この記事の要点
総会議事録は区分所有法第42条 で議長に作成義務があり、書面なら議長と出席区分所有者2人の署名が要る。求められる中身は逐語録ではなく、議事の経過の要領と結果である。
保管と閲覧は第42条第5項が第33条を準用 し、利害関係人の請求を正当な理由なく拒めない。保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示する義務がある。
作成しない・虚偽記載・閲覧拒否などには20万円以下の過料 (区分所有法第91条)が定められ、組合ではなく議長や理事など個人に科される。
録音・録画には法令上の作成義務も保管義務もない ため、残すか消すか何か月持つかを組合の細則で先に決めておかないと、請求のたびに判断が割れる。
管理会社の帳簿は5年 、業務状況調書等は備置きから3年 で保存期間が切れる(適正化法施行規則)。組合の記録を委託先任せにすると手元に残らない。
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総会が終わって議事録に署名をもらい、ひと息ついたところに「過去3年分の理事会議事録を見せてほしい」という書面が届く。あるいは売却予定の区分所有者から依頼された不動産会社が、修繕積立金の積立状況と大規模修繕の予定を照会してくる。そのとき、どこまで見せる義務があり、何を断ってよいのかを、その場で判断できるでしょうか。
管理組合の記録は、法律が作成と保管を命じているものと、運営上の都合で残しているものが混ざっています。総会の議事録は前者で、条文に義務も罰則も書かれています。一方、総会の録音データは後者で、扱いを決めているのは各組合の細則だけです。この区別があいまいなまま「記録は全部残す」「録音は毎回消す」と運用すると、開示請求と引き継ぎの両方でつまずきます。
総会の議事録は、利害関係人から請求があれば、正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒めません。管理組合の文書の保管年限は、区分所有法にも標準管理規約にも定めた規定がなく、各組合が細則で決める建て付けです。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
総会の議事録は法律上の義務、録音は義務ではない 議事録の開示を拒めるのは「正当な理由」があるときだけ 録音で足りる場面と映像が必要な場面|数字と文言は音声、開票と提案の場は映像 理事が毎年替わる前提で、年度末に記録の「一式」を確定させる 管理会社に預けても、保管責任は理事長に残る 保管年限に法定の基準はない|永久・10年・5年の3層に分けて細則で決める よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
総会の議事録は法律上の義務、録音は義務ではない
区分所有法第42条第1項は、集会(総会)の議事について、議長が書面または電磁的記録により議事録を作成しなければならないと定めています。同条第2項が求める中身は「議事の経過の要領及びその結果」で、発言をそのまま起こした逐語録までは求められていません。書面で作成する場合は、議長と集会に出席した区分所有者2人が署名します(同条第3項)。押印については、条文に定めがありません。電磁的記録で作る場合は、署名に代わる措置を執ることとされています(同条第4項)。
マンション標準管理規約(単棟型)第49条第2項は、署名する2人を「議長の指名する2名の総会に出席した組合員」と具体化しています。誰に署名してもらうかで毎回もめる組合は、総会の議事に入る前に議長が2名を指名し、その事実を議事録の冒頭に書いておくと運用が安定します。
保管場所の掲示まで含めて義務になっている
保管と閲覧については、第42条第5項が第33条を準用します。したがって管理者(標準管理規約では理事長)が議事録を保管し、利害関係人から請求があったときは正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒めません。加えて、保管場所を建物内の見やすい場所に掲示する義務もあります(第33条第4項)。
掲示板に「総会議事録の保管場所:管理室書棚」の一行が出ていない組合は、この時点で条文どおりの状態ではありません。年度がわりの掲示物を差し替えるときに、この一行が一緒に剥がされて戻らないケースが起きやすいので、掲示内容の点検項目に入れておくとよいでしょう。
保管場所の掲示までが条文の義務。年度がわりの掲示の差し替えで抜けやすい
制裁は組合ではなく個人に科される
区分所有法第91条は、次のような場合に、その行為をした管理者、理事、議事録を保管する者、議長などを20万円以下の過料に処すると定めています。
議事録を作成しない
記載すべき事項を記載しない
虚偽の記載をした
保管をしない
正当な理由なく閲覧を拒んだ
過料の名宛人が管理組合ではなく個人である点は、輪番で理事長を引き受ける立場からすると軽くない話です。
録音・録画には作成義務も保管義務もない
これに対して、総会や理事会の録音・録画そのものについては、区分所有法にも標準管理規約にも作成義務・保管義務の規定が置かれていません。録音は議事録を書くための素材であって、法定の記録ではないという整理になります。だからこそ、残すのか消すのか、いつまで持つのか、開示請求の対象にするのかを、組合側であらかじめ決めておく必要があります。何も決めていない状態で開示を求められると、理事会ごとに判断が割れます。
令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)を前提に、記録の種類ごとの位置づけを整理すると次のようになります。
記録
根拠
署名
閲覧を請求できる人
総会議事録
区分所有法第42条/標準管理規約第49条
議長+出席組合員2名
組合員・利害関係人
総会資料(議案書と付随資料)
標準管理規約第49条の2
―
組合員・利害関係人(理由を付した書面)
理事会議事録
標準管理規約第53条第4項(第49条を準用)
議長+出席理事2名
組合員・利害関係人
理事会資料
標準管理規約第53条第5項(第49条の2を準用)
―
組合員・利害関係人(理由を付した書面)
会計帳簿・契約書・保険証券など
標準管理規約第64条
―
組合員・利害関係人(理由を付した書面)
組合員名簿・居住者名簿
標準管理規約第31条の2
―
組合員(相当の理由を付した書面)
録音・録画データ
規定なし
―
組合の細則しだい
理事会議事録に掲示義務がない点は見落とされがちです。標準管理規約第53条第4項は、第49条を準用するにあたって、保管場所の掲示に関する項を除いています。掲示するのは総会議事録の保管場所であって、理事会議事録まで掲示する義務は規約上ありません。
議事録の開示を拒めるのは「正当な理由」があるときだけ
区分所有法第33条第2項は、正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないと定めています。開示請求で最初に詰まるのは、誰に見せる義務があるのかという点です。同項が閲覧を拒めないと定めている相手は「利害関係人」で、標準管理規約第49条は「組合員又は利害関係人」と書いています。
標準管理規約のコメント(第49条関係①)は、この利害関係人を、法律上の利害関係がある者と説明しています。例として、敷地や専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者などを挙げています。単に事実上の利益や不利益を受けるだけの者、親族関係にあるだけの者は対象にならないとされています。
正当な理由がなければ拒めない。ただし日時と場所は指定できる
実際に来る請求の多くは売却に伴う照会
理事長のもとに届く請求で件数が多いのは、住戸を売る組合員から依頼を受けた不動産会社からの照会です。この場合、議事録を何冊も閲覧してもらうより、必要な情報だけを書面にして渡すほうが双方の手間が減ります。
標準管理規約第64条第3項は、組合員または利害関係人から理由を付した書面による請求があったときに、閲覧に代えて、求められた情報を記入した書面を交付できると定めています。同項は、その費用を相手方に負担させることができるとしています。交付の対象とする情報の範囲と手数料は、細則で先に決めておくのが実務的です。標準管理規約の別添4には、売却予定者から依頼を受けた宅地建物取引業者が必要とする情報項目の様式例が載っており、細則を作るときの下敷きになります。
「今すぐ見せてほしい」に即応する義務はない
標準管理規約第49条第3項は、閲覧について相当の日時、場所等を指定することができるとしています。管理室が開く曜日と時間、立会いの理事の都合を踏まえて日時を提示すれば足ります。ただし、理由を示さないまま先延ばしを重ねれば、正当な理由のない拒否と評価される余地があると考えられます。請求を受けたら受領日を記録し、1週間から2週間以内の候補日を書面で返す運用にしておくと、後から経緯を説明しやすくなります。
請求日までに用意する4点
保管場所の掲示。総会議事録の保管場所が掲示板に出ているかを確認します。保管場所の掲示は、第33条第4項が定める義務です。
閲覧申請書の様式。請求者の氏名と連絡先、組合員か利害関係人か(利害関係人ならその資格)、請求の理由、対象とする年度と種類、希望日時の欄を作っておきます。標準管理規約が理由を付した書面を求めている書類があるため、口頭の申し出をそのまま受けない仕組みにしておきます。
閲覧用の写し。原本を直接渡さず、写しを見てもらいます。標準管理規約のコメント(第49条関係②)は、議事録には個人情報やプライバシー情報が含まれることが多いことから、発言者や審議内容から特定の個人が識別できないように加工するなど、適切に対応することが必要だとしています。滞納者の住戸番号、苦情の当事者名、専有部分の事故の詳細などは、閲覧用の写しの段階でマスキングしておきます。
閲覧記録。いつ、誰に、どの年度の何を、誰が立ち会って見せたかを1行で残します。この記録があるかどうかで、後日「見せてもらえなかった」と言われたときの説明の重さが変わります。
マスキング作業は、請求が来てから始めると間に合いません。議事録を作る段階で、氏名や住戸番号を本文に書かず「A棟○階の組合員」「専有部分からの漏水事案」と表現しておけば、閲覧のたびに黒塗りをする作業そのものが減ります。個人が特定される情報は議事録本文ではなく、理事会限りで保管する別紙に分けるという整理の仕方もあります。
録音で足りる場面と映像が必要な場面|数字と文言は音声、開票と提案の場は映像
録音を残すかどうかは、後から何を確認したくなるかで決まります。議事録の記載をめぐって争いになるとき、争点になるのはたいてい細かい数字と文言です。
音声で足りるもの
議案ごとの賛成・反対・棄権の数、および議決権行使書と委任状の内訳
修正動議が出たときの、修正後の議案文をどう読み上げたか
議長が開会・閉会を宣言した時刻と、定足数を満たしている旨の宣言
質疑の中で理事会が約束した内容(次年度に検討する、見積もりを3社取る、など)
これらは音声があれば足ります。議事録の原稿を書き終えたら、この4点だけを聞き直して照合する。その作業が終われば録音の役割は終わりで、いつまでも保持し続ける必要はありません。総会後60日で消去する、といった期限を細則に書いておくと、開示請求が来たときに「存在しない」と説明できます。逆に、期限を決めないまま保存し続けると、対象になるかどうかの判断を毎回迫られます。
期限を決めずに持ち続けると、請求のたびに判断を迫られる
映像を残す価値がある場面
議決権行使書と委任状の開封・集計。手元と枚数が映っていれば、集計への疑義に対する説明が短く済みます。
大規模修繕や、管理会社を替えるとき(リプレイス)の業者プレゼン。次年度の理事にとって、比較検討のときの雰囲気まで引き継げる資料になります。
建替えや建物敷地売却など、決議要件が重く、決議のやり直しが現実的でない議案。
WEB会議システムを併用した総会で、画面共有した資料と説明が対応している必要がある場面。
なお、改正区分所有法は令和8年4月1日から施行されており、総会の開催手続や決議要件を含む運営面の規定が変わっています。規約の見直しを審議する時期の総会は、後から手続の妥当性を確認したくなる可能性が平時より高いと考えられます。移行期にあたる数年分については、記録を厚めに残しておく判断に合理性があります。
録画機に入れたままにしない
ビデオカメラやレコーダーのハードディスクに置いたままにすると、機器の故障や買い替えで一括して失われます。理事会の備品を更新した年に、それ以前の記録がまとめて消えたという事態は避けたいところです。手持ちのレコーダーでディスクに書き出す場合は、書き出しただけでは他の機器で再生できないことがあります。ファイナライズとは何をする処理なのか を理解しておくと、管理室のプレーヤーで開けないという次の理事会でのトラブルを防げます。
理事が毎年替わる前提で、年度末に記録の「一式」を確定させる
輪番制で理事の任期が1年から2年という組合では、記録は放っておくと散ります。総会資料の元データは前任の会計担当理事の自宅パソコンにあり、業者とのやりとりは退任した理事の個人メールにあり、議事録のPDFは管理会社の担当者が持っている。この状態で3年前の経緯を確認しようとすると、誰も答えられません。
年度末にやることは3つ
第一に、その年度の一式を確定させます。一式に入るのは、次の書類です。
総会議事録と議案書
付随資料
理事会議事録と理事会資料
収支決算と収支予算
その年度に締結した契約書
標準管理規約第64条関係のコメントは、作成・保管すべき帳票類として、会計帳簿や什器備品台帳のほかに、領収書や請求書、管理委託契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券を挙げています。この一覧をチェックリストにして、欠けているものを年度内に集めます。
第二に、目録を1枚作ります。ファイル名は「20260518_総会_議事録.pdf」のように日付を先頭に置き、目録には日付・種類・件名・作成者・原本の所在を並べます。次年度の理事が見るのは、中身より先に目録です。目録がなければ、ファイルがそろっていても探せません。
第三に、確定した一式を書き換えられない形にします。共有フォルダは便利ですが、誰でも上書きでき、誰でも削除できます。年度が閉じた記録は、追記も削除もできない状態にしておくほうが、引き継ぎの説明が短くなります。
年度ごとに1枚にまとめる
物理的なディスクは、この用途と相性が良い方法のひとつです。書き込んだ後に内容が変わらないこと、特定のアカウントやサービスに紐づかないこと、管理室の書棚に議事録の紙と並べて置けること。この3点は、担当者が毎年替わる組織では実務上の利点になります。総会の映像や業者プレゼンの記録を年度ごとに1枚にまとめておけば、引き継ぎのときに渡すものが1つ増えるだけで済みます。
当社では、動画データからのDVD・ブルーレイ制作を基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)からお受けしており、1枚から注文できます。再生できる形に組み立てるオーサリングは料金に含まれます。総会と理事会を1枚に入れる場合は、メニュー画面とチャプター分けで「第○回通常総会」「第1回理事会」のように選べる形にできるため、後から必要な場面だけを開けます。メニュー画面作成とチャプター分けは、どちらもオプションです。入稿は、ギガファイル便のURLで受け付けています。
棚に並べたときに中身が分かるよう、盤面とケースの背表紙に「○○マンション管理組合 2026年度 総会・理事会記録」のように年度を入れておくと、探す時間が短くなります。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷にも、オプションで対応しています。年度などの文字は、印刷する画像に入れて入稿してもらう形です。入稿するデザインデータの作り方はDVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方 にまとめてあるので、文字だけの簡素な面付けにする場合の余白の取り方などはそちらを参照してください。
納期は通常便のほか、次の短納期のオプションを用意しています。
お急ぎお届け(+1,500円、平日15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)
特急お届け(+3,000円、平日15時までの注文・入稿で翌日発送)
当日店舗お渡し(+3,500円、平日12時までの注文・入稿)
総会直後の理事会に間に合わせたいといった事情がある場合は、この選択肢が使えます。当日店舗お渡しは、大阪市北区の店舗で受け取ります。
なお、議事録のPDFなど書類データを同じディスクに入れられるかどうかは、業者によって扱いが異なります。映像用のディスクと書類用のデータディスクは作り方が違うので、当社に頼めるかは、注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめてください。
管理会社に預けても、保管責任は理事長に残る
管理業務を委託していても、組合の書類を保管する主体は変わりません。標準管理規約では、総会議事録も帳票類も理事長が保管することとされています。コメント(第64条関係③)は、理事長の責めに帰すべき事由により帳票類や書類が適切に保管されず、再作成を要した場合には、その費用を負担するなどの責任を負うと明記しています。「管理会社が持っているはずです」は、規約上の答えになりません。
管理会社が保存しているのは管理会社の書類
ここで混同しやすいのが、マンション管理適正化法が管理業者に課している保存義務です。同法施行規則第86条第3項により、管理業者が備える帳簿は各事業年度の末日をもって閉鎖され、閉鎖後5年間保存されます。
また同規則第90条により、業務状況調書、貸借対照表、損益計算書またはこれらに代わる書面は、各事業年度経過後3月以内に作成して事務所ごとに備え置くこととされています。備え置かれた日から起算して3年を経過する日までの間は、営業時間中に業務に係る関係者の求めに応じて閲覧させることとされています。
つまり、管理会社側の保存は5年と3年で切れます。これは管理業者としての義務であって、組合の記録を組合のために永続的に保管する約束ではありません。20年前の大規模修繕の図面や議事録を管理会社に問い合わせて出てこなかった、という話が起きるのはこの構造が理由です。
委託先を替える前に回収するもの
管理会社のリプレイスや担当者の交代は、記録が失われる代表的なタイミングです。契約終了の3か月前を目安に、返却してもらうものを書面で一覧化して確認します。総会・理事会の議事録と資料の原本およびデータ、会計帳簿と証憑、組合員名簿と居住者名簿、竣工図書と設計図書、長期修繕計画書、修繕等の履歴情報、各種契約書と保険証券、鍵と印章の預かり分。
データで受け取るものは、ファイル形式と受け渡し方法まで決めておきます。管理会社の社内システムからしか閲覧できない形式で運用されていた場合、契約が切れた瞬間に読めなくなります。
契約が切れる前に、返却してもらうものを書面で一覧にする
クラウドだけに置かない
共有ドライブは便利ですが、退任した理事の個人アカウントに紐づいたフォルダは、そのアカウントが消えたときに一緒に消えます。無料プランの容量超過や、支払いカードの有効期限切れでも同じことが起きます。組合の記録は、性質の違う場所に分散させておくのが現実的です。考え方は3-2-1バックアップの実践 にまとめてあります。クラウドに1つ、管理室の外付けドライブに1つ、年度ごとに固めたディスクを管理室の書棚に1つ、という三点構えなら、どれか1つに問題が起きても、全部を失う事態は避けられます。
保管年限に法定の基準はない|永久・10年・5年の3層に分けて細則で決める
「議事録は何年保管すればよいか」という質問に、条文で答えることはできません。区分所有法にも標準管理規約にも、管理組合の文書について保存年限を定めた規定はないからです。標準管理規約は代わりに、第70条関係のコメントで、細則として定めることが考えられるものの例に「文書保存等に関するもの」を挙げています。つまり、年限は各組合が細則で決める建て付けになっています。
3層に分けると決めやすい
層
対象
年限の目安
永久
規約原本と規約変更を決議した総会の議事録、総会議事録、竣工図書・設計図書、長期修繕計画書、大規模修繕の契約書と竣工図、修繕等の履歴情報
組合が存続する限り
長期
理事会議事録、会計帳簿と証憑、各種契約書、保険証券、総会・理事会の資料
10年
短期
録音データ、採用に至らなかった見積書、日常の連絡文書、掲示物の控え
1年から5年
永久保存の層は、建て替えや大規模修繕の場面で「なぜそう決めたのか」を説明する材料になるものです。この層を薄くすると、20年後の理事会が過去の合意を再現できなくなります。
会計関係は、税務の期間も踏まえて決めます。管理組合が駐車場の外部貸しなどで収益事業を行い、法人税の申告義務がある場合、帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です(欠損金が生じた事業年度は10年)。収益事業を行っていない組合でも、会計は7年を下回らない年限にしておくと、後から課税関係を問われたときに困りません。
「重要書類は永年保存する」とだけ書いた細則は、何が重要かで毎年もめます。上の表のように文書名を列挙し、年限と保管場所と保管責任者(役職名で書く。個人名では毎年書き換えが必要になります)まで書いてはじめて、引き継ぎの道具として機能します。
古い記録を捨てるときの手順
年限が来たから黙って捨てる、という運用はおすすめできません。廃棄そのものを理事会で決議し、廃棄した文書の名称・年度・数量・廃棄日・方法を目録にして、その理事会の議事録に添付します。この一手間があると、後日「あの資料はどこへ行ったのか」と問われたときに経緯を示せます。個人情報を含む紙はシュレッダー、電子データは媒体ごと物理的に破棄するのが確実です。
永久保存の層こそ、媒体の寿命を見る
永久と決めた層は、媒体のほうが先に寿命を迎える可能性があります。光ディスクの持ちは保管環境に大きく左右されるため、記録の年限を決めたら、置き場所も同時に決めてください。実際の寿命の考え方はCD・DVD・ブルーレイの寿命 に、環境の作り方はDVD・CDの正しい保管方法 にまとめています。
管理室は上階の給湯設備の下や外壁面に接した位置にあることが多く、湿気と温度差を受けやすい場所です。ケースに入れて立てて並べ、直射日光と結露を避ける。この程度の配慮でも、平積みで棚に放置するのとは差が出ます。
よくある質問
Q. 総会の議事録に押印は必要ですか? A. 区分所有法第42条第3項は、議事録が書面で作成されているときに、議長と集会に出席した区分所有者2人が署名しなければならないと定めています。押印について条文に定めはありません。ただし、各組合の規約や細則が押印を求めている場合は、その定めに従うことになります。押印の慣行をやめるかどうかは、規約や細則の該当箇所を確認したうえで、総会または理事会で整理してください。電磁的記録で作成する場合は、署名に代わる措置を執ることとされています。
Q. 理事会の議事録も区分所有者に見せる義務がありますか? A. 区分所有法が議事録の作成と閲覧を定めているのは集会、つまり総会の議事録です。理事会の議事録については、マンション標準管理規約(単棟型)第53条第4項が第49条を準用しており、これに沿った規約であれば、理事長が保管し、組合員または利害関係人から書面による請求があったときは閲覧させることになります。まず自分の組合の規約に同趣旨の条文があるかを確認してください。なお、保管場所の掲示に関する項は準用の対象から除かれています。
Q. 総会の録音データの開示を求められました。応じる義務はありますか? A. 区分所有法にも標準管理規約にも、録音・録画そのものの作成義務や保管義務、閲覧させる義務を定めた規定はありません。したがって、扱いを決めているのは各組合の規約や細則です。何も定めがない状態だと請求のたびに理事会の判断が割れるため、保存する期間、開示の可否、開示する場合の方法を細則に書いておくことをおすすめします。議事録の原稿を確定させたら一定期間で消去すると決めておけば、期間経過後は存在しない旨を説明できます。
Q. 議事録の閲覧を断れるのはどんなときですか? A. 区分所有法第33条第2項は、正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないと定めています。裏を返せば、正当な理由があれば拒めます。また標準管理規約第49条は、閲覧について相当の日時、場所等を指定できるとしているため、その場での即時対応を求められても、管理室が開く日時を提示すれば足ります。個人情報やプライバシー情報については、特定の個人が識別できないよう加工するなど適切に対応することが必要とされています。
Q. 議事録を作らなかったり閲覧を拒んだりするとどうなりますか? A. 区分所有法第91条は、議事録を作成しない、記載すべき事項を記載しない、虚偽の記載をした、保管をしない、正当な理由なく閲覧を拒んだなどの場合に、その行為をした管理者、理事、保管する者、議長などを20万円以下の過料に処すると定めています。名宛人は管理組合ではなく、その行為をした個人です。輪番で理事長を引き受ける立場からすると、任期中の作成・保管・掲示は自分の責任範囲だと理解しておく必要があります。
Q. 賃借人や購入検討者も議事録を見せてもらえますか? A. 標準管理規約のコメントは、閲覧を請求できる利害関係人として、担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者などを挙げており、賃借人はこれに含まれるとされています。一方、単に事実上の利益や不利益を受ける者や、親族関係にあるだけの者は含まれません。購入検討者については、標準管理規約第64条第3項の書面交付の対象に住戸の購入予定者を含めて規定することも考えられるとされており、細則での整理が前提になります。
Q. 管理組合の書類は何年保管すればよいですか? A. 区分所有法にも標準管理規約にも、保存年限を定めた規定はありません。標準管理規約は、細則として文書保存に関するものを定めることが考えられるとしています。実務上は、規約原本と総会議事録、竣工図書、長期修繕計画などを永久、理事会議事録や契約書、会計関係を10年、録音や不採用の見積書を短期、といった層に分けて細則に書く方法が扱いやすいです。収益事業があり法人税の申告義務がある場合、帳簿書類は申告期限の翌日から7年間の保存が必要です。
Q. 管理会社を変更するとき、記録はどこまで返してもらえますか? A. マンション管理適正化法施行規則により、管理業者の帳簿は各事業年度末日に閉鎖して5年間保存、業務状況調書などは備え置かれた日から3年を経過する日まで備え置くこととされています。これは管理業者としての義務であり、組合の記録を組合のために永続的に保管する約束ではありません。契約終了の3か月前を目安に、議事録と資料、会計帳簿と証憑、名簿、設計図書、長期修繕計画、契約書、保険証券などの返却リストを書面で確認してください。