスのブラウザーでMicrosoftアカウントの回復キーのページ(aka.ms/myrecoverykey)にサインインし、キーIDで照らし合わせる方法を最初に挙げています。家にパソコンが1台しかなければ、使えるのはスマホです。
スマホでMicrosoftアカウントに入れるかどうかは、そのアカウントのパスワードを覚えているか、確認コードを受け取るスマホやメールが今も使えるかで決まります。パソコンの初期設定を家族や購入した店がしていた場合は、アカウントの持ち主が自分ではないこともあります。ここで止まると、パソコンの中のデータは無事なのに、取り出す手段がありません。
回復キーをクラウドだけに置く危うさ
回復キーがMicrosoftアカウントや組織のアカウントに預けてあること自体は、よい備えです。Microsoftは、多くの場合、BitLockerを最初に有効にした時点で回復キーは自動でバックアップされると説明し、そのバックアップが今も手の届く状態かを確かめるか、追加のバックアップを作るよう勧めています。バックアップは必要な数だけ作れ、複数持つことが勧められています。
問題は、控えが一つしか無いときです。クラウドの上の控えは、見るための端末、サインインできるアカウント、つながる通信の三つがそろって初めて取り出せます。どれか一つが欠けた日には、控えがあっても手が届きません。一斉に止まる場面では、その欠け方が重なりやすくなります。
鍵を見るための端末も、同じ日に止まっている
同じ製品、同じ更新を使っている職場では、止まるときは揃って止まります。回復キーを調べるはずだった管理担当のパソコンも、会議室のパソコンも、同じ青い画面になっているかもしれません。残っているのがスマホだけなら、小さな画面で管理の画面を操作し、48桁を読み取ることになります。
家庭でも、家族のパソコンが同じ機種、同じ設定で揃っていれば、同じことが起こり得ます。止まったときに鍵を見る端末は、止まる側の機器とは別の種類にしておくほうが確実です。実際、CrowdStrikeは障害の翌日の技術的な説明で、LinuxやmacOSで動く機器は影響を受けなかったと書いています。スマホでも構いませんが、そのスマホでアカウントに入れることを、平時に一度試しておきます。
アカウントに入れない日がある
アカウントに入れなくなる理由は、身近なものばかりです。パスワードを忘れた、確認コードを受け取るスマホを機種変更した、初期設定をしたのが家族で自分のアカウントではなかった、管理の画面に入れる担当者が休暇や退職でいない。どれも、止まる前には気づきにくい欠け方です。
アカウントに入るために使う確認の手段が、止まったパソコンそのものに入っている場合もあります。パソコンでしか見ないメールに確認のコードが届く設定なら、そのパソコンが動かない日は受け取れません。確認の手段は、パソコン以外の機器でも受け取れるかを確かめておきます。
預け先の仕組みが止まる・変わることもある
クラウドの側が止まることもあります。米国のAmazon Web Servicesの事後報告によると、2025年10月19日の23時48分から翌20日の14時20分まで(米太平洋夏時間)、米国東部(バージニア北部)の地域で障害が続き、ほかのサービスにも広がりました。きっかけは、接続先の名前(DNS)を管理する自動の仕組みに潜んでいた不具合です。これも攻撃ではありません。大手のクラウドが頻繁に止まるわけではありませんが、事業者自身の報告にあるとおり、止まる日はあります。
サービスの方針で、データが消えることもあります。Googleのヘルプは、2年の期間内に使われていない個人のGoogleアカウントを無効とみなし、そのアカウントとデータを削除する権限を持つと説明しています。削除の前には、そのアカウントと再設定用のメールアドレスに通知が届き、職場や学校を通じて作ったアカウントは対象外です。メールを読む、ドライブを使うといった操作をしていれば使っているとみなされますが、昔の写真の置き場にしただけで何年も開いていないアカウントは、この方針に当てはまり得ます。
Microsoftの消費者向けのサービス規約(2026年9月30日に発効した版)も、サービスが止まった場合などに備えて、保存したデータを定期的にバックアップするよう利用者に勧める条項を置いています。クラウドに置いたものを、クラウドの外にも控えておく。その勧めは、回復キーにもそのまま当てはまります。
控えを増やすほど、守る場所も増える
反対に、控えをむやみに増やすのも考えものです。回復キーは、パソコンの中身を開けられる鍵そのものです。紙に印刷したり、USBメモリに保存したりした控えは、それを手にした人なら誰でも使えます。Microsoftも、USBドライブや印刷物をコンピューターと一緒に保管しないよう注意していて、理由として盗まれたときに暗号化を回避されるおそれを挙げています。
落ち着きどころは、アカウントの控えを一つ残したうえで、パソコンの外に紙の控えを作り、パソコンと別の鍵のかかる場所に置くことです。紙は2枚まで、置き場所は2か所まで。それ以上は、守る手間のほうが大きくなります。次の節から、手元の機器を確かめるところから順に進めます。
自分のパソコンが暗号化されているかを確かめる
最初に、家や職場のパソコンが暗号化されているかを確かめます。Windowsの「設定」を開き、「プライバシーとセキュリティ」の中に「デバイスの暗号化」の項目があるかを見ます。項目があってオンになっていれば、本体のドライブは暗号化されています。Microsoftの日本語のヘルプによると、この項目が表示されない場合は、そのパソコンが機能に対応していないか、標準ユーザー(管理者でないアカウント)でサインインしている可能性があります。
もう一つの確かめ方は、スタートメニューで「BitLocker」と入力し、結果に出る「BitLockerの管理」を開くことです。開けた場合は、本体のドライブ、内蔵の別のドライブ、つないでいる外付けのドライブごとに、BitLockerが有効かどうかが並びます。外付けのドライブやUSBメモリにも鍵を掛けている場合は、それぞれに別の回復キーがあります。
「BitLockerの管理」が出てこないパソコンでも、「デバイスの暗号化」がオンなら回復キーはあります。この場合の控えは、初期設定に使ったMicrosoftアカウントの一覧で確かめるのが近道です。Macを使っている場合は、システム設定の「プライバシーとセキュリティ」にあるFileVaultの状態を見ます。FileVaultにも復旧キーがあり、控えの考え方は同じです。
家にあるパソコンを、家族の分も含めて全部書き出します。機種名、主に使う人、暗号化の有無、外付けのドライブの暗号化の有無。この一覧には回復キーそのものは書きません。どの機器に鍵があるかが分かれば、次に控えを確かめる対象が決まります。会社や学校から渡されたパソコンは、自分で鍵を控えるものではないので、一覧に「管理者が管理」と書いておきます。
Windows 10のまま使っているパソコンは、個人向けの拡張セキュリティ更新(ESU)に登録していれば、2027年10月12日までセキュリティ更新が届きます。買い替えを考えている機器なら、暗号化の有無と回復キーの在りかを、移し替えの前に確かめておくと、古いパソコンから中身を取り出す段で困りません。移し替えの段取りはWindows 10のまま使い続けるリスクと、買い替え前に動画と写真を移す手順 で書いています。
外付けのドライブとUSBメモリの鍵も数える
「BitLockerの管理」に並ぶのは、その時点でつながっているドライブだけです。棚にしまってある外付けのHDDやUSBメモリにBitLockerを掛けていても、つないでいなければ一覧には出てきません。家や職場にある外付けのドライブを一度ずつつなぎ、鍵が掛かっているかを確かめて、機器の一覧に書き足します。ドライブのメーカーの専用ソフトで鍵を掛けている製品は、BitLockerとは別の鍵なので、製品の説明書で控えの扱いを確かめます。
職場のパソコンを家で使っている場合
在宅の仕事で職場のパソコンを家で使っている人は、そのパソコンの鍵を自分で控える必要はありません。回復キーは職場の管理者の側にあります。家で回復の画面が出たときのために、管理者の連絡先を、パソコンとは別の紙かスマホに控えておきます。夜や休日に連絡がつかない場合にどうするかも、職場の決まりを聞いておきます。
反対に、職場のパソコンに家族の写真や私物の書類を入れておくのは避けてください。そのパソコンが止まって職場の手順で初期化されれば、私物のデータを取り戻す手段は自分の側にありません。家のデータは、家の機器と家の控えで守ります。
控えてある回復キーは、今の鍵と合っているか
Microsoftアカウントの回復キーの一覧を開くと、鍵が一つも無い場合と、いくつも並んでいる場合があります。前に使っていたパソコンの鍵、Windowsを入れ直す前の鍵、外付けのドライブの鍵が、同じ一覧に残っていることがあるからです。一覧に鍵がある、というだけでは安心できません。目の前のパソコンの今の鍵がその中にあるかを、キーIDで照らし合わせます。
キーIDは、回復キーごとに付いている見分けのための番号です。回復の画面が出たときはその画面に表示され、Microsoftはその最初の8桁を控えて、一覧の中から同じIDの鍵を選ぶよう案内しています。平時に今のIDを知るには、「BitLockerの管理」で本体のドライブの横にある「回復キーのバックアップ」を選び、「回復キーを印刷する」を使います。印刷した紙にはキーIDと回復キーの両方が載るので、その8桁を一覧と見比べれば、アカウントの控えが今の鍵かどうかが分かります。
「BitLockerの管理」が出てこず、「デバイスの暗号化」だけが使えるパソコンでは、パソコンの側で今のIDを確かめにくいことがあります。その場合は、一覧の中で同じ機器名に結びついている鍵を、IDごと全部書き写しておきます。回復の画面が出たときに、画面のIDと紙のIDを見比べて選べば足ります。どの鍵が古いかを平時に決めきれなくても、IDが紙にあれば迷わずに済みます。
鍵が変わる場面
鍵は変わることがあります。回復キーは、一度控えたら永久に使えるものとは限りません。暗号化をいったん解除して掛け直したとき、Windowsを入れ直したり初期化したりしたとき、新しいパソコンに買い替えたときは、新しい回復キーに変わることがあります。暗号化しているドライブを増やしたときも、そのドライブの分の鍵が増えます。
こうした作業をした日は、控えを作り直す日だと決めておきます。修理から戻ったパソコンも、基板の交換などで回復の画面が出ることがあるので、受け取ったその日に一度起動し、一覧のIDと紙のIDが今も合っているかを確かめます。照らし合わせの順番を図にしました。暗号化されているパソコン1台ごとに、上から順に答えていきます。
暗号化されているパソコン1台ごとに、上の問いから順に答える
一覧に知らない機器の名前があったら
Microsoftアカウントの回復キーの一覧に、見覚えのない機器の名前が並んでいることがあります。多いのは、前に使っていたパソコンと、自分のアカウントで初期設定をしてあげた家族のパソコンです。Microsoftのヘルプも、デバイスの設定やBitLockerの有効化のときに、別の人がその人のアカウントに回復キーを保存している場合があると書いています。
親のパソコンの鍵が自分の一覧にあるなら、親のパソコンを開ける鍵は自分が預かっているということです。親の家で回復の画面が出た日に電話を受けられるとは限らないので、その鍵も紙に写し、親の家の鍵のかかる場所に1枚置いてきます。前に使っていたパソコンの鍵は、そのパソコンをもう手放したのかを確かめてから、紙の控えの一覧から外します。
修理・買い替え・処分の前後で
パソコンを修理に出す前は、中のデータをパソコンの外に控えてから預けます。修理の内容によっては、記憶装置を交換したり、初期化して戻したりすることがあり、そのとき中身は戻ってきません。回復キーの紙は家に残し、パソコンに貼ったり、預ける袋に入れたりはしません。戻ってきたら、その日のうちに一度起動し、回復の画面が出ないか、出たら紙の鍵で開くかを確かめます。
新しいパソコンを買ったときは、初期設定に使うアカウントを自分で選びます。店や家族に設定を頼むと、回復キーがその人のアカウントに入ることがあるからです。設定が済んだら、その日のうちにアカウントの一覧で鍵を確かめ、紙に控えます。古いパソコンを手放すときは、データを新しい置き場所へ移して開けることを確かめてから処分し、古い鍵の紙は処分が終わったのを見届けてから始末します。
回復キーを紙に控える|書き方と置き場所
パソコンの外に置く控えとして、一番手堅いのは紙です。理由は単純で、電池も通信もアカウントも要らず、止まったパソコンの前でそのまま読めるからです。鍵を見るための端末まで止まっている日にも、紙なら読めます。ここでは、紙の作り方、書き添えること、置き場所、古い紙の始末を順に書きます。
印刷するか、書き写すか
印刷できるなら、「BitLockerの管理」の「回復キーのバックアップ」から「回復キーを印刷する」を選ぶのが確実です。数字を手で写さないので、写し間違いがありません。職場の共有のプリンターで印刷するときは、印刷を押したらすぐに取りに行き、出てきた紙をほかの人の書類に紛れさせないようにします。家庭のプリンターでも、印刷が終わったら紙がトレイに残っていないかを確かめます。
印刷できないパソコンや、別の端末でアカウントの一覧を見て控える場合は、手で書き写します。48桁を6桁ずつ8組に区切って書き、書き終えたら一組ずつ画面と見比べます。数字の1と7、0と6のように崩れやすい字は丁寧に書き、見比べるときは声に出して読むと、行の読み違いに気づきやすくなります。
スマホで画面を撮影して控えにする方法は、勧められません。撮った写真は、多くの場合スマホの写真の同期でクラウドに上がり、紙で控えを作った意味が薄れます。家族や友人に写真を見せているときに、一覧の中に紛れて人の目に触れることもあります。写真に撮ったなら、紙に写し終えた時点で写真を消し、iPhoneなら写真アプリの「最近削除した項目」に残った分も消しておきます。
紙に書き添えること
48桁の数字だけの紙は、何年かたつと、どの機器の何の数字かが本人にも分からなくなります。紙には次のことを書き添えます。機器の名前(パソコンの機種名と、家族の誰のものか)、キーID(最初の8桁は必ず、書けるなら全部)、書いた日付、そして「Windowsの起動時に回復キーを求められたら、この48桁を入れる」という使い方の一行です。
同じ控えがほかにどこにあるかも、一行あると助かります。「同じ鍵はMicrosoftアカウント(メールアドレスの頭の数文字)の一覧にもある」と書いておけば、紙を見た家族が、次に探す場所を知れます。書くのはアカウントの在りかまでにして、Microsoftアカウントのパスワードは同じ紙に書きません。1枚の紙でアカウントとパソコンの両方が開けてしまうからです。
職場のパソコンなら、機器の名前を本体に貼ってある管理番号と合わせます。どの机のどのパソコンがどの紙の鍵かを、キーID以外の手がかりでも結べるようにしておくと、何台も止まった日に取り違えを防げます。
置いてはいけない場所
Microsoftは、USBドライブや印刷物をコンピューターと一緒に保管しないよう注意しています。ノートパソコンを入れて持ち歩く鞄、パソコンの底やキーボードの下に貼った付箋、パソコンが置いてある机の一番上の引き出しは、パソコンと一緒に持ち去られやすい場所です。パソコンを買ったときの箱や説明書の袋も、パソコンのそばに置いてあるなら同じです。
パソコンの中に鍵を控えるのも意味がありません。回復キーのファイルは暗号化したドライブには保存できない作りになっていますが、デスクトップのメモや、自分宛てのメールやLINEに数字を貼った控えは、パソコンかアカウントが開かなければ読めず、開けばほかの人にも読まれます。止まった日に読めず、盗まれた日には読まれる、という一番困る組み合わせです。
持ち出すことのある物と同じ袋に入れないことも大事です。データの控えの盤やUSBメモリを実家へ運ぶ鞄に、回復キーの紙を一緒に入れておくと、鞄を一つなくしただけで、鍵もデータも一度に人の手に渡ります。鍵の紙は、鍵の紙だけの封筒に入れます。
置き場所は2か所、古い紙はその場で始末する
家庭なら、1枚目は家の中の鍵のかかる引き出しか、書類用の金庫に入れます。封筒に入れて封をし、表には「パソコンの回復キー」と書いた日付だけを書きます。封が切られていないかで、誰かが開けたかどうかも分かります。2枚目は、実家や信頼できる家族の家など、同じ火事や水害に一度に遭わない場所に預けます。
事務所や店なら、1枚目は事務所の鍵のかかる書庫か金庫、2枚目は代表者の自宅や別の拠点に置きます。どちらの場所でも、封筒を出し入れできる人を2人までに決め、出した日と戻した日を書く欄を封筒に設けておきます。家族にも職場の人にも、伝えるのは中身ではなく在りかと使う場面です。「パソコンが青い画面で止まって数字を求めてきたら、書類箱の封筒を出す」。この一言を知っている人がいれば、紙は役目を果たします。
鍵が変わったら、古い紙はその場で始末します。残しておくと、次に探す人が古い鍵を試して時間を使います。処分するときは、数字の部分を塗りつぶしてから細かく裂くか、シュレッダーにかけます。処分したパソコンの鍵の紙も、パソコンの処分が終わったことを確かめてから、同じように始末します。
USBメモリや盤に回復キーを入れるなら
MicrosoftのBitLockerの回復キーのバックアップには、「USBフラッシュドライブに保存」という選び方もあります。鍵のファイルは数KBなので、小さなUSBメモリで足ります。Microsoftのヘルプは、回復の画面が出たらそのUSBメモリを止まったパソコンに差して画面の指示に従い、鍵を文字のファイルとして保存していた場合は別の端末でそのファイルを読むよう案内しています。
ただ、このファイルはふつうの文字のファイルで、USBメモリを手にした人なら、どのパソコンでも中身を読めます。USBメモリは小さく、ほかの用事で持ち出されやすく、なくしやすい媒体です。回復キーを入れたUSBメモリは、ほかの用途には使わず、紙と同じく鍵のかかる場所に置きます。データの控えに使っているUSBメモリや外付けのドライブに、回復キーのファイルを一緒に入れることもしません。
DVD-RやCD-Rのような追記型の盤に、回復キーのファイルを焼いて控える手もあります。一度焼いた部分は書き換えられないので、うっかり上書きされる心配はありません。ただ、鍵の控えとしては不便な点のほうが目立ちます。読むにはドライブの付いた動くパソコンが要り、止まった日に別のパソコンも止まっていれば読めません。光ディスクには暗号化の機能が組み込まれていないので、盤を手にした人はドライブさえあれば読めます。
鍵が変わったときの始末も手間です。追記型の盤は、記録した部分を消せません。古い鍵が入った盤は、割るか切るかして読めない形にしてから捨てることになります。捨て方の手順はCD・DVDの捨て方と、読めないように壊す方法 に書きました。回復キーの控えに盤を使うのは、何十台分もの鍵の一覧を金庫に封じておくような特別な場合までで、家庭や数人の事務所なら紙で足ります。盤の出番は、次の節から書くデータの控えのほうです。
鍵の一覧を盤に封じるなら
何十台もの機器を管理していて、紙では量が多すぎる職場では、鍵の一覧のファイルを追記型の盤に焼いて封じる方法も考えられます。その場合は、書き込みを閉じてドライブから出し、別のパソコンで読めることを確かめてから、封筒に入れて日付を書き、金庫に入れます。盤面には中身が分かる言葉を書かず、封筒の表にだけ管理のための番号を書きます。
鍵が変わったら新しい盤を作り、古い盤は割って始末します。一覧のファイルにパスワードを掛ければ、盗まれたときの守りにはなります。ただ、そのパスワードを忘れると一覧ごと開けなくなり、鍵を守るための鍵が一つ増えます。掛けるなら、そのパスワードも紙に控え、盤とは別の場所に置きます。
三つの控え方を並べると
アカウント、紙、USBメモリや盤の三つの控え方を、止まった日に読めるか、盗まれたらどうなるか、鍵が変わったら何をするかで比べました。どれか一つで全部を満たす控えはないので、アカウントと紙の二つを基本にします。
全部を満たす控えは無いので、アカウントと紙の二つを基本にする
鍵とデータを切り離す|パソコンが開かなくても困らない控え
回復キーを紙に控えても、それで守れるのは「いつかは開けられる」ことまでです。CrowdStrikeの障害で止まったパソコンも、止まっているあいだは、中のファイルに誰も手が届きませんでした。鍵がどこにも見つからなければ、残る道はWindowsの回復の機能でパソコンをリセットすることで、Microsoftはリセットするとすべてのファイルが削除されると明記しています。そのとき残るのは、パソコンの外にあった控えだけです。
ここで言う「切り離す」には、二つの意味があります。一つは、データの控えを開くのに、止まったパソコンの回復キーが要らないこと。もう一つは、鍵の控えとデータの控えを、別の場所と別の袋で守ることです。前者が欠けると、鍵が見つかるまでデータの控えも開けません。後者が欠けると、一つの鞄や一つの棚を失っただけで、鍵とデータが一度に人の手に渡ります。
何を控えるか
控えるものは、パソコンの中にしか無いものから選びます。仕事なら、見積書や請求書の控え、帳簿のファイル、取引先の名簿、作りかけの書類、会議や研修の録画。家庭なら、スマホから移した写真と動画、子どもの作品をスキャンした画像、年賀状の住所録、確定申告の控えなどです。OneDriveやGoogleドライブに同期しているフォルダーも、どのフォルダーが同期されていて、どれがパソコンの中だけにあるかを一度確かめます。
全部を同じ頻度で控える必要はありません。毎日増える仕事の書類は週に1回、写真や動画は行事のあとや月に1回、住所録や名簿は書き換えたとき、というように、増え方に合わせて決めます。1回分の控えに日付を付けておけば、どこまで戻せるかが後から分かります。
どこに控えるか
控えの置き場は、性質の違う場所を組み合わせます。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインは、2026年3月の第4.0版で基本の「5か条」に「バックアップを取ろう!」を加えて「6か条」にしました。付録の自社診断は、対策の例として、バックアップに使う装置や媒体はバックアップのときだけパソコンにつなぐこと、安全な場所に保管すること、戻せるかを定期的に確かめることを挙げています。
一つ目はクラウドです。パソコンが止まっても、別の端末から開けます。ただし同期しているだけのフォルダーは、パソコンの上で消したり書き換えたりした変化も、そのままクラウドに伝わります。削除したファイルを戻せる期間も、OneDriveの個人用アカウントで30日以内のように、サービスと契約で決まっています。二つ目は外付けのHDDで、控えを取るときだけつなぎ、終わったら外して別の場所にしまいます。NASや外付けHDDをつなぎっぱなしにする危うさはNASや外付けHDDごと暗号化されるランサムウェアの記事 で書きました。
三つ目が、焼いてドライブから出し、棚に置く盤です。止まったパソコンの鍵とも、クラウドのアカウントとも関係なく、ドライブの付いたパソコンが1台あれば読めます。三つのどれか一つに頼るのではなく、性質の違う置き場所を二つ以上持ち、そのうち一つはネットワークから切り離しておく。公的機関が勧めるオフラインのバックアップの考え方は、ランサムウェア対策のオフラインバックアップ で、中小企業・学校・家庭ごとに書いています。
家と実家に分けたときの、鍵とデータの置き場所の例を図にしました。回復キーの紙と、データの控えの盤は、同じ家の中でも別の入れ物に入れ、パソコン本体のそばには鍵を置きません。
鍵の紙とデータの盤は、同じ家でも別の入れ物に入れる
IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織編の1位が「ランサム攻撃による被害」で、この脅威は11年続けて選ばれています。攻撃でも障害でも、控えの考え方は変わりません。10大脅威を家庭と小さな職場に引き寄せて読んだ情報セキュリティ10大脅威2026の記事 には、脅威ごとの対策とバックアップの組み方をまとめています。
控えに日付を付け、何世代か残す
控えは最新の一つだけでなく、日付の違うものを何世代か残します。IPAの中小企業向けのガイドラインも、バックアップの例として、本番の環境から物理的に分けた場所に置く「物理的隔離」と並べて、複数の時点の控えを持つ「世代管理」を図で説明しています。最新の控えを取った日に、すでにファイルがおかしくなっていても、一つ前の控えに戻れます。
盤は焼くたびに新しい1枚になるので、日付を盤面に書いて並べておけば、自然に世代がそろいます。外付けのHDDは、2台を交互に使えば2世代になります。何世代残すかは、おかしくなったことに気づくまでにかかりそうな日数で決めます。月に1回しか開かない書類なら、2〜3か月分は残しておかないと、気づいたときには、すべての控えが同じ状態になっていることがあります。
同期のクラウドが助けになる場面と、ならない場面
パソコンが起動しないだけでデータは無事、という場面では、同期のクラウドは強い味方です。OneDriveやGoogleドライブに同期していたフォルダーは、スマホや別のパソコンからそのまま開けます。止まったパソコンの鍵を探しているあいだも、急ぎの書類だけは別の端末で印刷できる、という形が取れます。
反対に、ファイルそのものが消されたり書き換えられたりする場面では、同期は控えの役をしません。パソコンの上で起きた変化がクラウドにも伝わるからです。Microsoftは、OneDriveでランサムウェアの攻撃を検出したときの復元の案内の中で、端末をきれいにしてから戻さないと、戻したファイルが再び暗号化されるおそれがあると注意しています。OneDrive全体を過去30日以内の時点に戻す機能は、個人の場合はMicrosoft 365の契約が要ります。
同期のクラウドは、止まった日に仕事を続けるための置き場所として使い、消された日や書き換えられた日に戻るための控えは、つながっていない別の場所に持つ。役割を分けて考えると、どこに何を置くかが決めやすくなります。
バックアップのドライブにも鍵を掛けているなら
控えに使う外付けのHDDやUSBメモリに、BitLockerで鍵を掛けている人もいます。持ち歩く途中でなくしても中身を読まれないので、名簿や書類の控えには理にかなった守り方です。ただ、そのドライブにも、本体とは別のパスワードと回復キーがあります。控えのドライブの回復キーがどこにあるかは、BitLockerを有効にしたときに選んだ控え先で決まり、Microsoftアカウントに保存していれば、本体の鍵と同じ一覧に並びます。
ここで、鍵が一か所に集まる形ができます。本体の回復キーも、控えのドライブの回復キーも、同じMicrosoftアカウントの中にしか無い。その状態でアカウントに入れない日が来ると、本体も控えも同時に開けなくなります。せっかく作った控えも、本体と同じアカウントに入れなければ開けないので、切り離したつもりで切り離せていません。
控えのドライブに鍵を掛けるなら、そのドライブの回復キーも本体と同じく紙に控え、どの機器の鍵かが分かるよう「控え用HDD(青)」のように書き添えます。ドライブのパスワードを忘れたときにも、この回復キーで開けられます。紙には、本体の鍵とドライブの鍵を同じ書式で並べて書き、どれがどれかを一目で見分けられるようにします。紙は本体の鍵の紙と同じ封筒でかまいませんが、ドライブそのものとは別の場所に置きます。
家族で見る写真や動画のように、他人に見られても困り方の小さいものは、控えに鍵を掛けず、置き場所と持ち出しの決まりで守る方法もあります。鍵を掛けるか掛けないかは中身で決め、掛けたものは必ず鍵の紙とひと組で管理する。鍵の数を増やしすぎない考え方は、前に紹介したパスワードを忘れたときの記事で詳しく書いています。
ディスクに焼いて棚に置く控え|役に立つところと限界
役に立つところ
DVD-RやBD-Rのような追記型の盤は、一度記録した部分を物理的に書き換えたり消したりできません。総務省の国民のためのサイバーセキュリティサイトも、DVD-RやBD-Rを1回だけ書き込める媒体として、書き換えのできるRWやREと分けて説明しています。焼いてドライブから取り出し、棚にしまった盤は、どのネットワークからも届かない場所にあります。
この二つの性質から、焼いた時点の中身がそのまま残ります。後でパソコンがウイルスに感染しても、ランサムウェアにファイルを暗号化されても、更新の不具合で起動しなくなっても、棚の盤の中身は変わりません。米国の旧US-CERT(現在のCISA)が2012年にまとめたバックアップの手引きも、書き換えできない盤のデータは、誤って消されたり、後の版の破損やマルウェアを引き継いだりしないと説明しています。
回復キーとの関係でいえば、盤に焼いたファイルは、焼いたパソコンのBitLockerとは関係なく読めます。光ディスクには暗号化の機能が組み込まれていないので、ドライブの付いたパソコンがあれば、別のパソコンでも、買い替えた後の新しいパソコンでも開けます。止まったパソコンの鍵が見つからない日にも、仕事の書類を別のパソコンで開いて作業を続けられます。
限界
同じ性質が、そのまま弱みにもなります。焼いた時点の中身は、良くも悪くもそのまま残ります。焼く前のファイルがすでに感染していたり、暗号化されていたりすれば、その状態のまま盤に残ります。焼く前に、元のファイルが開けること、中身が正しいことを確かめます。また、ファイナライズ(ディスクを閉じる処理)をしていない盤をドライブに入れたままにしておくと、追記によって、見かけ上ファイルを消したり置き換えたりできてしまいます。書き終えたら閉じて、ドライブから出す。ここまでやって初めて、書き換えられない控えになります。
暗号化の機能が無いことは、盤を手にした人がそのまま中身を読めることも意味します。名簿や個人情報の入った書類を焼いた盤は、回復キーの紙と同じく、鍵のかかる場所に置き、持ち出す人と場所を決めます。総務省のサイトも、媒体は鍵のかかる場所に保管するよう書いています。
盤は永久にはもちません。カナダ保存研究所(CCI)の目安では、一般的な銀系の反射層のDVD-Rで10〜20年、BD-Rで5〜10年で、この目安は温度と湿度の影響だけに基づくものです。国立国会図書館の報告書は、JIS Z 6017などが長期保存に適した環境として温度10〜25℃、湿度40〜60%を挙げていると紹介しています。媒体ごとの寿命の比べ方はHDD・SSD・USBメモリ・光ディスクの寿命比較 にまとめました。
読むためのドライブも要ります。記録型の盤そのものは2026年10月時点でも量販店で買え、供給を続けると表明しているメーカーもありますが、パソコン用のドライブはメーカーの撤退や販売終了が続き、選択肢が減って値上がりしています。焼くパソコンとは別に、読めるドライブを手元に残しておきます。盤だけで守ろうとせず、クラウドや外付けのHDDと組み合わせる3-2-1の考え方(コピーを3つ、媒体を2種類、1つは別の場所)は、米国の政府機関も信頼できる指針として紹介しています。組み方の例はクラウドとDVDの併用と3-2-1バックアップの記事 に書きました。
自分のパソコンで焼くときの手順
書類や写真をファイルのまま焼く盤は、データディスクと呼ばれ、パソコンで開くためのものです。テレビのプレーヤーでは再生できません。違いはデータDVDと映像DVDの違い で説明しています。Windowsの標準の機能で焼く場合、空の盤を入れると、書き込み方を選ぶ画面が出ることがあります。控えとして棚に置く盤は、「USBフラッシュドライブと同じように使用する」ではなく「CD/DVDプレーヤーで使用する」の側を選びます。表記はWindowsのバージョンで変わるので、ファイルを集めてから一度に書き込む方式かどうかで見分けます。
焼く前に、焼くフォルダーの中身を開いて確かめ、フォルダー名に日付を入れます。書き込みが終わったら、盤をいったん取り出し、別のパソコンに入れてファイルが開けるかを確かめます。盤面には、盤面用のペンかペン先の柔らかいフェルトペンで、日付と中身の短い名前を書きます。回復キーの数字は盤面にも盤の中にも書きません。
焼いたファイルがその後も変わっていないかは、ハッシュ値という、ファイルの中身から計算した値を焼く前と後で比べると確かめられます。値が一致するのは「焼いたときから中身が変わっていない」ことの確認で、ウイルスが無いことの証明ではありません。計算のしかたと、復元できるかを試す手順は復元テストとハッシュで破損を見つける記事にまとめています。
何年ごとに焼き直すか
盤は焼いたら終わりにせず、何年かごとに新しい盤へ移します。目安を決める材料は三つあります。一つは前に書いた寿命の目安で、温度と湿度の条件がよくても、BD-Rで5〜10年という数字が示されています。二つ目は読むドライブで、今の機器が使えるうちに次の盤へ移しておけば、読めるドライブが手に入らなくなる前に手を打てます。三つ目はパソコンの買い替えで、新しいパソコンへデータを移すついでに盤も焼き直すと、手間が一度で済みます。
焼き直すときは、新しい盤が別のパソコンで最後まで読めることを確かめてから、古い盤を始末します。新しい盤の確認が済むまでは、古い盤を棚に残しておきます。長く保存できるとうたう盤もありますが、メーカーが示す寿命の数字は加速試験に基づく推定です。どの盤を使っても、読めるかを確かめる日は要ります。
数人の事務所や店で決めておくこと
数人の事務所や店では、パソコンの初期設定を誰がしたかで、回復キーの在りかが機器ごとにばらばらになりがちです。代表者が自分のMicrosoftアカウントで設定した機器、従業員が個人のアカウントで設定した機器、業者が組織のアカウントで設定した機器が混ざっていると、止まった日にどこを探せばよいかが1台ずつ違います。最初にやるのは、全部の機器について、鍵がどこにあるかを一枚の表にすることです。
鍵の台帳と、鍵の紙を分ける
表は二つに分けます。一つ目は機器の台帳で、管理番号、使う人、暗号化の有無、キーIDの最初の8桁、回復キーの控えの在りか(どのアカウントか、どの封筒か)、最後に照らし合わせた日を書きます。回復キーの数字そのものは書きません。台帳は、仕事で使う人が見られる場所に置いてかまいません。
二つ目が、回復キーの数字を書いた紙です。こちらは機器ごとに封筒に入れ、金庫か鍵のかかる書庫にしまい、出し入れできる人を2人までに決めます。台帳を見れば「3番のパソコンの鍵は金庫の封筒C」と分かり、封筒を出せる人に頼めば数字が出てくる。在りかの情報と鍵そのものを分けておけば、台帳を見られても鍵は渡りません。名簿や個人情報の入った媒体の保管と持ち出しの決まりは、個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理 の考え方がそのまま使えます。
管理の画面に入れる人を2人にする
Microsoft 365などで組織のアカウントを使っている職場では、回復キーが組織のアカウントの側に自動で控えられている場合があります。KB5042421が案内していた、別の端末から組織の回復キーのページに入る道です。この道が使えるかどうかは、管理の画面に入れる人がその日にいるかで決まります。入れる人を少なくとも2人にし、その2人が、職場のパソコンを使わずにスマホからサインインできるかを、平時に一度試しておきます。
サインインの確認に使うスマホのアプリや電話番号が、退職した人や機種変更前のスマホに結びついたままになっていないかも見ます。止まった日に管理の画面に入れなければ、組織のアカウントに控えがあっても、家庭でアカウントに入れないのと同じ状態になります。
封筒を出し入れできる人が辞めたり異動したりしたら、その日のうちに出し入れできる人を決め直し、台帳に書きます。回復キーの数字そのものは、人が替わっても変わりません。変わるのは「誰に頼めば鍵が出てくるか」なので、その一行を新しくしておけば足ります。辞める人が個人のアカウントで設定したパソコンがあれば、辞める前に組織のアカウントへ移し、鍵の控えを作り直します。
外の業者に任せているなら聞いておくこと
パソコンの管理を外の業者に任せている職場は、次の三つを聞いておきます。回復キーはどこに控えているか。何台かが一度に止まった日に、何台を何時間で戻せる体制か。業者の担当者に連絡がつかない日に、社内で回復キーを出す方法はあるか。三つ目の答えが無いなら、紙の控えを社内にも置かせてもらうよう相談します。
更新を一度に全部の機器へ当てない
CrowdStrikeが再発防止のために取り入れたのは、更新を段階を追って配ることと、配る時期を利用者が選べるようにすることでした。職場の側でも、管理の道具で更新の時期を選べるなら、まず1〜2台に当てて様子を見てから残りに広げる、という順番が取れます。全部の機器が同じ時刻に止まらなければ、止まらなかった機器で鍵を調べ、仕事を続けられます。
ただし、セキュリティの更新を長く止めておくのは別の危うさを生みます。様子を見るのは数日までにして、止まった機器が出なければ早めに全体へ当てます。どの更新をどの順番で当てるかは、使っている製品の案内と、管理を任せている業者に確かめてください。
学校・園・団体で使うパソコンは、誰の鍵かを先に決める
学校や園で、教育委員会や法人から渡されたパソコンは、回復キーを管理者の側が控えているのが通常の形です。Microsoftの日本語のヘルプも、組織が管理するデバイスは、ITの管理部門に回復キーの確認を頼むよう案内しています。先生や職員が自分で鍵を控える必要はありません。控えるべきなのは、回復の画面が出たときに連絡する窓口と、その窓口が休みの日の連絡先です。
学校の行事の動画や授業の記録を先生が校内のパソコンに保存している場合も、控えの置き場所は学校の決まりに従います。個人のUSBメモリや自宅のパソコンに写して持ち帰ることには学校ごとに決まりがあるので、控えが要ると感じたら管理者に相談します。回復の画面が出た日に映像を使う行事が控えているなら、その予定も管理者に伝えておくと、戻す順番を考えてもらえます。
PTAや自治会、小さなNPOのように、団体のお金で買ったパソコンを役員が交代で使う場合は、事情が違います。最初に設定した役員が個人のMicrosoftアカウントでサインインしていれば、回復キーはその人のアカウントに入り、任期が終われば団体の手を離れます。団体のパソコンは団体のアカウントで設定し、引き継ぎのときに、パソコンと一緒に回復キーの紙の在りかも渡します。引き継ぎの書類に「回復キーの封筒は会長宅の書類箱」と一行あるだけで、次の役員は困りません。
私立の園や小さな法人のように、パソコンを自分たちで買って使っている場合は、数人の事務所と同じ考え方で鍵を控えます。園児の写真や動画、保護者の連絡先が入っているパソコンなら、鍵の紙を置く金庫と、出し入れできる人を、園長ともう一人に決めておきます。パソコンの管理を業者に任せているなら、事務所の節で挙げた三つの問いをそのまま聞いておきます。
団体の名簿や会計の記録の控えも、同じ引き継ぎに乗せます。団体のパソコンが感染したときの動き方と、年に1回の控えの作り方は自治会・PTA・NPOのパソコンが感染したらの記事 で書いています。
大事な日に止まっても、代わりがある形にしておく
2024年7月の障害は金曜日の午後に始まりました。止まる日は選べません。式典で流すスライドの動画、説明会で上映する録画、店頭で流す案内の動画、研修会の教材。パソコン1台で流すつもりの映像は、その朝にパソコンが更新の再起動に入ったり、青い画面で止まったり、回復キーを求めてきたりすれば、会の進行ごと止まります。
手を打てることは二つあります。一つは、更新と再起動を前日までに済ませておくことです。大事な日の朝に初めて電源を入れると、溜まっていた更新が始まることがあります。前々日に電源を入れて更新と再起動を終わらせ、前日にもう一度通して確かめておけば、当日の朝の待ち時間を避けられます。
もう一つは、流す映像を、そのパソコンの外にもう一組持っておくことです。別のパソコンとUSBメモリでもかまいませんし、会場にDVDプレーヤーやブルーレイの機器があれば、再生用のディスクにしておく方法もあります。再生用のディスクはプレーヤーに入れれば再生でき、パソコンの起動にも、アカウントにも、回復キーにも左右されません。
再生用のDVDは720×480の画素で記録されるので、パソコンで流すより細部が粗く見えることがあります。文字の小さいスライドなら、フルハイビジョンのまま入るブルーレイのほうが向いています。どちらにしても、当日使う会場のプレーヤーで事前に一度再生し、最初から最後まで止まらずに流れるかを確かめておきます。家庭のプレーヤーでは再生できても、会場の機器では読めないことがあるからです。
映像のファイルそのものも、仕上がった時点の版を別の場所に控えておきます。当日の朝に直した版がパソコンの中にしか無ければ、そのパソコンが止まった時点で、直す前の版しか残りません。直したら、その版も外に控える。これを繰り返しておけば、どの機器が止まっても、最新の一つ手前までは手元に残ります。
会場で流す映像の控えの持ち方
控えは、パソコンを操作する人とは別の人が持ちます。操作する人が控えのUSBメモリや盤も同じ鞄に入れていると、鞄を忘れた日に全部がそろって無くなります。控えの盤には盤面に題名と日付を書くか、題名を入れた画像を盤面に印刷しておき、当日の朝に古い版と取り違えないようにします。
リハーサルでは、パソコンで流す本番の手順と、控えの盤をプレーヤーで流す手順の両方を一度ずつ通します。切り替えにかかる時間と、プレーヤーのリモコンが手元にあるかを確かめておけば、当日パソコンが止まっても、司会が一言つなぐあいだに映像を出せます。
当日の朝に止まったら
本番の直前にパソコンが止まったら、その場で直そうとせず、すぐに控えへ切り替えます。回復キーを探して48桁を入れ、起動を待つあいだに、開始の時刻が来てしまうからです。止まったパソコンは電源を切って脇に置き、会が終わってから落ち着いて戻します。控えに切り替えたことを司会に伝える合図も、リハーサルで決めておくと慌てずに済みます。
青い画面や回復の画面が出た日にすること
二つの青い画面を見分ける
青い画面には二種類あります。一つは、Windowsが動けなくなって止まったことを知らせる画面です。CrowdStrikeの障害では、MicrosoftのKB5042421にあるとおり、停止のコード0x50か0x7Eを示す青い画面が出て、再起動を繰り返しました。この画面には入力する欄が無く、障害の日は、自動で再起動しては同じ画面に戻ることを繰り返しました。
もう一つが、BitLockerの回復の画面です。こちらは回復キーを入れる欄と、回復キーのIDが表示され、入力を待って止まったままになります。Windows 11のバージョン24H2以降では、その回復キーが結びついているMicrosoftアカウントのヒントも表示されることがあります。前者は原因を取り除く作業が要り、後者は鍵を入れれば先へ進めます。どちらの画面が出ているかで、次にすることが変わります。
初期化を選ばず、IDを控える
回復の画面で鍵が見つからないと、画面の選択肢から先へ進めたくなります。ただ、Windowsの回復の機能でパソコンをリセットすると、中のファイルはすべて削除されるとMicrosoftは明記しています。鍵を探し終えるまで、初期化やリセットは選びません。最初に、画面全体をスマホで撮影し、回復キーのIDの最初の8桁を紙に書きます。電源を切って置いておいても、鍵が見つかれば同じところから続けられます。
職場や学校から渡された機器なら、自分で探し回らず、機器の管理番号とIDの8桁を管理者に伝えます。家庭の機器なら、回復キーの封筒を出して紙のIDと画面のIDを見比べ、合えば48桁を入れます。合わなければ、スマホでMicrosoftアカウントの回復キーのページを開いて同じIDを探します。それでも見つからないときの探し方は、前に紹介した暗号化のパスワードを忘れたときの記事に、場所ごとに書いています。
障害に便乗した偽の案内に気をつける
2024年7月の障害の当日、CISAは、この出来事に便乗したフィッシングなどの悪意のある活動を確認したと注意を出し、翌日にも続いていると更新しました。そのうえで、正規の情報源からの指示だけに従うよう呼びかけています。大勢が同じ症状で困っている日は、「復旧ツール」をうたう添付ファイルや、サポートを名乗る電話やメールが紛れ込みやすい日でもあります。
復旧の手順は、使っている製品の会社やMicrosoftの公式のページ、職場なら管理者からの連絡で確かめます。メールに添付されたツールや、知らない番号からの電話で案内された手順には従いません。回復キーを電話やメールで教えてほしいと言われても伝えません。Microsoftは、Microsoftのサポートには失われた回復キーを取り出したり、作り直したりする機能が無いと明記しています。鍵を作れる、外せる、とうたう相手は、その時点で疑ってかまいません。
戻ったら、控えを見直す
鍵を入れて起動できたら、その日のうちに控えを見直します。使った紙のIDが今の鍵のIDと合っているか、アカウントの一覧にも同じ鍵があるかを確かめ、紙の余白に「この日に使った」と日付を書き足します。鍵の在りかを探すのに時間がかかったなら、その理由を台帳か家のメモに残しておきます。次に同じ画面が出たときの手間が、そこで一つ減ります。
止まった日のために、紙を1枚用意しておく
止まった日に一番困るのは、何をどの順番でやるかを、その場で考えなければならないことです。IPAの中小企業向けのガイドラインは、経営者が実行すべき取り組みの一つに、緊急時の対応や復旧のための体制を整えることを挙げています。警察庁の令和7年の統計では、ランサムウェアの被害に遭った組織のうち、サイバー攻撃を想定した業務継続の計画を作っていたのは約18%でした。立派な計画書でなくても、紙1枚で動ける形にしておくだけで、当日の迷いは減ります。
紙に書くのは次のことです。連絡する順番(管理者、業者、代表者)と電話番号。回復キーの封筒の在りかと、出し入れできる人。鍵を調べるのに使う端末(パソコンが止まっても使える別の種類の機器)。データの控えの在りかと、それを読めるドライブ付きのパソコンの場所。パソコンが使えないあいだの仕事の回し方(手書きの伝票、電話での受付、営業時間の案内の貼り紙など)。
紙の右上には書いた日付を入れ、連絡先や置き場所が変わったその日に書き直します。古い紙は、新しい紙と入れ替えたときに捨てます。日付があれば、壁に2枚貼られていても、どちらが今の紙かがすぐ分かります。
この紙には回復キーの数字は書きません。誰でも見られる場所、たとえば事務所の電話の横や、家の冷蔵庫の扉の内側のファイルに置けるようにするためです。鍵の数字は封筒に、手順は誰でも見られる紙に。分けておけば、手順の紙は何枚コピーしても危なくありません。
紙1枚の例
数人の事務所なら、たとえば次のような1枚になります。人の名前ではなく役割の名前で書いておけば、人が替わっても書き直すのは連絡先の欄だけで済みます。
青い画面や回復の画面が出たら、初期化は選ばず、画面を撮影して管理担当へ
連絡の順番は、管理担当、保守の業者、代表者
回復キーは金庫の封筒。出せるのは総務の担当と代表者
鍵を調べる端末は、受付のタブレットか各自のスマホ
書類の控えの盤は書庫の棚、外付けHDDは金庫
控えを読むパソコンは会議室のノート。ドライブは書庫の箱
止まっているあいだは、手書きの伝票と電話の受付に切り替え、出入り口に案内を貼る
キットと封筒は別に置く
災害で建物ごと使えなくなる場面まで考えるなら、控えの盤を読むためのドライブや電源、閲覧ソフト、紙の手順書をひと箱にまとめた復旧キットが役に立ちます。中身と年1回の訓練のしかたは、災害後に読む機材がない状態を防ぐ復旧キットの記事で書きました。そこでもパスワードや鍵はキットに入れず、誰が持つかだけを手順書に書く形にしています。回復キーの封筒も同じ扱いです。
場面で考える|月曜の朝、家族のパソコンが回復の画面で止まった
紙の控えがあった場合
月曜の朝、家族で使っているノートパソコンの電源を入れると、更新のあとの再起動で、回復キーを求める画面が出たとします。パソコンは3年前に息子が自分のMicrosoftアカウントで初期設定したもので、その息子はいま遠方で働いています。母親はまず画面を撮影し、回復キーのIDの最初の8桁を書き留めました。
前の年の大掃除の日に、家族で回復キーを紙に控え、封筒に入れて鍵のかかる引き出しにしまっていました。封筒の表には書いた日付だけがあります。中の紙のIDが画面と合ったので、6桁ずつ指で押さえながら48桁を入れると、パソコンはいつもどおりに起動しました。かかった時間は10分ほどで、息子に電話をかける必要もありませんでした。起動したあと、紙の余白に使った日付を書き足しました。
紙の控えが無かった場合
同じ朝、紙の控えが無かったとします。母親はスマホでMicrosoftアカウントの回復キーのページを開こうとしますが、どのアカウントで設定したのかが分かりません。画面に出ているアカウントのヒントを手がかりに息子に連絡すると、勤務中で、返事が来たのは夜でした。息子が自分のスマホで一覧を開き、IDの合う鍵を読み上げて、パソコンが起動したのは翌日の昼です。
この丸一日のあいだ、パソコンの中にあった孫の運動会の動画と、町内会の名簿の作りかけのファイルには手が届きませんでした。もし息子のアカウントにも鍵が無ければ、残る道はリセットで、そのとき残るのはパソコンの外にあった控えだけです。前の年の秋に、運動会の動画をBD-Rに焼いて棚に置いていたので、動画はリセットになっても残る見込みがありました。名簿の作りかけには控えがありませんでした。
二つの朝の違い
違いを生んだのは、紙1枚と、パソコンの外の控えの有無だけです。どちらも、止まる前の平日に30分あれば作れます。障害の原因が更新でも攻撃でも、家族のパソコンでも職場の15台でも、この二つがあるかどうかで、戻るまでの時間と、戻らなかったときに残るものが変わります。
家庭・事務所・団体ごとの、鍵と控えの組み合わせ
ここまでの話を、読む人の立場ごとに一つの表にまとめます。どの立場でも、回復キーの控えはアカウントと紙の二つ、データの控えは同期のクラウドと、切り離した控えの二つ以上、という骨組みは同じです。違うのは、誰が鍵を持つか、どのくらいの間隔で控えるか、いつ点検するかです。
項目:回復キーの控え
家庭:Microsoftアカウントと紙2枚(自宅と実家)
数人の事務所・店:組織か代表者のアカウントと封筒(金庫と代表者宅)
学校・園・団体:貸与の機器は管理者。団体の機器は団体のアカウントと封筒
項目:普段の控え
家庭:写真と書類をクラウドに同期
数人の事務所・店:クラウドに同期し、外付けHDDを週1回つなぐ
学校・園・団体:管理者が決めた保存先。団体は共有の保存先
項目:切り離した控え
家庭:年1回、写真と動画を盤に焼く
数人の事務所・店:月1回、書類を盤に焼くか、外付けHDDを2台で交互に
学校・園・団体:年度末や役員の交代のときに、記録を盤に焼く
項目:点検の日
家庭:大掃除の日など家族が覚えやすい日
数人の事務所・店:決算の月と、人が入れ替わったとき
学校・園・団体:総会や引き継ぎの日
項目:止まった日の紙
家庭:冷蔵庫の扉の内側のファイル
数人の事務所・店:事務所の電話の横
学校・園・団体:引き継ぎのファイルの1枚目
家庭は、鍵を持つ人と使う人がずれやすいのが特徴です。初期設定をした子どもが遠くに住み、使っているのは親、という形はよくあります。紙の2枚目を実家に置くのは、火事や水害への備えと同時に、使う人の手元に鍵を置くためでもあります。写真と動画は増え方が行事ごとなので、年に1回、1年分をまとめて焼けば、盤の枚数も手間も小さく収まります。
数人の事務所や店は、止まったときの損失が日単位で出ます。書類の切り離した控えを月1回にしているのは、戻れるのがどこまでかを、最悪でも1か月前に収めるためです。外付けのHDDを2台用意して交互に使えば、つないでいる1台に何かあっても、外してあるもう1台が残ります。点検を決算の月に合わせると、帳簿の締めと一緒に控えの確認も済みます。
学校・園・団体は、人が入れ替わることを前提に組み立てます。鍵と記録の控えを、個人ではなく引き継ぎの書類に結びつけておけば、担当が替わっても在りかが途切れません。貸与の機器は管理者の決まりが先にあるので、表の内容は、団体が自分で持つ機器と記録に当てはめてください。
一人で仕事をしている人は、家庭と事務所の両方の列を合わせて使います。仕事のパソコンが止まれば、その日の仕事がまるごと止まるからです。鍵の紙は自宅と実家に置き、仕事の書類は月に1回、盤に焼くか外付けHDDに控えます。ノートパソコンを持ち歩く人は、外出の鞄に鍵の紙や控えの盤を入れないことも決めておきます。
年に一度、鍵と控えを照らし合わせる
鍵の紙も控えの盤も、作った日がいちばん正確で、そこから少しずつ今の状態とずれていきます。パソコンを買い替えた、外付けのドライブを増やした、アカウントのパスワードを変えた、担当が替わった。ずれを放っておくと、止まった日に紙を出しても鍵が合わず、盤を出しても中身が古い、ということになります。年に一度、決まった日に照らし合わせます。ずれは、放っておくほど大きくなります。
日は、家族や職場の人が覚えやすい日にします。家庭なら大掃除の日、事務所なら決算の月、団体なら総会の前の週。障害が起きたのが7月だったことにちなんで、毎年7月の第3金曜日、と決めておくのも一つです。点検にかかるのは、機器が数台なら1時間ほどです。見る項目を図にしました。
機器が数台なら1時間ほどで一巡する。点検した日を紙と台帳に書く
控えの盤を、別のパソコンで開いてみる
点検の中で一番手間がかかり、一番省かれやすいのが、控えの盤を実際に読んでみることです。棚から盤を1枚出し、焼いたパソコンとは別のパソコンに入れて、フォルダーが開けるか、何枚かの写真と書類が開けるかを確かめます。焼いたときにハッシュ値の一覧を作っていれば、その一覧と照らし合わせて、中身が変わっていないことも確かめられます。
読み込みに時間がかかる、途中でエラーが出る、という盤は、まだ読めるうちに別の控えから焼き直します。ほかに控えが無ければ、その盤から読める分を先に写し、新しい盤に焼いてから古い盤を始末します。盤を読むドライブそのものが動くかも、この日に確かめておきます。
鍵の紙と台帳の日付をそろえる
鍵の紙は、アカウントの一覧と見比べて、IDがすべて合うかを確かめます。合わない紙があれば、その機器の鍵を印刷し直し、古い紙を始末します。台帳を使っている職場では、照らし合わせた日を台帳の「最後に照合した日」の欄に書き、封筒を出し入れできる人の名前も今の担当になっているかを見ます。紙と台帳の日付がそろっていれば、次の点検までの1年間、止まった日に迷う場所が一つ減ります。
点検の結果を書き残す
点検が済んだら、日付、点検した人、照らし合わせた機器の数、作り直した紙や盤、次の点検の日を、台帳か家のメモに書きます。書く量は数行で足ります。次の年に点検する人がその数行を読めば、前の年から何が変わったかが分かり、確かめる場所を絞れます。点検の途中で見つかった直しきれない点も、期限と一緒に書いておきます。
動画の記録を、パソコンが止まっても見られるディスクにしておく
当社ディスクメーカーは、大阪・梅田にある、完成した動画のデータからDVDとブルーレイを作る書き込み代行の店です。受け取った動画をプレーヤーで再生できる形に組み立て、書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか店舗でお渡しします。1枚から注文できます。
この記事で書いてきた控えのうち、当社が手伝えるのは動画の記録です。会議や説明会の録画、研修やマニュアルの動画、園や学校の行事、家族の動画。こうした映像を再生用のディスクにしておくと、テレビとプレーヤーがあれば見られるので、パソコンが起動しない日にも、アカウントに入れない日にも、回復キーが見つからない日にも、映像そのものには手が届きます。焼いた盤はドライブにもネットワークにもつながっていないので、後からパソコンに起きたことの影響も受けません。
再生用のディスクは、見るための控えです。DVDは720×480の画素に変換して記録するので、撮影したときの画質のままではありません。ブルーレイなら1920×1080で作れます。どちらの場合も、撮影した元の動画のファイルは、別の控えとして外付けのHDDや盤に残しておくと、後で編集し直したり、別の形で作り直したりするときに困りません。
同じ内容を何枚か作れば、別々の場所に置けます。事務所に1枚、代表者の自宅に1枚、と分けておけば、どちらかの建物で何かあっても映像は残ります。料金は、基本料金(DVD・1枚あたり)が1,500円(税抜)です。ブルーレイで作る場合も、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)は1,500円です。
2枚目からは、追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)の1,000円で増やせます。どの盤が何の記録かを棚の上で見分けやすくしたいときは、盤面レーベル印刷(1枚あたり)の+1,000円で、題名や日付を入れた画像を盤面に印刷できます。デザインと文字入れは当社では行わないので、題名や日付も入れた画像を作って入稿してください。長い会議の録画なら、チャプター分け(1枚あたり)の+1,500円で、議題ごとに頭出しできる位置を入れられます。位置は、注文ページでチャプター分けを選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に時刻で入れます(最大50チャプター)。
盤面に印刷する画像には、記録の名前と日付に加えて、何枚目の控えか(1/2、2/2など)と、置き場所の短い記号を入れておくと、棚の上で迷いません。事務所用と自宅用で同じ盤を作っても、盤面を見れば、どちらの棚に戻す盤かが分かります。
入稿は、動画の共有URLを注文フォームに貼る形です。ギガファイル便の共有URLが使え、スマホからも入稿できます。共有URLは、送る相手と期限を決めて作ります。ギガファイル便を使うなら、保持期限はアップロードの前に選び(後から変えたり延ばしたりはできません)、ダウンロードパスワードを付けておくと、注文フォームにURLを貼ったときにパスワードの入力欄が開き、その場で合っているかが確かめられます。
行事や会議の記録として期日までに手元に置きたい場合は、日程から逆に数えて注文します。通常便は受付から5営業日で発送し、お届けは発送から2〜3日です。15時以降の注文は翌営業日の受付になり、土日祝の注文と入稿は翌営業日からの作業になります。
個人情報が映る動画を預けるときの扱いで気になる点や、書類や写真をファイルのまま焼くデータの控えを頼めるかどうかは、注文の前に相談・問い合わせフォーム で確かめてください。お引き受けできるのは、撮った本人か、権利者の許可がある動画です。注文はDVDの注文ページ から進められます。
今日、パソコンの前でやること
最後に、今日のうちにできることを順に並べます。全部で1時間ほど、機器が多い職場でも半日あれば一巡します。
設定の「プライバシーとセキュリティ」で「デバイスの暗号化」を見て、暗号化されている機器を書き出す
別の端末でMicrosoftアカウントの回復キーの一覧を開き、機器ごとにIDが合う鍵があるかを確かめる
「BitLockerの管理」の「回復キーのバックアップ」から鍵を印刷するか、一覧から書き写し、機器名とIDと日付を添える
紙を封筒に入れ、パソコンと別の鍵のかかる場所と、別の建物の2か所に置く
パソコンの中にしか無い大事なデータを選び、外付けHDDか盤に控えて、ドライブから外して棚に置く
止まった日の連絡先と、鍵とデータの控えの在りかを紙1枚に書き、誰でも見られる場所に貼る
2024年7月の障害で止まったパソコンの多くは、データを失ったわけではありませんでした。戻すための鍵と時間が足りなかったのです。鍵を紙でパソコンの外に出し、データを鍵の要らない形で別に持つ。この二つを済ませておけば、次に青い画面が出た日も、何から手を付ければよいかが紙に書いてあります。
よくある質問
Q. CrowdStrikeの障害はサイバー攻撃だったのか A. 攻撃ではありません。2024年7月19日、セキュリティ企業CrowdStrikeのWindows向け製品に配られた設定ファイルの更新に不具合があり、受け取ったパソコンが起動の途中で止まりました。米国のCISAも当日の注意喚起で、悪意のある活動によるものではないとCrowdStrikeが確認したことを伝えています。Microsoftは影響を受けた機器を約850万台と推定しています。
Q. なぜ障害の復旧でBitLockerの回復キーが必要になったのか A. 復旧のためにセーフモードやシステムの復元など、いつもと違う手順で起動すると、暗号化の鍵が自動で開かないことがあるためです。MicrosoftのKB5042421も、回復キーの入力を求められた場合の手順を案内していました。盗まれた機器を守るときと同じ反応で、暗号化が設計どおりに働いた結果です。
Q. 自分のパソコンが暗号化されているかはどこで分かるか A. Windowsの設定の「プライバシーとセキュリティ」に「デバイスの暗号化」があり、オンなら暗号化されています。スタートで「BitLocker」と入れて「BitLockerの管理」が開ければ、ドライブごとの状態も見られます。Microsoftアカウントで初めてサインインしたときに自動で有効になる機能で、Windows Homeでも働きます。
Q. 回復キーはMicrosoftアカウントにあれば十分か A. 控えとしては有効ですが、それだけだと、別の端末とサインインと通信がそろわない日に取り出せません。一斉に止まった職場では、鍵を見るための端末も止まっていることがあります。アカウントの控えを残したうえで紙にも控え、パソコンと別の鍵のかかる場所に置いておくと、どちらかが使えない日にも鍵を出せます。
Q. 回復キーの紙はどこにしまえばよいか A. パソコンと一緒にしないことが第一です。Microsoftも、印刷物やUSBドライブをコンピューターと一緒に保管しないよう注意しています。家なら鍵のかかる引き出しや書類用の金庫、もう1枚は実家など別の建物に置きます。封筒に入れて封をし、表には書いた日付だけを書きます。家族には中身ではなく在りかを伝えます。
Q. 回復キーをスマホで撮影して残してもよいか A. 勧められません。撮った写真は写真の同期でクラウドに上がることが多く、人に写真を見せるときに目に触れることもあります。紙に写すために撮ったなら、写し終えた時点で写真を消し、削除済みの一覧からも消しておきます。控えは紙で作り、アカウントの一覧と見比べてIDが合うことを確かめます。
Q. 回復キーをDVD-RやUSBメモリに保存するのはどうか A. USBメモリへの保存はMicrosoftが用意している方法の一つで、止まった機器に差して画面の指示に従うか、別の端末でファイルを開いて鍵を読みます。ただ、手にした人は誰でも読めるので、紙と同じく鍵のかかる場所に置きます。盤は読むのに動くパソコンとドライブが要り、鍵が変わると割って捨てる手間もあるので、家庭や数人の事務所なら紙で足ります。
Q. 回復キーが変わるのはどんなときか A. 暗号化をいったん解除して掛け直したとき、Windowsを入れ直したり初期化したりしたとき、新しいパソコンに替えたときは、新しい回復キーに変わることがあります。外付けのドライブに鍵を掛ければ、その分の鍵も増えます。こうした作業をした日に、アカウントの一覧と紙のIDを照らし合わせ、古い紙は始末します。
Q. データの控えを盤に焼くと何がよいのか A. DVD-RやBD-Rは一度記録した部分を書き換えたり消したりできず、焼いてドライブから出した盤はネットワークから届きません。焼いたパソコンのBitLockerとも関係なく、別のパソコンで読めます。ただし感染や暗号化の後のファイルを焼けばそのまま残り、盤の寿命や読むドライブの心配もあるので、クラウドや外付けHDDと組み合わせます。
Q. 回復の画面が出たとき最初にすることは何か A. 初期化やリセットを選ばず、画面全体をスマホで撮影し、回復キーのIDの最初の8桁を書き留めます。職場の機器なら管理者に管理番号とIDを伝え、家庭の機器なら紙の控えのIDと見比べます。合わなければ別の端末でMicrosoftアカウントの回復キーの一覧を開きます。電源を切っておいても、鍵が見つかれば続きから進められます。
Q. 障害のときに届いた復旧ツールのメールは開いてよいか A. 開かないでください。2024年7月の障害では、CISAがこの出来事に便乗したフィッシングなどを確認したと注意を出し、正規の情報源からの指示だけに従うよう呼びかけました。手順は製品の会社やMicrosoftの公式のページ、職場なら管理者の連絡で確かめます。回復キーを電話やメールで尋ねられても伝えません。
Q. 動画の記録をディスクにしておくとどう役立つか A. 再生用のDVDやブルーレイにしておけば、テレビとプレーヤーで見られるので、パソコンが起動しない日やアカウントに入れない日にも映像に手が届きます。当社は完成した動画のデータから再生用のディスクを作る店で、同じ内容の焼き増しを作れば、控えを別々の場所に置けます。頼める内容は注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめてください。