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USBメモリの紛失と感染の事例|尼崎市の46万人分から学ぶ受け渡し媒体の選び方

2026 10/11
USBメモリの紛失と感染の事例|尼崎市の46万人分から学ぶ受け渡し媒体の選び方

この記事の要点

  • 尼崎市の件で紛失中に開かれていないと確かめられたのは、USBメモリが暗号化され、ログインの記録が残る製品だったため。運び方の決まりと作業後の消去は守られていなかった
  • USBメモリは挿したパソコンから書き込めるので、USB経由で広がるマルウェアの運び手になる。知らないUSBメモリは挿さず、自動再生を止めておく
  • 追記型のディスク(DVD-R・BD-R)は閉じれば書き足せないが、盤に暗号化の機能は無く、なくせば拾った人に読まれる。個人データは焼く前に暗号化する
  • ネットの転送は物をなくさないかわりに、URLと共有の設定しだいで知らない人に届く。期限とパスワードを決め、受け取りを確かめたら消す
  • どの手段を選んでも、中身を必要な分に絞る、暗号化する、終わったらその場で消して確かめる、の3つをそろえる

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名簿、成績の一覧、給付の口座のデータ、研修の動画。職場のデータを別の建物へ運ぶときや、取引先・委託先に渡すとき、手近なUSBメモリに写してかばんに入れる、という流れはいまも多くの職場で続いています。2022年6月、兵庫県尼崎市の全市民46万517人分の住民基本台帳の情報などが入ったUSBメモリが、業務を受けた会社のさらに先の委託先の従業員に持ち出され、帰り道でかばんごと一時なくなりました。

市の調査委員会の報告書を読むと、問われたのは媒体の種類より、運び方と後始末でした。USBメモリが暗号化され、ログインの記録が残る製品だったので「漏えいは確認されなかった」と言えた一方、運ぶときの決まりは守られず、作業の後の消去もされていませんでした。媒体を選ぶときは、後から書き換えられるか、暗号化できるか、なくしたときに何が起きるか、相手の機器で開けるか、の4点で比べます。USBメモリは挿した機器から書き込めるぶんマルウェアも運び、追記型のディスク(DVD-R・BD-R)は閉じれば書き足せないかわりに、なくせば拾った人に読まれます。ネットの転送は物をなくさない一方、URLや設定を誤ると知らない人にまで届きます。どれを選んでも、中身を絞る、暗号化する、終わったら消して確かめる、の3つはそろえましょう。

事例と数字は、2026年10月時点で、自治体や企業の公表資料と報道で確かめられた範囲で書いています。報道だけで確かめたものは「報じられた」と書き分けました。

この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります

  1. USBメモリ・ディスク・ネットの転送を、4つの点で比べる
  2. 尼崎市のUSBメモリ紛失|2022年6月の3日間に起きたこと
  3. 暗号化のUSBメモリだったから、読まれていないと確かめられた
  4. 報告書が挙げた原因は、運び方と後始末にあった
  5. その後も続くUSBメモリの紛失|院内・私物・暗号化なし
  6. USBメモリを通って別のパソコンへ広がるマルウェア
  7. NTT西日本グループの点検では、16%のシステムが許可外の媒体をつなげる状態だった
  8. 書き換え・暗号化・紛失・相手の機器で、3つの手段の違いを見る
残りの14項目を見る
  1. ディスクを選んでも、なくせば拾った人に読まれる
  2. ネットの転送|物はなくならないが、URLと設定で広がる
  3. どれを使うか、運ぶ中身と相手で決める
  4. USBメモリで運ぶと決めたら|出す前・運ぶ途中・終わった後
  5. 暗号化つきのUSBメモリを選ぶなら、仕様表で5つを見る
  6. 受け取ったUSBメモリやディスクを挿す前の設定
  7. 追記型のディスクで渡す・控えるときの手順
  8. 預かる側に回ったときは、返すか消すかを先に決める
  9. 家庭で写真や動画を渡すときも、同じ4つで選ぶ
  10. なくしたとき、挿してしまったとき|最初にすること
  11. 動画や記録の作業を外に頼むときに、先に聞いておくこと
  12. 動画をディスクで渡すとき、当社にできること
  13. 今週、手元のUSBメモリを数えて中身を確かめる
  14. よくある質問

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USBメモリ・ディスク・ネットの転送を、4つの点で比べる

データを持ち運ぶ・渡す手段は、大きく3つに分かれます。USBメモリ(外付けのSSDやSDカードも同じ仲間です)、DVD-RやBD-Rのような追記型のディスク、そしてファイル転送サービスやクラウドの共有リンクを使うネットの転送です。比べる点は、後から書き換えられるか、暗号化できるか、なくしたり漏れたりしたときに何が起きるか、受け取る相手の機器で開けるか、の4つに絞れます。

4つを並べると、全部の点で優れた手段はありません。USBメモリは暗号化の仕組みを機器ごと持てる一方、挿したパソコンから書き込めるので、マルウェアの運び手にもなります。追記型のディスクは書き込んで閉じれば後から書き足せませんが、盤そのものに暗号化の機能は無く、なくせば拾った人がドライブやプレーヤーで読めます。転送サービスや共有リンクは、物をなくす心配が無いかわりに、URLや共有の設定を誤ると、知らない人にまで届きます。

USBメモリ、追記型ディスク、ネットの転送の3つを、書き換え、暗号化、なくしたとき、取り消し、相手の機器、感染の運び方の6つの点で比べた表
全部の点で優れた手段は無い。弱いところを手順で補う

表の中身は、後の節で事例と一緒に一つずつ書きます。先に押さえておきたいのは、尼崎市の件で問われたのが、USBメモリを使ったことそのものより、運び方と後始末だった点です。委員会はUSBメモリが社会で役に立つことを否定しないと断ったうえで、運ぶ手順と消去の確認を求めています。媒体を替えるだけなら、同じことはディスクでも転送でも起きます。

尼崎市のUSBメモリ紛失|2022年6月の3日間に起きたこと

経緯は、2022年11月28日に尼崎市USBメモリー紛失事案調査委員会が市長に出した調査報告書に、時刻まで書かれています。委員会は大学の研究者・弁護士・他市の情報システムの担当者の3人で、関係者への聞き取りと、パソコンやUSBメモリの記録の解析をもとに事実を確かめました。以下は報告書と、同じ日の市長記者会見の資料に沿った流れです。

朝、給付金のサーバから2本のUSBメモリへ

尼崎市は、住民税非課税世帯などへの臨時特別給付金の業務を、BIPROGY(旧日本ユニシス)に委託していました。USBメモリを持ち出したのは、この会社から市の承諾なく再委託・再々委託された先の従業員です。市の職員は、この人を委託先の社員だと思っていました。

6月21日の午前9時過ぎ、従業員は市政情報センター3階のサーバルームに入り、給付金のサーバにUSBメモリを挿して、市民の個人データの入ったファイルを写しました。そのUSBメモリを廊下を挟んだ委託先の執務室に持ち帰って開発用のパソコンに保存し、さらに別の2本のUSBメモリに同じファイルを写しています。2本にしたのは、1本を予備にするためでした。サーバに挿したときも写したときも、市の職員は立ち会っておらず、知らされてもいませんでした。

夕方に電車で運び、作業の後にかばんごとなくした

夕方、従業員は2本のUSBメモリをそれぞれ透明のプラスチックケースに入れ、革の手提げかばんの内ポケットにしまって、一人で施設を出ました。かばんにもケースにも鍵はかかりません。JRと地下鉄を乗り継いで17時40分ごろに目的の駅に着き、17時50分ごろ、データを移す先の吹田市のコールセンターでほかの3人と合流しました。

コールセンターでは、2本のうち1本をそこのサーバに挿してファイルを写し、25台の端末に給付金のプログラムを入れる作業をしました。作業は19時前後に終わり、4人はそのまま近くの飲食店で会食しています。USBメモリの中身を消すことも、USBメモリを返しに戻ることも、誰も言い出しませんでした。従業員は翌22日の午前3時ごろ、USBメモリの入ったかばんが無いことに気づきます。

従業員は22日に交番へかばんの遺失届を出し、午後に委託先の責任者へ、夜に市の職員へ紛失を伝えました。市は6月23日に公表し、24日の午前11時半ごろ、警察と一緒に探していた従業員の記憶をたどった場所で、かばんが見つかりました。中には2本のUSBメモリが残っていました。

2022年6月21日の朝にサーバから写し、夕方に電車で運び、夜に会食、22日未明に紛失、23日に市が公表、24日に発見、11月28日に調査報告書が出るまでを時系列で並べた図
2022年の経緯。報告書は漏えいを確認せず、運び方と消去などを指摘した

入っていたのは全市民の住民基本台帳と口座の情報

2本のUSBメモリには、市の情報の中でもとりわけ重い扱いを求められる情報が入っていました。全市民46万517人分の住民基本台帳の情報(氏名・住所・生年月日・性別など)、住民税の税情報36万573件、給付金の対象世帯の情報、生活保護を受けている世帯の口座情報1万6,765件、児童手当を受けている世帯の口座情報6万9,261件です。これらが二つのファイルにまとめられ、2本のそれぞれに入っていました。

手のひらに乗る大きさに46万人分が収まる点を、報告書は重く見ています。USBメモリは小さく手軽なので便利さばかりが重く見られがちだが、入る量は膨大になっていて、漏えいすれば被害は大きい。しかも小さいので、なくすと追跡も発見も一般に難しい。だから見た目の小ささで判断せず、入れた情報の重さと、漏れたときの被害の深さで扱いを決めるべきだ、という趣旨です。

見つかった後に調べられたこと

委員会は、見つかった2本だけでなく、関係するパソコンやサーバも含めてデジタルフォレンジック調査を行いました。機器に残った記録を、証拠として使える手順で取り出して解析する調べ方です。調べる機器は、庁舎のネットワークに一切つながない隔離した場所に集められました。2本のUSBメモリは、製造したメーカーが記録を解析しています。

結論は、紛失していた間に2本のUSBメモリから個人データが漏えいしたとは認められない、というものでした。市は11月28日の記者会見の資料で、委託業務の全体を通じて個人情報の漏えいは確認されなかったと公表しています。「46万人分が流出した事件」と書かれることがありますが、調査の結論は漏えいの確認なしで、正確には一時紛失です。

暗号化のUSBメモリだったから、読まれていないと確かめられた

漏えいが無いと言い切れた理由は、報告書を読むとはっきりしています。持ち出された2本は、紛失したときのための仕組みを持った製品でした。どこまでが仕組みに守られ、どこからが人の手順の問題だったかを分けておくと、自分の職場で何を選べばよいかが見えてきます。

ログインの記録が、紛失中に開かれていないことを示した

報告書によると、2本はどちらも、USBメモリの中の制御用の部品が、書き込むデータを自動でAES 256ビットの方式で暗号化する製品でした。中身を見るにはUSBメモリに入っているソフトを起動してパスワードを入れる必要があり、決められた回数を続けて間違えると、初期化しないと使えなくなります。初期化すれば中のデータは全部消えます。記憶用の部品を取り外して直接読もうとしても、中身を見るのは難しいとされています。

決め手になったのは、ログインの記録です。この製品は、パスワードを入れてログインに成功したか失敗したかを、利用者からは見えない領域に自動で書き残していました。メーカーが専用の道具でこの記録を取り出すと、残っていたのは6月21日の作業中の操作と、24日に見つかった後に警察で中身を確かめた操作だけでした。紛失していた22日から24日の昼までには、成功も失敗も一つもありません。記録には操作したパソコンの名前も残るので、どの操作が誰のものかを照らし合わせられました。21日の朝は委託先の開発用パソコン、夕方はコールセンターのサーバ、24日は見つかった後の確認に使った委託先の社員のパソコン。記録の中にはパスワードの入れ間違いもありましたが、どれもこの3つの場面の中のものでした。

暗号化だけなら「たぶん読まれていない」までしか言えません。開こうとした記録の有無が媒体の中に残っていたから、「紛失中に正しいパスワードでの操作は無かった」と根拠を持って言えました。業務の個人データを運ぶUSBメモリを選ぶなら、暗号化とパスワードに加えて、誤入力が続くと使えなくなる仕組みと、アクセスの記録が残る仕組みがあるかを確かめておくと、なくしたときの調べ方が変わります。

パスワードは長く使い回されていた

それでも、暗号化があったから問題が無かった、とは報告書は書いていません。2本に設定されていたパスワードは、この給付金の業務よりずっと前から、市と委託先の間で同じものが使われていました。別の案件に移った人や、ほかの会社に移った人も知っている状態が続き、口伝えで広まっていたので、知っている人がどこまでいるのかを確かめることも難しくなっていました。

パスワードそのものは、うわさされたような推測しやすいものではなく、文字の種類が多く総当たりで当てにくいものだったと報告書は書いています。一方で、市と委託先が機密の情報をやり取りするときに、市の名前をそのまま使ったものや、それに日付を足しただけのものなど、誰でも思いつくパスワードが複数使われていたことも見つかり、委員会はすぐに注意しました。あわせて、それまでのパスワードをすぐに変え、知る人を必要最小限に絞るよう市に指示しています。強いパスワードでも、知っている人が多ければ守りは弱くなります。報告書の指摘を裏返すと、パスワードは案件ごとに作り、知る人を必要な人だけに限り、関わる人が替わったら変える、の3つになります。

漏えいが確認されなくても、市の仕事は止まった

市の会見資料によると、報道の直後から、市民だけでなく市外の人からも苦情の電話やメールが集中しました。来庁者への対応に追われて臨時特別給付金の業務が止まるなど、ふだんの仕事にも大きな支障が出ています。市民の不安を和らげるために、市報の臨時号も発行しました。市は委託先に18か月の入札参加停止の措置をとり、こうした損害について賠償を求めると表明しています。

2日余りの紛失でした。なくした物が見つかり、中身も読まれていなかったのに、これだけのことが起きています。小さな事業所や学校、自治会でも、名簿の入ったUSBメモリを一度なくせば、探す、確かめる、知らせる、問い合わせに答える、という仕事が何週間も続きます。媒体を選ぶときに「なくしたら何が起きるか」まで考えておくのは、このためです。

報告書が挙げた原因は、運び方と後始末にあった

報告書は、原因を紛失した一人の行動に寄せていません。市の承諾の無い再委託と再々委託、運ぶときの決まりが守られなかったこと、作業の後に中身が消されなかったこと、市の側で確かめる仕組みが働いていなかったこと。この4つを並べ、主な責任は委託先にあるとしながらも、市も事故を未然に防ぐ体制を十分には作れていなかったと書いています。どれも、数人の職場の手順に置き換えて読める点です。

決まりは仕様書に書いてあった

市の情報セキュリティ対策基準は、重要な情報を運ぶときは必要に応じて鍵付きのケースに入れ、データなら暗号化かパスワードの設定をし、事前に責任者の許可を得ることを定めていました。委託の仕様書は、委託先にもこの基準を守る義務を課しています。さらに仕様書の別紙には、データ入力の帳票やUSBメモリを運ぶ手順として、鍵付きの金属ケースに入れて施錠する、運ぶ責任者と受け取る責任者が受け渡しの表に押印かサインをする、セキュリティに配慮した車両で運ぶ、と書かれていました。暗号化の方式も、AES 256ビットのハードウェア暗号化を推奨していました。

このうち、当日守られていたのは、データの暗号化とパスワードの設定だけでした。金属ケースも、受け渡しの押印も、車両も使われず、事前の許可も取られていません。別紙の手順は外の入力作業の場所へ運ぶ場面を想定した書き方でしたが、報告書は、運ぶ危険は今回も変わらないとして、全市民の個人データを運ぶ以上はこの手順に準じて、鍵付きの金属ケースに入れ、複数の人で、目的地まで車で運ぶのが適当だったとしています。

報告書には、運ぶ形そのものが人の行動を変えるという指摘もあります。かばんにしまえる小さなUSBメモリでなく、大きな金属のケースに重要な情報を入れて運んでいたなら、寄り道はしなかったはずだ、という趣旨です。決まりの文面を整えるだけでは足りず、運ぶ人が「いま大事なものを持っている」と意識し続けられる形にすることまでが、運ぶ手順に入ります。

契約の段階で、委託先の担当者はこれらの決まりを含む仕様書の案を受け取り、内容を確認したうえで問題はないと返信して契約していました。決まりを了承した側と、実際にUSBメモリを運んだ側のあいだで、決まりを守らせる管理と監督が働いていなかった、と報告書は書いています。

共用の引き出しから、記録なしで持ち出せた

委託先の執務室では、USBメモリが鍵のかからないプラスチックの引き出しにまとめて置かれていました。市が買って貸したものが12本(うち10本は暗号化などの機能つき、2本は機能なし)、委託先が自分で用意したものが3本、番号のラベルが無いものが数本です。部屋で働く人たちはこれらを共同で使い、使うときに引き出しから自由に取り出して、持ち出しの記録も返却の記録もつけていませんでした。

記録が無いと、引き出しの本数が足りないことは分かっても、誰が何のために持ち出したのか、いつ戻るのか、中身を消したのかは、使った本人にしか分かりません。誰が、いつ、何の目的で、どのサーバからどこへ、何のデータを運び、いつ戻し、消したかどうか。これを書き残すものが何も無かったことを、報告書は指摘しています。

市の側の管理は、これより進んでいました。情報政策課がUSBメモリを全部持ち、持ち出しと返却の日時、どのUSBメモリか、使った人の名前を毎回記録し、重要度の低いデータを運ぶときでもパスワードや暗号化の機能つきのUSBメモリを使っていました。それでも、何の目的で使ったか、どこからどこへ運んだか、運び終えた直後に中身を消したか、の3つは記録していませんでした。台帳があっても目的と消去の欄が無ければ、なくしたときに「何が入っていたか」「もう消えていたか」に答えられません。

サーバの側にも、同じ穴がありました。給付金のサーバは、どのUSBメモリでも挿せば認識される状態で、登録も制限もありませんでした。接続の記録は初期設定の容量のままで、後から挿した機器の記録で古い記録が上書きされることがあり、誰がいつどの媒体を挿して何をしたかの作業記録もつけていません。委員会は、管理する人が解除の手続きをしたときだけ記録媒体を認識する仕組みに切り替えることと、作業する人にその都度記録をつけさせることを求めています。

作業が終わっても、写しは5〜6か所に残った

報告書は、なくした2本だけを問題にしてはいません。当日の朝、サーバから最初に写したUSBメモリ(市が委託先に貸していたもの)は、中身を消さないまま鍵の無い引き出しに戻されていました。開発用のパソコン、なくした2本、コールセンターのサーバまで数えると、同じ46万人分のデータが5〜6か所に写されていたことになります。どこから漏れても、市民にとっての不安は同じです。

委託先の執務室の開発用パソコンでは、プログラムの試験に本物の市民のデータが使われ、いくつもの版のデータが長く残っていました。インターネットにはつながっていませんでしたが、USBメモリが頻繁に挿された形跡がありました。試験には架空の個人情報を作って使えば足り、本物のデータである必然性は全く無い、と報告書は書いています。写しを作るたびに、守る場所が一つ増えます。

消去については、仕様書の特記事項に、持つ必要がなくなった個人情報は確実かつ速やかに消し、消したことを証明する書面を出す、と定められていました。委託先は、持ち続ける必要が無かったのに2本の中身を消さず、証明の書面も出していませんでした。報告書は、作業が終わったら消すよう促すだけでは足りず、本当に消したかを別の人が確かめる仕組みが要ると書いています。作業した人が「消しました」と報告するだけでは、確かな裏付けにならないからです。

再発防止は、同行してその場で消すのを見届けること

市は会見資料で、事案の後に取った対策を月ごとに並べています。2022年7月にサーバルームへの事業者の入室を制限し、9月に入退室へ生体認証を入れました。10月には、再委託を承認する申請に再委託先がきちんと仕事をできると分かる書類を付けさせ、受託者が再委託先のすべての行為に責任を負うことを書き加えています。同じ10月から、データ消去証明書と記憶媒体の廃棄証明書の提出を義務にしました。11月から12月には全職員の情報セキュリティ研修を行い、2023年度には情報の専門職を置いて情報セキュリティポリシーを改めるとしています。

報告書には、市がすでに決めた持ち出しの方針も書かれています。運ぶ事業者に市の職員が同行し、使う場所まで運んでデータを移したら、その場で事業者がすぐに消し、市の職員が目の前でそれを確かめ、消した後の媒体を庁舎に持ち帰る、という手順です。委員会はさらに、重要な情報はそもそも記録媒体を物理的に動かさずに移す安全な方法を考えるべきだとし、どうしても運ぶなら距離と時間をできるだけ短くするよう求めました。オンラインストレージも、全業務に一律に使わせるのでなく、情報の性質に応じて安全を確かめながら使う、としています。

国の側も動きました。個人情報保護委員会は2022年7月、自治体から委託を受けた事業者などがUSBメモリを紛失した事案を受けて、事業者向けの注意喚起を出しています。USBメモリなどで個人データを持ち運ぶときは、業務に必要な場所に限り、暗号化やパスワードで守ったうえで保存し、施錠できる搬送容器を使うなど安全な方法をとること。持ち運びの状況を記録して、決まりどおりに運用されているかを確かめられるようにすること。委託先が再委託するときは、委託元が相手や扱い方の報告を受けるか承認し、再々委託の先まで確かめることが望ましい、という内容です。

数人の職場に置き換えると、要ることは3つに絞れます。運ぶ前に、運ばずに済む方法が無いかを考える。運ぶなら、運ぶ人に決まりを渡し、一人で運ばせない。運び終えたら、消したことを運んだ人以外が確かめる。委託先とのあいだで決めておく項目は、委託先から漏れる・止まる事例と、データを預ける側の決め事に詳しく書いています。

その後も続くUSBメモリの紛失|院内・私物・暗号化なし

尼崎市の件の後も、USBメモリをなくしたという公表は続いています。2025年末から2026年にかけての例を、本人の公表文で確かめたものと、報道で伝えられたものを書き分けて並べます。件数や中身は公表の時点のものです。

公表:2025年12月(報道)
組織:倉敷中央病院
なくしたもの:患者1,162人分の情報
守りの仕組み:暗号化なしと報道
その後:報道時点で未発見
公表:2026年4月28日
組織:茨城県教育委員会
なくしたもの:生徒のべ438名分の成績等
守りの仕組み:公表文に記載なし
その後:二次被害の報告なし
公表:2026年5月19日
組織:松下記念病院
なくしたもの:患者ID・氏名・病名等
守りの仕組み:パスワードで保護
その後:5月22日に院内で発見
公表:2026年7月
組織:国立病院機構名古屋医療センター
なくしたもの:患者591名分の手術名等
守りの仕組み:公表文に記載なし
その後:5月27日に回収
公表:2026年8月(報道)
組織:医薬品医療機器総合機構(PMDA)
なくしたもの:286人分の所属・氏名等
守りの仕組み:誤入力でロックと報道
その後:報道時点で未発見

公表文から分かる、なくし方の3つの型

茨城県教育委員会の公表文には、経緯が日付で書かれています。4月9日、非常勤講師が自宅で、成績などのデータを私物のUSBメモリにバックアップのために保存し、授業で使うパソコンを入れるバッグにしまいました。10日の授業中、パソコンを取り出したときに落としたとみられます。なくしたことに気づいたのは17日、管理職に報告したのは20日でした。県教育委員会は原因を、学校の許可なく私物のUSBメモリを使って持ち歩いたことと書き、全教職員にUSBメモリの使用禁止などを改めて周知するとしています。

この例で目に留まるのは、USBメモリが「控え」のつもりで使われていた点と、気づくまでに1週間かかった点です。控えを作る気持ちはもっともでも、私物の媒体に入れて持ち歩けば、控えそのものが漏れる元になります。持ち出しを台帳に書く決まりがあれば、なくした日に近いうちに気づけた可能性があります。

松下記念病院の例は、建物の外に出さなくてもなくなることを示しています。病院の5月19日の公表文は、USBメモリは院外に持ち出しておらず、パスワードで保護されているので第三者は中身を見られない、と説明しました。3日後の22日夕方に院内で見つかり、25日の続報で、確かめた結果、情報の不正利用などをうかがわせる事実は認められなかったと報告しています。パスワードの守りがあったので、見つかるまでのあいだも、見られない作りであることを公表文で示せました。

名古屋医療センターの例も、私物のUSBメモリでした。職員が5月22日に派遣先の医療機関へ持参し、帰宅してから紛失に気づいています。帰り道に乗った公共交通機関の座席の下にあったものを翌23日に交通機関の職員が回収して保管しており、病院は問い合わせを経て27日に引き取りました。公表文は、漏えいや不正利用の事実は確認されていないとし、再発防止に私物のUSBメモリの使用禁止の徹底と、記録媒体の持ち出しの原則禁止を挙げています。持ち出しそのものを原則やめるという向きは、運ばずに済む方法を考えるよう求めた尼崎市の報告書と同じです。

報道で伝えられた2件のうち、倉敷中央病院の件は、院内の部署間でデータを移すのに使っていたUSBメモリで、暗号化が無かったとされています。PMDAの件は、企業などの担当者の所属・氏名や審査報告書などの非開示の情報が入った職員のUSBメモリで、誤ったパスワードを続けて入れると操作がロックされる機能があったとされています。暗号化の無い媒体は、見つからない限り「読まれていない」と言う根拠を持てません。並べると、外へ持ち出して落とす型(茨城県・名古屋医療センター)、建物の中で見失う型(松下記念病院・倉敷中央病院)、報道の時点で見つかっていない型の3つがあり、どの型でも、暗号化と持ち出しの記録が後の説明の根拠になります。

上場企業の事故では、紛失・誤廃棄が1割

件数の全体像を、東京商工リサーチが2026年1月に公表した集計で見ると、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失の事故は180件でした。原因別では、ウイルス感染・不正アクセスが116件(64.4%)でいちばん多く、誤表示・誤送信が37件(20.5%)、紛失・誤廃棄が18件(10.0%)、不正持ち出し・盗難が7件(3.8%)です。

2025年に上場企業と子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故180件の原因別の件数。ウイルス感染・不正アクセス116件、誤表示・誤送信37件、紛失・誤廃棄18件、不正持ち出し・盗難7件
東京商工リサーチの2025年分の集計。会社が自分から公表した事故の数

この数字は、上場企業と子会社が自分から公表した事故の集計で、日本全体の事故の割合を表したものではありません。それでも、攻撃による事故が6割を超える年に、人の手でなくす・捨て間違える事故が18件公表されています。前の年(2024年分)の集計でも、誤表示・誤送信は41件ありました。紛失は攻撃と違って、外の誰かに狙われなくても起きます。

情報処理推進機構(IPA)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織編の7位に「内部不正による情報漏えい等」が入りました。2025年版で10位だった「不注意による情報漏えい等」は2026年版の10位までには入っていませんが、上の集計のとおり、紛失や誤送信の公表は続いています。10大脅威の全体を家庭と小さな職場の目で読んだ記事は、情報セキュリティ10大脅威2026を家庭と小さな職場で読むです。

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委託先から漏れる・止まる|イセトー・関通・NTTの事例と、データを預ける側の決め事

USBメモリを通って別のパソコンへ広がるマルウェア

紛失は、データが外へ出ていく側の問題です。USBメモリにはもう一つ、外から中へ入ってくる問題があります。感染したパソコンに挿したUSBメモリにマルウェアが自分を写し、そのUSBメモリを別のパソコンに挿して中のファイルを開いたときに広がる、という型です。人がUSBメモリを持って歩くので、マルウェアがネットワークの境目を越えてしまいます。ここでは、セキュリティ企業とMicrosoftが公表した2つの例を、何をされるのか、どこで気づけるのかが分かる範囲で書きます。

PlugX|挿したUSBメモリに自分を写し、中のファイルを隠す

セキュリティ企業Palo Alto Networksの調査部門(Unit 42)は2023年1月、PlugXと呼ばれるマルウェアのUSBで広がる型を報告しました。感染したパソコンにUSBメモリを挿すと、マルウェアがそのUSBメモリに自分を書き込み、もともと入っていたファイルを見えない場所に移して、代わりにドライブの名前と同じ名前のショートカットを置きます。利用者がそのショートカットを開くと、自分のファイルが表示されるので異変に気づきにくく、同時に感染が進みます。

同じ報告は、PDFやWordの文書を、挿されたUSBメモリへ気づかれないように写す別の型も挙げています。USBメモリを持ち運べば、インターネットから切り離されたネットワークにまで広がりうる、という点も強調されています。気づける場面は、USBメモリを開いたときです。入れたはずのファイルが見当たらず、見覚えの無いショートカットが一つだけある。Unit 42は、そうした見慣れないショートカットがあれば開かずに報告するよう勧めています。

このマルウェアは国をまたいで広がりました。米国の司法省とFBIは2025年1月、中国系とされる攻撃者の集団が使うUSB感染型のPlugXを、裁判所の許可を得て米国内の約4,258台のコンピューターやネットワークから遠隔で消したと発表したと報じられました。フランスの警察とセキュリティ企業が2024年7月から進めた作戦の一部とされています。

Raspberry Robin|フォルダに見せかけたショートカット

もう一つの例は、Raspberry Robinと呼ばれるものです。セキュリティ企業のRed Canaryが2022年5月に報告し、Microsoftが2022年10月に分析を公表しました。USBメモリの中にフォルダのように見えるショートカットがあり、利用者がそれをフォルダだと思って開くと感染します。

Microsoftは、直近30日間に約1,000の組織の約3,000台で、これに関係する警告を自社の製品が検知したとしています。これはMicrosoftの製品で見えた範囲の数字で、世界全体の感染の数ではありません。Microsoftの分析は、この感染を足がかりに、その後ランサムウェアの被害に至った例があることも伝えています。USBメモリから入った小さな感染が、組織全体のデータを暗号化される被害につながりえます。大手企業のランサムウェアの経緯は大手企業のランサムウェア被害に学ぶ記事で読めます。

ネットにつながないパソコンにも、人が運べば届く

2つの例に共通するのは、USBメモリを人が運ぶことで、ネットワークでつながっていないところへも届く点です。「このパソコンはインターネットにつないでいないから大丈夫」という考えは、USBメモリを挿す習慣があれば成り立ちません。給付金の業務で使われていた委託先の開発用パソコンも、インターネットにはつながっていませんでしたが、USBメモリは頻繁に挿されていました。報告書が問題にしたのは持ち出しの危険でしたが、USBメモリを挿す同じ経路から、外の感染が入ってくることもありえます。家と職場で同じUSBメモリを使い回せば、家のパソコンと職場のパソコンのあいだにも、同じ経路ができます。

もう一つ、Windowsの仕組みにも関わる点があります。Windowsは、インターネットやメールの添付から来たファイルに「インターネットから取得した」という印を付け、Officeはこの印を見てマクロを止めたり、保護ビューで開いたりします。Microsoftの文書によると、この印はNTFSという形式で保存したファイルにだけ付き、FAT32で初期化した機器に保存したファイルには付きません。USBメモリに入れて渡されたファイルは、この警告が出ないまま開けてしまう場合があります。添付ファイルの側から見た話はISO・IMGファイルの添付を開く前に読む記事にまとめています。

追記型のディスクも、焼く前のファイルが感染していれば、それをそのまま相手に運びます。違いが出るのは、その後です。書き込んで閉じた(ファイナライズした)追記型の盤には後から書き足せないので、受け取った側のパソコンが感染していても、マルウェアがその盤に自分を書き込み、盤を通じて次の人へ広がる心配はありません。一方で、受け取った盤を開く前に検査をかけ、自動再生を止めておく、という受け取る側の作法はUSBメモリと同じです。

NTT西日本グループの点検では、16%のシステムが許可外の媒体をつなげる状態だった

USBメモリを含む記録媒体の扱いを、組織全体で数えた例もあります。NTT西日本の子会社NTTビジネスソリューションズに派遣され、コールセンターのシステムの運用保守をしていた元派遣社員が、システム管理者のアカウントを悪用し、約10年にわたって自治体や企業のお客さま情報を持ち出し、第三者に流出させた件です。2023年12月の続報の時点で928万件、69のクライアントに及びました。どの媒体に写して持ち出したかは、NTT西日本の資料には書かれていません。

NTT西日本グループはこの件の後、443のシステムを緊急に点検しました。その結果、会社が許可していない記録媒体や端末をつなげる状態だったシステムが16%、アカウントを共用していて誰が操作したか特定できないものが19%、ログを点検できていないものが29%ありました。運用の責任者の約2割は、内部の人による不正な持ち出しは起こり得ないと考えていた、と答えています。

再発防止として挙げられたのは、許可していない記録媒体の接続の禁止と、USBメモリに代わる手段の導入でした。点検の項目には、会社が許可したUSBメモリ以外を使わせない、使うなら会社が支給する暗号化と生体認証つきのもの、接続の記録を取る、使い回すときと捨てるときは元に戻せない形で消す、が並んでいます。数人の職場でも、最初の「許可したUSBメモリ以外は使わない」は今日から決められます。

書き換え・暗号化・紛失・相手の機器で、3つの手段の違いを見る

冒頭の表の4つの点は、どれも「どれが上か」で終わらせず、弱いところをどう補うかまで決めておくと、職場の決まりや家庭の約束にそのまま書き写せます。

書き換えられるか|USBメモリは挿した機器から書ける

USBメモリ、外付けのSSD、SDカードは、何度でも書き換えられる媒体です。便利さの元ですが、挿したパソコンが感染していれば、マルウェアも書き込めることを意味します。前の節のPlugXは、この性質を使って広がります。読み出すだけのつもりで挿しても、パソコンの側から見ればいつでも書き込める状態です。書き込みを禁止するスイッチが付いたUSBメモリもありますが、スイッチの働きは製品ごとに違うので、使うなら説明書で確かめましょう。

追記型のディスク(DVD-R・DVD+R・BD-R)は、一度記録した部分を物理的に書き換えたり消したりできません。ただし空きがあれば後から書き足せるので、書き込んだら盤を閉じる(ファイナライズする)ところまでが手順です。閉じていない盤をドライブに入れたままにすると、書き足しによって、見る側からはファイルが消えたり置き換わったりしたように見えることがあります。元の記録は盤に残りますが、受け取った人には分かりません。書き換え型のDVD-RW・BD-REは、名前のとおり消して書き直せます。

Windowsの標準の書き込み機能には、「USB フラッシュ ドライブと同じように使用する」形式と、「CD/DVD プレーヤーで使用する」形式があります。前者は、ファイルをドラッグするたびに書き込まれ、後から足したり消したりできる状態になります。渡す盤や控えの盤は、後者で焼いて閉じます。画面の文言はWindowsの版で違うことがあるので、項目の意味で選んでください。

転送の場合、送ったファイルはサービスの上にあり、送り手が消したり差し替えたりできます。受け手がダウンロードした写しも、受け手の機器の中では自由に書き換えられます。転送は運ぶ手段としては便利でも、書き換えられない控えにはなりません。

書き換えられるかどうかで違いが出るのは、感染を運ぶかどうかと、渡した後に中身が変わっていないと示せるかどうかの2点です。後者は、渡す前にファイルのハッシュ値(中身から計算する値で、1文字でも変われば値が変わる)を控えておけば、受け取った側でも確かめられます。ハッシュ値が同じでも、焼く前からウイルスが入っていなかったことの証明にはなりません。やり方は復元テストとハッシュで破損を見つける記事に書いています。

暗号化できるか|USBメモリは機器ごと、盤と転送はファイルを先に

USBメモリに暗号化を持たせる方法は2つあります。一つは、尼崎市の2本のように、USBメモリ自体が書き込むデータを自動で暗号化し、パスワードを入れないと開けない製品を使う方法です。もう一つは、パソコンの機能で暗号化する方法です。WindowsのBitLocker To Goは、USBメモリ・SDカード・外付けのハードディスクなどを暗号化し、別のパソコンでもパスワードかスマートカードで開けるとMicrosoftは説明しています。ただし、BitLockerはWindowsのHomeエディションでは使えないと案内されています。

Macでは、Finderのサイドバーで外付けのドライブをControlキーを押しながらクリックし、暗号化を選ぶとパスワードで守れます。このときドライブはAPFSというMacの形式に変わるので、相手がWindowsだと標準のままでは開けません。どちらの方法も、受け取る相手の機器で開けるかを、渡す前に一度試しておく必要があります。

ディスクには、盤そのものに暗号化の仕組みがありません。米国の政府機関(旧US-CERT)がバックアップの手段を比べた資料も、光ディスクに暗号化は組み込まれていないと説明しています。名簿のような個人データを焼くなら、焼く前にファイルを暗号化しましょう。Macなら標準のディスクユーティリティで、「ファイル」メニューの「新規イメージ」から「フォルダからのイメージを作成」を選び、暗号化を指定すると、パスワードのかかったディスクイメージを作れます。Windowsでは、組織で決めた暗号化の手段を使います。

ファイル転送サービスは、通信の途中は暗号化されていても、URLとパスワードを知っている人なら誰でも受け取れる仕組みです。ギガファイル便のダウンロードパスワードは半角英数の1〜4桁で、ダウンロードするときに求められるもので、ファイルの中身を暗号化するものとは役割が違います。個人データを送るなら、送る前にファイルそのものを暗号化しておき、ダウンロードパスワードとは別にファイルのパスワードを伝えましょう。

どの手段でも、パスワードの扱いが守りの強さを決めます。パスワードは案件ごとに作り、知る人を限り、関わる人が替わったら変える。尼崎市の報告書の指摘に沿った形です。伝えるときは、媒体やURLとは別の経路にします。USBメモリを手渡しするならパスワードは後から電話で、URLをメールで送るならパスワードはショートメッセージで、という分け方です。逆に、受け取る側がパスワードを忘れると、正しい持ち主でも開けなくなるので、パスワードをどこに控えるかも同じ決まりの中で決めておきましょう。

なくした・漏れたときに、取り戻せるか

USBメモリとディスクは物です。なくしてしまえば、拾った人の手元にある限り、こちらから中身を消すことも、見られるのを止めることもできません。暗号化していれば中は見られにくく、尼崎市の2本のようにアクセスの記録が残る製品なら、見られていないと示せる可能性もあります。暗号化していなければ、拾った人がパソコンに挿す、ドライブに入れる、それだけで中身が見られます。

物の紛失には、手元から消えれば気づける、という面もあります。ただ、茨城県の例では気づくまでに1週間かかりました。持ち出しと返却を台帳に書き、毎日の終わりに本数を数える決まりがあれば、気づくまでの日数は縮まります。気づくのが早いほど、探せる範囲も、届け出や報告の段取りも変わります。

URLで渡した場合は、漏れたと分かれば、送り手がファイルを消すことで、その後に新しく受け取られるのは止められます。保持期限が来れば自動で消えます。ただし、すでにダウンロードされた写しは戻せません。共有の設定を誤った場合は、本人が気づかないまま長いあいだ見られる状態が続くことがあり、ここが物の紛失との大きな違いです。

個人データをなくしたときに、個人情報保護委員会への報告が要るかどうかも、暗号化で変わることがあります。委員会のガイドラインは、高度な暗号化などで個人の権利利益を守る措置が講じられている場合は報告を要しないと整理しています。どの程度の暗号化なら当たるか、鍵の管理をどうしていたかで判断が分かれるので、報告の要否と期限はディスクやUSBを紛失したときの報告義務の記事で確かめてください。

相手の機器で開けるか

USBメモリは、パソコンならたいてい挿せますが、端子の形(USB-AかUSB-Cか)が合わなければ変換が要ります。会社や学校のパソコンでは、USBメモリの接続そのものが禁止されていることも珍しくありません。テレビのUSB端子で動画を見られるかは、テレビの機種と動画の形式で決まり、録画用の端子では再生できないものもあります。詳しくはテレビのUSB再生で動画が再生できない理由にまとめています。暗号化したUSBメモリは、さらに開く側のOSを選びます。

ディスクは、読む装置が要ります。テレビにつないだDVDプレーヤーやブルーレイの機器があれば、映像の盤は見られることが多いものの、再生できる盤の種類は機種ごとに違います。パソコンでは、ディスクのドライブが付いていない機種も珍しくなく、外付けのドライブはメーカーの販売終了の発表が続いて、選択肢が減り値上がりしています(2026年10月時点)。ファイルのまま焼いたデータの盤は、テレビのプレーヤーでは見られないことが多い点にも気をつけます。違いはデータDVDと映像DVDの違いで書いています。

転送で渡すなら、受け取る側にネットのつながる環境と、ファイルを保存する場所が要ります。暗号化したファイルを送る場合は、本番の前に中身の無い小さなファイルを同じ方法で暗号化して送り、相手が開けるかを試しておくと、期日の直前に慌てずに済みます。職場によっては、ファイル転送サービスのサイトそのものが社内のネットワークから開けないことがあります。保持期限のうちに受け取ってもらう必要もあり、大きな動画のファイルなら、ダウンロードにそれなりの時間もかかります。

結局、相手の機器の話は、渡す前に相手へ聞くのがいちばん早い方法です。何で見るか(テレビか、パソコンか、スマホか)、USBメモリや盤を入れられる機器か、職場の決まりで使えない媒体は無いか、期限のうちに受け取れるか。動画を配る場面での比べ方は動画を配るならUSBメモリとDVDのどっちかを決める記事に、USBメモリが禁止された工場へ動画の教材を届ける場面はUSBメモリ禁止の工場へ動画教材を届ける記事にあります。

ディスクを選んでも、なくせば拾った人に読まれる

ディスクを作る店としてはっきり書いておくと、データをディスクにしても、紛失の危険は減りません。盤は薄くて軽く、封筒にも入るので、USBメモリと同じように落とし、置き忘れ、捨て間違えます。違うのは、なくしたときに中身がどう見えるかと、渡す前にどこまで守れるかです。

映像のDVDやブルーレイは、パスワードをかけられない

家庭用のプレーヤーで見る映像のDVDやブルーレイには、再生の前にパスワードを求める仕組みがありません。拾った人がプレーヤーに入れれば、子どもの顔や名前の入った行事の映像も、店の防犯カメラの映像も、そのまま見られます。プレーヤーで見られることと、パスワードで閉じることは両立しません。理由と、個人情報を含むときの考え方はDVDにパスワードをかけられるかの記事に書いています。

だから映像の盤は、盤の数と行き先で守ります。作る枚数を先に決め、盤面に何の記録かと通し番号を入れ、誰に何番を渡したかと日付を記録します。受け取った側には、受け取った日と番号を返してもらいます。用が済んだ盤は返してもらうか、読めない状態に壊して捨ててもらいます。1枚足りないと気づいたとき、どこで手を離れたかを番号でたどれる状態にしておくのが、映像の盤でできる守りです。壊し方とごみの出し方はCD・DVDの捨て方の記事にあります。

配る映像の中身も、配ってよい範囲に絞ってから作ります。名札や持ち物の名前、掲示物、画面の端に映った書類など、配る相手に見せる必要の無いものが映っていないかを、盤にする前の動画で確かめます。盤にした後は、配った全部を回収しない限り直せません。

データの盤は、焼く前に暗号化する

書類や名簿、写真をファイルのまま焼くデータの盤は、パソコンのドライブに入れればファイルの一覧がそのまま見えます。前の節のとおり、盤には暗号化の仕組みが無いので、個人データを含むなら焼く前にファイルを暗号化し、パスワードは盤と別の経路で伝えます。受け取る人のパソコンでその暗号化の形式を開けるか(Macで作った暗号化のディスクイメージはWindowsでは標準のままでは開けない、など)も先に確かめます。

盤にも弱みはあります。割れ、深い傷、高温多湿の場所での劣化があり、読むにはドライブかプレーヤーが要ります。寿命の目安は、カナダ保存研究所(CCI)の表で一般的な銀系のDVD-Rが10〜20年、BD-Rが5〜10年で、これは温度と湿度の影響だけをもとにした目安です。数日から数週間で受け渡す用途なら寿命より扱いの問題が大きく、ケースに入れて曲げない、直射日光の当たる車の中に置かない、を守れば足ります。

ディスクが役に立つのは、書き換えられない控えとして残すとき

では、受け渡しでディスクが向くのはどんな場面か。追記型の盤は、書いた部分を後から消せず、ドライブから出して棚に置けばネットワークからは届きません。書き込んだ時点の中身がそのまま残るので、後で原本と比べられます。受け渡しに当てはめると、「いつ、何を渡したか」を自分の手元にも同じ形で残しておける点が役に立ちます。

たとえば、提出先に映像を渡すとき、同じ内容の盤をもう1枚作り、ハッシュ値の一覧と一緒に自分の側で保管しておく。後で「受け取った映像と違う」と言われたとき、手元の盤と照らし合わせて確かめられます。ただし、追記型の盤に入っているから改ざんが無いと認められる、という扱いになるとは限りません。証拠としての扱いは、提出先や弁護士に確かめてください。

ネットの転送|物はなくならないが、URLと設定で広がる

重要な情報は記録媒体を物理的に動かさずに移す方法を考えるよう、尼崎市の報告書は求めていました。転送を使えば、運ぶ途中でなくす危険は無くなります。そのかわり、URLを送る相手を間違える、共有の範囲を広げすぎる、といった別の誤りが起きます。

共有の設定を誤って、外から見えていた例

2023年12月には、企業のエイチームが、Googleドライブのファイルを「このリンクを知っているインターネット上の全員が閲覧できます」という設定にしていたため、93万5,779人分の個人情報を含むファイルが閲覧できる状態だったと報じられました。見つかったきっかけは、導入を検討していたセキュリティ製品の検証の報告でした。

奈良市教育委員会が2025年7月に公表した例では、市立中学校の教職員が、県域の公用クラウドにあるGoogleドライブにPTA総会の議決資料を置き、共有の範囲を誤りました。そのため、奈良県と県内39市町村の教育委員会・教職員・児童生徒が検索で見られる状態になり、生徒211人の氏名と学級、教職員27人の氏名などが含まれていました。5人のアクセスが確認されましたが、持ち出しの形跡はありませんでした。資料を置いたのは6月9日で、他の市町村の教職員からの通報で分かったのは7月15日です。

2つの例は、どちらも本人以外の誰かに見つけられています。物をなくせば本人が手元を見て気づけますが、設定の誤りは、置いた本人の画面では何も変わって見えません。共有のリンクを作るときは、相手を指定して共有し、「リンクを知っている全員」にはしない。作ったら、自分とは別のアカウントや、ログインしていないブラウザで開けないことを確かめる。設定の誤りで見えていた例と確かめ方は共有リンクの設定ミスで動画が外に出る事例の記事で詳しく扱っています。

ギガファイル便で送るなら、期限・パスワード・削除キー

登録なしで大きなファイルを送れるギガファイル便は、使い方しだいで漏れたときの範囲を小さくできます。保持期限は3・5・7・14・30・60・100日の7種類で、初期値は5日です。アップロードした後に期限を変えたり延ばしたりはできないので、相手が受け取れる日数を先に聞いてから選びます。長い期限を選ぶと、URLが漏れたときに見られる期間も長くなります。

ダウンロードパスワードを付ければ、URLだけでは受け取れなくなります。桁数が短いぶん、「1234」のような推測しやすいものは避け、URLとは別の経路で伝えます。相手が受け取ったことを確かめたら、アップロードのときに表示される削除キーで、期限より前に消します。削除キーは後から教えてもらえないので、控えておきます。

アップロードの画面で受け取り確認(ダウンロードの通知)をオンにしておくと、ダウンロードされた時刻と回数がメールで届きます。誰が受け取ったかまでは分かりませんが、送った相手が一人なのに回数が多いときは、消して送り直す判断ができます。ギガファイル便の仕組みと注意はギガファイル便の安全性と情報漏えいの防ぎ方にまとめています。

職場によっては、ファイル転送サービスやクラウドの利用に社内の決まりがあり、使える経路が決められていることがあります。決まりがあればそれに従い、無ければ、何を・誰に・どのサービスで送ってよいかを先に決めます。ファイル転送サービスの名前を使った偽の通知のメールもあるので、受け取る側は、届いたメールのリンクを開く前に、送り主へ別の手段で確かめる習慣をつけておきましょう。

どれを使うか、運ぶ中身と相手で決める

ここまでの比較を、よくある4つの場面に当てはめます。考える順番は、運ばずに済む方法が無いか、相手は何で見るか、相手がネットで受け取れるか、書き換えられない控えが要るか、の4つです。上から順に「はい」が出たところで手段が決まります。

運ばずに済むか、相手はテレビで動画を見るか、相手がネットで受け取れるか、書き換えられない控えが要るか、の順に答えて、渡す手段を決める判断の図
上から順に答え、はいが出たところで手段が決まる

名簿や口座など個人データを、別の建物へ運ぶ

最初に考えるのは、運ばずに済む方法です。行き先の端末から元のシステムやファイルを見られるなら、データを写して持ち歩く必要はありません。運ぶとしても、全部の項目が要るのか、今回の分の期間だけで足りないかを先に削ります。尼崎市の件でも、委託先がプログラムの試験に本物の市民のデータを使っていたことについて、報告書は架空のデータで足りたはずだと書いていました。運ぶ量が減れば、なくしたときに漏れうる量も減ります。

それでも運ぶなら、職場で管理している暗号化つきのUSBメモリに、必要な分だけを入れます。運ぶ人を一人にしない、寄り道をしない、行き先で写し終えたらその場で中身を消して、同行した人か受け取った人が確かめる。尼崎市が事案の後に決めた手順を、職場の大きさに合わせて縮めた形です。

この場面に、追記型のディスクは向きません。追記型の盤は書いた部分を消せないので、運び終えた後に中身を消せず、用が済んだら盤ごと壊すしかありません。「移したら消す」までが一続きの作業なら、消せる媒体のほうが手順に合います。ディスクが向くのは、渡した中身を残しておきたい場面のほうです。

委託先・取引先とデータをやり取りする

毎月の給与の計算、名簿の印刷、発送の代行など、外の会社と決まったデータをやり取りするなら、まず経路を一つに決めて、契約書や仕様書、発注のメールに書いておきます。会社で決めたファイル転送サービスやクラウドで、送る前にファイルを暗号化し、パスワードは別の経路で伝える。保持期限は相手が受け取れる日数にし、受け取りを確かめたら消す。毎回同じ手順なら、担当者が替わっても崩れにくくなります。

媒体で渡すしかない取引先もあります。その場合は、渡した媒体の番号と中身と日付を記録し、作業が終わったら返してもらうか、消したことの証明をもらいます。尼崎市が事案の後に、データ消去証明書と記憶媒体の廃棄証明書の提出を義務にしたのと同じ考えです。証明の書面があれば、年に一度「渡したデータがどこに残っているか」を見直すときの手がかりにもなります。

取引先から「USBメモリで送って」と頼まれたら

相手の指定で、USBメモリを使うこともあります。その場合も、決める前に3つ聞きます。そもそも先方の職場でUSBメモリを挿してよいのか。受け取った後は返すのか、消すのか。パスワードはどの経路で伝えるのか。禁止されていれば、送っても開けません。

相手の決まりが分からないまま送ると、受け取った人が私物のパソコンで開いたり、使い終えた媒体を引き出しにしまったままにしたりして、どちらの管理からも外れた写しが生まれます。先方の会社が使っている転送の仕組みがあるなら、そちらを提案します。媒体で送ると決まったら、暗号化つきのUSBメモリに必要な分だけを入れ、返してもらう日を決めて台帳に書きます。

行事や研修の動画を、大勢の家庭・職場へ配る

学校や園の行事、地域の催し、社内の研修の動画を何十人に配るなら、受け取る側はテレビで見ることが多く、映像のDVDやブルーレイが合います。USBメモリで配ると、テレビで再生できるかが機種と形式しだいになり、人数分のUSBメモリがそれぞれの家のパソコンで書き換えられる媒体として出回ります。URLで配る方法は手軽ですが、URLが転送されれば、配った範囲の外にまで届きます。

映像の盤で配るときの守りは、前に書いたとおり数と行き先の記録です。何枚作り、誰に何番を渡し、余った盤をどうしたか。映っている子どもや参加者の顔と名前は、配る範囲の中にとどまる前提で映っています。配る前に、配ってよい範囲を決めておきましょう。

記録の控えを、提出先や別の場所に置く

店の防犯カメラの映像を警察や保険会社に渡す、工事の記録を施主に渡す、会議の録画を関係者に渡す。こうした「記録として渡す」場面では、追記型の盤が向きます。渡す盤と同じ内容の盤をもう1枚作り、ハッシュ値の一覧と一緒に手元に残しておけば、後で何を渡したかを示せます。提出先が媒体や形式を指定しているなら、その指定に従うのが先です。

控えの盤を別の場所に置くときは、個人データが映っているかどうかで置き方を変えます。映っているなら、鍵のかかる場所に置き、持ち出せる人を決めます。家庭の動画なら、実家や別の家族に1枚預けておくだけでも、火事や水害、パソコンの故障で一度に全部を失う危険を減らせます。

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USBメモリで運ぶと決めたら|出す前・運ぶ途中・終わった後

USBメモリで運ぶこと自体は、決まりを守れば悪い選択ではありません。USBメモリはこれからも私用でも業務でも広く使われるべきものだ、と尼崎市の報告書も書いています。ここでは、報告書の指摘と、個人情報保護委員会の注意喚起、NTT西日本グループの点検の項目から、数人の職場でも回せる手順にまとめます。

USBメモリで業務のデータを運ぶときに、持ち出す前、運ぶ途中、運び終えた後に確かめる8つの項目を並べた確認表
尼崎市の報告書と国の注意喚起から、数人の職場でも回せる形にした

出す前に、中身と媒体を決める

入れるデータは、その日の作業に要る項目と期間だけにします。氏名と住所が要らない作業なら番号に置き換え、試験や練習なら架空のデータを使います。ファイル名にも、中身の重さが分かる言葉や個人の名前を入れないでおくと、拾われたときに目を引きにくくなります。

媒体は、職場が買って管理番号を付けたUSBメモリに限ります。暗号化とパスワードの機能があり、できれば誤入力が続くと使えなくなる仕組みと、アクセスの記録が残る仕組みのあるものを選びます。私物のUSBメモリは使わせません。茨城県の例のように、私物に入れた「控え」は職場の管理の外に出てしまいます。使う前には、前に使った人のデータが残っていないかを確かめます。尼崎市の当日も、USBメモリには前に誰かが使ったデータが残っていて、写す直前に消しています。

持ち出しは台帳に書いてから。列は、管理番号、持ち出す人、日時、目的、行き先、入れたデータ、返す予定の日時、消したことを確かめた人、の8つあれば足ります。目的と行き先と消去の確認は、尼崎市の側の台帳にも無かった欄です。重要なデータなら、持ち出す前に責任者の許可を取ります。

運ぶ途中は、入れ物と人で守る

入れ物を決めます。USBメモリは、鍵のかかる入れ物に入れて運びます。鍵付きの金属ケースが、尼崎市の仕様書の求めた入れ物でした。数人の職場でそこまで揃えられなくても、ポケットやかばんのすき間に直接入れず、決まった入れ物に入れて、入れ物ごと身から離さないようにします。電車の網棚に置かない、車の中に置いたまま離れない、も同じ考えです。

重要なデータは一人で運ばず、運び終えるまで寄り道をしません。報告書が指摘したとおり、作業が終わった後にUSBメモリを持ったまま会食に向かっても、誰も止めませんでした。作業の手順書に「運び終えて消すまでが作業」と一行書いておくと、同行する人も声をかけやすくなります。

郵送で送るときは、中身を書かず、パスワードを分ける

手渡しできない相手に送るなら、追跡番号の付く方法か、受け取りの記録が残る方法を選びます。封筒や送り状の品名には「名簿」「個人情報」のように中身の重さが分かる言葉を書かず、「記録媒体」程度にとどめます。封筒の中では、USBメモリが動かないよう厚紙などで挟み、ディスクはケースに入れて、曲がらないようにして送ります。

パスワードは、媒体と同じ封筒には入れません。届いたと連絡をもらってから、電話など別の経路で伝えます。届く予定の日を過ぎても連絡が無ければ、追跡番号で今どこにあるかを確かめ、相手にも受け取っていないかを聞きます。送った日、追跡番号、届いた日を台帳に書いておけば、途中でなくなったときに、どこまで届いていたかを示せます。

終わったら、その場で消して確かめる

行き先で写し終えたら、写した先でファイルが開けることを確かめてから、USBメモリの中身を消します。消したことは、同行した人か受け取った人が画面で見て確かめ、戻ったら台帳の「消したことを確かめた人」の欄に名前を書きます。作業した人の自己申告だけにしないのが、尼崎市の報告書が求めた二重の確かめです。

USBメモリを別の用途に使い回すときや捨てるときは、ふつうに削除するだけで済ませません。NTT西日本グループの点検の項目も、再利用と廃棄のときに元に戻せない形で消すことを挙げています。消し方と、媒体を捨てるときの記録の残し方は個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理の記事にまとめています。

暗号化つきのUSBメモリを選ぶなら、仕様表で5つを見る

職場で業務用のUSBメモリをそろえるとき、尼崎市の2本が持っていた仕組みは、そのまま選ぶ基準になります。同じ「パスワード付き」と書かれていても、中身は製品ごとにさまざまです。商品名や評判ではなく、仕様表と説明書で次の5つを確かめます。

一つ目は、暗号化の中身です。本体が書き込むデータを自動で暗号化するのか、方式は何か。パスワードを入れないと開けないようにしているだけのものと、中のデータそのものが暗号化されているものとでは、記憶用の部品を取り出して読まれたときの守りが違います。紛失した2本はAES 256ビットの方式で自動的に暗号化する作りで、部品を取り外して直接読もうとしても中を見るのは難しい、と報告書は書いていました。

二つ目は、パスワードを間違え続けたときの動きです。持ち出された2本は、決められた回数を続けて間違えると初期化しないと使えなくなり、初期化すると中身が全部消える作りでした。拾った人が当てずっぽうで試し続けるのを防げる一方、正しい持ち主がパスワードを忘れても中身は戻りません。元のデータを別に持っている前提で使う媒体です。

三つ目は、アクセスの記録です。残るのか、誰がどうやって読むのか。2本の記録は利用者には見えず、メーカーの開発用の道具でしか読めませんでした。なくしたときに「開かれていない」と示すには、その記録を読める相手に頼む必要があります。職場で選ぶときは、紛失したときにメーカーや販売店へどう相談できるかも、買う前に聞いておくと安心です。

四つ目は、開く側の機器です。パスワードを入れるためのソフトが本体に入っていて、そのソフトが動くOSでしか開けない製品もあります。受け取る人のパソコンがWindowsかMacか、会社のパソコンで外から持ち込んだソフトを動かせるか(管理者の設定で止められていることがあります)を、渡す前に確かめます。本体にボタンが付いていてパスワードを直接打ち込む作りのものもあり、こちらは開く側の機器を選びにくい代わりに、使う人が操作に慣れておく必要があります。

五つ目は、そろえ方です。業務用は全部同じ種類の機能つきにそろえ、番号を付けて台帳で管理します。委託先の執務室の引き出しには、機能つきのものと機能の無いものが混ざっていました。機能の無いUSBメモリを業務の引き出しに置かなければ、急いでいるときの取り違えが起きません。パスワードを案件ごとに変える手順が簡単かどうかも、決まりを続けられるかに関わります。

受け取ったUSBメモリやディスクを挿す前の設定

渡す側の手順と同じくらい、受け取る側の備えも要ります。マルウェアがUSBメモリで広がるのは、受け取った人がそれを挿して開くからです。Microsoftは、USBメモリの自動実行を無効にすること、USBなどの取り外せるドライブもウイルス検査の対象にすることを勧め、Unit 42は、知らないUSBメモリを使わないこと、見慣れないショートカットがあれば報告することを勧めています。

家庭のパソコン

Windows 11では、「設定」の「Bluetooth とデバイス」にある「自動再生」で、すべてのメディアとデバイスで自動再生を使う設定をオフにできます。オフにしない場合も、リムーバブル ドライブの動作を「何もしない」か「毎回動作を確認する」にしておけば、挿した途端に何かが動くことはありません。コントロールパネルの「自動再生」では、DVDやCDを入れたときの動作も選べます。表記はWindowsの版で少し違うので、項目の意味で探してください。

挿したら、中のファイルを開く前に検査をかけます。エクスプローラーでUSBメモリのドライブを右クリックし、「Microsoft Defender でスキャンする」を選びます。Windows 11で項目が見当たらないときは、先に「その他のオプションを表示」を選びます。受け取ったディスクも同じように検査できます。

開いた後は、見た目で気づける点があります。入れたはずのファイルが見当たらず、ドライブと同じ名前のショートカットだけがある。フォルダのアイコンなのに、種類がショートカットになっている。こうしたものは開かずに、USBメモリを抜いて、渡した人に確かめます。エクスプローラーの表示の設定でファイル名の拡張子を表示しておくと、ショートカットや実行ファイルを見分けやすくなります。Macを使っている場合も、知らないUSBメモリに入っていたアプリや書類は開かない、という作法は同じです。

職場・団体のパソコン

職場では、個人の注意より先に仕組みで止めます。会社が許可したUSBメモリ以外は使わない決まりを作り、管理者が設定できるなら、許可していない記録媒体をつなげない状態にします。WindowsにはUSBメモリやCD・DVDの読み書きを種類ごとに禁止できる組織向けの設定があり、Microsoftは組織向けに、USBから動く署名の無いプログラムを止める設定も挙げています。設定は管理する人に頼み、決まりと一緒に周知します。

給付金のサーバについて報告書が求めたのも、同じ方向でした。管理する人が解除の手続きをしたときだけ記録媒体を認識させ、誰がいつどの媒体を挿して何をしたかを記録する。数人の職場で同じ仕組みを入れるのは難しくても、「重要なデータのあるパソコンにUSBメモリを挿すときは、台帳に書いてから」という手順なら今日から始められます。

自治会やPTAなど小さな団体には、役員の私物のパソコンとUSBメモリで名簿を回しているところもあります。役員が替わるたびにUSBメモリが家から家へ移るなら、どの家に何本の写しが残っているかを、引き継ぎのたびに確かめます。引き継ぎが終わった写しは、前の役員の手元で消してもらいます。

拾ったUSBメモリは挿さずに届ける

駅や店、駐車場でUSBメモリを拾っても、持ち主を探そうとして自分のパソコンに挿すのはやめましょう。中身が誰かの個人データなら見てしまうことになり、マルウェアが入っていれば自分のパソコンが感染します。拾った物として、施設の窓口や警察に届けます。職場の机に見覚えの無いUSBメモリが置かれていたときも、挿さずに管理する人へ渡します。

追記型のディスクで渡す・控えるときの手順

書類や名簿、写真のファイルを追記型の盤で渡す、または渡した中身を控えとして残すときの手順を、自分のパソコンで焼く前提で並べます。テレビのプレーヤーで見る映像の盤は、動画を再生機で読める形に組み立てる作業(オーサリング)が要り、ファイルをそのまま焼く手順とは別です。

中身を確かめる、暗号化する、ハッシュを控える、追記型に焼く、閉じて取り出す、別の機器で確かめる、番号と記録、の7つの工程が順に矢印でつながった図
焼く前の確認と、閉じて取り出すまでを一つの手順にする
  1. 焼く前に、元のファイルが開けること、中身が正しいことを確かめる。暗号化された後や感染した後のファイルを焼けば、その状態のまま盤に残る
  2. 個人データを含むなら、ファイルを暗号化する。パスワードは盤やケースに書かない
  3. ファイルの一覧とハッシュ値(SHA-256)を作る。WindowsのPowerShellならGet-FileHash(既定でSHA256)、Macのターミナルならshasum -a 256(-a 256を付けないとSHA-1になる)
  4. 追記型の盤(DVD-R・BD-R)を選ぶ。書き換え型のRW・REは後から消せるので、渡す盤や控えには使わない
  5. Windowsの標準の書き込みなら「CD/DVD プレーヤーで使用する」の形式で焼き、盤を閉じて(ファイナライズして)ドライブから取り出す
  6. 別のパソコンで盤が開けること、ハッシュ値が一致することを確かめる
  7. 盤面に中身・作った日・番号を書き、台帳に渡した相手と日付、ハッシュ値の一覧の置き場所を記録する

容量の見積もりにも注意します。DVD-Rは1層4.7GB・2層8.5GB、BD-Rは1層25GB・2層50GBです。盤の表記は10億バイトを1GBとして数えているので、パソコンの表示では4.7GBの盤が約4.38GB、25GBの盤が約23.3GBに見え、実際に入る量はさらに少し減ります。ぎりぎりに詰めず、余裕を持って盤を分けましょう。

盤面に書くときは、盤面用のペンか、ペン先の柔らかいフェルトペンを使い、硬いペン先で強く書かないようにします。書く内容は、中身が分かる最低限の言葉と日付と番号にとどめ、個人の名前やパスワードは書きません。盤を入れたケースも、拾った人に中身の重さを知らせない書き方にします。

手順の3番目と6番目は、受け取った側にも役に立ちます。ハッシュ値の一覧を盤とは別の経路で相手に送っておけば、受け取った盤の中身が焼いたときのままかを、相手が自分で確かめられます。一覧そのものも書き換えられうるので、盤の中に入れるだけでなく、別の場所にも控えます。

預かる側に回ったときは、返すか消すかを先に決める

尼崎市の件は、データを預かった側で起きた事故でした。学校が保護者から動画の入ったUSBメモリを預かる、店がお客さまからデータを受け取る、会社が委託元から名簿の入った媒体を受け取る。自分が預かる側に回る場面は、思ったより多くあります。

受け取ったら、その場で記録します。いつ、誰から、何本(何枚)、中身はおおよそ何か、いつまでに返すか、それとも作業の後に消すか。返すか消すかを受け取るときに決めておくと、作業が終わった後に媒体が引き出しに残り続けることを防げます。挿す前の検査と自動再生の設定は、前の節に書いたとおりです。

中身を自分のパソコンに写すなら、写した場所も記録に足します。同じデータが5〜6か所に写されていた尼崎市の件を思い出してください。写すたびに、守る場所が一つ増えます。作業に要る分だけを写し、作業が終わったら、預かった媒体と一緒に、自分の側の写しも消します。

預かった媒体を、ほかの用途や別の人の作業に使い回さないことも決めておきましょう。USB経由のマルウェアは、感染したパソコンに挿されたUSBメモリへ広がります。Aさんから預かったUSBメモリを挿したパソコンに、Bさんから預かったUSBメモリを続けて挿せば、Aさんの媒体の問題がBさんに移るおそれがあります。返すときは返した日を、消すときは消した日と確かめた人を記録し、求められれば消したことを書面で伝えます。

学校や園、団体が保護者から行事の動画や写真を集めるときは、USBメモリを一人ずつ預かる方法そのものを見直せます。集める側が受け取り用の共有フォルダを用意し、提出できる人と期限を決めておけば、何十本ものUSBメモリを預かって返す手間も、取り違えも起きません。それでもUSBメモリで集めるなら、袋に名前と受け取った日を書いて1本ずつ分け、写し終えたらその日のうちに返します。

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個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理|保管・持ち出し・紛失・廃棄の決まり

家庭で写真や動画を渡すときも、同じ4つで選ぶ

家庭でも受け渡しはあります。運動会の動画を祖父母に渡す、旅行の写真を親戚に配る、昔の写真をきょうだいで分ける。職場の名簿ほど重くないように見えても、子どもの顔と名前、通っている学校、家の外観が分かる写真や動画は、なくせば同じように拾った人に見られます。

相手の機器から考えると、祖父母がテレビで見るなら、映像のDVDやブルーレイがいちばん手間がかかりません。盤やケースには題名と日付だけを書き、家の住所や子どもの学校名は書かないでおきます。USBメモリをテレビに挿して見られるかは機種と形式しだいで、URLで送る方法は、受け取る側がスマホやパソコンの操作に慣れていないと、保持期限のうちに保存できないことがあります。保存した動画がスマホの中にしか無ければ、機種変更のときに消えてしまうこともあります。

人に渡すUSBメモリには、渡すものだけを入れます。家で何年も使ってきたUSBメモリには、前に入れた書類が残っていることがあります。税の申告の控え、仕事の資料、家族の書類を撮った写真などです。渡す前に中身を全部開いて確かめ、渡すもの以外は消すか、新しいUSBメモリを使いましょう。

渡したUSBメモリを返してもらうのか、あげてしまうのかも、渡すときに決めておきます。返してもらうつもりで親戚の家に置いたままになったUSBメモリは、何年かすると、何が入っているか誰も覚えていない媒体になります。あげるなら、渡すものだけが入った状態で渡し、自分の手元には元のファイルを残します。

家族の動画の控えを実家や別の家族に預けるなら、追記型の盤が合います。書いた部分を消せず、棚に置けばパソコンやネットの不調の影響を受けません。茨城県の例のように、控えのUSBメモリを持ち歩くと控えそのものをなくすので、控えは決まった場所に置いたままにします。盤の表に何の動画か、いつの分かを書いておけば、何年か後に預け先で探すときも迷いません。

なくしたとき、挿してしまったとき|最初にすること

手順を整えていても、なくすことはあります。慌てて探し回る前に、何を確かめ、誰に知らせるかの順番を決めておくと、その後の説明が楽になります。

媒体をなくしたら

まず、最後に手元で確かめた時刻と場所を書き出し、そこから今までに通った場所を探す範囲にします。職場なら、探しながらでもすぐに責任者へ知らせます。茨城県の例では、なくしてから気づくまでに1週間、気づいてから管理職への報告まで3日かかっていました。報告が早いほど、探せる範囲も、取れる手立ても多く残ります。

知らせるときは、次のことを書き出します。中身は何で、何人分か。暗号化とパスワードはあったか。パスワードを知っている人は誰か。同じデータの写しはどこにあるか。同じパスワードをほかの媒体やシステムでも使っているなら、すぐに変えます。外でなくしたなら、警察に遺失届を出します。尼崎市の件の従業員も、最初に交番へ届けていました。

個人データを含むなら、個人情報保護委員会への報告が要るかを確かめます。会社や団体の場合、要配慮個人情報が含まれるとき、不正に使われると財産の被害が出るおそれがあるとき、不正の目的によるおそれがあるとき、1,000人を超えるとき、の4つが報告の対象で、速報は知った時点からおおむね3〜5日以内、確報は30日以内(不正の目的によるものは60日以内)です。高度な暗号化がされていれば対象から外れる場合があります。自治体や公立の学校は、それぞれの決まりに沿って報告します。

見つかった後も、なくしていたあいだに何があったかを確かめます。尼崎市は記録の解析で、松下記念病院は見つかった後の確認で、不正な利用の形跡が無いことを公表しました。暗号化とアクセスの記録が残る媒体なら、ここで確かめられることが多くなります。戻ってきた媒体は、確かめが済むまで使わずに保管し、その後は中身を消してから使うか、壊して捨てます。

家庭や団体の役員がなくした場合も、考え方は同じです。中に入っていたのが家族の写真だけなら、警察への遺失届と、同じUSBメモリに保存していたパスワードの控えなどがあれば、その変更までで足ります。PTAや自治会の名簿のように他の人の情報が入っていたなら、自分だけで抱えず、団体の代表にすぐ知らせます。団体として名簿の持ち主に知らせるか、どこかに報告が要るかは、代表と一緒に決めます。

感染したかもしれないUSBメモリを挿したら

見覚えの無いショートカットを開いてしまった、挿した後にパソコンの動きがおかしい。そう感じたら、USBメモリを抜き、そのUSBメモリをほかのパソコンには挿さないでください。パソコンは、ケーブルを抜くかWi-Fiを切ってネットワークから切り離します。職場や団体なら、すぐに管理する人へ知らせます。

次に、同じ日にそのパソコンへ挿したほかのUSBメモリを書き出します。PlugXのように、感染したパソコンに挿されたUSBメモリへ広がる型があるので、そのパソコンに挿した媒体は全部、確かめるまで使わないようにします。渡してくれた人にも、そのUSBメモリを確かめてもらうよう伝えます。

家庭で判断に迷うときは、IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティ安心相談窓口に相談できます。被害が出ている、脅しの連絡が来たといった場合は、警察の相談窓口(#9110など)に相談します。控えからファイルを戻すのは、パソコンの検査と駆除が済んでからにし、控えのUSBメモリやディスクを、感染しているかもしれないパソコンに挿さないようにします。

動画や記録の作業を外に頼むときに、先に聞いておくこと

行事の動画のディスク化、名簿の印刷や発送の代行など、データを外の店や会社に預けて作業を頼む場面もあります。このとき、自分は預ける側です。預けた先のさらに先で起きたのが、尼崎市の件でした。頼む前に聞いておくことは3つあります。

一つ目は、データの受け取り方です。共有URLか、媒体の郵送か、持ち込みか。パスワードはどう伝えるのか。二つ目は、誰が作業するかです。別の会社にさらに頼むことがあるのか。三つ目は、作業が終わった後のデータの扱いです。いつまで持っているのか、消すのか、消したことを知らせてもらえるのか。

聞いた答えは、メールのように後で見返せる形で残します。子どもの顔や名前の入った動画、名簿のような個人データを預けるなら、答えに納得できてから頼みましょう。渡すデータも、作業に要る分だけに絞ります。名簿の印刷なら印刷する列だけ、動画なら盤にする部分だけを渡せば、預け先に残るものも減ります。

答えが曖昧なまま急いで頼むと、作業が終わった後に「あのデータはどうなったか」を確かめられなくなります。期日が迫っているときほど、この3つの質問を最初のメールに書いておくと、返事を待つあいだに次の準備を進められます。

動画をディスクで渡すとき、当社にできること

当社は、大阪・梅田にある、動画のデータからDVD・ブルーレイを作る書き込み代行の店です。完成した動画のデータを受け取り、プレーヤーで再生できる形に組み立てて書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてからケースに入れてお渡しします。行事や研修の動画を配る、防犯カメラの映像や工事の記録を控えとして渡す、といった場面で使えます。注文は1枚からできます。

料金は、基本料金(DVD・1枚あたり)が1,500円(税抜)、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)も1,500円で、どちらもオーサリングと書き込み、ケースへの入れ込みを含みます。

控えを手元に残したいときや、渡す先が複数あるときは、同じ内容の焼き増しを頼めます。追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)は1,000円です。渡す盤と手元の盤を同じ内容でそろえ、別々の場所に置いておけば、後で何を渡したかを確かめられます。

どの盤が何の記録かを見分けやすくするには、盤面レーベル印刷(1枚あたり+1,000円)が使えます。当社はデザインも文字入れもしないので、題名や日付、「取り扱い注意」などの言葉を入れた画像を作って入稿してください。その画像を盤面に印刷します。1枚ずつ違う通し番号を入れたいときは、受け取った後に盤面用のペンで書き足す方法があります。

防犯カメラの映像や会議の録画のように長い記録は、収録時間の目安を先に見ておきます。1層のディスクなら、DVDで約1.5〜2時間、ブルーレイで約2時間です。それより長いときは、2層のディスクにするか2枚に分けます。見たい場面へすぐ飛べるようにするには、チャプター分け(1枚あたり+1,500円、最大50チャプター)を選び、開いた「チャプター位置の指定」の欄に、区切りたい時刻を入れます。1つ目は動画の冒頭に自動で入るので、2つ目からを指定します。

入稿は、動画の共有URLを注文フォームに貼る方法です。ギガファイル便にダウンロードパスワードを付けた場合は、URLを貼ると内容ごとにパスワードの入力欄が開き、入れたパスワードが合っているかをその場で確かめる作りになっています。ほかのサービスのパスワードの伝え方や、個人の顔や名前が映る動画を預けるときの扱いで気になる点は、注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめてください。書類や名簿をファイルのまま焼く盤を頼めるかも、同じフォームで確かめられます。

受け取りは、追跡番号のあるクリックポストでの発送か、梅田の店頭でのお渡し(当日店舗お渡しのオプション)から選べます。店頭での受け取りは予約が要らず、準備完了のメールが届いた後なら営業時間内にいつでも受け取れます。郵送を挟みたくない記録なら、店頭で受け取れます。

今週、手元のUSBメモリを数えて中身を確かめる

尼崎市の報告書から引き出せることは、特別な機器の話より、数える・書く・消すという地味な手順の話でした。まず、職場や家にあるUSBメモリを全部出して、本数を数えます。番号の無いものには番号を付け、中を開いて、個人データや仕事のデータが残っているものは、要らなければ消し、要るなら管理する場所へ移します。私物のUSBメモリに入っている仕事のデータも、同じように片付けます。

次に、パソコンの自動再生の設定を見直し、知らないUSBメモリは挿さないと家族や職場で決めます。最後に、これから誰かに渡す予定のデータを一つ思い浮かべて、運ばずに済む方法が無いか、運ぶならどの手段で、終わったら誰が消して確かめるかを決めます。この3つは、今週のうちに片付けられます。

よくある質問

Q. 尼崎市のUSBメモリ紛失で、個人情報は流出したのですか

A. 2022年11月の調査委員会の報告書は、見つかったUSBメモリと関係するパソコンやサーバを調べた結果、個人情報の漏えいは確認されなかったとしています。USBメモリは暗号化され、ログインの記録が残る製品で、紛失中にログインされた形跡はありませんでした。正確には一時紛失で、6月24日に見つかっています。

Q. パスワード付きのUSBメモリなら、なくしても安心ですか

A. 中を見られにくくはなりますが、パスワードを知る人が多い、推測しやすい、本体に貼ってある、といった扱いでは守りが弱くなります。尼崎市の件でも、パスワード自体は強いものだった一方、長く使い回されて知る人の範囲が分からなくなっていました。案件ごとに作り、知る人を限り、媒体と別に伝えます。

Q. 持ち運ぶならUSBメモリとDVD-Rのどちらが向いていますか

A. 運び終えたら中身を消したい作業ならUSBメモリ、渡した中身を書き換えられない形で残したいなら追記型のDVD-RやBD-Rが合います。追記型の盤は書いた部分を消せないので、用が済んだら盤ごと壊して処分します。どちらも、なくせば拾った人に読まれうるので、個人データは暗号化します。

Q. DVDにすればウイルスに感染しませんか

A. 焼く前のファイルが感染していれば、盤にもそのまま残ります。閉じた(ファイナライズした)追記型の盤には後から書き足せないので、受け取った側のパソコンが感染していても、その盤にマルウェアが書き込まれることはありません。受け取った盤も、開く前に検査をかけ、自動再生を止めておきます。

Q. 映像のDVDにパスワードをかけられますか

A. 家庭用のプレーヤーで見る映像のDVDやブルーレイには、再生の前にパスワードを求める仕組みがありません。拾った人がプレーヤーに入れればそのまま見られるので、作る枚数、盤面の番号、渡した相手と日付を記録して、盤の数と行き先で守ります。配る前に、映ってよい範囲も確かめます。

Q. ディスクに焼くデータを暗号化するにはどうすればいいですか

A. 盤そのものに暗号化の仕組みは無いので、焼く前にファイルを暗号化します。Macなら標準のディスクユーティリティで、暗号化したディスクイメージを作れます。Windowsでは組織で決めた暗号化の手段を使います。受け取る人の機器でその形式を開けるかを先に確かめ、パスワードは盤と別の経路で伝えます。

Q. 知らないUSBメモリを挿してしまったらどうすればいいですか

A. 中のファイルは開かずにUSBメモリを抜き、ほかのパソコンには挿さないでください。動きがおかしければパソコンをネットワークから切り離し、職場なら管理する人に知らせます。開く前ならMicrosoft Defenderで検査できます。家庭で迷うときは、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口に相談できます。

Q. USBメモリの自動再生はどこで止められますか

A. Windows 11では「設定」の「Bluetooth とデバイス」にある「自動再生」で、すべてのメディアとデバイスで自動再生を使う設定をオフにできます。リムーバブル ドライブの動作を「何もしない」か「毎回動作を確認する」にする方法もあります。表記は版で少し違うので、項目の意味で探してください。

Q. ギガファイル便で個人データを送ってもいいですか

A. 職場の決まりで認められているなら、送る前にファイルを暗号化し、ダウンロードパスワードを付け、保持期限は相手が受け取れる日数にして、受け取りを確かめたら削除キーで消します。保持期限はアップロードの後に変えられません。URLとパスワードは別の経路で伝えます。

Q. 業務のUSBメモリをなくしたら、まず何をしますか

A. 最後に手元で確かめた時刻と場所から探す範囲を決め、すぐ責任者に知らせます。中身、暗号化の有無、パスワードを知る人を書き出し、同じパスワードを使っているものは変えます。外でなくしたなら警察に遺失届を出します。個人データなら、個人情報保護委員会への報告が要るかを確かめます。

Q. 私物のUSBメモリに仕事のデータを入れてもいいですか

A. 職場の決まりで認められていない限り避けます。茨城県の例では、非常勤講師が自宅で成績などのデータを私物のUSBメモリに控えとして保存し、持ち歩くうちに紛失しました。県教育委員会は、学校の許可なく私物を使って持ち歩いたことを原因に挙げています。控えは職場が管理する場所に置きます。

Q. 動画をディスクで渡すとき、控えも作ったほうがいいですか

A. 記録として渡す映像なら、同じ内容の盤をもう1枚作って手元に残しておくと、後で何を渡したかを確かめられます。ハッシュ値の一覧も控えておきます。証拠としての扱いは提出先や弁護士に確かめてください。当社に頼む場合は、同じ内容の焼き増しを追加コピーとして注文できます。

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  • プレスリリース1

この記事の目次

  1. USBメモリ・ディスク・ネットの転送を、4つの点で比べる
  2. 尼崎市のUSBメモリ紛失|2022年6月の3日間に起きたこと
  3. 暗号化のUSBメモリだったから、読まれていないと確かめられた
  4. 報告書が挙げた原因は、運び方と後始末にあった
  5. その後も続くUSBメモリの紛失|院内・私物・暗号化なし
  6. USBメモリを通って別のパソコンへ広がるマルウェア
  7. NTT西日本グループの点検では、16%のシステムが許可外の媒体をつなげる状態だった
  8. 書き換え・暗号化・紛失・相手の機器で、3つの手段の違いを見る
  9. ディスクを選んでも、なくせば拾った人に読まれる
  10. ネットの転送|物はなくならないが、URLと設定で広がる
  11. どれを使うか、運ぶ中身と相手で決める
  12. USBメモリで運ぶと決めたら|出す前・運ぶ途中・終わった後
  13. 暗号化つきのUSBメモリを選ぶなら、仕様表で5つを見る
  14. 受け取ったUSBメモリやディスクを挿す前の設定
  15. 追記型のディスクで渡す・控えるときの手順
  16. 預かる側に回ったときは、返すか消すかを先に決める
  17. 家庭で写真や動画を渡すときも、同じ4つで選ぶ
  18. なくしたとき、挿してしまったとき|最初にすること
  19. 動画や記録の作業を外に頼むときに、先に聞いておくこと
  20. 動画をディスクで渡すとき、当社にできること
  21. 今週、手元のUSBメモリを数えて中身を確かめる
  22. よくある質問

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