この記事の要点
著作権法38条1項が認めているのは上演・演奏・上映・口述 までです。演奏を録音してディスクにする複製 は対象に入っていないため、団員配布でも手続きが要ります。
非営利団体が複製の主体者かつ申込者 となり、無償または製作費の実費以外の対価を得ない場合、JASRACの非商用複製 として通常の半額で計算されます。
録音物の使用料は製造49枚以下なら1曲200円の定額 、50枚以上は1枚1曲あたり4.05円です。5分00秒以上の曲は2曲 として数えます。
JASRACは編曲権・翻案権の許諾ができない ため、編曲譜や訳詞を使った曲は、作曲者側や音楽出版社への確認が別に必要になります。
許諾番号は盤面とジャケットの両方に表示 するので、レーベルと印刷物の入稿締切から逆算して申請時期を決めておきます。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
1枚から 作れます。 同じ 内容の 追加は 1枚1,000円 (税抜)です。
1枚1,500円(税抜)から・ 1枚から注文できます
演奏会が終わった直後の運営会議で、「今年は録音をCDにして団員に配ろう」という話が出る。録音担当が持ち帰ったデータはある。予算も少しなら出せる。ただ、会計担当か誰かが「これ、著作権の手続きっているんじゃないの」と言い出して、そこで止まる。合唱団やアマチュアオーケストラの運営でくり返し起きる場面です。
団員だけに配る場合でも、手続きは必要になります。演奏会そのものが非営利・無料・無報酬で成立していても、その根拠になっている条文が守っているのは「演奏する」ところまでで、録音してディスクにする行為は別の権利として扱われるからです。ただし、非営利団体が実費だけで配るケースには専用の安い計算方法が用意されていて、曲数と枚数によっては数千円で収まります。この記事の使用料の例は、JASRACが公開している計算方法の原文にあたって、実際の数字で示しています。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
団員だけに配るCDでも手続きは要る|非営利の演奏ルールは「複製」に及ばない 権利確認は、プログラム確定日から始める 非商用複製の3条件と、49枚以下で1曲200円の定額 団員から実費を集めても、非商用複製に当たるか 編曲譜を使うと確認先が増える|JASRACは編曲権の許諾ができない 映像も残すなら金額の桁が変わる|基本使用料は1分400円から 許諾番号は盤面とジャケットに刷る|印刷データの締切から逆算する 会場録音を、配布できるCDの音に整える 部数は団員数から積み上げ、予備を持ちすぎない よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
団員だけに配るCDでも手続きは要る|非営利の演奏ルールは「複製」に及ばない
アマチュア団体の演奏会が著作権の許諾なしに成立しているのは、著作権法38条1項があるからです。条文には「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる」と書かれています。JASRACはこれを、次の3要件として説明しています。
営利を目的としないこと
聴衆又は観衆から料金を受けないこと
出演者などに報酬が支払われないこと
条文が並べている行為は、「上演し、演奏し、上映し、又は口述する」の4つです。録音してCDにする行為は複製にあたり、この列挙に入っていません。つまり、入場無料で、団員も指揮者も無報酬で、営利目的でもない演奏会だったとしても、その根拠がそのままCD化にも当てはまるわけではない、という構造になっています。
「では私的複製ではないのか」という反論も出ます。著作権法30条1項は、複製が許されるのを「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」に限っています。数十人規模の団体が団員全員に配る行為をこの「限られた範囲」に収めるのは、素直な読み方ではありません。
JASRAC自身も、非営利団体向けの料金メニューの前提を「著作権法の制限規定(第30条、第35条など)を超える利用であり」と書いています。つまり、団体配布用のディスクが30条の外にある前提で、料金表を用意しています。
演奏の手続きをしても、録音は別に手続きが要る
有料公演で演奏の手続きを済ませた団も同じです。JASRACは「支分権ごとに手続きが必要」という考え方を明示しており、演奏権の処理と複製権の処理は別々に発生します。支分権は、演奏や録音といった利用方法ごとの権利のことです。演奏会の使用料を払ったからCD化も含まれている、という理解で進めると、後から追加で処理することになります。
実務では、演奏会は「演奏」の話、CD制作は「複製」の話で、確認する窓口も、金額の計算式も、必要な情報も別々 と考えると整理しやすくなります。この2つを最初から分けて担当を割り振ると、運営の混乱がかなり減ります。
演奏会が非営利・無料・無報酬で成り立っていても、CDにする複製の手続きは別に要る
権利確認は、プログラム確定日から始める
作業の起点は、演奏会当日ではなくプログラムが確定した日です。あとの工程は、すべてこの日に作る曲目の表から派生します。曲目が決まった時点で、次の項目を1行1曲の表にしておきます。
曲名(原題と邦題の両方。訳詞版なら訳詞者名も)
作詞者・作曲者の氏名
編曲者・訳詞者の有無と氏名
使用する楽譜の出版社と版(奥付を写真に撮っておく)
本番の実演奏時間(秒まで。これが金額を左右します)
保護期間で先に振り分ける|著作者の死後70年
著作権の保護期間は、著作者が亡くなって70年、正確には死亡した年の翌年1月1日から70年です。無名・変名の著作物、団体名義の著作物、映画については公表後70年になります。バロックから近代までの原曲は保護期間を過ぎているものが多いですが、そこで安心してはいけません。校訂版や編曲版には別の著作者がいる ので、原曲が保護期間を過ぎたパブリックドメインでも、使った楽譜が保護対象ということは普通に起きます。
J-WIDでは「録音」の欄を見る
曲名の検索には、JASRACの作品データベースJ-WID(https://www2.jasrac.or.jp/eJwid/)を使います。演奏、録音、出版といった支分権ごとに、管理状況が表示されます。ここで見るべきは演奏の欄ではなく録音の欄です。権利者が委託した範囲によって、同じ曲でも利用方法ごとに許諾できるかどうかが変わるためです。録音がJASRACの管理下にないと表示されたら、その曲はJASRACでは手続きできません。
もうひとつの管理事業者としてNexToneがあり、こちらの作品検索は https://search.nex-tone.co.jp/ です。近年の邦人作品やポップスをプログラムに入れている場合、JASRACで見つからなくてもNexToneにあることがあります。両方を確認して、どちらにも登録がなければ、楽譜の奥付にある出版社か、作曲者本人・遺族に直接あたることになります。
この段階で「JASRAC管理の曲」「NexTone管理の曲」「管理外・直接交渉の曲」「保護期間満了の曲」の4グループに分かれます。使用料の計算に載るのはそれぞれの管理事業者の管理曲だけなので、この振り分けができていないと見積もりが立ちません。
1曲ずつこの順に当たると、4つのグループに分かれて見積もりが立つ
非商用複製の3条件と、49枚以下で1曲200円の定額
JASRACには、非営利団体向けに「非商用複製」という区分があります。該当すると、通常の計算で出した使用料の半額になります。条件は次の3つで、すべてを満たす必要があります。
著作権法の制限規定(第30条、第35条など)を超える利用であること
教育機関、非営利団体、個人が複製の主体者かつ申込者であり、非営利目的で製作するものであること
無償、または製作費の実費以外の対価を得ないこと
運営で見落としやすいのは2つ目の「複製の主体者かつ申込者」という部分です。申し込むのは団体自身 であり、制作を頼む業者が代わりに申し込む形にすると条件の読み方が変わってきます。ディスクの発注は業者に任せても、JASRACへの申込者欄には団体名を書く、と覚えておくと迷いません。
使用料の計算方法
非商用複製の録音物は、「その他のCD・録音テープ(定価を明示しない録音物)」の使用料の半額として計算されます。式は次のとおりです。
製造数
計算方法
49枚以下
400円 × 50/100 × 管理楽曲数 + 消費税相当額
50枚以上
8.1円 × 50/100 × 製造数 × 管理楽曲数 + 消費税相当額(小数点以下四捨五入)
ここで言う管理楽曲数は、収録した曲の本数そのままではありません。1曲1回の収録時間が5分00秒からは2曲扱い、10分00秒からは3曲、15分00秒からは4曲と数えます。合唱組曲やオーケストラの楽章は簡単に5分を超えるので、実演奏時間を秒まで記録しておく理由はここにあります。
実際の数字で見る
収録12曲、うち4曲が5分00秒以上10分00秒未満、残る8曲が5分未満、すべてJASRAC管理曲だったとします。管理楽曲数は 8 + 4×2 = 16曲扱いです。
40枚作る場合:400円 × 50/100 × 16 = 3,200円 +消費税相当額
50枚作る場合:8.1円 × 50/100 × 50 × 16 = 3,240円 +消費税相当額
100枚作る場合:8.1円 × 50/100 × 100 × 16 = 6,480円 +消費税相当額
49枚以下は製造数が式に入っていないので、10枚でも49枚でも金額は同じ3,200円です。そして50枚を超えた瞬間に急に跳ね上がるわけでもなく、49枚と50枚の差は40円しかありません。「50枚の壁があるから49枚に抑えよう」という判断は、この計算式を見るかぎり必要ありません。
団員から実費を集めても、非商用複製に当たるか
3つ目の条件「無償、または製作費の実費以外の対価を得ないこと」は、「無償」だけを求めているのではなく、実費までなら対価を受け取ってよいと読めます。したがって焦点は、団員から集める1枚あたりの額(頒価)が、製作費の実費に収まっているかどうかです。
この条件は、実務でいちばん判断に迷うところです。団員から1枚1,000円もらうのは条件から外れるのか、という質問がここに当たります。説明できる形で実費の内訳を残しておく のが、この条件を満たす一番確実な進め方になります。
実費の内訳を作っておく
1枚あたりの実費は、次の費用を合計して枚数で割った額です。
ディスク本体の制作費
レーベル印刷代
ケースとジャケットの印刷代
梱包資材
郵送する場合の送料
会計担当が、この内訳を1枚の表にして請求書と一緒に残しておけば、後から説明を求められたときに困りません。逆に、団の運営費への繰り入れ分、録音担当への謝礼、次回演奏会の積立分を上乗せしていくと、実費を超えます。
実費を超えるとどうなるか
非商用複製に当たらなくなると、「その他のCD・録音テープ(定価を明示しない録音物)」の計算がそのまま適用されます。非商用複製はその半額という位置づけなので、単純に2倍になります。
製造数
計算方法(非商用複製に当たらない場合)
49枚以下
400円 × 管理楽曲数 + 消費税相当額
50枚以上
8.1円 × 製造数 × 管理楽曲数 + 消費税相当額
先ほどの16曲扱い・100枚の例なら、6,480円ではなく12,960円+消費税相当額です。金額としては数千円から一万円台の差ですが、条件を満たしていないのに安いほうで申告してしまうと、後で訂正する手間のほうが大きくなります。
判断が割れやすい配り方は、事前に窓口へ
次のような設計は、団の善意で組まれているぶん、条件との関係が読みにくくなります。
演奏会当日のロビーで頒布して、募金箱を横に置く
賛助会員への特典として配る
実費より少し高い額を設定して、残りを寄付にまわす
設計を決めてから申し込むのではなく、設計案を持ってJASRACのインフォメーションデスクに事実を伝えて確認する ほうが、やり直しが発生しません。
迷うのは頒価と配り方。判断が割れそうなら、決める前に窓口へ
編曲譜を使うと確認先が増える|JASRACは編曲権の許諾ができない
合唱団の演奏会で編曲譜を1曲も使わないということは、まずありません。そして編曲まわりの確認は、手続きのなかで最も時間がかかる部分です。
著作権法27条は「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」と定めています。この編曲権について、JASRACは自ら「JASRACでは編曲権・翻案権の譲渡を受けていないため、編曲することなどについて許諾することはできません」と明記しています。
加えて、改変の仕方によっては著作者人格権のひとつである同一性保持権の問題も生じ、こちらは譲渡できない権利なので、権利を持つのは著作者本人です。著作者が亡くなったあとに差し止めなどを求められるのは、遺族です。
3つのパターンに分けて考える
市販の編曲譜をそのまま歌った 場合は、その編曲版が管理作品としてJ-WIDに登録されていれば、録音の手続きはJASRAC経由で足ります。検索結果に編曲者名が表示されるかを確認してください。
団のために新しく編曲してもらった、または団員が編曲した 場合は、編曲すること自体について、原曲の著作者側(実務上は権利を管理する音楽出版社)の許諾が別に必要です。すでに演奏会で歌ってしまっている場合も、CD化の前にここを確認します。
市販譜に手を入れた(カットした、転調した、パート追加した) 場合も、上と同じ扱いになると考えられます。「少し変えただけ」の線引きは団の側では引けません。
日本語訳詞も同じ扱いです。翻訳は翻案にあたるので、外国曲を日本語詞で歌った録音は、原曲の権利処理と訳詞の権利処理の両方を見ることになります。
連絡先の探し方と、かかる日数
J-WIDの検索結果には出版者名が表示されます。ここが最初の連絡先です。JASRACは主な音楽出版社の連絡先一覧も公開しているので、社名から辿れます。大規模作品でレンタル譜(貸譜)を使った場合は、貸譜契約の条項に録音・録画の扱いが書かれていることがあるので、契約書の控えを先に見てください。
相手は会社であったり個人の作曲家であったりするので、回答までの日数は読めません。プログラム確定の時点でこの確認だけ先に進めておく のが、演奏会後にCD化の話が立ち消えにならないコツです。編集作業は録音が終わってからしかできませんが、権利の確認は曲目が決まった時点で始められます。
映像も残すなら金額の桁が変わる|基本使用料は1分400円から
「せっかくだから映像も」という話になった場合、使用料の計算式がまったく別のものになります。非商用複製ビデオグラムの条件は録音と同じ3つですが、金額は基本使用料と複製使用料の合算です。
区分
計算方法
基本使用料(内国作品/一部の外国作品)
1分単価400円 × 収録時間(秒単位切り上げ)
基本使用料(ほとんどの外国作品)
指し値(国内の音楽出版者等が指定した額)
複製使用料(50個まで)
1分単価110円 × 収録時間(秒単位切り上げ)
複製使用料(51個以上)
1分単価2.2円 × 収録時間(秒単位切り上げ)× 製造数
いずれも1曲ごとに計算して合算し、消費税相当額を加えます。音楽の実収録が合計70分、50枚作る内国作品のみのプログラムなら、基本使用料が 400円×70 = 28,000円です。複製使用料が 110円×70 = 7,700円で、合計35,700円+消費税相当額です。同じ団体が同じプログラムをCDにしたときの3,240円と比べると、約11倍の開きがあります。
外国曲が多いプログラムは金額も日数も読めない
映像の基本使用料は、ほとんどの外国作品が指し値です。国内の音楽出版者などが個別に額を指定する形なので、申請してみないと金額が分かりませんし、回答までの日数も一定ではありません。ルネサンスのモテットからアメリカのゴスペルまで幅広く並ぶ合唱団のプログラムだと、この確認だけで予定が崩れます。映像化するかどうかは、CD化より早い段階で方針を決めて、指し値の照会を先に出しておく のが現実的です。
映像ファイルは、そのまま焼いても再生できない
権利の処理とは別に、技術面の前提もあります。カメラから出てきたMP4をディスクに書き込んでも、家庭用のDVDプレーヤーやブルーレイプレーヤーはそれを映像として再生しません。プレーヤーが読める構造に組み立てる工程が要り、これをオーサリング と呼びます。曲ごとに頭出しできるようにする、トップにメニュー画面を出す、といった仕上げもこの工程で行います。演奏会の映像は長く、曲数も多いので、頭出しができるかどうかで団員の使い勝手が大きく変わります。
なお、映像ソフトの許諾番号はV-で始まる番号になり、録音物のR-とは別系統です。
許諾番号は盤面とジャケットに刷る|印刷データの締切から逆算する
手続きの流れそのものは、次の4段階です。
J-WIDで利用楽曲の権利関係を確認する
オンライン窓口J-RAPP(https://j-rapp.jasrac.or.jp/)から申し込む
許諾番号とロゴマークがJASRACから届いたら、製品に表示する
使用料を支払う
書類での手続きも可能ですが、その場合は許諾番号などの通知に最低1週間程度かかるとJASRACが案内しています。使用料の請求書と明細書が届くのは、許諾番号の通知後2〜3か月後です。
表示する場所と内容が決まっている
表示する場所と内容は、制作スケジュールに直結します。JASRACの案内では、録音物本体のラベル(盤面)には1〜3を、容器に付随する印刷物(化粧箱、ジャケット等)には外から見える場所に1〜4を表示することになっています。
JASRACマーク
許諾番号(ディスクはR-〇〇〇〇〇〇〇〇、テープはT-〇〇〇〇〇〇〇〇、DVD・ブルーレイはV-〇〇〇〇〇〇〇〇)
使用著作物の題名、著作者名
お申込者名(印刷物のみ)
帯を付ける場合は、表示が帯に隠れない位置に置くよう案内されています。つまり許諾番号が手元にないと、盤面のレーベルデータもジャケットのデータも確定できない ということです。
デザイン担当が先に完成データを作ってしまうと、番号が来てから配置をやり直すことになります。番号を入れる場所を最初から空けておくか、テキストレイヤーを分けておくのが実務的です。文字の乗せ方や解像度の目安はDVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方 にまとめてあります。
許諾番号が届くまで、盤面もジャケットも印刷データを確定できない
逆算のたたき台
時期
やること
プログラム確定時
曲目リスト作成、J-WIDとNexToneで管理状況確認、編曲・訳詞の確認先に連絡
演奏会当日
各曲の実演奏時間を秒まで記録
本番後1〜2週
編集、曲順とトラック分けの確定、収録時間の確定
収録時間と製造数が固まった時点
J-RAPPから申込(この2つが決まらないと使用料が計算できない)
許諾番号の受領後
番号を入れたレーベル・ジャケットのデータを作成し、音源と一緒に入稿
盤の完成後
使用料の請求書は許諾番号通知の2〜3か月後に届く前提で予算を確保
会計年度が3月で切れる団は、請求が2〜3か月後になる点に注意してください。秋の演奏会でも、決算をまたぐ位置に請求が来ることがあります。ディスク制作側の所要日数は別に見る必要があるので、印刷と製造にどれくらい確保すべきかはDVDを急いで作るときの締切と逆算 を目安にしてください。
会場録音を、配布できるCDの音に整える
権利の処理と並行して、音のほうも整えます。凝ったミックスは要りませんが、団員に配ったときに「音が途中で割れている」「曲間がバラバラ」と言われない程度の作業は必要です。
CDの規格は44.1kHz・16bit、収録は最大79分57秒
音楽CD(CD-DA)の規格は、サンプリング周波数44.1kHz、量子化16bit、2チャンネルのステレオです。トラック番号は1から99まで、12cmディスクの収録時間は約74分から80分で、規格上は最大79分57秒とされています。収録自体は48kHz・24bitなど余裕のある設定で録っておき、CD化の段階で44.1kHz・16bitに変換する流れが扱いやすくなります。
演奏会1回分をまるごと入れると、MCや拍手を含めて80分を超えることがよくあります。総時間が規格を超えたら、2枚組にするか、拍手やアンコール前の間合いを詰めるかを決めます。この判断は編集の最後ではなく最初にする と、やり直しが減ります。
凝ったミックスは要らない。割れ・曲間・音量の揃いを押さえる
最低限やっておく作業
録音レベルは、本番でピークが上限に張り付くと、後から直せません。フォルティシモでピークに余裕を持たせる設定(-6dBFS程度を目安)にしておくと、編集で持ち上げるほうがきれいに収まります。
曲の切り出しでは、曲頭は0.5〜1秒ほど手前から、曲尻は余韻が消えるまで残します。拍手を入れるか切るかは団の方針次第ですが、全曲で統一してください。
曲間の無音は、1.5〜2秒程度に揃えます。長さ自体は好みですが、揃っていないと通して聴いたときに落ち着きません。
音量の基準は、アルバム全体でひとつに決めて、曲どうしの相対関係は残します。曲ごとに個別にノーマライズすると、弱く歌った曲が不自然に大きくなり、演奏会の起伏が崩れます。
空調音やハムのノイズが乗っている場合、ノイズ除去に頼ると声の質感まで損なわれます。まずは元の録音のマイク位置とゲインを見直し、除去処理は最小限にとどめるほうが結果が良くなります。
書き出しは、WAV、44.1kHz・16bit・ステレオで、トラック順に「01_曲名.wav」のような連番の名前で。ファイル名に曲名が入っていると、盤面とジャケットの曲順校正が一気に楽になります。
データの渡し方
WAVは1曲5分でおよそ50MBになるので、全曲まとめるとメール添付では送れません。ファイル転送サービスにアップロードして、ダウンロードできる共有URLを渡す形が一般的です。手順とパスワードの付け方はギガファイル便での入稿ガイド にまとめてあります。Google ドライブ、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなど、ダウンロードできる形で共有できるサービスであれば同じ考え方で渡せます。
部数は団員数から積み上げ、予備を持ちすぎない
使用料の計算式を見ると、49枚以下は製造数が式に入らない定額なので、「とりあえず多めに」と積む理由が金額面にはありません。むしろ余った盤は団の倉庫で場所を取り続けます。
おすすめは、団員数+指揮者・伴奏者・客演者+記録用の数枚、という積み上げです。足りなければ追加で作れば済みます。ただし、追加製造分についてJASRACへの申込みをやり直す必要があるかは、最初の申込みのときに窓口で確認しておいてください。ここを聞いておくと、後から気楽に増やせます。少ない枚数で頼むときの考え方は1枚から頼める小ロット対応 にまとめています。
演奏会の映像ディスクを当社に頼むとき
当社は、動画のデータからDVD・ブルーレイを作る書き込み代行の店です。基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で承っています。プレーヤーで再生できる形に組み立てるオーサリングは料金に含まれるので、編集済みのデータをそのまま渡していただければ大丈夫です。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けも、オプションで選べます。許諾番号と曲名・著作者名を入れた盤面データをご用意いただければ、そのまま印刷できます。
音声CDは、自分で焼くか、CDを作る業者に頼む方法があります。当社に頼めるかは、相談・問い合わせフォームで確かめてください。
入稿は、ギガファイル便のURLをお知らせいただく形です。ギガファイル便、Google ドライブ、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなどに対応しています。納期は通常便のほかに、次のオプションがあります。
お急ぎお届け+1,500円(平日15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送)
特急お届け+3,000円(平日15時までのご注文・ご入稿で翌日発送)
当日店舗お渡し+3,500円(平日12時までのご注文・ご入稿、大阪市北区の店舗でお受け取り)
打ち上げに間に合わせたい、総会で配りたいといった期日がある場合は、許諾番号がいつ届くかと合わせて逆算してください。
進める順番のおさらい
プログラム確定日に曲目リストを作り、J-WIDとNexToneで管理状況を確認する
編曲譜・訳詞のある曲は、この時点で確認先に連絡を入れる
本番で各曲の実演奏時間を秒まで記録する
編集して収録時間と曲順を確定し、枚数を決める
J-RAPPから申し込み、許諾番号を受け取る
番号を入れた盤面・ジャケットのデータを作り、音源と一緒に入稿する
請求書は許諾番号通知の2〜3か月後に届く前提で予算を残しておく
権利の確認と音の編集は、担当を分けて並行させられます。止まりやすいのは編曲まわりの照会なので、そこだけ早めに動かしておくと、あとの工程は素直に進みます。
よくある質問
Q. 合唱団の演奏会CDを団員だけに配る場合も、著作権の手続きは必要ですか? A. 必要になります。著作権法38条1項が無許諾での利用を認めているのは、上演・演奏・上映・口述までで、録音してディスクにする複製はこの列挙に含まれていません。私的使用のための複製を定めた30条1項も「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」に限られており、数十人規模の団体への配布はこの範囲に収まりにくいと考えられます。JASRAC自身も、非営利団体向けの料金メニューを「著作権法の制限規定を超える利用」を前提に用意しています。
Q. 入場無料で出演者も無報酬の演奏会でした。それでも録音の手続きは要りますか? A. 演奏そのものについては、営利を目的とせず、聴衆から料金を受けず、出演者に報酬が支払われないという3要件を満たせば手続きなしで行えます。ただしこの規定が守っているのは演奏する行為までです。JASRACは支分権ごとに手続きが必要という考え方を示しており、演奏権の話と複製権の話は別々に発生します。無料公演だったという事実は、CD化の手続きが不要になる根拠にはなりません。
Q. 演奏会CDの著作権使用料は1枚あたりいくらになりますか? A. 非営利団体が無償または実費のみで配る場合、JASRACの非商用複製として計算されます。製造49枚以下は「400円×50/100×管理楽曲数」の定額で、1曲あたり200円です。50枚以上は「8.1円×50/100×製造数×管理楽曲数」となり、1枚1曲あたり4.05円になります。いずれも消費税相当額が加わります。管理楽曲数は本数そのままではなく、1曲の収録時間が5分00秒からは2曲、10分00秒からは3曲として数えます。
Q. 実費だけをもらってCDを配るのは販売になりますか? A. JASRACの非商用複製の条件は「無償、または製作費の実費以外の対価を得ないこと」なので、実費の範囲に収まっていれば条件から外れません。判断のポイントは頒価が実費に収まっているかどうかで、ディスク代・印刷代・ケース代・梱包資材・送料の合計を枚数で割った内訳を残しておくと説明ができます。団の運営費への繰り入れや録音担当への謝礼を上乗せすると実費を超え、使用料は非商用複製の2倍の計算になります。
Q. 編曲された楽譜で歌った曲をCDにするとき、どこに確認すればいいですか? A. JASRACは編曲権・翻案権の譲渡を受けていないため、編曲すること自体については許諾できないと明記しています。市販の編曲譜をそのまま歌った場合は、その編曲版がJ-WIDに管理作品として登録されていれば録音の手続きはJASRAC経由で足ります。団のために新しく編曲した場合や市販譜に手を入れた場合は、原曲の権利を管理する音楽出版社などへ別に確認します。日本語訳詞も翻案にあたるので同じ扱いです。
Q. 演奏会をDVDにする場合とCDにする場合で費用は変わりますか? A. 変わります。非商用複製ビデオグラムは、基本使用料と複製使用料の合算で計算します。基本使用料は内国作品で1分単価400円×収録時間、複製使用料は50個まで1分単価110円×収録時間、51個以上は1分単価2.2円×収録時間×製造数です。音楽の実収録70分・50枚なら合計35,700円+消費税相当額となり、同条件のCDより大きくなります。ほとんどの外国作品の基本使用料は指し値なので、金額も回答日数も事前には読めません。
Q. JASRACの許諾番号はディスクのどこに表示すればいいですか? A. 録音物本体のラベル、つまり盤面には、JASRACマーク・許諾番号・使用著作物の題名と著作者名を表示します。化粧箱やジャケットなど容器に付随する印刷物には、これらに加えてお申込者名を、外から見える場所に表示します。許諾番号はディスクの録音物がR-、DVDやブルーレイなどの映像ソフトがV-で始まります。帯を付ける場合は表示が隠れない位置に置きます。番号がないと印刷データを確定できない点に注意してください。
Q. 申請からCDが手元に届くまで、どれくらい見ておけばいいですか? A. 申し込みはオンライン窓口のJ-RAPPが基本で、書類で手続きする場合は許諾番号などの通知に最低1週間程度かかるとJASRACが案内しています。使用料は収録時間と製造数が決まらないと計算できないため、編集を終えてから申し込む流れになります。許諾番号を受け取ってから盤面とジャケットのデータを仕上げ、制作に出すので、演奏会の後、編集に1〜2週、申請と印刷データの確定にさらに数日から2週程度を見ておくと組みやすくなります。