この記事の要点
研究データの保存期間は、文部科学省のガイドラインのもとで、各研究機関が規程で決めます。日本学術会議の回答は、論文などの発表から、資料は10年間、試料や標本などは5年間の保存を原則としています。
論文ごとに、生データ・解析コード・条件の記録・論文の版をまとめ、どこに何があるかを台帳に載せます。ファイルは長く開ける形式にし、中身の分かる名前を付けます。
置き場所は2か所以上にし、1つはネットワークから切り離します。どの媒体もいずれ読めなくなるので、決まった間隔で読めるかを確かめ、読めるうちに移し替えます。
学生の卒業や教員の異動・退職の前に、データの所在と引き継ぎ先を決めます。日本学術会議の回答は、研究室主宰者がバックアップを取って保管するか、所在を確かめて追えるようにしておく措置を挙げています。
人を対象とする研究のデータは、倫理審査を経た研究計画書と、研究対象者への説明に書いた保管・廃棄の方法を守ります。データ管理計画(DMP)の扱いは資金配分機関ごとに違い、論文の根拠データは原則公開とされています。
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論文を出したあとの測定データ、修了した学生のパソコンに残った解析のフォルダ、異動する教員の机にある外付けHDD。研究データを何年、何を、どう残すかは、研究室の誰もがいつか向き合う問いです。
研究データの保存期間は、国の指針のもとで各研究機関が規程で決めます。文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日)は、研究機関に、研究者に一定期間研究データを保存させ、必要な場合に開示させる規程を設けるよう求めています。年数の目安は、日本学術会議の回答「科学研究における健全性の向上について」(平成27年3月6日)が示しています。回答は、論文などの発表から、実験データなどの研究資料は10年間、試料や標本などの有体物は5年間の保存を原則としています。
残し方は、論文ごとに生データ・解析コード・条件の記録・論文の版をまとめて台帳に載せ、2か所以上(1つはネットワークから切り離す)に置いて、読めるかを点検しながら移し替えます。卒業・異動・退職の前には引き継ぎ先を決め、個人情報を含むデータは、倫理審査を経て約束した保管と廃棄を守ります。
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研究データの保存期間は何年か|資料は10年・試料は5年が原則 生データを示せないと、不正の疑いを覆せないことがある 論文ごとに残すもの|生データ・解析コード・条件の記録・論文の版 ファイルの形式と名前は、10年後に開けて探せるように決める 置き場所は2か所以上、1つはネットワークから切り離す 媒体の寿命と、点検・移し替えの間隔 学生の卒業・教員の異動や退職の前にしておく引き継ぎ データ管理計画(DMP)とは?JSPS・JST・AMEDの扱いとオープンアクセス 残りの3項目を見る 個人情報と倫理審査で約束した保管・廃棄を守る 研究室で今年度から始める手順 よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
研究データの保存期間は何年か|資料は10年・試料は5年が原則
文部科学省のガイドラインは、年数そのものを決めていません。保存や開示の対象となるデータの内容、期間、方法は、データの性質や研究分野の特性などを踏まえるのが適切だとしています。そこで文部科学省が日本学術会議に審議を頼んだ事項の1つが「実験データ等の保存の期間及び方法」で、その回答が次の原則です。
対象
日本学術会議の回答の原則
資料
文書・数値データ・画像など。論文などの発表から10年間が原則。電子のデータは、メタデータの整理とバックアップで、再利用できる形に。
紙の資料
少なくとも10年が望ましい。保管場所の制約など、止むを得ない事情があれば、合理的な範囲で廃棄もできる。
試料・標本
発表から5年間が原則。装置などの「もの」も同じ。保存が本質的に難しいものや、保存に多大な費用がかかるものは除く。
医療・ 社会調査 など
データの扱いに特段の規程があれば、それに従う。
回答の年数は「原則」で、保存が不可能か著しく難しいもの、保存の費用や場所が膨大になるものなど、社会通念上やむを得ない理由があれば例外になります。年数は発表から数えるので、2026年10月に発表した論文の資料なら、原則の10年間は2036年10月までです。それを超える対象や期間を研究者が自主的に決めることは妨げない、とも回答は書いています。
文部科学省は、この回答を「ガイドラインを運用するための参考となる指針」と位置づけ、各機関に、趣旨を踏まえて実情に合った規程を作るよう求めています。試料や装置も保存を義務づける研究データに含まれ、何を対象にするかは各機関が判断します(文部科学省のFAQ)。実際に何年残すかは、所属する大学や研究機関の規程で確かめてください。
決まっていることと、研究室で決めること
1本の論文のデータにも、決める人の違う4つの決まりが重なります。
国の指針で決まっていること:研究機関が、研究データの保存と開示を研究者に義務づける規程を設けること
研究機関の規程で決まること:保存の対象、年数、方法。国立大学法人などには、データポリシーの策定も求められてきた(内閣府の基本的な考え方)
別の決まりが加わるもの:人を対象とする生命科学・医学系研究の試料と情報(倫理指針)、資金配分機関との取り決め
研究室で決めること:論文ごとのまとめ方、置き場所、台帳、点検の時期、引き継ぎ
日本学術会議の回答は、資料の保存の主な責任は、それを生み出した研究者自身にあるとし、研究室主宰者と研究機関には、保存の啓発と環境の整備を求めています。回答が挙げる環境の例はデータをバックアップするサーバーの提供で、内閣府の基本的な考え方も、信頼性の高いストレージを整えるよう研究機関に求めています。
生データを示せないと、不正の疑いを覆せないことがある
保存の年数が研究者自身に関わってくるのは、研究不正の疑いを受けたときです。文部科学省のガイドラインは、研究データを一定期間保存し、第三者が検証できるようにしておくことは、不正行為の抑止になり、研究者が万一疑いを受けたときの自己防衛にもなるとしています。故意の破棄や不適切な管理による紛失は、決して許されないとも書いています。
告発への対応の決まりは、競争的資金や運営費交付金、私学助成など、文部科学省の予算で行われる研究が対象です。告発を受けた機関は予備調査で、論文などの公表から告発までの期間が、分野の特性に応じた合理的な保存期間や、所属機関の定める保存期間を超えているかも見ます。
本調査では、疑いを受けた研究者が、生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬などが存在しないために、疑いを覆すだけの証拠を示せないときも、特定不正行為(捏造・改ざん・盗用)と認定されます。ただし、注意義務を果たしていたのに災害などで示せなくなった場合や、存在しないのが、そうした保存期間を過ぎたためである場合は、この限りではありません。
文部科学省のFAQは、研究データは作った時点で所属する研究機関の規程にのっとって保存する必要があるとし、例を挙げています。機関の規程で保存期間が5年のとき、3年目に退職し、4年目にデータがなくなっていたら、その不存在によって疑いを覆せない場合は不正行為と認定され得る、というものです。逆に、研究をしていたときの所属機関の保存期間を過ぎてデータがないことは、認定で不利に扱われないとされています。まず自分の機関の保存期間を知っておくことです。
保存期間の中でデータを失うと、退職後でも不正と認定され得る
論文ごとに残すもの|生データ・解析コード・条件の記録・論文の版
日本学術会議の回答は、保存を義務づける範囲を、論文などの発表に使った資料に置いています。使う予定のないデータまで包括的に義務づけるのは現実的でない、という考えです。年数も発表から数えるので、論文を単位に束ねれば、何をいつまで残すかがはっきりします。内閣府の基本的な考え方は、研究データに、研究ノートやメモ、実験・観測・シミュレーションから直接得たデータ、それを加工したデータ、論文のエビデンスとなるデータが含まれるとしています。
1本の論文について、次のものを1つのフォルダにまとめます。
生データ:装置や調査から直接得た、加工する前のデータ
加工したデータ:解析に使った、整形や選別のあとのデータ
解析コードと実行環境の記録:プログラム、設定ファイル、使ったソフトやライブラリの名前と版
条件の記録:実験ノートの該当ページ、装置と設定、取得した日時、調査の条件
論文の版と図表:投稿した版、査読を経た著者最終稿、掲載された版と、図表の元のファイル
試料と標本の所在:保管している場所と番号
説明書き(README):何がどこにあり、どの条件で取ったか、使うときの注意
条件の記録は、回答が実験ノートに求めることと重なります。操作の記録やデータを取った条件などを十分に書き、あとから改変できない形で作り、一次情報の記録として保管する、というものです。著者最終稿を残すのは、機関リポジトリへの登録で、出版社が著者最終稿だけを認める場合があるためです(日本学術振興会)。
台帳(メタデータ)に書く項目
どこに何があるかが1人の記憶にしかなければ、その人がいなくなった時点で探せなくなります。回答はメタデータの作成と管理を求め、内閣府の基本的な考え方はメタデータの共通項目を示しています。これに置き場所と点検の記録を足すと、研究室の台帳になります。
データの名称(「測定結果」のような中身の分からない名前は避ける)と説明
論文の題名と発表日、保存の期限(発表日から数えた年)
データを作った人、管理する人と連絡先
公開・共有・非公開の別(公開したならその場所)
置き場所(2か所以上)と、ファイルの形式・数・大きさ、中身から計算するハッシュ値
点検した日と結果、移し替えた日と移し先
卒業や異動のときの引き継ぎ先
台帳は表計算の1ファイルで足ります。研究室の共有の保存先に置き、台帳そのものも2か所に残します。どの記録をどの媒体のどこに置いたかを台帳などで組織として共有し、特定の個人だけがアクセスできる状態にしない、という国立公文書館のガイドブックと同じ考え方です。
ファイルの形式と名前は、10年後に開けて探せるように決める
10年たつと、読めなくなる原因は媒体だけではありません。国立公文書館のガイドブックは、ソフトウェアの提供企業が形式の対応をやめ、ファイルを表示できなくなる場合も考えられるとしています。装置の独自の形式で出た生データはそのまま残し、開くのに要るソフトの名前と版を説明書きに書いて、テキスト形式(CSVなど)に書き出した控えも同じフォルダに置きます。
論文の本文や図、報告書、記録の動画には、国の決まりが参考になります。内閣府の通知は、長く保存する行政文書を、特段の事情がない限り「標準的フォーマット」で作るのが望ましいとしています。挙がっているのは、文書がPDF/AやPDF1.7、Word・Excel・PowerPoint(2007以降)です。画像はJPEG2000・PNG・JPEG、音声・動画はMP3・MPEG2・MPEG4です。詳しくは公文書・自治体の電子記録の長期保存 にまとめました。
名前の付け方は、次のような形にしておくと、並べたときに年の順になり、中身も分かります。
論文ごとのフォルダ(例:2026_論文の略称)
01_生データ
02_加工したデータ
03_解析コード
04_条件の記録
05_論文と図表
README(説明書き)
ファイル名の例:20260415_装置名_試料番号_生データ.csv
国立公文書館のガイドブックは、①や㈱、㌔のような環境依存文字を使わないこと、ファイル名を長くしすぎないことを挙げています。「最新」「最終版」のように、あとで意味の変わる言葉も、日付と版の番号に置き換えます。
見落としやすいのはパスワードです。ガイドブックは、パスワードをかけて保存すると、やがて誰もパスワードを知らない事態になりかねないとして、アクセスの権限を付けたり外したりして守るほうが適切だとしています。学生が自分のパスワードをかけたまま卒業すると、中身が残っていても開けません。
読めなくなる原因は媒体だけではない。形式・名前・パスワードも決めておく
置き場所は2か所以上、1つはネットワークから切り離す
日本学術会議の回答は、研究者は誰でも重要なデータや文書のファイルのバックアップを取らなければならないとしています。内閣府の基本的な考え方は、公開していない研究データを、所属機関で整えられたセキュリティの確保された信頼性の高いストレージで保存するよう求めています。日々使う置き場所は、個人のパソコンではなく、所属機関のストレージや研究室の共有の保存先にします。
控えの持ち方は、元と2つのバックアップの3つを持ち、2種類の媒体に分け、1つは別の場所に置く「3-2-1」が目安です(米国の政府機関US-CERT向けの手引き)。組み方の例は3-2-1バックアップの組み方 にあります。
控えのうち1つは、ネットワークから切り離しておきます。警察庁によると、ランサムウェアでバックアップのデータまで暗号化される事例が多数確認されています。警察庁は、バックアップはこまめに取り、ネットワークから切り離してオフラインで保存するよう勧めています。外付けHDDなら、取るときだけつないで外しておく形です。取り方と世代の残し方はランサムウェア対策のオフラインバックアップ にまとめました。
論文を出して中身が確定したデータなら、DVD-RやBD-Rも控えの1つになります。どちらも一度しか書き込めないディスクです(マクセル)。US-CERT向けの手引きは、書き換えのできないディスクのデータは誤って消されることがなく、元のファイルがあとで壊れたりマルウェアに感染したりしても影響を受けないとしています。容量は1層でDVD-Rが4.7GB、BD-Rが25GBなので、論文1本分の束や台帳の控えには向きますが、大きな測定データの全量には向きません。
所属機関がGakuNin RDMを導入していれば、日々の置き場所に使えます。国立情報学研究所の研究データ管理サービスで、データを保存してのバージョン管理、共有範囲のアクセス制御、メタデータの登録ができます。時刻認証事業者のタイムスタンプで、データがある時刻に存在したことを証明できる証跡管理の機能もあります。使えるかどうかは所属機関に確かめます。
3-2-1を目安に、控えの1つはネットワークから切り離す
媒体の寿命と、点検・移し替えの間隔
論文の発表から10年という期間は、BD-Rの平均の寿命の目安と同じか、それより長い期間です。記録型の光ディスクの平均の寿命は、一般的なDVD-R(銀合金の反射層)で10〜20年、BD-Rで5〜10年です。温度と湿度の影響だけで比べた、カナダ保存研究所の目安です。
HDD・SSD・USBメモリ・SDカードには、光ディスクのような平均の寿命の年数が公表されていません。バッファローは、HDDは使う環境や状況によって数年で寿命になることがあるとし、USBメモリやSDカードは長く放置するとデータが揮発して消えることがあると案内しています。年数の根拠はHDD・SSD・USBメモリ・光ディスクの寿命比較 に書きました。
そのため、置いたままにせず、読めるかを確かめて移していきます。国立公文書館のガイドブックは、今の技術では永久に同じ媒体で保存し続けることはできないとして、定期的に媒体を移すことを前提に計画するよう勧めています。ディスクを抜き取って読めるかを確かめる点検は、JIS Z 6017などが5年程度を目安にしています(国立国会図書館の報告書による)。つないでいない外付けHDDのような控えも、時期を決めてつなぎ、ファイルが開けるかを確かめます。
10年の保存期間は、BD-Rの寿命の目安と同じか長い。点検して移し替える
移し替えたときや点検のときは、元と同じものが入っているかを、ファイルの数と大きさ、ハッシュ値で照らし合わせます(国立公文書館のガイドブック)。ハッシュ値はファイルの中身から計算する値で、中身を1文字でも変えると値が変わり、2つのファイルのハッシュ値が同じなら中身も同じです(Microsoftの説明)。
論文の束を確定したときに計算して台帳に書いておけば、何年後の点検でも同じ方法で確かめられます。WindowsとMacでの計算のしかたは動画を証拠として保存する方法|ドラレコ・防犯カメラ・スマホの映像を消さずに残す で説明しています。
学生の卒業・教員の異動や退職の前にしておく引き継ぎ
日本学術会議の回答は、研究者が異動や転職・退職の機会に資料を整理・廃棄することは十分考えられるとして、廃棄せずに残すデータの範囲と措置を定めるよう求めています。学生の卒業・修了や研究員の転出に伴うデータの扱いについても、研究室主宰者や研究機関の長の責任の範囲を定める必要がある、としています。
回答が示す研究室主宰者の措置は、グループの研究者が転出・退職するときに、その人の研究に関わる資料のうち保存すべきものについて、(a)バックアップを取って保管するか、(b)所在を確かめて追跡できるようにしておくことです。研究室主宰者自身が転出・移動するときは、研究機関の長がこれに準じた措置をとるとされています。各研究機関がガイドラインを定めて、研究者の採用のときに覚書を交わす仕組みも考えられる、とも書いています。
卒業・異動・退職の前に、次のことを本人と一緒に済ませておきます。
発表した論文ごとの束がそろっているかを確かめ、未発表のデータの置き場所も決める
私物のパソコンや外付けHDD、個人で契約したクラウドにだけあるデータを、研究室の保存先へ移す
パスワードをかけたファイルは解除するか、管理する人に引き継ぐ
紙の実験ノートと、試料・標本の保管場所を確かめる
台帳に引き継ぎ先と、卒業・異動後の連絡先を書く
研究室の移転や改組、主宰者の退職のように、研究室そのものが動くときも同じ手順です。台帳と論文ごとの束がそろっていれば、受け入れる研究室や部局は、何をいつまで残せばよいかを台帳で追えます。
データ管理計画(DMP)とは?JSPS・JST・AMEDの扱いとオープンアクセス
データ管理計画(データマネジメントプラン、DMP)は、研究の過程でどのような種類のデータを、誰がどのように取得し、どう管理・利活用するかを整理した研究データの管理計画書です(内閣府の基本的な考え方)。原則として研究を始める前に作り、進み具合に応じて更新します。資金配分機関は2023年度までに、新規公募分すべてにDMPとメタデータの仕組みを入れることとされ、扱いは機関ごとに違います。
配分機関
DMPの扱い
JSPS(科研費)
2024年度以降に実施する課題で作る。提出は不要。研究の終了後もデータを管理し、公開したデータのメタデータを報告書で出す。
JST
研究代表者などが作り、JSTの求めに応じて提出する。保存・管理、公開・非公開、公開範囲などの方針を書く。
AMED
研究開発の開始時に提出が義務。毎年度の契約時にも提出する。データの種類や保存場所、管理責任者も書く。
JSPSは日本学術振興会、JSTは科学技術振興機構、AMEDは日本医療研究開発機構です。DMPの保存の欄には、研究室で実際に回している置き場所、規程による保存の期間、管理する人、研究が終わったあとの置き場所を、台帳と同じ言葉で書きます。内閣府の基本的な考え方も、プロジェクトの終了後を想定して、機関リポジトリや分野別リポジトリなどの保存場所を前もって検討しておく必要があるとしています。
論文の根拠データは原則公開、ただし公開と保存は別の仕事
内閣府の基本的な考え方は、公的資金による論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とし、それ以外の成果としての研究データも可能な範囲で公開するのが望ましいとしています。一方で、個人情報、企業の秘密情報、研究の新規性、安全保障などの観点から留意すべきデータは非公開とし、時限付きで非公開にする期間(エンバーゴ)を設けることも想定しています。
令和6年2月16日には、「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」が決まりました。2025年度から新たに公募する対象の競争的研究費について、学術論文と根拠データを、学術雑誌への掲載後即時に機関リポジトリなどの情報基盤へ載せることを義務づけるものです。根拠データは、掲載誌の執筆要領などで透明性や再現性の確保のために公表を求められる研究データです。科研費も2025年度の新規公募分から対象です(日本学術振興会)。
公開する根拠データは、生データや解析コードの全体と同じとは限りません。リポジトリに載せたから保存も済んだ、とはせず、公開した版と手元の束の両方を台帳でつないでおきます。保存用の元のデータと公開用のデータを分けて作る考え方は、地域のデジタルアーカイブの作り方 でも同じです。
個人情報と倫理審査で約束した保管・廃棄を守る
日本学術会議の回答は、個人データのように法的な規制や倫理上の配慮が必要なものは、その規制やガイドラインに従うとしています。人を対象とする研究では、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が保管と廃棄を定めています。
研究計画書に、試料・情報の保管と廃棄の方法を書く(第7)。研究対象者に説明する事項にも、保管と廃棄の方法が入っている(第8)
研究責任者は、研究機関の長が作る手順書に基づいて保管の方法を研究計画書に書き、漏えい・混交・盗難・紛失などが起こらないよう管理する(第13)
研究機関の長は、情報等をできるだけ長く保管されるよう努める。侵襲(軽微なものを除く)を伴い介入を行う研究では、少なくとも、研究の終了の報告日から5年か、結果の最終の公表の報告日から3年のいずれか遅い日まで保管されるよう監督する(第13)
廃棄するときは、特定の個人を識別できないようにする措置を講じる(第13)
指針は令和8年8月27日に一部改正され、同年12月1日から施行されますが、ここに挙げた点の中身は改正の前後で同じです。倫理審査を経た研究計画書と、研究対象者への説明に書いた保管と廃棄の方法は、研究室にとっての約束です。控えにしたディスクや外付けHDDにも同じデータが入っているので、廃棄の時期が来たら、台帳で控えまで含めて洗い出し、記録を残して処分します。
個人情報の入った媒体の扱いは、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)が具体的です。施錠できるキャビネットや書庫に保管し、持ち運ぶときは暗号化やパスワードで中身が容易に分からないようにし、捨てるときは復元できない手段で行って記録を残します。DVD-RやBD-Rは中身を消せないので、ディスクそのものを読めないように壊します。
詳しくは個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理 とCD・DVDの捨て方 にまとめました。大学や研究機関での扱いは、所属機関の規程と担当部署で確かめてください。
控えのディスクや外付けHDDにも同じデータが入っている。まとめて洗い出す
研究室で今年度から始める手順
全部を一度にそろえなくても、次の順に進めれば、いま残っているデータから守れます。
所属機関の研究データの保存に関する規程とデータポリシーを読み、年数・対象・置き場所の決まりを書き出す
研究室の台帳を作り、発表した論文ごとに、データの置き場所と保存の期限を載せる
日々の置き場所を所属機関のストレージや研究室の保存先に移し、ネットワークから切り離した控えをもう1つ作る
卒業・修了や異動の予定がある人と、引き継ぎを済ませる期日を決める
控えを開いて確かめる時期と、ハッシュ値を照らし合わせる時期を、研究室の年間の予定に入れる
実験の手順や学会発表を撮った動画を、研究室の外の人にテレビで見てもらうなら、映像のDVD・ブルーレイにする方法もあります。当社は、完成した動画のデータからDVD・ブルーレイを作る、大阪市北区・梅田の書き込み代行の店です。動画を上げたギガファイル便のURLを注文フォームに貼っていただければ、プレーヤーで再生できる形に組み立てて書き込みます。実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか店舗でお渡しします。
DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080に作り直した見るための複製で、元の動画ファイルとは別のものです(データDVDと映像DVDの違い|テレビで再生できない原因と見分け方 )。研究の記録としての元の動画ファイルは、この記事の方法で別に残してください。注文は1枚からで、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)1,500円です。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。
よくある質問
Q1. 研究データの保存期間は何年ですか? 所属する研究機関の規程で決まります。文部科学省のガイドラインは研究機関に保存と開示の規程を求め、年数はデータの性質や分野の特性を踏まえるとしています。目安は日本学術会議の回答で、論文などの発表から、資料は10年間、試料や標本などは5年間の保存が原則です。医療分野や社会調査など、特段の規程があるものはそれに従います。
Q2. 「研究データの保存等に関するガイドライン」は、どこで確かめればいいですか? 国の指針は文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」で、研究機関に研究データの保存・開示の規程を求めています。各機関の規程やガイドラインは、所属機関のウェブサイトや研究公正の担当部署で確かめます。日本学術会議の回答にある「研究資料等の保存に関するガイドライン」は、機関が規程を作るときの参考として示されたものです。
Q3. 試料や標本も、10年保存しなければいけませんか? 日本学術会議の回答では、試料や標本などの「もの」は、論文などの発表から5年間の保存が原則です。不安定な物質や実験で消費される試料、保存に多大な費用がかかる生物系の試料などは例外とされています。何を保存の対象にするかは、目的や費用、場所を考えて各機関が判断します(文部科学省のFAQ)。
Q4. 学生が卒業するとき、研究データはどうすればいいですか? 卒業の前に本人と一緒に、論文ごとのデータの束をそろえ、私物のパソコンや外付けHDDにだけあるデータを研究室の保存先へ移します。パスワードは解除するか引き継ぎ、台帳に引き継ぎ先と連絡先を書きます。日本学術会議の回答も、バックアップを取って保管するか、所在を追えるようにする措置を挙げています。
Q5. 教員が異動や退職をすると、研究データはどうなりますか? 文部科学省のFAQでは、研究データは作った時点の所属機関の規程にのっとって保存し、その期間内にデータがなくなって疑いを覆せなければ、退職後でも不正行為と認定され得るとしています。研究室主宰者の転出のときは、研究機関の長が保存の措置をとります(日本学術会議の回答)。置き場所と引き継ぎ先は、異動の前に所属機関と決めておきます。
Q6. データ管理計画(DMP)とは何ですか? 研究の過程でどのような種類のデータを、誰がどのように取得し、どう管理・利活用するかを整理した管理計画書です(内閣府の基本的な考え方)。原則として研究の開始前に作り、進み具合に応じて更新します。科研費は作成して提出は不要、JSTは求めに応じて提出、AMEDは開始時の提出が義務と、扱いは資金配分機関ごとに違います。
Q7. 論文の根拠データは公開しなければいけませんか? 内閣府の基本的な考え方では、公的資金による論文のエビデンスとしての研究データは原則公開で、個人情報や企業の秘密などに留意すべきデータは非公開とします。2025年度から新たに公募する対象の競争的研究費では、論文と根拠データを、掲載後すぐに機関リポジトリなどへ載せる義務があります。
Q8. 紙の実験ノートは、どう残せばいいですか? 日本学術会議の回答は、実験ノートに操作の記録やデータを取った条件などを十分に書き、あとから改変できない形で作り、一次情報の記録として保管するよう求めています。紙の資料も少なくとも10年の保存が望ましく、可能なものは電子化して探しやすくすることを勧めています。原本の場所を台帳に書き、論文の束には該当ページの写しを入れます。
Q9. 倫理審査を受けた研究のデータは、いつ廃棄できますか? 研究計画書に書き、研究対象者に説明した保管と廃棄の方法に従います。倫理指針は、侵襲(軽微なものを除く)を伴い介入を行う研究では、研究の終了の報告日から5年か、結果の最終の公表の報告日から3年のいずれか遅い日まで、少なくとも保管するとしています。所属機関の規程も確かめ、廃棄は特定の個人を識別できない方法で、控えも含めて行います。
Q10. 研究データをDVDやブルーレイに保存してもいいですか? 控えの1つとしてなら使えます。DVD-RやBD-Rは一度しか書き込めず、書いたデータは誤って消されることがありません。ただ、容量は1層でDVD-Rが4.7GB、BD-Rが25GBで、平均の寿命の目安は一般的なDVD-Rで10〜20年、BD-Rで5〜10年です(カナダ保存研究所)。5年程度を目安に読めるかを確かめ、読めるうちに移し替えます。
参考にした公式の情報
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指針や方針、各機関の決まりは、改正や改訂で変わります。この記事は、2026年9月28日時点の各機関・各社の公式の情報をもとにしたものです。
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