この記事の要点
証拠にしたい動画は、撮った機器から元のファイルをそのまま取り出し、別の媒体にもコピーして、どちらにも手を付けずに残します。これが原本になります。
撮った日時・場所・機器と、取り出した日時・方法を書き残します。取り出してすぐにハッシュ値(SHA-256)を控えておくと、コピーが元と同じかを後から確かめられます。
該当の場面の切り出しや圧縮、明るさの補正は、原本ではなくコピーの側で行います。
渡すときは、警察・保険会社・弁護士が指定する方法に合わせ、同じものを手元にも残します。原本の扱いと出し方は、提出先に確かめてください。
テレビで見られる映像のDVDに作り直したものは、720×480のMPEG-2に圧縮し直すため、原本と同じではありません。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
1枚から 作れます。 同じ 内容の 追加は 1枚1,000円 (税抜)です。
1枚1,500円(税抜)から・ 1枚から注文できます
駐車場で車の傷に気づいて、ドライブレコーダーに何か映っていないか確かめたい。店先でのもめごとが、防犯カメラに残っているはず。言い争いの様子を、とっさにスマホで撮った。こうした動画を証拠として残すときに先に守りたいのは、映像の中身より、元のファイルそのものです。上書き、編集、送る途中の圧縮で、元のファイルはあっけなく失われます。
証拠映像を保存するには、撮った機器から元のファイルをそのまま取り出し、別の媒体にもコピーして、どちらにも手を付けずに残します。ドライブレコーダーは記録先が一杯になると古い映像から上書きするので、コムテックやユピテルの説明書は、事故のあとは電源を切ってmicroSDカードを抜き、保管するよう求めています。
テレビで見られる映像のDVDに作り直したものは、原本と同じではありません。原本として残すのは、機器から取り出したままのファイルです。
原本として残すのは取り出したままのファイル。映像のDVDは見るための複製
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
動画を証拠として残す4つの手順 ドライブレコーダーの映像は、電源を切ってからカードを抜いて守る 防犯カメラの映像は、書き出し機能で元の形式のまま取り出す スマホで撮った動画|編集せず、元のファイルを取り出す 取り出したファイルは、コピーを作って原本として残す ハッシュ値とは?コピーが元と同じかをWindows・Macで確かめる 撮った日時・機器と、取り出した日時・方法を書き残す 警察・保険会社・弁護士に渡すとき|指定された方法に合わせる 残りの3項目を見る 映っている人の肖像・個人情報と、SNSに載せる前に考えること 何も起きていない日に、自分の機器で確かめておくこと よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
動画を証拠として残す4つの手順
どの手順でも、元のファイルに手を加えません。
手順
やること
①原本を作る
元のファイルをそのまま取り出し、別の媒体にもコピーする。どちらにも手を付けない。
②書き残す
撮った日時・場所・機器と、取り出した日時・方法を書く。ハッシュ値も控える。
③加工はコピーで
切り出し・圧縮・明るさの補正は、コピーの側で行う。
④渡す
警察・保険会社・弁護士が指定する方法に合わせる。同じものを手元にも残す。
急ぐのは①です。ドライブレコーダーも防犯カメラも、記録先が一杯になると古い映像から消していきます。スマホの動画も、容量を空けようと消してしまえば、iPhoneなら「最近削除した項目」に30日間残ったあと、iCloudとほかのデバイスからも消えます。②から④は、原本さえ確保できていれば、落ち着いて進められます。
この記事で書くのは、元のファイルを失わないための一般的な残し方です。民事裁判では、証拠をどう評価するかを、裁判所が自由な心証で判断します(民事訴訟法247条)。個別の事案で原本をどう保管し、どの形で出すかは、弁護士、警察、保険会社に確かめてから決めてください。
ドライブレコーダーの映像は、電源を切ってからカードを抜いて守る
ドライブレコーダーは、走っているあいだの映像を約30秒ずつのファイルに区切って、microSDカードに記録し続けます。コムテックのZDR-750Dも、ユピテルのY-250dも、この作りです。カードが一杯になると、古いファイルから消して新しい映像を書き込みます。どのくらいで一杯になるかはカードの容量と画質の設定しだいで、Y-250dの説明書では、付属の32GBのカードに入る常時録画は初期設定で約108分。事故のあとも走り続ければ、2時間ほどでその場面が上書きされる計算です。
説明書の項目
2機種に共通の記載
1ファイルの長さ
約30秒ごとに区切って記録する。
衝撃を検知したとき
そのときのファイルを別のフォルダに残す。
初期設定で一杯になると
常時録画もイベント録画も、古いものから上書き。
衝撃が弱いとき
記録されないことがある。常時録画を確かめる。
事故のあと
電源を切ってから、microSDカードを抜いて保管する。
日時
GPSを受信して 合わせる。
イベント録画も、初期設定では上書きされる
強い衝撃を検知すると、そのときの映像を別のフォルダに残すのがイベント録画です。ZDR-750Dは、衝撃のあったファイルと、その前か後のファイルの2つを「GSENSOR」フォルダに保存します。Y-250dは、録画ファイルを「EVGS」フォルダに移します。手で残すこともでき、ZDR-750Dはマニュアル録画スイッチ、Y-250dはMODEボタンを押すと、そのときのファイルが別のフォルダに入ります。
ただ、イベント録画の場所にも上限があります。2機種とも、買ったときの設定では、イベント録画も一杯になると古いものから上書きされます(ZDR-750Dの「上書き禁止設定」はOFF、Y-250dの「上書きモード」は「全て上書き」)。Y-250dに付属の32GBのカードで、初期設定のまま残せるイベント記録は約72件です。衝撃が弱いと記録されないこともあり、2社の説明書はどちらも、そのときは常時録画の映像を確かめるよう書いています。
上書きを防ぐ設定もあります。上書きしない設定にした録画は、上限に達すると記録が止まる代わりに、古い映像が消えなくなります。
ZDR-750Dには、再生画面で選んだファイルに「保護」をかけて上書きを防ぐ機能もあり、保護できるのは最大10件です。ただし、カードの初期化やオールリセットをすると、保護したファイルも含めて消えます。強い衝撃の約30秒後に録画を自動で止める「緊急録画停止」も用意されています。説明書は、事故のあとカードを抜かずに車を動かしたり、修理工場で電源が入ったりすると、大事な記録が不意に上書きされるおそれがあるとしています。
カードを抜くのは、電源を切ってから
上書きを確実に止めるには、電源を切ってからmicroSDカードを抜いて保管します。 コムテックもユピテルも、説明書の最初のほうでそう求めています。ZDR-750Dは車のキースイッチをOFFにしてLEDが消えたのを確かめてから、Y-250dは電源ランプが3秒以上消えたのを確かめてから抜きます。書き込みや読み込みの途中で抜き差しすると、データの破損や消失、カードの故障の原因になる、とZDR-750Dの説明書にあります。
カードを抜いたまま車を使う日が続くなら、説明書やメーカーの対応表で確かめた別のカードを入れておきます。抜いたカードはケースに入れ、何のカードか分かるように書き添えて保管します。
パソコンへは、フォルダごと名前を変えずにコピーする
カードの中は、記録の種類ごとにフォルダが分かれています。ZDR-750Dの場合、常時録画はNORMAL、衝撃はGSENSOR、手動はMANUALといったフォルダに入ります。ファイルは、録画を始めた日時をもとにした名前のAVIファイルです(例: 20260209_172345_F_S_Nor.AVI)。Y-250dの映像ファイルはMOV形式です。
カードリーダーでパソコンにつなぎ、フォルダの構成もファイル名も変えずに丸ごとコピーします。ファイル名の日時は機器の時計が元になっているので、名前を変えると、どの時刻の記録かをたどりにくくなります。
パソコンでの再生には、メーカーの専用ソフトがあります。ZDR-750Dは専用のビューワソフトで加速度などの情報と一緒に映像を見られ、説明書は、ほかの再生ソフトでは正常に再生できない場合があるとしています。Y-250dは専用ソフト(PC Viewer DRY TypeK)のほか、Windows標準の「映画&テレビ」でも再生できると説明書にあります。見るときも、原本ではなくコピーのほうを開きます。
映像の時刻と、正しい時刻の差を書き留める
映像に入る日時は、機器の時計が元です。2機種ともGPSを受信すると日時が合う仕組みで、Y-250dは手で合わせてもGPSの日時が優先されます。ZDR-750Dの説明書には、映像に日時を書き込むタイムスタンプ機能は、処理の状況で少し時間がずれることがある、という注意もあります。機器の画面に出ている今の日時をスマホの時計などと見比べ、「何秒進んでいた」「何分遅れていた」と記録に書いておくと、あとで映像の時刻を読み替えられます。
上書きを止めるのが先。コピーと時刻の記録は、カードを抜いてから落ち着いて
防犯カメラの映像は、書き出し機能で元の形式のまま取り出す
防犯カメラのレコーダーも、記録先が一杯になると古い映像から上書きします。マスプロ電工のワイヤレスカメラセット(WC3A7M)は、出荷時の設定が「上書き録画する」で、空きがなくなると日付の古いデータを消しながら新しいデータを記録します。何日分残るかは、台数・画質・記録先の容量・設定で大きく変わるので、自分の機器で、いちばん古い録画の日付を確かめてください。
取り出すときは、レコーダーの書き出し(コピー)機能で、機器が書き出す形式のまま、USBメモリーなどに出します。i-PROのネットワークディスクレコーダー(WJ-NUシリーズ)が書き出すのは独自形式(n3r)かMP4で、独自形式を書き出すと専用のビューワーソフトも一緒にコピーされます。書き出すときに改ざん検出用のコードを付けておくと、ビューワーソフトで再生するときに改ざんの有無を確かめられます。書き出したファイルの名前は変えないように、と説明書にあります。
機器の時計が合っていなくても、直すのは書き出しが終わってからにします。i-PROの説明書には、時刻合わせで同じ時刻の画像が記録されると、コピーが正常に行われない場合があると書かれています。マスプロ電工の説明書によると、内部の時計には月に約1分の誤差が出ます。
時計のずれを直すのは、書き出しが終わってから
店舗や事業所、マンションの管理組合などが置いているカメラの映像を警察や当事者に渡すときは、個人情報保護法の決まりがかかります。書き出しの手順、警察の照会への答え方、当事者から「見せてほしい」と言われたときの考え方は、防犯カメラの映像を保存・提出するには|上書き前の書き出しと警察・当事者への渡し方 にまとめました。テナントの共用部や隣の家など、自分が管理していないカメラに映っているはずのときは、管理している人に早めに連絡し、上書きされる前に残してもらえるかを相談します。
スマホで撮った動画|編集せず、元のファイルを取り出す
スマホで撮った動画は、撮った端末の中にあるファイルが原本の候補です。気をつけたいのは、写真アプリには編集や情報の書き換えの機能があり、送り方によっては、届くファイルが元のものと変わることです。
写真アプリで、トリミングや日時の調整をしない
iPhoneの写真アプリでは、ビデオの始まりと終わりを切り詰めるトリミングができます。「ビデオを保存」を選ぶとトリミングしたものだけが残り、あとから「元に戻す」でオリジナルに戻せます。「ビデオを新規クリップとして保存」なら両方が残りますが、新しいクリップのほうはオリジナルに戻せません。iCloud写真を使っていると、行った編集はほかのデバイスにも同期されます。
情報の画面では、撮影日時や場所を「日付と時刻を調整」「位置情報を調整」で書き換えることもできます。証拠にしたい動画は、情報の画面で撮影日時や撮影に使ったデバイスを見て書き留めるだけにして、何も変えないでおきます。見やすくしたいときは、元のバージョンを残したまま編集できる「複製」を先に作り、その複製の側で手を加えます。
AndroidのGoogle フォト アプリで動画を切ったり補正したりしたときは、[保存]をタップすると編集した動画のコピーが保存される、とGoogleのヘルプは説明しています。
iPhone・Androidから元のファイルを取り出す
iPhoneは、外付けドライブやメモリカードをつないで、写真アプリから「未編集のオリジナルを書き出す」ことができます。編集済みの動画でも、この方法で書き出されるのは未編集のオリジナルです。パソコンにUSBで読み込む場合は、「設定」>「アプリ」>「写真」で「元のフォーマットのまま」を選んでおきます。選んでいないと、HEVCの動画がH.264に変換される場合がある、とAppleは説明しています。
Androidは、USBでパソコンにつなぎ、端末に出る[このデバイスをUSBで充電中]の通知から[ファイル転送]を選ぶと、ファイルをパソコンに移せます(表記は機種とAndroidのバージョンによります)。
iCloud写真で「iPhoneのストレージを最適化」がオンだと(初期設定はオン)、元の動画はiCloudにあり、iPhoneには容量を節約した版が残る仕組みです。取り出す前に、「設定」で自分の名前>「iCloud」>「写真」>「iPhoneストレージ」と進み、「オリジナルをダウンロード」を選んでおきます。
Google フォトは、バックアップの画質を「保存容量の節約画質」にしていると、1080pを超える動画を1080pに縮めて保存し、1080p以下でも字幕など一部の情報が失われる可能性があります。端末から消してしまい、Google フォトにしか残っていないときは、動画を開いて情報アイコンの[詳細]で、バックアップの画質とサイズを確かめます。
LINEやメールで届いた動画は、元のファイルと同じとは限らない
撮った人からLINEで受け取った動画を、そのまま原本にするのは避けます。LINEの公式のヘルプには、トークで送った動画の画質や、撮影日時などの情報がどう扱われるかは書かれていません。アルバムについては、オリジナル画質で追加できるのは編集していない写真だけで、動画はオリジナル画質にならないと案内されています。オリジナル画質の写真でもメタデータの一部が消える可能性があることも、案内されています。トークの画像や動画はLINEのサーバーに一定期間しか保存されず、期間が過ぎると再生できなくなります。
iPhoneの写真アプリからAirDrop・メッセージ・メールなどで送ると、受け取る機器に合わせて、HEVCの動画がH.264などに変わって共有されることがあります(Apple)。共有の「オプション」でファイルフォーマットを「現在」にすると変換せずに送れ、元のファイルに編集履歴とメタデータを付けて送る「すべての写真データ」は、AirDropでだけ使えます。
Gmailは、個人用アカウントの添付の上限が25MBで、超えると添付の代わりにGoogle ドライブのリンクがメールに入ります。iPhoneのメールで大きなビデオを送るMail Dropは、受け取った人が30日以内にダウンロードする必要があります。
確かなのは、撮った人から、撮った端末にある元のファイルを受け取ることです。受け取ったファイルが元と同じかどうかは、後の節で説明するハッシュ値を比べれば分かります。LINEで送った動画が元と同じか確かめる方法と、元の画質のまま渡す方法はLINEで送った動画の画質 にまとめました。
編集・書き換え・送る途中の変換で、元のファイルは変わってしまう
取り出したファイルは、コピーを作って原本として残す
取り出したファイルは、見返す前にコピーを作ります。原本は、機器から取り出したままのファイルです。 名前を変えず、編集ソフトで開いて上書き保存することもしません。見る・切り出す・人に渡すといった作業は、すべてコピーで行います。
コピーは種類の違う媒体に分けて置きます。カナダ保存研究所(CCI)は、情報のコピーを3つ作り、少なくとも2種類の媒体に分け、1つは別の場所に置くよう勧めています。パソコンの内蔵ドライブ、外付けのHDDやSSD、データとして書き込んだDVD-RやBD-Rを組み合わせる形で、組み方は写真・動画の長期保存はクラウドとDVDのどっち?|3-2-1バックアップの組み方 にまとめています。
デジタルのファイルをファイルのまま写したコピーは、元の品質を保ちます(NIST)。コピーで画質が落ちる場合と落ちない場合の見分け方は、劣化しないコピーとは|画質が落ちる場合・落ちない場合と劣化コピーの意味 で説明しています。
ディスクに書き込むなら、あとから消せない形で
DVD-RやBD-Rのように一度しか書き込めないディスクは、あとから書き換えられません。US-CERT向けにまとめられたバックアップの手引きによると、書き換えのできないディスクのデータは誤って消されることがなく、元のファイルがあとでおかしくなったりウイルスに感染したりしても、その影響を受けません。DVD-RWやBD-REのような書き換え型は、消去して使い直せるディスクです。
一度しか書き込めないディスクでも、書き込み方によっては、あとからファイルを消したり変えたりできる形になります。Windowsのエクスプローラーで書き込むときは、「ディスクの書き込み」画面で「CD/DVD プレーヤーで使用する」を選びます。画面の説明のとおり、この形式は書き込んだあとに個別のファイルを編集したり削除したりできません。もう一方の「USB フラッシュ ドライブと同じように使用する」は、いつでも保存・編集・削除ができる形式です。MacのFinderで「ディスクを作成」したディスクも、作成したあとは項目を変更できません。
こうして書き込んだディスクはデータのディスクで、DVDプレーヤーで映像として見るものではありません。確かめるときは、パソコンでファイルを開きます。データのディスクと映像のDVDの違いはデータDVDと映像DVDの違い にまとめました。
ディスクもHDDも、長く置けば傷みます。CCIの資料にある平均の寿命は、一般的なDVD-R(銀合金の反射層)で10〜20年、BD-Rで5〜10年です。保管と点検の考え方はCD・DVD・ブルーレイの寿命 とHDD・SSD・USBメモリ・光ディスクの寿命比較 に書いています。
切り出しや圧縮は、コピーの側で行う
該当の場面だけを切り出す、容量を小さくする、暗い映像を明るくする。見せるための加工は、原本とは別のコピーで行います。加工したファイルには、「元のファイル名の○分○秒から○分○秒までを切り出したもの」のように、どのファイルのどこから作ったかを書き添えます。切り出しや圧縮をしたファイルは中身が元とは別のものになり、ハッシュ値も変わります。原本と加工した版を取り違えないよう、フォルダも名前も分けておきます。
原本には手を付けず、見る・加工する・渡す作業はすべてコピーで行う
映像のDVDに作り直すと、元のデータと同じではなくなる
テレビで見られるDVDにして渡せば親切に思えますが、原本の代わりにはなりません。DVDプレーヤーで再生する映像のDVD(DVD-Video)は規格で形が決まっていて、国内向けは画面が720×480、映像はMPEG-2です(オーサリングソフトの仕様)。スマホやドライブレコーダーの動画をこの形にするには、映像を圧縮し直す(再エンコードする)ことになります。圧縮の方式が変わり、フルHDなどで撮った映像なら画素の数も減ります。
作り直したディスクに入るのは、VIDEO_TSフォルダのVOBファイルなど、DVDの規格に合わせて組み立て直した別のファイルです。中身が別なので、ハッシュ値で元と同じかを確かめることもできません。確認のためにテレビで見る必要があるなら、見るための複製として別に作り、機器から取り出したままのファイルを原本として残します。作り直すと中身の何が変わるのかは、動画ファイル形式の違い の、再エンコードの節で説明しています。
家族や関係者がテレビで見る分を作るとき
当社(ディスクメーカー)は、大阪・梅田でDVD・ブルーレイの書き込み代行をしている小さな店です。MP4・MOVなどの動画ファイルをお預かりし、DVDプレーヤーやブルーレイレコーダーで見られる映像のディスクに組み立てて書き込みます。実際のプレーヤーで再生を確かめてから、発送するか店舗でお渡しします。
DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080で作るので、できあがるのは上に書いた「見るための複製」で、原本の代わりにはなりません。原本とそのコピーは、ご自身で残してください。お引き受けできるのは、撮った本人の映像か、権利者の了解がある映像です。証拠として出す原本の保存や提出の仕方は、弁護士・警察・保険会社に確かめてください。
ハッシュ値とは?コピーが元と同じかをWindows・Macで確かめる
コピーが元のファイルと同じかどうかを、値で確かめる方法がハッシュ値です。ハッシュ値はファイルの中身から計算する値で、Microsoftの説明では、ファイルの内容を1文字でも変えると値が変わり、2つのファイルのハッシュ値が同じなら中身も同じです。ファイル名や拡張子を変えても、中身が変わらなければ値は変わりません。
計算の方式はいくつかあり、ここではSHA-256を使います。WindowsのGet-FileHashが何も指定しないときに使う方式で、値は16進数の64桁です。MD5とSHA-1について、Microsoftは攻撃や改ざんからの保護が要るファイルには使わないよう注意しています。米国国立標準技術研究所(NIST)も、SHA-1を2030年末までに使うのをやめるよう呼びかけています。
Windowsで計算する(Get-FileHash・certutil)
[スタート]メニューを開いて「Windows PowerShell」と入力し、Windows PowerShellを開きます。Get-FileHashのあとに、調べるファイルの場所と名前(パス)を「”」で囲んで入力し、Enterキーを押します。例は、Eドライブとして読み込んだドライブレコーダーのカードのファイルです。
Get-FileHash “E:\NORMAL\FRONT\20260209_172345_F_S_Nor.AVI” | Format-List
「Algorithm」の欄にSHA256、「Hash」の欄に64桁の値が表示されます。パスの最後を「*」にすると(例: “E:\NORMAL\FRONT\*”)、フォルダの中のファイルをまとめて計算できます。certutilを使う場合は、方式の名前(SHA256)を最後に付けて指定します。
certutil -hashfile “E:\NORMAL\FRONT\20260209_172345_F_S_Nor.AVI” SHA256
Macで計算する(shasum)
Finderで「アプリケーション」の中の「ユーティリティ」フォルダを開き、「ターミナル」をダブルクリックします。次のように入力したら、最後に半角のスペースを1つ入れ、調べるファイルをターミナルのウインドウにドラッグ。Appleの説明のとおり、ドラッグするとファイルの場所(絶対パス)が入力されるので、そのままReturnキーを押します。
shasum -a 256
64桁の値のあとに、ファイルの場所と名前が表示されます。shasumは「-a 256」を付けないとSHA-1で計算するので(macOSのマニュアル)、この指定を忘れないようにします。
ハッシュ値で分かること、分からないこと
原本とコピーの両方で計算して、64桁がすべて同じなら、コピーは元と同じ中身です。NISTが証拠を扱う人向けにまとめた手引き(NIST IR 8387)も、ハッシュ値を確かめれば、コピーが元と同一だと言えるとしています。一方で、分かるのは、計算したときから中身が変わっていないかどうかです。計算する前に手が加えられていても、値からは分かりません。
同じ手引きは、ハッシュ値はできるだけ集めた時点に近いうちに取り、値は証拠に触れられる人が書き換えられない形で残すよう勧めています。その方法として、メールで送る方法や、手で書き留めて保管する方法を挙げています。取り出したらすぐに計算し、値を記録に書き写して、原本とは別の場所に置きます。ハッシュ値を控えたからといって、証拠としての扱いが決まるわけではありません。
分かるのは計算した時から変わっていないかだけ。だから取り出したらすぐに計算する
撮る時点で本物であることを確かめられるようにする機能も出てきています。iPhone 18 Pro・18 Pro Maxの「Appleリファレンス画像」は、写真を撮るときにメインカメラのセンサーのデータを署名付きで残す機能です(初期設定はオフ)。あとで写真と見比べれば、編集や変更がないかを確かめられます。Appleの説明は写真についてのもので、ビデオには触れていません。
撮った日時・機器と、取り出した日時・方法を書き残す
記録は、映像がどこから来て、誰がどう扱ってきたかを、あとから答えられるようにするためのものです。NIST IR 8387も、ファイルの元の出どころと、どう作られ、どう渡されたかを書き残すことを挙げています。日付を入れたメモで構いません。次の項目をそろえておきます。
書くこと
例・書き方
撮った日時
映像の表示時刻と、正確な時計との差。
場所
住所や交差点名、駐車場の区画など。
撮った 機器
メーカーと型番。前後どちらのカメラか。
取り出した日時と人
日付・時刻と、作業した人の名前。
取り出し方
カードリーダーでコピー、機器の書き出し機能など。
ファイル
フォルダ名、ファイル名、大きさ。
ハッシュ値
SHA-256の64桁の値。
保管先
原本とコピーを置いた媒体と場所。
渡した記録
日時、相手の所属と氏名、渡したもの。
民事訴訟法は、文書は「その成立が真正であることを証明しなければならない」と定めていて(228条1項)、この規定は電磁的記録の証拠調べにも準用されます(231条の3)。どう示すかは事案ごとに違うので弁護士に確かめますが、記録があれば、いつ・どの機器から・誰が・どう取り出したかを尋ねられたときに答えられます。
事業者が警察の照会に応じて情報を渡すときについて、個人情報保護委員会のQ&Aは、求めた捜査官の役職と氏名を確かめ、提供したことを後日説明できるようにしておくことが必要だとしています。個人の場合も、渡した相手と日時を同じ記録に書き足しておけば、どのコピーがどこにあるかを見失いません。
警察・保険会社・弁護士に渡すとき|指定された方法に合わせる
渡す形式や媒体は、受け取る側が決めます。警察、保険会社、弁護士から指定があればそれに従い、なければどの形で渡せばよいかを先に尋ねます。どの相手に渡すときも、渡すのはコピーで、同じものを手元に残しておきます。渡したファイルのハッシュ値と、渡した日時・相手も記録に書き足します。
警察に渡すとき(任意提出と領置)
あおり運転などの被害にあったとき、警察庁は、安全な場所に避難して車の外に出ずに110番通報するよう呼びかけ、ドライブレコーダーを有効に使うよう勧めています。警察に映像を渡す形の一つが任意提出です。刑事訴訟法221条は、持ち主などが任意に提出した物を、警察官などが領置(預かること)できると定めています。
領置の手続きは、警察の捜査の決まりを定めた犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)にあります。なるべく提出者から任意提出書を出してもらったうえで領置調書を作り、押収品等目録提供書を交付する、という決まりです。受け取った書面は、取り出しの記録と一緒に保管します。
提出した物の所有権を手放す意思を示したときは、任意提出書にその旨を書くか、所有権放棄書を出すことも定められています。microSDカードやUSBメモリーを返してほしいなら、渡すときにそう伝えておきます。
同じ規範には、2026年5月21日に施行された改正で、ネットワークを通じて警察官が管理する記録媒体に記録する方法で任意に提供されたデータ(任意提供電磁的記録)を保管するときの決まりも加わりました。どの方法で受け取るかは、警察の指示に従います。カードそのものを求められたときに、先にコピーを取ってよいかは、その場で警察官に確かめてください。
保険会社に渡すとき
保険会社に映像を送る形式と方法は、担当者に確かめます。テレビで見られるDVDを求められた場合も、それは見るための複製として作り、機器から取り出したままのファイルを別に残しておきます。映像に映っている相手の車や通行人の扱いも、担当者と相談しておきます。
形式は受け取る側が決める。渡したものと相手は、取り出しの記録に書き足す
裁判の前に証拠を確保する「証拠保全」
裁判を起こす前でも、証拠を先に調べておく手続きがあります。民事訴訟法の証拠保全です。234条は、「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情がある」と裁判所が認めるときに、申立てによって証拠調べができると定めています。
訴えを起こす前の申立て先は、文書を持っている人や電磁的記録を利用する権限を持つ人の居所、または検証物の所在地を受け持つ地方裁判所か簡易裁判所です(235条2項)。相手を特定できないときでも申し立てることができ(236条)、証拠調べの期日には申立人と相手方が呼び出されます。ただし、急ぐ場合はこの限りではありません(240条)。
動画のようなデータを裁判で調べる手続きも、民事訴訟法にあります。電磁的記録(電子的方式などで作られ、電子計算機による情報処理に使われる記録。3条の7第3項)の証拠調べは、その記録を提出するか、利用する権限を持つ人に提出を命じるよう申し立てて行い、提出は記録媒体を出す方法か、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使う方法によります(231条の2。2026年5月21日に施行された改正で加わった規定)。申立てが要るか、どの形で出すかは事案ごとに違うので、弁護士に相談して決めてください。
映っている人の肖像・個人情報と、SNSに載せる前に考えること
証拠の動画には、相手のほかに、通りがかった人や車のナンバーが映り込むことがあります。映像を扱うときは、その人たちの権利にも関わります。
個人情報保護法の義務がかかるのは、個人情報データベース等を事業に使う個人情報取扱事業者です(16条2項)。店舗や会社の防犯カメラ、社用車のドライブレコーダーの映像を警察や当事者に渡すときの決まりは、防犯カメラの節で挙げた記事に書きました。
個人情報保護委員会のQ&Aは、本人を判別できる写真の画像を展示する場面について、第三者提供の制限(27条1項)に違反するおそれはないと解されるとしています。そのうえで、プライバシーの権利や肖像権の侵害にあたる場合もある、と注意しています。人に見せるコピーでは、関係のない人の顔やナンバーをどう扱うかを先に決めておきます。
名誉毀損や損害賠償の問題になり得る
相手の顔や車のナンバーが分かる動画を、「この人にぶつけられた」といった言葉と一緒にSNSに載せると、今度は載せた側が責任を問われるおそれがあります。刑法230条1項は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した者を、「その事実の有無にかかわらず」罰すると定めています。
公共の利害に関する事実で、目的が専ら公益を図ることにあり、真実だと証明された場合は罰しない、という特例(230条の2)はありますが、あたるかどうかは弁護士に確かめる必要があります。民法709条・710条は、他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に、財産以外の損害も含めて賠償する責任を定めています。
映像は、まず警察・保険会社・弁護士に見せ、公開するかどうかは弁護士に相談してから決めます。iPhoneの写真アプリから写真やビデオを共有すると、日付・時刻・場所・デバイスなどのメタデータも共有することになる、とAppleは注記しています。人に渡すコピーや公開するファイルでは、映像に加えて、付いている情報にも気を配ります。個人情報の入った媒体の扱いは個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理 で説明しています。
何も起きていない日に、自分の機器で確かめておくこと
いざというときに説明書を探し始めると、操作に迷っているあいだに上書きが進みます。何もない日に、次のことを確かめておきます。
機器
確かめること
ドラレコ
説明書で、上書き・イベント録画・保護の項を読む。画面の時刻を正しい時計と比べる。カードの抜き方を覚えておく。
防犯カメラ
いちばん古い録画の日付を見る。数分の範囲で書き出しを試す。
スマホ
情報の画面で撮影日時を見る。iCloud写真の最適化の設定や、Google フォトの画質を確かめる。
パソコン
手元の動画でハッシュ値を一度計算してみる。
何かが起きたら、まず上書きを止めて元のファイルを取り出し、コピーを作ってハッシュ値と記録を残します。そのうえで、警察・保険会社・弁護士に、映像があることと、どの形で渡せばよいかを尋ねます。
よくある質問
Q1. ドライブレコーダーの映像はいつまで残り、どのくらいで上書きされますか? カードの容量と画質の設定で変わります。ユピテルのY-250dの説明書では、付属の32GBのカードに入る常時録画は初期設定で約108分で、それを超えると古いファイルから上書きされます。事故のあとは、電源を切ってからmicroSDカードを抜いて保管するよう、コムテックとユピテルの説明書はどちらも書いています。自分の機種の目安は、説明書の録画時間の表で確かめます。
Q2. イベント録画に残っていれば、消えませんか? 消えることがあります。コムテックのZDR-750DもユピテルのY-250dも、買ったときの設定では、イベント録画の領域が一杯になると古いものから上書きします。衝撃が弱くて記録されないこともあります。上書きしない設定や、ZDR-750Dの最大10件までの「保護」もありますが、確実なのは電源を切ってカードを抜くことです。
Q3. 映像をDVDに焼いたら、証拠として使えなくなりますか? 証拠としての扱いは提出先や裁判所が決めることで、この記事では言い切れません。確かなのは、テレビで見る映像のDVDに作り直すと、720×480のMPEG-2に圧縮し直すため、元のファイルとは別のものになることです。ファイルをデータとしてDVD-RやBD-Rに書き込んだコピーなら、中身は元と同じで、ハッシュ値で確かめられます。出し方は提出先に確かめてください。
Q4. ハッシュ値が同じなら、改ざんされていない証明になりますか? 2つのファイルのハッシュ値が同じなら、中身も同じです(Microsoftの説明)。ただ、分かるのは計算したときから変わっていないかどうかで、それより前に手が加えられていたかは、値からは分かりません。取り出したらすぐに計算し、値を別の場所に控えます。証拠としての評価は、民事裁判では裁判所が判断します(民事訴訟法247条)。
Q5. スマホの動画をLINEで送ってもらいました。それを原本にしていいですか? 避けたほうが確かです。LINEのヘルプには、トークで送った動画の画質や撮影日時などの情報がどう扱われるかが書かれていません。撮った人に、撮った端末から元のファイルを受け取り、LINEで届いたものとハッシュ値を比べれば、同じかどうかが分かります。トークの動画はLINEのサーバーに一定期間しか保存されないので、早めに保存しておきます。
Q6. 警察にmicroSDカードを渡すよう言われたら、コピーを取ってから渡せますか? 警察の指示に従います。渡す前にコピーを取ってよいかは、その場で警察官に確かめてください。任意に提出した物を警察が預かる領置では、なるべく任意提出書を出してもらい、領置調書を作り、押収品等目録提供書を交付する、と犯罪捜査規範109条にあります。受け取った書面は保管し、カードを返してほしいなら、渡すときに伝えておきます。
Q7. 保険会社には、どんな形で映像を渡せばいいですか? 担当者の指定に合わせます。指定がなければ、どの形で渡せばよいかを先に尋ねます。渡すのはコピーにして、原本は手元に残し、渡したファイルのハッシュ値と渡した日時を記録しておきます。テレビで見る映像のDVDを求められた場合も、それとは別に、機器から取り出したままのファイルを残しておきます。
Q8. 映っている人の顔は、ぼかしてから保存したほうがいいですか? 原本はぼかさずに残します。ぼかしや切り出しは、人に見せるコピーの側で行い、どのファイルから作ったかを書き添えます。人に見せたり公開したりするときは、映っている人のプライバシーや肖像権への配慮が要ります(個人情報保護委員会のQ&A)。SNSに載せるかどうかは、弁護士に相談してから決めます。
Q9. 消してしまったスマホの動画は、戻せますか? iPhoneで削除した写真やビデオは、「最近削除した項目」に30日間残り、その間なら復元できます。AndroidのGoogle フォトでゴミ箱に入れた写真や動画も、30日がたって削除されるまでは復元できます。どちらも期間を過ぎると戻せないので、気づいたらすぐに確かめます。
Q10. 証拠の動画は、いつまで保管すればいいですか? 事案によって違うので、弁護士や保険会社に確かめて期限を決めます。長く残すなら、媒体の寿命も考えます。CCIの資料にある平均の寿命は、一般的なDVD-R(銀合金の反射層)で10〜20年、BD-Rで5〜10年です。どの媒体も1つに任せず、種類の違う媒体にコピーを置き、ときどき読めるかを確かめます。
参考にした公式の情報
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条番号は、2026年9月時点で施行されている条文によるものです。個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布され、施行に向けて政令・規則・ガイドラインが整えられているところで、施行後は内容や番号が変わることがあります。機器やアプリの画面と動きは、機種や版で変わります。この記事は、2026年9月25日時点の各公式ページと取扱説明書の記載をもとにした一般的な説明です。個別の判断は、弁護士や提出先に確かめてください。
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