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自治会・PTA・NPOのパソコンが感染したら|小さな団体の名簿と記録を守る年1回の控え

2026 10/11
自治会・PTA・NPOのパソコンが感染したら|小さな団体の名簿と記録を守る年1回の控え

この記事の要点

  • 小さな団体の名簿や記録が失われ、漏れる道は、感染と暗号化、だましによる乗っ取り、役員の交代や紛失・共有の設定の誤りの3つに分けて備える
  • 自治会・PTA・NPOも個人情報保護法の個人情報取扱事業者。名簿が漏れたおそれがあり4つの類型にあたれば、委員会への報告と本人への通知が要る
  • 偽の警告や乗っ取りに気づいたら、閉じる・切り離す、記録する、お金とパスワードを止める、役員へ別の手段で知らせる、相談する、の順で動く
  • 年度替わりに、名簿・会計・議事録・行事の記録をBD-RやDVD-Rに2枚焼き、閉じて取り出し、鍵のかかる別々の場所に置く。パスワードは焼かない
  • 引き継ぎの日に、パスワード・2段階認証の電話番号・共有の権限を新しい役員へ付け替え、前の役員の端末に残った名簿を消してもらう

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年度が替わって、自治会の会計を引き受けたとします。前の係から渡されたのは通帳と印鑑、それにUSBメモリが1本です。会員名簿と会計の表は前の係の家のパソコンにあり、夏祭りの動画は会長のスマホのLINEと、何代か前の役員が作った団体用のGoogleアカウントに分かれて入っています。その家のパソコンに、ある晩、警告音とともに「ウイルスに感染しました」という画面が出たら、だれが、何を、どの順でするのか。PTAでも、NPOでも、サークルでも、同じ場面は起こりえます。

小さな団体の名簿や記録が失われたり漏れたりする道は、ウイルスや不正アクセスによる感染と暗号化、だましによるアカウントの乗っ取り、役員の交代や紛失・共有の設定の誤りの3つです。守り方は、団体の機械とアカウントを役員個人の持ち物から切り離して引き継げる形にすること、気づいたときの連絡の順番と報告の判断を先に決めておくこと、年度替わりに名簿・会計・記録の控えを書き換えできない盤に2枚焼いて別々の場所に置くことの3つです。自治会もPTAもNPOも、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」にあたるので、名簿が漏れたおそれがあれば、個人情報保護委員会への報告と会員への通知が要る場合があります。

事例と数字は、2026年10月時点で公表資料と報道によって確かめられた範囲で書いています。書類の保存年限や引き継ぎ箱の作り方は自治会・町内会の記録の残し方と引き継ぎの記事にまとめたので、ここでは感染と漏えいへの備えの側から、役員会でそのまま決められる手順を書きます。

この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります

  1. 団体のデータは、だれの家のどの機械にあるか
  2. 小さな団体で実際に起きたこと
  3. 失う・漏れる道は3つに分けて考える
  4. 漏れた名簿は、詐欺や強盗の下調べに使われる
  5. 自治会もPTAも、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」
  6. 団体のパソコンは、更新と検査と「役員ごとのユーザー」から
  7. アカウントは、2段階認証の受け取り役まで決めておく
  8. 偽の警告とフィッシングで、役員がだまされないために
残りの15項目を見る
  1. 共有リンクとメールの宛先で、名簿が外に出る
  2. USBメモリと私物の端末は、持ち出す前に決める
  3. 「おかしい」と思ったら、最初の1時間にやること
  4. 報告が要るかどうかは、4つの問いで決める
  5. 会員への知らせ方|事実、項目、お願い、窓口の順に
  6. 年度替わりに、書き換えできない盤で控えを作る
  7. 盤だけで守らない。限界を知って組み合わせる
  8. NPOとサークルは、名簿の持ち方がまた違う
  9. 連絡の順番を、紙1枚の連絡表にしておく
  10. 引き継ぎの日に、鍵とアカウントを渡し直す
  11. 1年の段取り|1月に範囲を決め、3月に焼き、4月に鍵を替える
  12. 自分たちでやる範囲と、外に頼む境目
  13. 行事の動画を見られる盤にするとき、当社にできること
  14. 次の役員会で決める3つ
  15. よくある質問

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団体のデータは、だれの家のどの機械にあるか

会社なら、名簿や帳簿は会社のパソコンとサーバーに置かれ、担当の部署が更新や点検をします。自治会やPTAには、その置き場所がありません。役員は1〜2年で交代し、名簿は会長の家のパソコン、会計の表は会計係のノートパソコン、行事の写真と動画は撮った人のスマホ、という具合に、役を引き受けた人の家の機械に分かれて入っていきます。

分かれていること自体が、守りを難しくします。家族と共用のパソコンなら、家族が入れたソフトや開いたメールの影響を、団体のファイルも一緒に受けます。更新が何年も止まった古い機種を、団体の備品として使い回していることもあります。役員が替わるたびに、前の人の手元に名簿の写しが残り、新しい人の手元にも新しい写しができます。数年たつと、だれのどの機械に何が入っているのか、役員のだれも答えられなくなります。

最初の一歩は、置き場所の一覧を作ることです。次の図は、自治会で起こりがちな散らばり方を、置き場所ごとに書き出した例です。家ごと、機械ごと、アカウントごとに1段ずつ下げて書くと、同じ名簿の写しが何か所にあるかが見えてきます。自分の団体に置き換えて、機械とアカウントを1行ずつ書き出してみてください。

会長の家、会計係の家、団体のGoogleアカウント、自治会館の4か所に、私物のパソコンやスマホ、USBメモリ、ドライブ、古いパソコン、鍵付きの棚があり、それぞれに名簿や会計の表、動画が入っている様子を階層で示した図
同じ名簿の写しが何か所にもある。機械とアカウントを1行ずつ書き出すと見えてくる

書き出すと、守る対象がはっきりします。役員の私物のパソコンとスマホ、USBメモリ、団体用のGoogleアカウントやLINEのグループ、会館に置いた古いパソコン、紙の名簿と盤の控え。どれか1つが感染したり、乗っ取られたり、なくなったりすれば、そこに入っていた名簿や記録が失われるか、外に出るおそれがあります。置き場所を団体の名義に寄せていく考え方は先の記事で書いているので、以下では、それぞれの置き場所にどんな危険があり、何を先に設定し、起きたらどう動くかを順に書きます。

一覧には、持ち主と「最後に開いた日」を書く

置き場所の一覧は、役員会で配る1枚の表にまとめます。欄は、置き場所(だれの家の、どの機械・アカウントか)、持ち主(私物か団体の備品か)、中身(名簿・会計・議事録・写真と動画など)、最後に開いた日、年度末にどうするか(引き継ぐ・消す・盤に焼く)の5つで足ります。パスワードはこの表に書きません。表は名簿と同じくらい大事な資料になるので、置き場所も名簿と同じ扱いにします。

「最後に開いた日」の欄を埋めると、何年も開いていないのに名簿の写しが残っている場所が分かります。3年前の役員の家のパソコン、行事のたびに使い回してきたUSBメモリ、更新が止まったまま会館の棚にあるノートパソコン。こうした場所は、守りの設定が古いまま放っておかれやすく、感染や紛失に気づくのも遅れます。使っていない場所の写しは、持ち主に頼んで消してもらうのが、いちばん手間のかからない守りです。

小さな団体で実際に起きたこと

ランサムウェアや情報漏えいの報道は大きな会社や病院の話が中心で、自分たちの団体には関係がないと感じるかもしれません。大企業の経緯はKADOKAWA・アサヒ・アスクルの事例をまとめた記事で扱っていますが、警察庁が2026年3月に公表した令和7年(2025年)の統計を見ると、ランサムウェアの被害として報告された226件のうち143件が中小企業で、企業ではない「団体等」の区分も19件ありました。数人で回す組織も、攻撃の対象から外れているわけではありません。

ここでは、2025〜2026年に公表や新聞・テレビの報道で確かめられた、小さな組織や団体にかかわる3つの例を取り上げます。だまされて送金した例、データの保管機器が暗号化された例、共有の設定の誤りで資料が見られる状態になった例で、3つとも道が違います。どの例も、当事者を責めるために挙げるのではありません。同じ条件は、どの団体の役員会にもあります。

まちづくり協議会のパソコンが遠隔操作され、約440万円が不正に送金された

2026年6月25日、岩手県遠野市のまちづくり協議会で、職員が業務用のパソコンを使っていたところ、マイクロソフトのウイルス感染の警告を装う画面が表示されました。職員が画面に出た電話番号に電話して指示に従うと、パソコンが遠隔操作される状態になり、のちにネットバンキングの出入金の履歴を確かめて、協議会の口座から約440万円が不正に送金されていたことに気づいたと、岩手日報や地元のテレビ局が報じています。

この手口はサポート詐欺と呼ばれます。警察庁の集計では、パソコンのサポートを名目にした詐欺の被害は2025年に1,048件・14.9億円で、件数は前の年より減った一方、被害額は約1.5倍になりました。情報処理推進機構(IPA)は、警告の画面が出ただけならパソコンはウイルスに感染しておらず、画面を閉じればよいと説明しています。業務用のパソコンへの遠隔操作が団体の口座のお金にまで及んだ点は、どの団体にも当てはまる学びです。遠隔操作されたあとの手順はサポート詐欺の偽警告で遠隔操作されたときの記事で詳しく書いています。

一般社団法人のデータを保管していたNASが暗号化された

一般社団法人日本ご当地キャラクター協会では、2026年6月2日に、データの保管に使っていたNAS(ネットワークにつなぐ保存用の機器)が第三者によってランサムウェアに感染しました。協会は6月29日に公表し、キャラクターの連絡先のデータが外に出た可能性があるとしています。原因や侵入の経路、対象の件数は、公表では示されていません。

事務局を少人数で回す団体では、共有のファイルを置く場所としてNASを使うことがあります。家庭や小さな事務所向けのNASがインターネットから直接届く設定のままだと、NASそのものが暗号化されることは海外でも繰り返し起きています。NASにつないだままの外付けHDDも、同じ道で一緒に暗号化されます。設定の見直し方はNASや外付けHDDごと暗号化されるランサムウェアの記事にまとめました。

PTA総会の資料が、共有の設定の誤りで見られる状態になった

奈良市教育委員会が2025年7月18日に公表した件では、同年6月9日に市立中学校の教職員が、県内の学校が使う公用のクラウドのGoogleドライブにPTA総会の議決資料を置いた際、共有の範囲を誤りました。その結果、奈良県と県内39市町村の教育委員会の職員・教職員・児童生徒が、検索で資料を見られる状態になっていました。資料には生徒211人の氏名と学級、教職員27人の氏名などが含まれ、5人のアクセスが確認されています(持ち出しの形跡は無し)。7月15日に、ほかの市町村の教職員からの通報で分かりました。

見られる範囲は「インターネットの誰でも」ではなく、公用のクラウドを使う県内の教育関係者と児童生徒でした。それでも、PTAの資料が学校の職員や保護者のアカウントを通って行き来する以上、共有の設定を1か所誤れば、思っていない人に見える状態になります。攻撃者がいなくても、名簿は外に出ます。共有リンクの設定で起きた事例と配り方は共有リンクの設定ミスで動画が外に出る記事で扱っています。

失う・漏れる道は3つに分けて考える

3つの事例は、感染と暗号化、だましによる乗っ取りや送金、交代・紛失・設定の誤り、という3つの道に分けられます。道ごとに、きっかけ、起きること、先にやっておく守りが違います。全部を一度に防ごうとすると何から手を付けてよいか分からなくなるので、まずは次の表で、自分の団体がどの道にいちばん近いかを見てください。

感染と暗号化、乗っ取りとだまし、交代と紛失と設定の誤りの3つの道について、きっかけ、起きること、漏れるか、気づく場面、先にやる守りを並べて比べた表
道ごとに先にやる守りが違う。自分の団体に近い道から手を付ける

1つ目の感染と暗号化は、更新の止まったパソコンや、外から届く設定のNAS、メールの添付ファイルなどから入られ、ファイルが開けなくなる道です。データを盗んでから暗号化し、公開すると脅す手口が多く、警察庁の令和7年の統計では、手口が分かった153件のうち136件がこの二重の脅しでした。暗号化で失うだけでなく、盗まれていれば名簿は外に出ています。

2つ目のだましと乗っ取りは、偽の警告画面や偽のログイン画面、知り合いを装ったメッセージで、役員本人に操作させる道です。パソコンが感染していなくても、パスワードや確認のコードを渡せば、団体のアカウントに入られます。IPAが2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の個人編(順位なし)にも、フィッシングによる個人情報等の詐取、インターネット上のサービスへの不正ログイン、サポート詐欺(偽警告)による金銭被害が並んでいます。家庭と小さな職場での読み方は10大脅威2026を家庭と小さな職場で読む記事にまとめました。

3つ目の交代・紛失・設定の誤りは、攻撃がなくても起きる道です。前の役員の家のパソコンに名簿が残ったまま、そのパソコンが手放される。名簿の入ったUSBメモリを行事の帰りになくす。全員に送るメールの宛先をCCに入れてしまう。小さな団体では、この3つ目がいちばん身近かもしれません。役員が毎年替わる団体ほど、引き継ぎのたびに写しが増え、だれが何を持っているかが分からなくなっていきます。

「うちは小さいから狙われない」とは限らない

小さな団体は、攻撃する側から見て価値が無いので狙われない、と考えたくなります。けれども、ここまでの手口の多くは、相手を選んでから攻めるものではありません。フィッシングのメールやSMSは、数を送って引っかかる人を待つ形です。フィッシング対策協議会への報告は2025年だけで245万件を超えました。偽の警告は、ネットの閲覧中に広告などから出てきます。相手が大きな会社か自治会の会計係かは、画面を出す側には関係がありません。

機器を狙う攻撃も同じです。2022年に広がったDeadBoltというランサムウェアは、インターネットから直接届く設定になっていた家庭や小規模事業所向けのNASを次々に暗号化し、オランダ警察は世界で2万台を超えたと説明しています。持ち主がだれかより、外から届く設定かどうかで被害が分かれました。被害に遭うかどうかは、規模より、設定と、だまされる場面があるかどうかで決まると考えて備えます。

漏れた名簿は、詐欺や強盗の下調べに使われる

名簿が外に出ても、氏名と住所くらいなら大したことはない、と考える人もいます。個人情報保護委員会は「STOP!名簿流出」という呼びかけの中で、犯罪者のグループが、高齢者などを狙った強盗や特殊詐欺で、不正に手に入れた名簿を使って狙う相手を絞っていると考えられる、と説明しています。自治会・同窓会向けの手引きの冒頭にも、同じ注意が置かれています。

自治会の名簿には、住所と電話番号に加えて、世帯の人数や生年月日が載っていることがあります。そこから、一人で暮らす高齢の会員が分かってしまいます。災害に備えて作る避難の支援が要る人の名簿には、障害の有無や持病のように、とくに慎重な扱いが要る情報が入ることもあります。PTAの名簿なら、子どもの氏名・学年・学級と保護者の電話番号が並びます。NPOなら、会費や寄付の振込の記録と連絡先が結び付いています。どれも、悪用しようとする側から見れば、下調べの手間を省ける資料です。

警察庁の集計では、2025年の特殊詐欺のうち65歳以上の人の被害は14,273件・841.1億円でした。名簿が漏れたことと詐欺の被害を結び付けて数えた統計はありませんが、会員に高齢の人が多い自治会や老人クラブでは、漏れたあとの電話や訪問に備えて会員に知らせることまでが、漏えいへの対応に入ると考えてください。知らせ方は後の節で書きます。

もう一つの備えは、名簿に載せる項目を減らすことです。手引きは、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消すよう努めること、古い名簿はデータを削除し、紙は回収してシュレッダーにかけることを求めています。連絡に使わない生年月日の列、数年前に退会した人の行、前の年度の名簿のファイル。消せるものを消しておけば、漏れたときに外に出る量も減ります。

自治会もPTAも、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」

個人情報保護法は、2017年5月の全面的な施行で、扱う個人情報が5,000人分以下の事業者を対象から外す決まりを無くしました。いまは人数にかかわらず、名簿などを事業に使っていれば対象です。個人情報保護委員会のQ&A(Q1-54)は、法律でいう「事業」は営利か非営利かを問わないとして、NPO法人、自治会・町内会、同窓会、PTAのほか、サークルやマンション管理組合も個人情報取扱事業者にあたり得ると答えています。

委員会が令和5年12月に出した手引き「自治会・同窓会等向け 会員名簿を作るときの注意事項」も、同じ考え方です。名簿を作る前に利用目的を決めること、集めるときに目的を示すこと、会員に名簿を配るには前もって本人の同意が要ること、そして保管しているあいだの安全管理が、順を追って書かれています。手引きには、団体の運営を担う役員は、形態にもよりますが、法律でいう「従業者」にあたると考えられる、とも書かれています。団体は、役員一人ひとりの名簿の扱いを監督する立場にあるということです。

手引きが挙げる、保管するあいだの守り

手引きは、漏えい・滅失・毀損を防ぐための「安全管理措置」として、個人データを取得・利用・保存するときの基本的なルールを決めること、紙で管理しているなら鍵のかかる引き出しに保管すること、パソコンで管理しているならセキュリティ対策のソフトを入れることを例に挙げています。名簿を配った先の会員に、他人に渡さないよう、盗難や紛失で流出しないよう呼びかけることも求めています。

印刷業者に名簿の印刷を頼む場合のように、名簿の扱いを外に任せるときは、委託先をよく選び、持ち出しの禁止や業務以外での利用の禁止、返却や廃棄を書いた書面を渡すなどの監督が要ります。手引きはさらに、会員から名簿の管理について聞かれたときに答えられるよう、代表者の名前や利用目的、安全管理の内容を本人が知り得る状態にしておくことも求めています。「パソコンにはどんな対策をしていますか」と会員に聞かれたら、答えられるでしょうか。この記事で書く設定と決まりは、その答えを用意する作業でもあります。

手引きの安全管理の例は、紙とパソコンの基本にとどまります。感染、乗っ取り、交代のそれぞれに合わせて、何をどこまで決めるかは団体に任されています。次の節からの設定と決まりを、役員会で団体の「基本的なルール」として文書にしておくと、役員が替わっても同じ守りを続けられます。名簿を入れたUSBメモリやディスクの保管・持ち出し・廃棄の決まりの作り方は、個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理の記事が参考になります。

写真と動画は、名簿とは扱いが分かれる

行事の写真と動画にも、会員や子どもの顔が写ります。手引きのQ&Aは、本人と分かる写真は個人情報にあたるものの、一般には検索できるように整理された「個人データ」ではないと解されるとして、写真を載せた会報を配るのに前もって本人の同意を得なくても、第三者に渡すときの決まりに反するおそれはないと答えています。ただし利用目的の通知や公表は要り、プライバシーや肖像権の問題になる場合もあるので、不特定多数の人に配るときは自主的に同意を得るのが望ましいとしています。

この区別は、漏えいのときにも関係します。委員会への報告の義務がかかるのは「個人データ」の漏えい等です。名簿は個人データの典型ですが、行事の動画だけが外に出た場合に報告の対象になるかは、整理のしかたによって変わる可能性があります。迷ったときは、後で書く個人情報保護法相談ダイヤルで考え方を聞けます。報告の義務があるかどうかにかかわらず、子どもの顔が写った動画が外に出れば、保護者への説明は欠かせません。動画も名簿と同じ場所で、同じ守りの中に置いてください。

団体のパソコンは、更新と検査と「役員ごとのユーザー」から

IPAが2026年3月27日に公開した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、基本の対策を「情報セキュリティ6か条」にまとめています。OSやソフトウェアを常に最新の状態にする、ウイルス対策ソフトを導入する、パスワードを強化する、共有設定を見直す、バックアップを取る、脅威や攻撃の手口を知る、の6つです。以前は5か条で、第4.0版で「バックアップを取ろう!」が加わりました。

団体向けに作られた指針ではありませんが、数人で回す組織の守りとして、そのまま役員会の点検表に使えます。ここからの節は、この6か条を、団体のパソコン、アカウント、だまし、共有、媒体、控えの順に置き換えたものです。まずは名簿と会計の表を開くパソコンから見直します。

更新が止まったパソコンで、名簿を開かない

Windowsなら「設定」の「Windows Update」で、更新が最後にいつ入ったかと、保留中の更新が無いかを見ます。Macなら「システム設定」の「一般」にある「ソフトウェアアップデート」です。表記は版で変わりますが、更新を自動で入れる設定が有効になっていることを確かめ、何か月も前の日付のまま止まっていたら、その理由を探ります。容量が足りない、何年も再起動していない、といった単純な原因のこともあります。

注意が要るのは、寄付された古いパソコンや、何代も前の役員から引き継いだパソコンです。Windows 10はサポートが2025年10月14日に終わりました。個人向けの拡張セキュリティ更新(ESU)に登録していれば2027年10月12日まで更新が届きますが、登録していなければセキュリティの更新は届きません。Webの閲覧の集計(StatCounter)では、2026年9月の日本のデスクトップのWindowsのうち約2割がまだWindows 10でした。IPAは、修正されない脆弱性を悪用した攻撃による情報漏えいの可能性が高まると注意しています。

Windows 10のパソコンを団体で使い続けるなら、少なくともESUに登録して更新が届く状態にし、登録の期限を役員の引き継ぎの資料に書いておきます。登録していない古い機種は、名簿や会計の表を開く機械から外し、行事の写真を見せるだけの用途などに回します。続けて使うか、名簿を開く機械から外すかの判断はWindows 10のまま使い続けるリスクの記事を参考にしてください。

ウイルス対策は入れたうえで、検査の結果も見る

Windowsには標準でMicrosoft Defenderが入っています。「Windows セキュリティ」を開き、「ウイルスと脅威の防止」の項目が緑の印になっているか、最後に検査した日時はいつかを確かめます。年度末の控えを作る前のように節目のときは、「スキャンのオプション」から「フル スキャン」を選んで、パソコン全体を検査します。時間がかかるので、会議の前ではなく、夜のうちに始めておきます。市販の対策ソフトを入れている場合は、その画面で期限と最後の検査日を見ます。

ただし、対策ソフトがあれば防げるとは限りません。警察庁の令和7年の統計では、ランサムウェアの被害に遭った組織で対策ソフトを入れていた例のうち、ソフトが検出しなかったと答えたのは89件中64件でした。ソフトは入れておくもので、ほかの守りの代わりにはなりません。更新、アカウント、控えと組み合わせて、どれか1つが破られても名簿と記録が残る形にしておきます。

家族と共用のパソコンなら、団体用のユーザーを分ける

役員の家のパソコンを家族と共用しているなら、団体の作業をするユーザーを家族のユーザーと分けます。Windowsなら「設定」の「アカウント」から、ほかのユーザーを追加できます(表記は版で変わる)。ファイルは団体用のユーザーの中だけに置き、家族のユーザーからは見えないようにします。ふだんの作業は、ソフトを勝手に入れられない「標準ユーザー」で行い、管理者の権限が要る操作のときだけ管理者で入る形にすると、だまされてソフトを入れさせられる場面で止まりやすくなります。

名簿や会計の表をデスクトップに置いたままにしない、ファイルのパスワードを付箋でモニターに貼らない、という基本も、家庭のパソコンでは崩れがちです。団体用のユーザーにはパスワードかPINを付け、画面ロックまでの時間を短くしておきます。会館に置いたパソコンも同じで、だれでも電源を入れれば名簿が開ける状態は、紙の名簿を机の上に出しっぱなしにしているのと変わりません。

会館の共用パソコンは、使った人と作業を紙に残す

自治会館や集会所に団体のパソコンを置き、何人もの役員が交代で使っている団体もあります。この形では、だれがいつ何をしたかが分かりません。知らないUSBメモリが挿されても、見慣れないソフトが入っても、気づくのが遅れます。パソコンの横に紙の利用簿を置き、日付、名前、作業(名簿の更新、会報の作成など)、挿したUSBメモリの有無を1行ずつ書く決まりにします。

利用簿は、感染に気づいたときの手がかりにもなります。いつから様子がおかしかったのか、その前にだれが何をしたのかが分かれば、相談先への説明も、報告の判断も早くなります。共用のパソコンにも役員ごとのユーザーを作るのが理想ですが、すぐには難しいこともあります。まずは紙の利用簿からです。

あわせて読みたい

自治会・町内会の記録の残し方と引き継ぎ|保存年限・写真と動画・祭りの記録

アカウントは、2段階認証の受け取り役まで決めておく

連絡や資料の置き場に、無料のGoogleアカウントやLINEのグループを使っている団体もあると思います。こうしたアカウントで困るのは、作った人がいなくなったあとです。パスワードは引き継いだのに、2段階認証の確認コードが前の役員のスマホに届くので入れません。逆に、前の役員はいまでも入れます。アカウントの守りは、パスワードの強さと同じくらい、確認のコードがだれに届くかで決まります。

団体のGoogleアカウントは、確認コードの届け先と再設定先を見る

団体用のGoogleアカウントにログインし、Googleアカウントの管理画面の「セキュリティとログイン」を開きます(表記は時期で変わる)。「2段階認証プロセス」がオンになっているか、確認コードを受け取る電話番号や端末はだれのものか、再設定用の電話番号とメールアドレスはだれのものかを、役員会で一覧にします。前の役員のスマホが残っていたら、新しい担当の番号に替えます。同じ画面で、最近のセキュリティのイベントと、ログインしている端末の一覧も見て、心当たりの無い端末があればログアウトさせます。

スマホをなくした、担当が急に役を降りた、という場面に備えて、バックアップコードを用意しておきます。「2段階認証プロセス」の中の「バックアップ コード」で作れるもので、8桁のコードが10個で1組になり、各コードは1回しか使えません。新しい組を作ると古い組は使えなくなります。印刷して封筒に入れ、会長が鍵のかかる場所に保管し、役員が替わるたびに作り直します。パスキー(パスワードの代わりに端末の指紋や顔、PINでログインする仕組み)も、IPAが使えるなら使うよう勧めています。パスキーは本物のサイトの住所と結び付いているので、偽のログイン画面では使われません。

団体用に無料で作ったGoogleアカウントは、学校や企業が管理するアカウントとは違い、個人のアカウントの決まりが当てはまります。個人のアカウントは、2年間使われないと無効とみなされ、Gmailやドライブ、フォトの中身ごと削除の対象になります。削除の前には、そのアカウントと再設定用のアドレスに通知が届きますが、再設定用のアドレスが前の役員のものなら、だれも気づきません。年に1回は団体のアカウントにログインし、引き継ぎのたびに入れることを確かめておきます。

LINEのグループには、乗っ取られた役員から偽の依頼が届く

役員や保護者の連絡にLINEのグループを使っているなら、乗っ取りの型を知っておきます。IPAが2025年8月に紹介したインスタグラムの例では、知人になりすました相手から投票の依頼などを受けて電話番号を教え、届いたSMSの認証コードを伝えてしまい、パスワードや認証の設定を変えられています。IPAの2026年4〜6月の相談には、LINEが乗っ取られて知り合いに金銭を求めるメッセージが送られた例もありました。役員会や保護者のグループなら、乗っ取られた役員の名前で、会員全員に偽の依頼が届きます。

LINEのヘルプは、パスワードの変更([ホーム]>[設定]>[アカウント]>[パスワード])と、「Webログインの2要素認証」をオンにすること、引き継ぎや電話番号の登録・変更以外で認証番号を求められることは無いので人に教えないことを案内しています。役員会では、お金の振り込み、認証のコード、名簿の送付を頼む連絡は、LINEの中だけで済ませず、電話か対面で本人に確かめる、という決まりを作ります。会員にも「団体からLINEでお金やコードを頼むことはありません」と伝えておけば、乗っ取られたときの被害を小さくできます。

1つのアカウントを全員で使い回さない

役員5人で団体のアカウントのパスワードを共有していると、だれがいつ何をしたかが分からず、役を降りた人の分だけ知っている人が増えていきます。NTT西日本グループが2023年に公表した顧客情報の持ち出しの件では、その後のグループ全体の点検で、アカウントを共用していて個人を特定できないシステムが19%あったと報告されています。大きな会社でも、共用のアカウントは後から追えなくなる原因になっています。

Googleドライブのような共有の仕組みでは、団体のアカウントのパスワードを全員に配る代わりに、役員それぞれのアカウントに、必要なフォルダだけを共有します。役を降りた人は共有から外すだけで済み、パスワードを替える回数も減ります。パスワードを知っているのは会長と担当の2人まで、と決めておくと、交代のときの付け替えが楽になります。ほかのサービスと同じパスワードを使い回さないことも、6か条の「パスワードを強化しよう」の一部です。

偽の警告とフィッシングで、役員がだまされないために

役員のだれかがパソコンに詳しいとは限りません。仕事を退いてから自治会の役を引き受けた人、子どもの入学をきっかけにPTAの係になった人が、初めて団体の口座やアカウントを預かることもあります。だましの手口は、そうした人の不安と急ぎの気持ちを狙います。設定で止められない部分を、決まりで止めます。

団体の口座を動かすパソコンを決めておく

遠野市の例のように、遠隔操作をきっかけにネットバンキングで不正に送金される被害は、2026年に入って企業でも目立っています。警察庁は2026年9月の公表で、企業への電話をきっかけに遠隔操作のソフトを入れさせ、ネットバンキングで不正に送金させる手口の被害が急増したと書いています。ふだん使う端末から送金させることで、銀行の不正の見張りを逃れる狙いがあるとみられています。

団体の口座をネットバンキングで動かすなら、そのためのパソコンかスマホを決め、そこではふだんのネットの閲覧やメールの添付を開くことをしません。銀行の画面で、振り込みの上限額、ログインや振り込みのたびの通知の設定があるかを確かめ、通知は会計係と会長の2人に届くようにします。住信SBIネット銀行は2026年5月の注意喚起で、銀行員や正規のサポート窓口が遠隔操作のアプリを入れさせたり、振り込みの操作を頼んだりすることは無いとしています。電話の相手から口座の操作や遠隔操作のアプリを頼まれたら、その時点で切り、自分で調べた銀行の窓口の番号にかけ直して確かめます。

偽の警告が出たときは、表示された番号に電話しないことが一番です。警察庁は画面の閉じ方として、ブラウザを終了する、終了できなければEscキーを長押ししてからブラウザの「×」を押す、Ctrl+Alt+Deleteでタスクマネージャーを開いてブラウザを終了する、という順を案内しています。再起動で閉じられることもあります。この手順を印刷して、団体のパソコンの横に貼っておくと、慌てた場面で役に立ちます。

メールとSMSのリンクから、ログインしない

フィッシング対策協議会に寄せられたフィッシングの報告は、2025年に2,454,297件で過去最多でした。2026年は月に6万〜20万件の範囲で上下しています。宅配の不在通知、電力会社や水道局の料金、税金の未納を装うものが多く、国税庁はSMSやメール、LINEで納付や差し押さえの連絡を送ることは無いとしています。役員に届く偽のメールも、まずはこうした一般の型です。

もう一つ、団体で起こりやすいのが、ファイル共有の通知を装う型です。マイクロソフトは2024年10月、取引先など信頼している相手のアカウントが乗っ取られ、そこからファイル共有の通知が届いて、偽のログイン画面でIDとパスワードと確認の応答まで盗まれる手口を報告しました。団体なら、別の団体の役員や学校の担当者から「資料を共有しました」と届く形になります。受け取るだけなのにパスワードの入力を求められたら閉じ、送ってきた相手に電話など別の手段で確かめます。ログインはメールのリンクからではなく、ブックマークや公式のアプリから行う決まりにしておきます。

役員会で、偽の警告を閉じる練習をしておく

画面の閉じ方は、読んだだけでは身に付きません。IPAは、偽の警告の画面を体験して閉じ方を練習できるサイトを公開しています。パソコンだけで使えるもので、約2分で自動的に終わります。役員会の前後に団体のパソコンで一度試しておくと、本物そっくりの全画面の表示や警告音に出会っても、閉じればよいものだと落ち着けます。

練習のときには、その場にいる役員が、だれに、どの順で知らせるのかも確かめておきます。電話をかけてしまったら叱られる、と思えば、なかなか言い出せません。電話してしまった、ソフトを入れてしまった、と言いやすい空気を役員会で作っておくことも、早く気づくための守りです。遠野市の例でも、送金に気づいたのは、のちに出入金の履歴を確かめたときだったと報じられています。

共有リンクとメールの宛先で、名簿が外に出る

奈良市の例のように、攻撃が無くても名簿は外に出ます。Googleドライブでファイルを共有するとき、共有の画面の下のほうにある「一般的なアクセス」が「制限付き」なら、追加した人しか開けません。ここが「リンクを知っている全員」になっていると、リンクが転送されたり、どこかに貼られたりした時点で、だれでも開ける状態になります。保護者のLINEのグループに貼ったリンクは、別のグループへ簡単に転送されます。

2023年12月には、ある企業がGoogleドライブのファイルを「このリンクを知っているインターネット上の全員が閲覧できます」の設定にしていたため、93万5,779人分の個人情報を含むファイルが閲覧できる状態になっていたと報じられました。規模は違っても、設定は団体のアカウントと同じ画面の、同じ1か所です。共有した資料の見え方は、ログインしていないブラウザ(シークレットウィンドウなど)でリンクを開いてみると確かめられます。開けてしまったら、設定が「リンクを知っている全員」になっています。

名簿は、リンクで配る資料に入れないのが基本です。総会の資料は名簿を外して作り、名簿が要る役員には、その人のアカウントを指定して共有します。年度末には、団体のドライブで共有しているファイルを一覧にして、役を降りた人と、もう要らないリンクを外します。学校やPTAで動画を配るときの共有の設定は、先に挙げた共有リンクの記事で場面ごとに書いています。

全員あてのメールは、BCCに入れたかを送る前に2人で見る

会員全員にメールで連絡するとき、宛先のアドレスを「BCC」ではなく「CC」や「宛先」に入れて送ると、受け取った全員に、ほかの会員のアドレスが見えてしまいます。個人情報保護委員会の案内でも、1,000人を超える会員へのメールで、BCCに入れるべきアドレスをCCに入れて一括で送った例が、報告が要る事態の例として挙がっています。東京商工リサーチが2026年1月に公表した集計でも、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失のうち、誤表示・誤送信は37件で約2割を占めました。

PTAや自治会の連絡は、会員が数十人から数百人のことが多く、1,000人を超えないなら、人数の類型では報告の義務にあたらない場合もあります。それでも、ほかの保護者のアドレスが全員に見えたことには変わりません。送る前に、宛先の欄が空で、アドレスがBCCの欄だけに入っていることを、送る人のほかにもう1人の役員が見ます。まず自分あてに1通送って、見え方を確かめます。この二つを決まりにしておくと、取り違えはかなり防げます。メールに名簿のファイルそのものを添付して送ることは、宛先を1つ誤れば外に出るので、やめておきます。

USBメモリと私物の端末は、持ち出す前に決める

2022年6月、兵庫県尼崎市の給付金の業務を請け負った会社の、再々委託先の従業員が、全市民46万517人分の住民基本台帳の情報などが入ったUSBメモリを、かばんごと一時なくしました。USBメモリは見つかり、市の調査委員会はフォレンジック調査の結果、個人情報の漏えいは確認されなかったとしています。それでも報告書は、市の承諾の無い再委託と再々委託、鍵付きの金属ケースで運ぶという決まりを守らなかったこと、作業後にデータを消していなかったこと、市の側の確認が足りなかったことを並べて指摘しました。

自治会やPTAの名簿でも、同じことが起こりえます。会計係が自宅で作業するために名簿をUSBメモリに入れ、総会の帰りにかばんごとなくす。行事の写真を集めるために回したUSBメモリに、前の年度の名簿が入ったままだった。どちらも、持ち出すことを決めた人も、消すことを決めた人もいない状態で起きます。

  • 名簿の入ったUSBメモリを持ち歩かない。どうしても運ぶなら、パスワードで中身を守れる種類を団体の備品として使う
  • 団体のUSBメモリは本数を決め、台帳に持ち主と中身を書く。私物のUSBメモリに名簿を入れない
  • 作業が終わったら、USBメモリの中の名簿を消し、台帳に消した日を書く
  • 拾ったUSBメモリや、出どころの分からないUSBメモリを団体のパソコンに挿さない

役員の私物のスマホにも、名簿の写しやLINEのグループが入っています。画面ロックを設定し、なくしたときに遠くからロックや消去ができる機能(iPhoneの「探す」、Androidの「デバイスを探す」など)がオンになっているかを、役員会で一度確かめておきます。なくしたら、まずその機能でロックし、団体のアカウントのパスワードを別の端末から替えます。

USBメモリは、紛失だけでなく、ウイルスを運ぶ道にもなります。マイクロソフトは、USBメモリの中のフォルダに見せかけたショートカットを開くと感染するウイルスについて、自動実行を無効にすること、USBメモリなどもウイルス検査の対象にすることを勧めています。スマホも同じで、紙の名簿をスマホのカメラで撮ると、写真の自動のバックアップを有効にしていれば、クラウドにも写しが増えます。尼崎市の件の経緯と、受け渡しの媒体の選び方はUSBメモリの感染と紛失の事例の記事にまとめました。

「おかしい」と思ったら、最初の1時間にやること

偽の警告の画面が出た、ファイルの名前の後ろに見慣れない文字が付いて開けない、身に覚えの無いログインの通知が届いた、会員から「会長から変なLINEが来た」と連絡があった。どれも、最初の1時間の動き方で、その後の被害の大きさが変わります。このとき役員が一人で抱え込むと、慌てて電話をかけ直したり、パソコンを初期化してしまったりして、かえって状況が分からなくなります。

次の図は、最初の1時間の動きを6つに分けたものです。順番は目安で、遠隔操作が続いているならネットワークを切ることが何より先、送金されていたら銀行への連絡が何より先です。この図を印刷して、団体のパソコンの横と、役員の引き継ぎの資料に入れておきます。

閉じる・切る、記録する、お金と鍵を止める、役員に知らせる、相談する、報告を決める、の6つの動きが左から右へ矢印でつながっている図
順番は目安。遠隔操作中なら切ることが先、送金されたら銀行への連絡が先

偽の警告か、遠隔操作か、暗号化か、乗っ取りかで最初の手が違う

偽の警告の画面が出ただけで、電話もせず、何も入れていないなら、IPAの説明どおり、パソコンは感染していません。ブラウザを閉じれば終わりです。表示された番号に電話をして、指示どおりにソフトを入れたり、表示された番号を伝えたりしたなら、遠隔操作されている前提で動きます。IPAは、自分が操作していないのに画面が動くならネットワークを切って遠隔操作を止めること、入れた遠隔操作のソフトが一覧にあればアンインストールすること、そのうえでWindowsの「システムの復元」か、できなければ初期化を勧めています。初期化すると中のデータは消えます。

IPAは、企業のパソコンなら、情報漏えいの調査が終わるまで端末を保存し、調査のあとで復元や初期化をするよう案内しています。名簿が入った団体のパソコンも、名簿が見られたかどうかを調べる可能性があるので、すぐに初期化せず、ネットワークから切った状態で相談先の判断を待ちます。ファイルが開けなくなり、拡張子が変わっているなら、ランサムウェアの疑いがあります。LANケーブルを抜き、Wi-Fiを切り、つないでいる外付けHDDやUSBメモリを抜いて、無事な控えをつながないようにします。

アカウントの乗っ取りが疑われるときは、乗っ取られた端末とは別の端末から、パスワードを変えます。Googleならセキュリティのイベントとログイン中の端末を見て、覚えの無いものを外し、2段階認証と再設定先を確かめます。LINEならパスワードを変え、身に覚えの無いメッセージの送信を取り消します。そのうえで、会員には乗っ取られたアカウント以外の手段で、偽の依頼に応じないよう知らせます。

記録に残すこと。いつ、何が出て、何をしたか

慌てているときほど、記録を後回しにしがちです。ところが、警察に相談するときも、個人情報保護委員会に報告するときも、会員に説明するときも、最初に聞かれるのは「いつ、何が起きて、何をしたか」です。時刻と出来事を紙に書いていく係を役員の一人が受け持ち、ほかの人が対応に動く形にすると、抜けが減ります。

残すものは、警告の画面や身代金を求める画面の写真(スマホで撮る)、表示された電話番号、電話で言われたことと伝えたこと、入れたソフトの名前、送金や支払いの日時と金額、カードの利用の履歴、気づいた時刻と最初に見た人の名前です。警察庁は、サポート詐欺の相談のときに、警告画面やインストールしたソフトの情報、カードの利用履歴、買わされた電子マネーのカードを持って最寄りの警察署に行くよう案内しています。パソコンに名簿が入っていたなら、何の名簿が、何人分、どのフォルダに入っていたかも、報告に要るので書き出します。

相談先は、団体の機械と個人の端末で分かれる

IPAの相談窓口は、2025年4月から、個人からの相談を受ける「情報セキュリティ安心相談窓口」と、企業や組織からの相談を受ける「サイバーセキュリティ相談窓口」に分かれました。団体のパソコンやアカウントの被害なら組織向けの窓口(メールで受け付け)、役員の私物のスマホやパソコンだけの話なら個人向けの窓口(電話・メール)が目安で、IPAは迷ったら組織向けの窓口に連絡するよう案内しています。

お金がからむときは、窓口の順番が変わります。送金させられたなら、振込先の銀行に至急連絡し、自分の口座の銀行と警察にも連絡します。カードで払ったならカード会社に、電子マネーなら発行会社に連絡して、支払いの停止を相談します。被害の届け出や相談は、各都道府県の警察のサイバー犯罪の相談窓口か、最寄りの警察署です。だまされて結んだサポートの契約を取り消したいときは、消費生活センター(局番なしの188)に相談できます。

個人情報の扱いについての一般的な質問は、個人情報保護委員会の個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849、9時30分〜17時30分。土日祝日と年末年始を除く)で聞けます。このダイヤルは法律やガイドラインに沿って助言する窓口で、違法かどうかの判断まではしません。報告が要るかどうかで迷ったときに、事態のあらましを話して考え方を聞く、という使い方が向いています。電話をかける前に、先に書いた記録のメモを手元に置いておくと、話が早く進みます。

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報告が要るかどうかは、4つの問いで決める

名簿が入った機械が感染した、名簿が見られたかもしれない、という場面で、役員会がいちばん迷うのが、どこかに報告しなければならないのかどうかです。個人情報保護法は、個人データの漏えい・滅失・毀損(以下、漏えい等)が起きたか、そのおそれがあり、次の4つのどれかにあたるときは、個人情報保護委員会への報告と、本人への通知を求めています。自治会やPTAも個人情報取扱事業者なので、この決まりは同じようにかかります。

4つは、要配慮個人情報(病歴や障害など、とくに慎重な扱いが要る情報)が含まれるとき、不正に使われると財産の被害が生じるおそれがあるとき(クレジットカードの番号や、送金・決済ができるサービスのIDとパスワードの組み合わせなど)、不正の目的で行われたおそれのある行為によるとき(外からの不正アクセス、ランサムウェア、盗難、持ち出しなど。行為者には第三者も含む)、本人の数が1,000人を超えるときです。どれも「おそれ」の段階で対象になります。順に問うと、次の図のようになります。

個人データの漏えい等やそのおそれがあるときに、要配慮個人情報があるか、カード番号や決済のIDとパスワードがあるか、ウイルスや不正アクセス・盗難のおそれか、本人が1,000人を超えるかを順に問い、どれかにあたれば報告と本人への通知が要ることを示す図
名簿の漏えい等やそのおそれがあるときの目安。どれかにあたれば原則として報告と通知が要る

団体でよく起きる場面に当てはめてみます。名簿が入ったパソコンがウイルスに感染した、遠隔操作された、ランサムウェアで暗号化された、という場面は、3つ目の「不正の目的」の類型にあたり得るので、人数が少なくても報告の対象になり得ます。避難の支援が要る人の名簿のように障害や持病の情報が入っていれば、1つ目にあたります。一方で、配る前の紙の名簿を誤って1人に渡したが、すぐに回収できた、というような場面は、4つの類型のどれにもあたらないことがあります。判断に迷うときは、相談ダイヤルで考え方を聞くか、報告する側に寄せて考えるのが安全です。

速報は3〜5日、確報は30日、不正の目的なら60日

報告は2回に分かれます。知った時点から速やかに出す速報は、おおむね3〜5日以内が目安です。全体を調べた確報は30日以内で、不正の目的によるおそれがある場合は60日以内です。速報の段階で全部が分かっている必要は無く、その時点で分かっていることを出し、確報で埋めます。報告は委員会のウェブサイトの入力フォームから行います。委員会は、報告者の「氏名」の欄には担当者個人ではなく事業者などの名称を書くよう求めているので、団体なら団体の名前を書きます。

ランサムウェアの場面では、暗号化と持ち出しを分けて考えます。委員会のガイドラインは、ランサムウェアなどで個人データが暗号化されて元に戻せなくなった場合を「毀損」の例に挙げる一方、同じ内容のデータが別に保管されていれば毀損にはあたらないと整理しています。ただし、暗号化の前にデータが盗まれていれば「漏えい」にあたります。同じ内容の控えがあって毀損にはあたらなくても、報告が要らなくなるとは限らないということです。控えの役割は後の節でもう一度書きます。報告の初動と期限の考え方はディスクやUSBを紛失したときの報告義務の記事でも整理しています。

学校や市町村から預かった名簿が入っていたら

PTAのパソコンに、学校から受け取った学級ごとの名簿が入っていた。自治会のパソコンに、市町村から提供された避難行動要支援者の名簿が入っていた。こうした場合は、委員会への報告と会員への通知に加えて、名簿をくれた学校や市町村にもすぐ知らせます。委員会の手引きは、行政機関などから個人情報の提供を受けたときに、利用の制限や管理のために必要な措置を求められていれば、それに適正に対応する必要があると書いています。提供を受けたときの約束ごとを書いた文書があれば、連絡先と一緒に確かめます。

作り手が団体の外にいる名簿ほど、だれがだれに知らせるのかが曖昧になります。誰の名簿が、どこから来て、どの機械に入っているかを、先の置き場所の一覧に「出どころ」の欄として足しておくと、起きたときに連絡の相手がすぐ分かります。学校や市町村の担当者が年度で替わることもあるので、連絡先は役員の引き継ぎのたびに確かめます。

報告しないと決めたときも、理由を書いて残す

4つの問いのどれにもあたらず、報告しないと決めることもあります。そのときも、何を確かめて、なぜ報告の対象にあたらないと判断したのかを、日付と判断した役員の名前を付けて記録に残します。あとで名簿が外に出ていたと分かったり、会員から問い合わせがあったりしたときに、当時の判断の筋道を示せるようにするためです。

委員会の手引きは、法律に違反する、または違反するおそれがある場合に、委員会が報告や資料の提出を求めたり立入検査をしたりして、指導・助言や勧告・命令ができ、命令に従わない場合などには罰則もあり得ると書いています。小さな団体でも、記録があれば、聞かれたときに落ち着いて答えられます。判断の記録は、感染のときのメモと一緒に、引き継ぎの資料に綴じておきます。

会員への知らせ方|事実、項目、お願い、窓口の順に

報告の義務がかかる事態なら、本人への通知も義務です。個人情報保護委員会は、通知は事態の状況に応じて速やかに行い、漏えい等の概要、対象の個人データの項目、原因などを、本人に分かりやすい方法で伝えるとしています。方法の例は文書の郵送や電子メールで、連絡先が分からないなど通知が難しい場合は、ホームページなどでの公表や問い合わせ窓口の設置で代えられます。義務がかからない場面でも、会員の名簿が外に出たおそれがあれば、知らせるのが団体としての筋です。

小さな団体で悩むのは、何を、いつ、どの手段で知らせるかです。調べ終わってから知らせようとすると、うわさのほうが先に回ります。逆に、分からないことまで推し量って書けば、あとで訂正に追われます。分かっていることと、まだ分からないことを分けて書き、続報を出すと約束する形にすれば、最初の知らせは数日のうちに出せます。

知らせる文に入れる6つのこと

会員への知らせは、次の6つの順で書くと、読む側が自分に関係があるかをすぐ判断できます。委員会が通知の内容として挙げる概要・項目・原因に、団体がしたことと会員へのお願い、問い合わせ先を足したものです。回覧板でもメールでも、この順は変えません。

  1. 何が起きたか。いつ、団体のどの機械やアカウントで、何が起きたか(「団体の事務に使っているパソコンが」など。だれの家のパソコンかや役員の名前は書かない)
  2. 対象の情報。名簿のどの項目か(氏名・住所・電話番号・メールアドレス・子どもの学年など)と、おおよその人数
  3. 分かっていることと、まだ分からないこと。外に出たことが確かめられたのか、そのおそれの段階か
  4. 団体がしたこと。機械を切り離した、パスワードを替えた、警察やIPAに相談した、委員会に報告した、など
  5. 会員へのお願い。不審な電話・訪問・メールへの注意、団体を名乗る依頼への確かめ方
  6. 問い合わせ先と、続報の予定

文の例を載せます。(団体名)や日付、項目は、実際の内容に合わせて書き換えてください。外に出たことが確かめられている場合は、例の3文目の「そのおそれ」の書き方を「外部に送られたことが分かりました」に改め、分かっている範囲の人数と項目を書きます。お詫びの言葉は短くし、事実とお願いを先に読める位置に置きます。

会員の皆さまへ。(団体名)の事務に使っているパソコンが、(月日)にウイルスに感染したことが分かりました。このパソコンには、会員名簿(氏名・住所・電話番号、約○○世帯分)が保存されていました。現時点で名簿が外部に送られたことは確認されていませんが、そのおそれを否定できないため、お知らせします。

感染に気づいた後、パソコンをネットワークから切り離し、警察と専門の相談窓口に相談しています。個人情報保護委員会にも報告しました。会員の皆さまには、(団体名)を名乗る不審な電話や訪問、メールにご注意ください。(団体名)が電話やLINEで、お金の振り込みや暗証番号、認証のコードをお尋ねすることはありません。分かったことは、次の回覧(○月○日ごろ)でお知らせします。お問い合わせは(窓口)まで。

最後の問い合わせ先は、役員の個人の電話番号を書くと、その役員に問い合わせが集中し、役を降りたあとも電話が来ます。団体用のメールアドレスか、会長と副会長の2人の連絡先を書き、受けた問い合わせは記録して役員会で共有します。「自分の情報は対象か」「名簿から消してほしい」といった問い合わせには、置き場所の一覧と名簿の控えを見れば答えられるようにしておきます。

手段は、名簿が漏れた経路を避けて選ぶ

知らせる手段は、ふだんの連絡の道を使うのが基本ですが、その道そのものが乗っ取られたり、漏れた経路だったりする場合は避けます。LINEのアカウントが乗っ取られたなら、LINEのグループに書いても、会員には本物か偽物か区別がつきません。回覧板、掲示板、総会や行事の場での説明、学校を通した文書の配布など、別の道で知らせます。メールの宛先の取り違えなら、お詫びのメールは必ずBCCで、送る前に2人で見ます。

高齢の会員には、回覧板だけでは伝わらないことがあります。一人で暮らす会員や、避難の支援の名簿に載っている会員には、班長や民生委員と相談して、電話か訪問で直接伝える方法を考えます。流出のあとに来る電話や訪問は、そうした会員を狙ってくる可能性があるからです。家族に一言伝えてもらうだけでも、だまされる前に気づける場面が増えます。

PTAなら、保護者への知らせを学校の配布の仕組みで出すかどうかを、学校と相談します。子どもの顔が写った行事の動画が外に出た場合は、写っている子どもの保護者に、どの動画のどの場面が対象かを個別に伝え、取り下げの依頼をどこにどう出したかも書きます。動画の配り方を見直すときは、後で書く盤で渡す方法も選択肢になります。

二度目の知らせで、原因と再発の防ぎ方を伝える

最初の知らせから2〜4週間ほどたち、調べが進んだら、二度目の知らせを出します。外に出たことが確かめられたのか、出ていないと判断したのか。原因はどこにあったのか。団体として何を変えたのか。ここで書く「変えたこと」が、この記事の前半の設定や決まりにあたります。パソコンの更新とウイルス対策を確かめた、アカウントの2段階認証を付け替えた、名簿を持ち出す決まりを作った、年度末に控えを作ることにした、などです。

知らせを出した後に、会員から「なぜ私の情報がまだ役員の家のパソコンにあったのか」と問われることがあります。答えられるようにしておくのは、置き場所の一覧と、消した記録です。だれの手元に何があり、いつ消したかが書いてあれば、説明は短くて済みます。逆に一覧が無いと、調べるだけで何週間もかかります。起きる前に一覧を作っておく理由は、ここにもあります。

年度替わりに、書き換えできない盤で控えを作る

ここまでは、失わない、漏らさないための守りと、起きたあとの動きでした。最後の守りが、控えです。警察庁の令和7年の統計では、ランサムウェアの被害に遭って回答した組織のうち、バックアップを取っていたのは116件中105件でしたが、被害の直前の状態まで戻せたのは99件中20件にとどまりました。戻せなかった理由の最多は、バックアップも暗号化されたことです。つないだままの控えには、本体と同じ道で攻撃が届きます。

IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」は、バックアップの対策例として、バックアップに使う装置や媒体はバックアップのときだけパソコンにつなぐこと、安全な場所に保管すること、戻せるかを定期的に確かめることを挙げています。小さな団体でこれを続けるなら、年度替わりという、役員が替わり内容が固まる時期に合わせて、年に1回、書き換えできない盤に焼くのが回しやすい形です。総会で決算と事業報告が承認された時点の名簿・会計・記録を、BD-RかDVD-Rに2枚焼いて閉じ、ドライブから出して別々の鍵のかかる場所に置く。これが、この記事でいう「年1回の控え」です。

BD-RやDVD-Rのような追記型の盤は、一度記録した部分を物理的に書き換えたり消したりできません。焼き終えてドライブから出した盤は、どのネットワークからも届かないので、あとで団体のパソコンやアカウントが感染しても乗っ取られても、盤の中身は焼いたときのまま残ります。交代で前の人の手元のファイルが消えても、総会の時点の名簿と会計は盤に残っています。

同じ内容の控えがあれば、暗号化されても「毀損」にはあたらない

報告の節で書いたとおり、委員会のガイドラインは、同じ内容のデータが別に保管されていれば、ランサムウェアで暗号化されても「毀損」にはあたらないと整理しています。年度末の控えがあれば、少なくとも控えた時点の名簿は失わずに済み、次の総会の案内も、会費の集金も、控えの名簿から続けられます。

ただし、控えが助けるのは、失った分を取り戻すところまでです。暗号化の前に名簿が盗まれていれば、それは漏えいで、控えがあっても報告と通知は要ります。武蔵野大学は2026年6月の攻撃でバックアップから戻して運営に支障は無いとしましたが、その後、共有フォルダのファイルの一部が外に出ていたと報じられました。控えは、漏えいの守りの代わりにはなりません。前半の守りと、この控えの両方がそろって、ようやく「失わない・漏らさない」状態に近づきます。

焼くもの、焼かないもの

焼くのは、内容がもう変わらず、失うと作り直せないものです。年度末時点の会員名簿(連絡に要る項目だけにしたもの)、規約、総会の資料と議事録、決算書と会計の帳簿の写し、補助金や助成金の申請と報告の控え、行事の写真と動画から選んだもの。書類はPDFにしておくと、何年か後に開くときも困りません。名簿は表計算のファイルのまま焼いて構いませんが、後で書くようにパスワードで守ってから焼きます。

焼かないものもあります。パスワード、2段階認証のバックアップコード、口座の暗証番号は、盤に焼きません。追記型の盤は中身を消せないので、焼いたパスワードは盤がある限り読めるままになり、その盤を割るまで残ります。引き継ぎのたびに替える前提のものは、紙に書いて封筒に入れ、会長が鍵のかかる場所に保管し、交代のときに作り直します。役を降りた人の古い名簿、要らなくなった前の年度の名簿のファイルも、焼くのではなく消します。

量の目安も見ておきます。名簿や書類のPDFは、写真を多く貼った資料でなければ、1年分でもDVD-Rの1層(4.7GB)に余裕を持って収まります。動画は撮り方しだいで大きく、iPhoneで1080p・30fpsを「高効率」でHDRなしにして撮ると1分あたり約60MBなので、1時間の行事で約3.6GBになります。動画を入れるならBD-R(1層25GB)にするか、書類の盤と動画の盤を分けます。表記のGBは10億バイトの単位なので、Windowsの画面では4.7GBの盤が約4.38GB、25GBの盤が約23.3GBと少なく表示されます。

名簿の盤と記録の盤を分ける

名簿と、議事録や行事の記録を同じ盤に入れると、記録を見たいだけの人にも名簿の入った盤を渡すことになります。次の役員が去年の夏祭りの段取りを確かめたい、会員から総会の議事録を見たいと言われた、という場面はよくあります。名簿の盤(会員名簿と会計の帳簿)と、記録の盤(規約・議事録・行事の写真と動画)に分けておけば、記録の盤は貸し出しても、名簿の盤は鍵のかかる場所から出さずに済みます。

名簿の盤に入れる表計算のファイルは、焼く前にファイルそのものにパスワードを付けて暗号化しておきます。Excelなら「ファイル」→「情報」→「ブックの保護」→「パスワードを使用して暗号化」です(表記は版で変わる)。盤には暗号化の機能が無いので、盤をなくしたり盗まれたりしたときに中身を読まれないようにするには、ファイルの側で守るしかありません。そのパスワードは盤とは別の紙に書き、バックアップコードと同じ封筒に入れます。パスワードを忘れると開けなくなるので、引き継ぎの日に新旧の役員がその場で開けることを確かめます。

焼く手順は、確かめる、閉じる、取り出す

ファイルのまま焼くデータの盤は、団体か役員のパソコンと、書き込みのできるドライブで作ります。ドライブはメーカーの撤退や販売終了の発表が続いて選べる数が減り、値上がりもしていますが、記録型の盤は今も手に入り、供給を続けると発表しているメーカーもあります(2026年10月時点)。手順は次のとおりです。

  1. 焼くファイルを、パソコンの中の作業用のフォルダに集める(名簿の盤と記録の盤でフォルダを分ける)
  2. パソコンの更新とウイルス対策の状態を確かめ、Microsoft Defenderなどでフル スキャンをする
  3. 集めたファイルを開いて確かめる。書類は何本か開き、写真は一覧で見て、動画は頭と途中と最後を再生する。ファイル名の後ろに見慣れない文字が付いていないかも見る
  4. 名簿のファイルにパスワードを付け、別の紙に控える
  5. ファイルのハッシュ値(中身から計算する値)の一覧を作り、一覧のテキストもフォルダに入れる。一覧の写しは別の場所にも置く
  6. Windowsの標準の書き込みで使い方を聞かれたら「CD/DVD プレーヤーで使用する」を選ぶ(表記は版で変わる)。「USB フラッシュ ドライブと同じように使用する」は、後から追加や削除ができる書き方になる
  7. 書き込みが終わったら、閉じた(ファイナライズした)状態にして、ドライブから取り出す
  8. 別のパソコンで盤を読み、ファイルが開けることと、ハッシュ値が一覧と一致することを確かめる
  9. 同じ手順でもう1枚焼き、盤面用のペンで年度と「控えA」「控えB」のように書く

手順の2と3が、感染への備えとしての要です。焼く前のファイルがすでに暗号化されていたり、ウイルスが入っていたりすれば、その状態がそのまま盤に残り、後から直せません。ハッシュ値は、中身が1文字でも変われば変わる値で、一致すれば焼いたときから変わっていないことが分かります。ただしウイルスが無いことの証明にはなりません。Windowsでの計算のしかたと、年に1回の照合の段取りは復元テストとハッシュの記事にまとめました。動画の盤をプレーヤーで見られる形にしたいときは、ファイルのまま焼く盤とは作り方が違うので、データDVDと映像DVDの違いの記事で確かめてください。

2枚を、別々の家の鍵のかかる場所へ

同じ内容の2枚は、別々の建物に置きます。たとえば控えAは自治会館の鍵のかかる棚、控えBは会長の家の鍵のかかる引き出し、という形です。会館がない団体なら、会長と会計係の家に1枚ずつ置きます。1か所に2枚あると、火事や水害、空き巣で両方を失います。委員会の手引きは紙の名簿を鍵のかかる引き出しに保管する例を挙げており、名簿の盤も同じ扱いにします。総務省のサイトも、バックアップの媒体を鍵のかかる場所に保管するよう書いています。

盤を置いた場所と持ち主は、置き場所の一覧に書き足します。年度、盤の種類(名簿・記録)、A・Bの別、置き場所、保管している人。役員が替わったら、盤は引き継ぎの日に現物を手渡しし、新しい役員が置き場所へ運びます。保存の年数は団体の規程で決め、規程を過ぎた名簿の盤は、読めないように割って捨てます。家庭ごみに名簿の盤をそのまま出すことは、紙の名簿をそのまま捨てるのと同じです。

盤だけで守らない。限界を知って組み合わせる

盤は、書き換えられず、切り離して置ける控えになるので、ほかの媒体に無い役を持ちます。外付けHDDも抜いて保管すれば切り離せますが、つないだ日に感染が重なれば書き換えられます。その一方で、盤で防げないことも、はっきりしています。役員会で控えの話をするときは、次の5つも一緒に伝えておきます。

  • 焼く前のファイルが感染や暗号化をしていれば、その状態がそのまま残る
  • 閉じていない盤をドライブに入れたままにすると、追記によって中身が見かけ上書き換わることがある
  • 書き換え型のDVD-RWやBD-REは、書き換えられないという守りにならない
  • 盤を割る、なくす、盗まれることはある。盗まれれば、暗号化していないファイルは読まれる
  • 読むためのドライブが要る。数年後に団体のパソコンにドライブが無いこともある

盤の寿命にも限りがあります。カナダ保存研究所(CCI)は、一般的な銀合金の反射層のDVD-Rで10〜20年、BD-Rで5〜10年という目安を示しています。この目安は温度と湿度の影響だけをもとにしたもので、日の当たる棚や湿気のこもる押し入れでは短くなります。年に1回、前の年度の盤を読み直し、何年かおきに新しい盤へ焼き直す前提で使います。書き込みのできるドライブも、団体の備品として1台残しておきます。種類ごとの寿命の目安はCD・DVD・ブルーレイの寿命の記事に書きました。

日々の作業のファイルは、団体名義のクラウドの保存先に置き、年度末の時点の中身を盤に残す、という分担が現実的です。クラウドのゴミ箱や版の履歴で戻せる期間は、サービスとプランしだいで、たとえばGoogleドライブのゴミ箱は30日で完全に削除されます。気づくのが遅れれば戻せません。コピーを3つ、媒体を2種類、1つは別の場所に、という「3-2-1」は、米国の政府機関も紹介する経験則です。団体なら、クラウドの保存先、役員のパソコンの作業用のフォルダ、別々の場所に置いた盤2枚で、この形に近づきます。

NPOとサークルは、名簿の持ち方がまた違う

ここまで自治会とPTAを中心に書いてきましたが、NPOとサークルでは、名簿の中身と置き場所に別の癖があります。どちらも個人情報取扱事業者にあたり得る点は同じで、守りの考え方も変わりませんが、どこから先に手を付けるかが違います。団体ごとに、いちばん散らばりやすい場所から手を付けてください。

NPO法人では、会員の名簿のほかに、寄付をした人の記録、事業の利用者の情報、ボランティアの連絡先が、それぞれ別の表やサービスに入っていることがあります。福祉や子育て、医療にかかわる活動なら、利用者の障害や病歴、家庭の事情が記録に入ることもあり、これは要配慮個人情報です。漏えい等のおそれがあれば、人数が少なくても報告の対象になります。事務所のパソコンが整っていても、ボランティアが私物のスマホで利用者の連絡先を持っている、という形で散らばりやすいので、置き場所の一覧に「私物の端末で持っている人」の欄を作っておきます。助成金の申請や報告の書類は、助成元が決めた期間の保存が要ることがあるので、年度末の控えに必ず入れます。

サークルでは、名簿そのものが無く、LINEのグループの参加者の一覧が名簿の代わりになっていることがあります。会費の振込先と、発表会や演奏会の動画が、代表の私物のスマホに集まります。この形だと、代表のLINEが乗っ取られれば、会員全員に偽の依頼が届き、代表がスマホを替えれば記録が消えます。会員が数十人でも、連絡先を書いた表を1つ作り、動画は代表のスマホから団体の保存先に移し、年度末に盤に焼きます。サークルの守りは、まず「代表の私物のスマホだけにある」状態を崩すところから始めます。

PTAは、役員の任期が1年のことも多く、学校から受け取る名簿と、保護者が自分で集めた連絡先が混ざりやすい団体です。役員の引き継ぎに加えて、学校の担当の先生も異動で替わります。広報委員の写真や動画の引き継ぎは部活保護者会の記録係を引き継ぐ記事で、共有アカウントと過去の映像の渡し方を書いているので、PTAの係でも同じ手順が使えます。

連絡の順番を、紙1枚の連絡表にしておく

感染や乗っ取りに気づいたとき、相談先の番号をネットで調べようとして、そのパソコンやスマホが使えない、ということがあります。偽の警告の画面に出た番号と、本物の窓口の番号を取り違える心配もあります。連絡先は、起きる前に調べて紙に書いておきます。紙なら、パソコンが止まっていても、スマホを乗っ取られていても使えます。

連絡表に書くのは、次のようなものです。団体の中は、会長、副会長、会計、個人情報の担当(記録係を兼ねる)の連絡先と、だれが判断役で、だれが記録係かの役割分担。団体の外は、団体の口座の銀行の不正利用の連絡先(通帳やキャッシュカード、銀行のホームページで確かめた番号)、カード会社、最寄りの警察署と都道府県の警察のサイバー犯罪の相談窓口、IPAの組織向けと個人向けの窓口、個人情報保護法相談ダイヤルと委員会の報告フォームの場所、学校や市町村の担当の連絡先です。最後に、団体のパソコンの置き場所と、管理者のアカウントの紙をしまってある場所も書きます。

連絡表は、引き継ぎの資料に入れ、役員の家にも1枚ずつ置きます。役員が替わったら、連絡先と役割を書き直します。銀行の番号などは年に1回、本物の窓口の番号のままかを確かめます。連絡表の1行目には「偽の警告の番号には電話しない。この表の番号にかける」と書いておくと、慌てた場面で手が止まりやすくなります。

あわせて読みたい

ディスクやUSBを紛失したときの報告義務|漏えい対応の初動と期限

引き継ぎの日に、鍵とアカウントを渡し直す

役員の引き継ぎは、通帳と印鑑と書類の箱を渡して終わりになりがちです。ところが、感染と漏えいの側から見ると、引き継ぎの日は、パスワードと2段階認証と共有の権限を、前の役員から新しい役員へ付け替える日です。ここを済ませないと、新しい役員は団体のアカウントに入れず、前の役員はいつまでも入れる状態が続きます。書類の引き継ぎ箱と目録の作り方は自治会の記録の記事に書いたので、ここではアカウントと端末の付け替えを書きます。

次の表は、引き継ぎの日に新旧の役員がそろって確かめる項目です。全部に印が付くまで、その日の引き継ぎは終わらない、と決めておくと、後回しにされにくくなります。印は、前の役員と新しい役員の両方が見て付けます。表は引き継ぎの資料に綴じ、次の年も同じ表を使います。

控えの盤の受け取り、パスワードの変更、2段階認証の付け替え、バックアップコードの作り直し、共有とLINEの管理者の変更、ネットバンキング、前の役員の端末の名簿の削除、USBメモリの台帳、パソコンの更新、連絡表の確認の10項目を並べた表
新旧の役員がそろって確かめる。全部に印が付いたら引き継ぎを終える

パスワードと2段階認証は、引き継いだその日に替える

Googleアカウント、団体のメールアドレス、ホームページやSNS、ネットバンキングのそれぞれで、パスワードを新しくし、2段階認証の確認コードの届け先と再設定用の電話番号・メールアドレスを、新しい担当のものに替えます。Googleのバックアップコードは作り直し、古い組を使えなくします。新しいパスワードとバックアップコードは紙に書いて封筒に入れ、会長が鍵のかかる場所に保管します。前の役員がパスキーを登録していたら、その端末のパスキーも外します。

LINEのグループは、前の役員が管理者のままになっていないかを見ます。管理者を新しい役員に替え、前の役員は管理者から外します。Googleドライブなどで役員のアカウントに共有していたフォルダは、共有の相手の一覧から前の役員を外します。外す前に、前の役員のアカウントの中にだけある団体のファイルが無いかを確かめ、あれば団体の保存先に移してもらいます。

前の役員の端末に残った名簿を、消してもらう

役を降りた人の家のパソコン、スマホ、USBメモリには、名簿や会計の表の写しが残っています。役員を降りれば、その写しを使う理由は無くなります。手引きは、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消すよう努めることを求めています。引き継ぎの日に、置き場所の一覧を見ながら、どの機械に何が残っているかを一緒に確かめ、新しい役員に渡し終えたものは消してもらいます。

消すことを頼むのは、相手を疑っているからではありません。数年後にそのパソコンが感染したり、手放されたりしたときに、団体の名簿まで巻き込まないためです。消した日は、置き場所の一覧に書きます。メールの送信済みのフォルダに残った名簿の添付ファイル、スマホの写真に残った紙の名簿、LINEのトークに貼った表のように、見落としやすい場所も一緒に確かめます。

古いパソコンを手放すときは、初期化で「データの消去」まで選ぶ

会館に置いていた古いパソコンを処分したり、だれかに譲ったりするときは、中のデータを消してから手放します。Windows 11なら「設定」の「システム」→「回復」で「PC のリセット」を選び、「すべて削除する」を選んだうえで、オプションの「データの消去」を有効にします(表記は版で変わる)。ファイルを消すだけでなくドライブも消去するので時間はかかりますが、マイクロソフトは寄付やリサイクル、販売の予定があるならこの設定を使うよう案内しています。ただし、この機能は一般の消費者向けで、政府や業界のデータ消去の基準を満たすものではない、とも書かれています。

BitLockerなどで暗号化しているパソコンは、作業の途中で回復キーを求められることがあります。消す前には、要るファイルが年度末の控えや団体の保存先に入っていることを確かめます。名簿が長く入っていたパソコンで、消し方に不安があるなら、業者の消去証明の有無を確かめて頼む方法もあります。名簿を焼いた古い盤を捨てるときは、読めないように割ってから捨てます。

引き継ぎの日に来られない人がいるとき

前の役員が転居や仕事の都合で、引き継ぎの日に来られないこともあります。そのときにパスワードやバックアップコードをLINEやメールで送ってもらうと、送った文面がトークや送信済みのフォルダに残り、どちらかのアカウントが乗っ取られれば一緒に読まれます。会える日を別に決めて封筒を手渡しするか、会長が預かって新しい役員に渡す形にします。

どうしても会えないなら、電話をつないだまま、前の役員に届いた確認コードを読み上げてもらい、新しい役員がその場でパスワードを替え、2段階認証の届け先を自分のスマホに付け替えます。替えてしまえば、前の役員が知っているパスワードは使えなくなるので、文面で送る必要がありません。端末に残った名簿は、消したことを電話で確かめ、消した日を一覧に書きます。

1年の段取り|1月に範囲を決め、3月に焼き、4月に鍵を替える

ここまでの作業を、年度の予定に組み込みます。年度の始まりが4月の団体なら、次の図の順で回せます。総会が5月や6月の団体は、焼く時期と引き継ぎの時期を総会に合わせてずらしてください。役員会の予定表に、この7つの行を先に書き込んでおくと、忘れずに回せます。

1月に控えの範囲を決め、2月に中身を確かめ、3月に2枚焼いて分けて置き、総会の日に引き継ぎ、4月に鍵を替え、5月に消したかを確かめ、秋に盤を読み直す流れを時期の順に並べた図
年度の始まりが4月の団体の例。総会の時期に合わせてずらす

1月の役員会で、控えに入れるもの、入れないもの、名簿に残す項目を決めます。2月は、団体のパソコンの更新とウイルス検査、ファイルが開けるかの確認と、要らない名簿の削除の月です。3月に名簿の盤と記録の盤を2枚ずつ焼き、別々の場所に置きます。総会で新しい役員が決まったら、盤の現物と封筒、置き場所の一覧、連絡表を手渡しします。4月にパスワードと2段階認証を付け替え、前の役員の権限を外し、5月に前の役員の端末から名簿を消したかを確かめます。秋の役員会のついでに、前の年度の盤を読み直して、ハッシュ値を照合します。

1年に1回の作業なら、手順を覚えている人はまずいません。この段取りと、焼く手順、引き継ぎの日の確認の表を、そのまま引き継ぎの資料に綴じておきます。手順の紙に「今年やった日」と「気づいたこと」を書き足していけば、次の役員は前の年の記録を見ながら同じ作業ができます。

自分たちでやる範囲と、外に頼む境目

この記事で書いた設定と決まりの多くは、役員が自分たちでできます。パソコンの更新とウイルス対策の確認、団体用のユーザーの作成、アカウントの2段階認証の付け替え、共有の設定の見直し、BCCの確認、年度末の盤の作成、引き継ぎの日の確認、会員への知らせ。どれも特別な道具は要らず、役員会の時間と手順の紙があれば回ります。

外の力を借りたほうがよいのは、起きてしまったあとの調べと直しです。遠隔操作のソフトを入れられた、ランサムウェアで暗号化された、名簿が外に出たかどうかを確かめたい、という場面では、IPAの窓口や警察に相談したうえで、必要ならパソコンの調査や初期化を業者に頼みます。頼む前に、何を調べてくれるのか(名簿が外に送られた形跡まで見るのか)、初期化までするのか、調べた結果を書面で出してくれるのかを見積もりで確かめます。会員への説明や報告の判断に迷うときは、個人情報保護法相談ダイヤルに聞き、法律の判断が要る場面では弁護士に相談します。

行事の動画を見られる盤にするとき、当社にできること

年度末の控えのうち、行事の動画は、ファイルのまま焼く盤とは別に、プレーヤーに入れれば見られる盤にしておくと、パソコンを使わない会員や、何年か後の役員も中身を確かめられます。夏祭りや盆踊り、運動会、子ども会の行事、防災訓練、総会の記録などです。ファイルのまま焼くデータの盤は、上に書いた手順で自分たちのパソコンで作ります。当社に頼めるかどうかは、注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめてください。

当社は、動画のデータから、プレーヤーで再生できるDVD・ブルーレイを作る書き込み代行の店です。受け付けるのは完成した動画のデータで、受け取ったデータをプレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、店舗でお渡しします。1枚から注文でき、料金は基本料金(DVD・1枚あたり)の1,500円(税抜)からです。

控えとして役に立つのは、同じ内容の盤を2枚以上作り、別々の場所に置く使い方です。1枚目に続く同じ内容の焼き増しは、追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)の1,000円で頼めます。会館の棚と会長の家に1枚ずつ置けば、どちらかを失っても、もう1枚で見られます。何年分も並ぶと、どの盤がいつの行事か分からなくなりがちなので、盤面レーベル印刷(1枚あたり)の+1,000円で、年度と行事の名前を入れた画像を入稿していただき、その画像を盤に印刷します。総会や発表会のように長い記録は、チャプター分け(1枚あたり)の+1,500円で、議題や演目の区切りから再生を始められるようにできます。

見られる盤は、元の動画ファイルの代わりにはなりません。DVDは720×480の画質で作るので、元のファイルの細かさは残りません。元のファイルは記録の盤や団体の保存先に残し、見られる盤は「プレーヤーに入れれば、だれでも見られる控え」として持つ、という分け方になります。お引き受けできるのは、団体や会員が自分たちで撮った動画と、権利者の許可がある動画です。

入稿は、動画の共有URLを注文フォームに貼る形です。ギガファイル便、Googleドライブ、Dropbox、OneDriveなどの共有URLが使えます。共有URLは、送る相手と期限を決めて作り、名簿の入ったフォルダのような、ほかのファイルが見える場所を共有しないようにします。ギガファイル便を使う場合、保持期限はアップロードの前に選び、後から変えたり延ばしたりはできません。

ギガファイル便にダウンロードパスワードを付けた場合は、注文フォームにURLを貼るとパスワードの入力欄が開き、合っているかをその場で照合します。送る前に、動画が手元で最後まで再生できることも確かめてください。会員や子どもの顔が映る動画を預けるときの扱いで気になる点は、注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめていただけます。

夏祭りと運動会のように内容の違う盤を一度に頼むときは、注文フォームの「+別の内容を追加」を使い、内容ごとに別の共有URLと枚数を入れます。複数の動画を1枚に収めるときは、ファイル名の頭に「01_」「02_」と付けておくと、その番号の順に収録します。発送はクリックポストで、平日12時までの注文と入稿なら当日店舗お渡しも選べます。注文はDVDの注文ページからです。

次の役員会で決める3つ

全部を一度にそろえる必要はありません。次の役員会で、次の3つだけを決めて始めてください。どれも、お金をかけずに今の役員だけで決められることです。設定の作業は、決めたあとで係ごとに進めれば足ります。

  1. 団体の名簿と記録の置き場所の一覧を作る係と、締め切りを決める。持ち主と最後に開いた日も書く
  2. おかしいと思ったときの判断役と記録係を決め、連絡表を1枚作って役員の家に置く
  3. 年度末に名簿の盤と記録の盤を2枚ずつ焼く日と、引き継ぎの日に付け替えるアカウントの一覧を決める

1つ目は1時間あればできます。一覧ができれば、どこに守りが要るかが分かり、2つ目と3つ目の中身も決めやすくなります。迷ったら、団体の名簿が「いま、どこにもつながっていない場所」に1つあるかを考えてください。それがあれば、団体のパソコンが感染した朝にも、次の総会の案内を出せます。

よくある質問

Q. 自治会やPTAも個人情報保護法の対象になりますか

A. なります。個人情報保護委員会は、営利か非営利かを問わず、名簿などを事業に使っていれば個人情報取扱事業者にあたるとして、自治会・町内会、同窓会、PTA、NPO法人、サークル、マンション管理組合を挙げています。2017年5月からは、扱う人数が5,000人分以下でも対象です。名簿の利用目的の特定、配布の同意、安全管理が求められます。

Q. 団体のパソコンに偽のウイルス警告が出たらどうすればよいですか

A. 表示された電話番号には電話せず、ブラウザを閉じます。閉じられなければEscキーの長押しやタスクマネージャーでブラウザを終了します。IPAは、警告の画面が出ただけなら感染していないと説明しています。電話してソフトを入れてしまったなら遠隔操作の前提で、ネットワークを切り、記録を残して、相談先と役員に知らせてください。

Q. 名簿の入ったパソコンが感染したら報告は必要ですか

A. 個人データの漏えい等やそのおそれがあり、要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正の目的、1,000人超のどれかにあたれば、委員会への報告と本人への通知が要ります。ウイルス感染や不正アクセスは「不正の目的」にあたり得るので、人数が少なくても対象になり得ます。迷うときは個人情報保護法相談ダイヤルで考え方を聞いてください。

Q. 委員会への報告はいつまでに出せばよいですか

A. 知った時点から速やかに速報を出し、おおむね3〜5日以内が目安です。全体を調べた確報は30日以内、不正の目的によるおそれがある場合は60日以内です。速報は分かっている範囲で構いません。報告は委員会のウェブサイトの入力フォームから行い、報告者の名称の欄には担当者個人の名前ではなく団体の名前を書きます。

Q. 会員への知らせはどの手段で出せばよいですか

A. ふだんの連絡の道を使いますが、乗っ取られたLINEや宛先を誤ったメールのように、その道が漏れた経路なら避け、回覧板や掲示、総会での説明、文書の配布など別の道を使います。一人で暮らす高齢の会員などには、電話や訪問で直接伝える方法も考えます。何が起きたか、対象の項目、団体がしたこと、お願い、窓口の順に書きます。

Q. 団体のGoogleアカウントの2段階認証は誰のスマホにすべきですか

A. 団体で決めた担当のスマホにし、役員が替わったらその日のうちに付け替えます。前の役員のスマホが残っていると、新しい役員が入れず、前の役員はいつまでも入れる状態になります。スマホをなくしたときのために、8桁のコード10個のバックアップコードを作って封筒に入れ、鍵のかかる場所に保管しておきます。

Q. 年1回の控えはDVD-RとBD-Rのどちらがよいですか

A. 名簿や議事録、会計の書類のPDFが中心なら、DVD-Rの1層(4.7GB)で足りることが多いです。行事の動画も入れるならBD-R(1層25GB)が向きます。どちらも追記型で、記録した部分は書き換えられません。書き換え型のDVD-RWやBD-REは、書き換えられないという守りにならないので、控えには使いません。

Q. 控えの盤にパスワードを書いたファイルを入れてもよいですか

A. 入れません。追記型の盤は中身を消せないので、焼いたパスワードは盤がある限り読めるままになり、盤をなくせばそのまま外に出ます。パスワードやバックアップコードは紙に書いて封筒に入れ、会長が鍵のかかる場所に保管し、引き継ぎのたびに作り直します。名簿のファイルに付けたパスワードも、盤とは別に控えます。

Q. 名簿の入った盤はどこに置けばよいですか

A. 同じ内容を2枚焼き、会館の鍵のかかる棚と会長の家の鍵のかかる引き出しのように、別々の建物の鍵のかかる場所に置きます。1か所に2枚あると、火事や水害、盗難で両方を失います。名簿のファイルは焼く前にパスワードで暗号化し、置き場所と保管者を一覧に書いて、引き継ぎの日に現物を手渡します。

Q. 盤に焼いておけばランサムウェアへの備えは十分ですか

A. 焼いてドライブから出した追記型の盤は、あとでパソコンが暗号化されても中身は変わりませんが、焼く前のファイルが感染していればそのまま残ります。暗号化の前に名簿が盗まれていれば漏えいで、盤があっても報告と通知は要ります。盤の寿命や読むドライブの問題もあるので、クラウドなどと組み合わせて使います。

Q. 前の役員の家のパソコンに残った名簿はどうすればよいですか

A. 引き継ぎの日に、名簿や会計の表の写しがどの機械に残っているかを一緒に確かめ、新しい役員に渡し終えたら消してもらいます。消した日は置き場所の一覧に書きます。委員会の手引きは、要らなくなった個人データは遅滞なく消すよう努めることを求めています。パソコンを手放すときは、初期化で「データの消去」まで選びます。

Q. 名簿をUSBメモリでやり取りしてもよいですか

A. 持ち歩くと紛失や盗難で外に出るので、名簿の入ったUSBメモリは持ち歩かないのが基本です。運ぶなら団体の備品のパスワードで守れる種類を使い、本数と持ち主を台帳に書き、作業が終わったら中身を消します。拾ったものや出どころの分からないUSBメモリは、団体のパソコンに挿さないでください。

Q. 行事の動画をプレーヤーで見られるDVDにして控えにできますか

A. 当社は完成した動画のデータから、プレーヤーで再生できるDVD・ブルーレイを1枚から作ります。同じ内容の焼き増しで2枚以上作り、別々の場所に置けます。ただしDVDは720×480の画質で作るので、元の動画ファイルの代わりにはなりません。元のファイルは記録の盤や団体の保存先に別に残してください。

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この記事の目次

  1. 団体のデータは、だれの家のどの機械にあるか
  2. 小さな団体で実際に起きたこと
  3. 失う・漏れる道は3つに分けて考える
  4. 漏れた名簿は、詐欺や強盗の下調べに使われる
  5. 自治会もPTAも、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」
  6. 団体のパソコンは、更新と検査と「役員ごとのユーザー」から
  7. アカウントは、2段階認証の受け取り役まで決めておく
  8. 偽の警告とフィッシングで、役員がだまされないために
  9. 共有リンクとメールの宛先で、名簿が外に出る
  10. USBメモリと私物の端末は、持ち出す前に決める
  11. 「おかしい」と思ったら、最初の1時間にやること
  12. 報告が要るかどうかは、4つの問いで決める
  13. 会員への知らせ方|事実、項目、お願い、窓口の順に
  14. 年度替わりに、書き換えできない盤で控えを作る
  15. 盤だけで守らない。限界を知って組み合わせる
  16. NPOとサークルは、名簿の持ち方がまた違う
  17. 連絡の順番を、紙1枚の連絡表にしておく
  18. 引き継ぎの日に、鍵とアカウントを渡し直す
  19. 1年の段取り|1月に範囲を決め、3月に焼き、4月に鍵を替える
  20. 自分たちでやる範囲と、外に頼む境目
  21. 行事の動画を見られる盤にするとき、当社にできること
  22. 次の役員会で決める3つ
  23. よくある質問

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