この記事の要点
- 録り方は、ホールの音響の担当に頼む、録音の業者に頼む、自分たちのレコーダーで録る、の3つです。自分たちで録るときも、ホールで録音を頼めるかを打ち合わせで聞き、頼めるなら両方で録ると、片方がうまくいかなくても音が残ります。
- レコーダーの置き場所と録音レベルは、リハーサルで決めます。いちばん大きな音が出る曲を録って聞き直し、ひずまないレベルにします。ソニーのヘルプガイドは、ピークレベルメーターの−12dBを目安にしています。
- 録った音は曲ごとにトラックに分け、44.1kHz・16bitのWAVにしてから、音楽CD(CD-DA)の形式で書き込みます。CD-Rに入るのは約80分なので、長い演奏会は2枚に分けます。
- 保護期間(原則として作曲者・編曲者の死後70年)が残る曲は、CDを作る前にJASRAC・NexToneや出版社に申し込みます。無料で配るCDも、部員だけに配るCDも同じです。演奏した部員と指揮者の了解も先にもらいます。
- 配る日と枚数を先に決め、そこから逆に数えて進めます。許諾はJ-RAPPで通常2〜3営業日、NexToneで通常5営業日ほど。許諾の表示を入れた盤面とジャケットを用意してから、CDを作ります。
定期演奏会の曲目が決まるころ、「今年の演奏をCDにして、部員や家族に配りたい」という話が出てきます。きれいに録る準備も、CDにして配るための手続きも、本番より前に始めないと間に合いません。
定期演奏会のCDを作るときは、まず、ホールの音響の担当に頼むか、録音の業者に頼むか、自分たちのレコーダーで録るかを決めます。自分たちで録るなら、レコーダーの置き場所と録音レベルをリハーサルで決めておきます。本番の録音は曲ごとにトラックに分け、CDプレーヤーで聴ける音楽CD(CD-DA)の形式で書き込みます。
準備のもう一方は、演奏した曲の権利です。営利を目的とせず、入場無料で、出演者に報酬を払わない演奏会なら、当日の演奏に許諾は要りません。けれども、録音してCDにして配るのはこの例外の外で、無料で配る場合も同じです。保護期間が残る曲はCDを作る前にJASRAC・NexToneや出版社へ申し込み、演奏した部員の了解も確かめて、配る日と枚数から逆に数えて段取りを組みます。
定期演奏会の録音方法は3つ|ホール・業者・自分たちのレコーダー
最初に決めるのは、だれが録るかです。録り方で、準備することと、録った音を受け取る形が変わります。
| 録り方 |
確かめること |
ホールの 音響に頼む |
頼めるか、費用、 受け取る形を、 ホールとの 打ち合わせで聞く。 |
録音の 業者に頼む |
納品の形と時期、 曲の手続きを どちらがするかを、 見積もりで決める。 |
自分たちの レコーダー |
置き場所と設定を リハーサルで決める。 録音係を決める。 |
ホールで演奏会を開くなら、まず会場との打ち合わせで、舞台の音響の担当に録音を頼めるか、音響の機器(ミキサー)から録音用の音をもらえるかを聞きます。頼めるなら、費用と、CD-Rか音声ファイルかといった受け取る形、曲ごとに分けてもらえるかも確かめます。会場の撮影・録音の決まりの例と、打ち合わせで話すことは、発表会・舞台の映像をDVD・ブルーレイにに書きました。
録音の業者に頼むときは、次のことを見積もりの段階で決めます。
- マイクの数と置き方
- 納品がCDか音声ファイルか
- 本番から何日後に届くか
- 編集を終えた音声ファイルも受け取れるか
曲の手続きをどちらがするかも、ここで決めておきます。JASRACは学校の先生向けの案内で、合唱祭などの学校行事を収録してCD・DVDを配るとき、JASRACの管理曲なら、学校か製作する事業者が許諾を得る必要があるとしています。学校行事や吹奏楽などのコンクールの録音・録画物の製作について、JASRACと利用許諾契約を結んでいる事業者の一覧も、JASRACが公表しています(掲載に同意した事業者だけ)。
自分たちのレコーダーで録る方法は、機材が学校や部にあれば新しい費用がかからず、翌年からも同じ手順で録れます。その代わり、置き場所と設定は自分たちで決めることになります。ホールの録音を頼める場合も、自分たちのレコーダーを別に回しておくと、どちらかがうまく録れなかったときに、もう一方の音が残ります。
録音レコーダーの位置は、リハーサルで試し録りして決める
レコーダーをどこに置くかで、録れる音は変わります。舞台に近いと目の前の楽器の音が大きく入りやすく、離れるとホールの響きや客席の物音が増えやすくなります。どこがよいかはホールの形と編成で違ってくるので、リハーサルで2〜3か所に置いて同じ曲を録り、聞き比べて決めます。
- ひずむときは離す。ソニーは、大きな音でひずむ場合は距離を離して録音するよう、リニアPCMレコーダーのPCM-A10のヘルプガイドに書いています
- 揺れるものの上に置かない。同じヘルプガイドは、ピアノの上に置いて録音すると弾くときの振動も一緒に録音されるとして、ピアノの近くに置くよう勧めています。スタンドや三脚に付けるときも、足元の振動が入らないかを試し録りで確かめます
- 録音中は本体に触れない。手が当たったりこすれたりした音も、雑音として録音されることがあります(ソニー)
- マイクの向き。マイクの向きを変えられるソニーのPCM-A10では、ホールでの演奏のように左右に広がりのある音に、左右のマイクを外側に向ける「ワイドステレオポジション」が勧められています
客席に置くときは、会場の決まりを先に確かめます。三脚を立ててよい場所、通路や出入り口をふさがないか、電源を使えるかは、ホールとの打ち合わせで決めておきます。来場者が機材に触れないように、目の届く場所を選ぶか、そばに係を置きます。
ホールの音響から音をもらうなら
音響の機器から録音用の音をもらえると、客席の物音は入りにくくなります。ただ、舞台のマイクの置き方によっては、マイクから遠い楽器の音が小さく入ることもあります。自分たちのレコーダーでも客席側から録っておき、2つを聞き比べて使う方を決めると確かです。どの端子に、どの大きさの音でつなぐかは、ホールの音響の担当と決めます。
レコーダーの設定は、いちばん大きな音に合わせてリハーサルで決める
設定で決めるのは、録音レベル(入力の大きさ)、録音の形式(サンプリング周波数とビット数)、リミッターなどの補助の機能です。機能の名前と操作は機種で違うので、ここではソニー・TASCAM・ZOOMの公式の説明から、考え方を拾います。
| 設定 |
決め方 |
| 録音レベル |
いちばん大きな音で ひずまないところに。 ソニーは−12dBが目安。 |
| 録音の形式 |
WAVで、 44.1kHz・16bit (CDと同じ)。 |
| リミッター |
突然の大きな音の 備えになる。 使うかは 試し録りで決める。 |
| ローカット |
空調や振動の 低い音を抑える。 楽器の低い音も 聞いて決める。 |
| モニター |
有線のヘッドホンで 録音中の音を聞く。 |
録音レベルは、いちばん大きな音がひずまないところに
演奏会では、全員で鳴らす大きな音も、ソロの小さな音も、1本の録音に入ります。ソニーのPCM-A10のヘルプガイドは、録音レベルを手動で合わせるとき、ピークレベルメーターの−12dBを目安に、音源に合った範囲に調節するとしています。大きすぎると「OVER」の表示とピークランプが点き、音がひずむので、消えるまでレベルを下げます。
同じ機種には、リハーサル機能もあります。曲のいちばん大きなところを含めて1分ほど演奏すると、その箇所でひずまないように、録音レベルが自動で合わせられます。機能のない機種でも、考え方は同じです。リハーサルでは、いちばん大きな音が出る曲の、いちばん大きなところを演奏してもらって録り、聞き直してレベルを決めます。
本番は録り直せないので、迷ったら低めにします。ソニーのハンディカムのヘルプガイドにも、連続した大きな音を撮り続けるときは、あらかじめレベルを低めにしておくと臨場感のある音声が記録できる、とあります。録音中の音は、ヘッドホンで聞きながら確かめます。Bluetoothで接続したヘッドホンでは録音中の音を確かめられない、とソニーは断っているので、有線のヘッドホンを用意します。
本番は録り直せないので、いちばん大きな音に合わせ、迷ったら低めにする
自動レベル・リミッターは、備えとして使う
レベルを自動で調節する機能もあります。TASCAMはDR-05Xの特長に、自動レベル、ピーク検出、リミッターの3つのレベル調整機能を挙げています。ピーク検出は、音がひずむほどの音量が入ったときに自動でレベルを下げて録音を続ける機能です。ライブのリハーサルで大きめに設定して使えば、音源に合わせたレベルになる、とTASCAMは説明しています。
ソニーのPCM-A10のリミッターは、手動で録音しているときに突然大きな音が入っても、ひずまないように入力を自動で調節する機能です。お買い上げ時の設定はオフです。
どちらも、思ったより大きな音が入ったときの備えになります。一方で、演奏の途中でレベルが動くと、曲の強弱の聞こえ方が変わることもあります。使うかどうかは、リハーサルの録音を聞いて決めます。空調などの低い音を抑えるローカットの機能(ソニーの録音フィルター「LCF」、ZOOMのローカットフィルタなど)も同じで、低音の楽器まで細くならないかを聞いて選びます。
録音の形式は、CDと同じ44.1kHz・16bitか、それ以上
CDの音は、44.1kHz・16bitのリニアPCMです。ソニーのPCM-A10は、録音モードのお買い上げ時の設定が「LPCM 44.1kHz/16bit」になっています。TASCAMもDR-05Xの説明で、44.1kHz/16bitの録音を「CDクオリティ」と呼んでいます。この形式で録れば、CDにするときに形式を変えずに済みます。
24bitや96kHzで録ってもかまいません。その場合は、CDにするときに44.1kHz・16bitへ変換します。MP3を選べる機種もありますが、圧縮で省かれた音は、あとでCDにしても戻りません。演奏会はWAV(リニアPCM)で録ります。44.1kHz・16bitという数字の意味は、CDの音質はどのくらい?44.1kHz・16bitの意味と配信・ハイレゾとの違いで説明しています。
32bitフロートで録るレコーダーなら
ZOOMのH1essentialは、32bitフロートという形式で録るレコーダーで、ZOOMは「32bitフロート録音なら、レベル調整の必要がありません」と説明しています。録音フォーマットはWAVの44.1/48/96kHz・32bitフロートで、本体でノーマライズ(音の大きさの最大値をそろえる処理)をして、16bitや24bitのWAVに書き出すこともできます。
CDは16bitなので、32bitフロートで録った音も、CDにする前に16bitのWAVにします。レベルの調整が要らない機種でも、置き場所で音が変わることは同じなので、リハーサルでの試し録りは省きません。
本番は曲ごとに止めず、その日のうちに2か所へコピー
本番は開演の前に録音を始め、曲ごとには止めずに通して録ります。曲ごとに録音ボタンを押し直すと、押し忘れや押し遅れで曲の頭が欠けることがあるからです。区切りは、あとで編集で付けられます。休憩のあいだには、残りの録音時間と電池を確かめます。
長い録音では、ファイルの大きさの上限でファイルが分かれることがあります。ソニーのPCM-A10は、リニアPCMで4GBを超えるとファイルが分割され、分かれた位置の前後で音が途切れる場合があると書いています。96kHz・24bitのステレオなら、計算上は約2時間で4GBに届きます。大きな形式で長く録るなら、休憩で一度止めて第2部を新しいファイルにするなど、分かれ目が曲の途中に来ないようにします。止めたときは、第2部の前に録音を始め直したことを表示で確かめます。
終わったら、その日のうちに録音をパソコンなどにコピーし、2か所以上に置きます。録り直せない音なので、SDカードの中だけにしておかないようにします。置き場所の分け方は写真・動画の長期保存はクラウドとDVDのどっち?|3-2-1バックアップの組み方にまとめています。
曲ごとにトラックを分けて、音楽CD(CD-DA)にする
本番の録音は、開演から終演までの長い1本です。CDプレーヤーで曲を選べるように、曲ごとのトラックに分けてから書き込みます。
区切る位置と、拍手・曲間の扱い
区切りは、音の編集ソフトで波形を見ながら付けるのが基本です。レコーダーの本体で区切れる機種もあり、ソニーのPCM-A10は1つのファイルに98個までトラックマークを付けて、その位置でファイルを分割できます。TASCAMのDR-05Xにも、1曲に99ポイントまで付けられるマーク機能と、ファイルの分割があります。
区切る位置は、曲の前の拍手が収まって指揮者が構えるあたりから、曲の終わりの響きが消えて拍手が入るあたりまでを1曲にすると、どのトラックから再生しても曲の頭が欠けません。曲のあとの拍手をどこまで残すか、司会(MC)の話を入れるかは、配る相手と収録時間で決めます。
音の大きさは、曲ごとに最大値をそろえると、静かな曲も大きな曲と同じところまで持ち上がり、演奏会で聞いた強弱とは違って聞こえます。演奏会全体を同じ量だけ持ち上げるか、曲ごとにそろえるかは、聞き比べて決めます。ひずんだ音は、あとで小さくしてもひずんだままです。最後に、曲ごとに44.1kHz・16bitのWAVで書き出し、ファイル名の頭に「01_」「02_」と番号を付けておくと、書き込むときに順番を間違えません。
書き込みソフトで「オーディオCD」の形式を選ぶ
CDプレーヤーやラジカセで聴く音楽CDは、CD-DAという形式で書き込みます。マクセルは、CD-Rに音楽を記録する場合もCD-DAフォーマットで記録しないと、CDプレーヤーでは再生できないとしています。MP3などの圧縮ファイルのまま記録したディスクは、その形式に対応したプレーヤーでしか再生できない、ともしています。書き込みソフトでは「オーディオCD」や「音楽CD」の形式を選びます。
Macのミュージックアプリなら、曲を並べたプレイリストを選び、「ファイル」メニューの「プレイリストからディスクを作成」で、ディスクフォーマットを「オーディオCD」にします(Apple)。このとき、次の設定も選べます。
- 曲の間隔。曲と曲の間の無音の長さを変えられる
- 音量の自動調整を使用。すべての曲が同じ音量レベルで再生されるようにする。演奏会の強弱を残すなら、使うかどうかを聞いて決める
- CD-Textを含める。一部の車載のプレーヤーで表示できる情報を入れる
- 推奨速度。書き込みの速度を選ぶ
Windowsのパソコンでも、音楽CDの書き込みに対応したソフトで同じ形式を選びます。ソニーは、PCM-A10で録った音を、専用ソフトのSound Organizer 2(Windowsのみ)でパソコンからCDに記録できると案内しています。
1枚に入るのは約80分。長い演奏会は2枚に分ける
音楽用のCD-Rは「80min」と表記され、CD-DAの形式で約80分の音楽を録音できます。この約80分には、曲の演奏時間と曲間の無音も含まれます(マクセル)。
第1部・第2部・アンコールまで入れて80分を超えるなら、第1部を1枚目、第2部とアンコールを2枚目のように、区切りのよいところで2枚に分けます。曲間の拍手やMCを短くして、1枚に収める方法もあります。Appleのミュージックアプリは、プレイリストがディスクの容量を超えると、続きを別のディスクに書き込む作りなので、分ける位置は自分で決めてから焼きます。
焼いたら、パソコン以外のCDプレーヤーで最後まで聴く
焼いたCDは、作ったパソコンではなく、CDプレーヤー、ラジカセ、車のプレーヤーなど、何台かで最初から最後まで再生します。マクセルは、CD-Rに録音した音楽がCDプレーヤーで再生できない原因を3つ挙げています。プレーヤーがCD-Rの再生に対応していない可能性、書き込みのときにディスクのクローズの処理をしていないこと、ディスクの記録の特性や再生機器の側の問題です。オーディオCDの形式で記録すると、最後に再生専用とするクローズの処理が行われます(マクセル)。
曲の順番、トラックの区切り、音の途切れや雑音も、この1枚で確かめます。全部の枚数を焼く前に1枚目を作り、何台かで聴いてから残りを作ります。
全部を焼く前に1枚目を作り、何台かのプレーヤーで最後まで聴く
枚数が多いなら、コピーやプレスの業者と比べる
配る枚数が多いときや、盤面の印刷をきれいに仕上げたいときは、CD-Rに書き込むコピーの業者や、工場で盤を作るプレスに頼む方法もあります。プレスは型を作る工程が加わり、工場に渡すマスターの形も決まっています。収録時間の上限も工場で違い、メモリーテックは音楽CDの79分38秒までを保証の範囲としています。
どちらにするかの比べ方はCD・DVDのプレスとコピーの違いに書きました。プレスの入稿の形はDDPとは|CDプレスの入稿形式の中身・作り方・渡す前の確かめ方に、ジャケットの寸法はCDジャケットのサイズにまとめました。
演奏会のCDと著作権|当日の演奏と、CDにして配ることは別
著作権法では、当日の舞台で曲を演奏することと、その録音をCDにして配ることは、別の行為です。営利を目的とせず、観客から料金を取らず、出演者に報酬を払わない演奏会なら、曲を演奏するのに許諾は要りません(第38条1項)。文化庁の学校向けの冊子も、この例外の適用例に「文化祭などでブラスバンド部の演奏」を挙げ、観客から鑑賞の料金を取る音楽会は許諾が必要としています。
JASRACは、この条件を「営利を目的としていない」「名目を問わず、入場料をとらない」「演奏者(歌手やバンド)や指揮者など出演者へ報酬の支払いがない」の3つとして案内しています。入場料を取る定期演奏会や、出演者に報酬を払う演奏会は、当日の演奏そのものにも手続きが要ります(JASRAC)。
| 場面 |
曲の手続き |
当日に 演奏する |
3つの条件を 満たせば要らない (第38条)。 |
入場料を 取る、 出演者に 報酬を払う |
当日の演奏にも 手続きが要る。 |
録音して CDにし、 配る |
無料でも、 部員だけでも、 手続きが要る。 |
録音してCDにすれば複製、配れば頒布です。頒布は、有償か無償かを問わず複製物を公衆に譲渡することで、公衆には特定かつ多数の人も含まれます(第2条)。第38条の例外が認めているのは演奏などだけで、文化庁の著作権テキストは、条件の1つめに「「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない」と書いています。
入場無料の演奏会でも、録音をCDにして配るには、曲の手続きが要ります。JASRACも、合唱祭などの歌や演奏を録音・録画したCD・DVDを生徒などに配る場合は、演奏に手続きが要らないときでも録音・録画の手続きが必要だとしています。
無料でも、部員だけに配るCDでも、手続きは要る
JASRACは、クラブのみんなに配るために演奏会を録音する場合について、「販売するときはもちろん、無料であってもみんなに配るときには手続きが必要です」と説明しています。JASRACのよくある質問も、仲間うちやサークルで共有する場合について、無償で配る有志団体・保護者会の制作物やサークル内の記録などは私的利用の範囲を超えるので、利用申請が必要と答えています。NexToneも、課外活動や卒業記念の録音物を作って生徒や保護者に配るときは、事前に許諾が必要としています。
学校の授業の例外(第35条)も使えません。JASRACは学校の先生向けの案内で、学校行事の記念に生徒などへCD・DVDを配ることは授業の過程での使用ではないので、第35条の権利制限に当たらないとしています。家庭内など限られた範囲で、使う本人が複製する私的使用(第30条)にも入りません。学校での録音・録画と著作権の全体は、学校行事の録画・DVD配布と著作権にまとめています。
部員が自分たちで演奏した音なので、市販のCDの音源にあるレコード会社などの権利は関わらず、手続きの中心は曲の著作権です。ただ、演奏会の中で市販のCDや配信の音源を流した場面があり、その音もCDに入れるなら、音源の許諾が別に要ります(JASRAC)。
作曲者の死後70年を過ぎた曲なら手続きは要らない?編曲と外国の曲に注意
JASRACは、原則として著作者の死後70年が経過した作品は手続きなく利用できると案内しています。曲の著作権は、作曲者や作詞者が亡くなった年の翌年の1月1日から数えて、70年続きます(第51条・第57条)。文化庁の著作権テキストは、「死亡年に70年を加算した年の12月31日まで」と考えると分かりやすい、としています。
この70年は、2018年12月30日の改正で50年から延びたものです。文化庁によると、延長の対象は原則として1968年以降に亡くなった人の著作物で、改正の時点で保護期間が終わっていた著作物は対象になりません。計算すると、日本の作曲者の曲なら、原則として1967年までに亡くなった人の曲は保護期間が終わっていて、1968年以降に亡くなった人の曲は死後70年まで続きます。
吹奏楽のために書かれた曲も、ポップスや映画音楽を編曲した曲も、クラシックを編曲した曲も、作曲者と編曲者の両方を1曲ずつ確かめます。
編曲した楽譜で演奏した曲は、編曲者の権利も確かめる
吹奏楽では、管弦楽やピアノの曲、ポップスや映画音楽を、吹奏楽用に編曲した楽譜で演奏することがあります。編曲して新しく創作した作品は、法律の上では元の曲とは別の著作物(二次的著作物)です(第2条1項11号)。元の曲の作曲者が亡くなって70年を過ぎていても、編曲した楽譜で演奏した曲は、編曲した人の権利が残っていないかを確かめます。
元の曲の権利が残っている場合は、編曲した楽譜を使うときも、元の曲の作者が編曲者と同じ種類の権利を持ちます(第28条)。編曲すること自体も、作者の権利です(第27条)。JASRACは、既存の曲を編曲する場合は作詞者・作曲者の意向を確かめる必要があるとして、音楽出版社を通すなどして事前に確かめるよう案内しています。
部で独自に編曲した楽譜で演奏した曲は、CDにする前に、元の曲の音楽出版社などに確かめます。NexToneも、編曲して使う場合は、先に音楽出版社などの許諾を得てから申し込むよう案内しています。借りた楽譜で演奏した曲は、借りたときの契約に録音や頒布の決まりがないかも見ておきます。
外国の曲は、相互主義と戦時加算で計算が変わる
外国の作曲者の曲は、同じように死後70年で数えられるとは限りません。文化庁の著作権テキストは、外国人の著作物について、保護期間の特例として相互主義と戦時加算を挙げています。1つめの相互主義では、日本より保護期間が短い国の著作物は、その国の保護期間だけ保護されます(第58条)。
2つめの戦時加算は、第二次世界大戦の前や戦中に、連合国とその国民が取得した著作権に、戦争の期間の日数を加えるものです(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律 第4条)。加わる日数は、アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・フランスで3794日です。
3794日は10年あまりなので、作曲者の没年だけで「もう70年たった」と決めると、まだ保護されている曲を見落とすことがあります。外国の曲も、JASRACの作品検索データベース「J-WID」とNexToneの作品データベースで、1曲ずつ管理を調べます。どちらにもなく、保護期間が終わっているか分からない曲は、音楽出版社などに問い合わせます。
没年だけで決めず、編曲者の権利と外国の曲の戦時加算も確かめる
JASRAC・NexToneへの申し込みは、CDを作る前に
申し込み先は、曲ごとに違います。演奏した曲を1曲ずつ、曲名・作曲者・編曲者と演奏時間で書き出してから、次の順で調べます。
- JASRACの作品検索データベース「J-WID」で曲を探し、管理状況の「複製」のうち「録音物」の区分を確かめる
- J-WIDで見つからなければ、NexToneの作品データベースで探し、表の「オーディオ」の欄を確かめる
- どちらにもない曲は、音楽出版社や作者に直接問い合わせる
JASRACの管理曲は、オンラインの窓口「J-RAPP」から申し込みます。許諾番号は、J-RAPPなら通常2〜3営業日後にメールで届き、紙の申込書なら通常1週間前後で郵送されます。申し込むときは、JASRACが管理していない曲も含めて、収録する曲をすべて申告します。販売しないCDは、定価・小売価格を「0円」と入力するよう案内されています。
NexToneの管理曲は、初回に利用者登録をしてから、クリアランスシステム「PlayN」の「利用許諾申請(オーディオ)」で申し込みます。許諾までは通常5営業日ほどです。JASRACもNexToneも、製造の前に申し込むよう求めています。
許諾が出たら、表示を入れてからCDを作ります。JASRACの管理曲は、盤面にロゴマーク(または「日本音楽著作権協会」)、許諾番号、使った曲の題名と作者名を載せます。ジャケットなどには、それに申込者名を加えて、外から見える場所に表示します。NexToneの管理曲は、許諾マークを盤面やケースなど製品の1か所に表示すればよく、許諾番号の表示は要りません。調べ方と表示のしかたの細かいところは、歌ってみた音源をCDにして頒布するにはで説明しています。
どちらも製造の前に申し込み、許諾が出たら表示を入れてからCDを作る
使用料は「録音(非商用複製)」の計算で見積もる
学校や保護者会などが、無償か製作費の実費だけで配るCDは、JASRACの「録音(非商用複製)」の区分にあたります。条件は、教育機関・非営利団体・個人が複製の主体で申込者でもあり、非営利の目的で作ること、無償か製作費の実費以外の対価を得ないことです。
使用料は「その他のCD・録音テープ(定価を明示しない録音物)」の計算の半額です。作る枚数が49以下なら「400円×50/100×管理楽曲数」、50以上なら「8.1円×50/100×製造数×管理楽曲数」に、消費税相当額を加えます(2026年9月26日に確かめたJASRACの計算方法)。
曲の数え方にも決まりがあり、1曲の収録時間が5分00秒からは2曲、10分00秒からは3曲、15分00秒からは4曲として数えます。長い曲を演奏した演奏会では、曲の長さも書き出しておきます。NexToneの管理曲の使用料は、PlayNの申請画面の見積もりで確かめられます。
演奏した部員と指揮者の了解を、録る前にもらう
CDには、曲のほかに演奏した人の実演も入ります。著作権法は、演奏する人と、実演を指揮する人を「実演家」と呼んでいます(第2条1項4号)。実演家には、自分の実演を録音する権利と、その録音物を譲渡して公衆に提供する権利が認められています(第91条・第95条の2)。文化庁の著作権テキストも、音楽CDをコピーするときは、作詞家・作曲家とレコード製作者だけでなく、歌手や演奏家などの実演家の了解も必要だと説明しています。
部が自分たちの演奏会を録る場合も、録音してCDにすること、だれに何枚配るかを、部員に先に知らせておきます。未成年の部員がいるなら、保護者にも同じ内容を知らせます。指揮者、ソリスト、賛助出演のOB・OGや外部の奏者など、部員以外の出演者には、一人ずつ了解をもらいます。ジャケットに出演者の名前を載せるなら、そのことも一緒に伝えます。
演奏会の映像をDVD・ブルーレイにして配るとき
演奏会をビデオで撮り、映像のディスクにして配るなら、曲の手続きはCDとは別の区分です。JASRACでは映像ソフト(DVD・ブルーレイなど)の製作、NexToneでは「利用許諾申請(ビデオグラム)」にあたります。調べるときも、J-WIDでは「映像ソフト」の区分、NexToneの作品データベースでは「ビデオ」の欄を見て、ディスクを作る前に申し込みます。
JASRACは、映像ソフトで外国曲を使う場合、業務用の音源などを除いて、使用料を音楽出版社が指定する額(指し値)としています。映像を配る段取りと、写る出演者への配慮は、発表会・舞台の映像をDVD・ブルーレイにで詳しく説明しています。
ビデオカメラの内蔵マイクより、レコーダーで録った音のほうが聞きやすいときは、編集で映像の音をレコーダーの音に差し替えます。開演の前に、カメラとレコーダーの両方に入る大きさで一度手をたたいておくと、2つの音の波形を見比べて位置を合わせやすくなります。長い録音で後ろほどずれていくときの直し方は、動画の音ズレの直し方にあります。
当社(ディスクメーカー・大阪・梅田)は、動画データからDVD・ブルーレイを1枚から作る小さな店です。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。編集を終えた動画は、ギガファイル便の共有URLを注文フォームに貼って入稿でき、スマホからも送れます。
受け取った動画は、プレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、書き込みます。DVDは720×480(NTSC 29.97fps・MPEG-2)、ブルーレイは1920×1080、音声はAC-3かリニアPCMで作ります。実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、店舗でお渡しします。
曲ごとの区切りは、注文ページで「チャプター分け」を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に、2つ目以降の位置を時刻で入れてください(1つ目は動画の冒頭の00:00:00に自動で入り、最大50チャプター)。
配る日と枚数から逆に数えて、段取りを組む
最後に、全体を配る日から逆に数えて並べます。曲の手続きと部員への知らせは、本番より前に始めておきます。
- 配る日と、配る相手を決める。部員、家族(別の家に住む祖父母の分も含めるか)、顧問や外部の指導者、OB・OGの会、学校の保存用など
- 希望の枚数を集め、予備の枚数も決める。曲の手続きは、この枚数で申し込む
- 録り方を決め、ホールとの打ち合わせで、録音を頼めるか、音響から音をもらえるか、レコーダーを置く場所と電源を確かめる
- 曲目が決まったら、曲名・作曲者・編曲者・演奏時間を書き出し、J-WIDとNexToneの作品データベースで管理を調べる。自分たちの編曲や借りた楽譜の確認も、ここで始める
- 部員と出演者に、録音してCDにし、配ることを知らせて了解をもらう
- リハーサルで、レコーダーの置き場所と録音レベルを決める
- 本番を通して録り、その日のうちに録音を2か所にコピーする
- 曲ごとにトラックを分けて44.1kHz・16bitのWAVにし、約80分を超えるなら2枚に分ける
- JASRAC・NexToneに申し込む(J-RAPPで通常2〜3営業日、紙の申込書なら1週間前後、NexToneは通常5営業日ほど)
- 許諾の表示を入れた盤面とジャケットの原稿を作る
- 1枚目を焼いて何台かのプレーヤーで最後まで聴き、残りを作って配る
CDの複製を業者に頼むなら、製造の日数は見積もりで確かめ、許諾の表示を入れた原稿がそろってから入稿します。あとから枚数を足すときは、曲の手続きも確かめます。NexToneは、許諾を得た製品を追加で作る場合も、別に追加の申請が要るとしています。編集を終えたWAVのファイルとジャケットの原稿は、ディスクとは別の場所に残しておくと、足りなくなったときに同じ内容で作り足せます。
曲の手続きと部員への知らせは、本番より前に始めておく
よくある質問
Q1. 吹奏楽の定期演奏会をCDにするには、何から始めればいいですか?
配る日と枚数、録り方、曲の権利の3つを、本番より前に決めます。録り方は、ホールの音響に頼む、録音の業者に頼む、自分たちのレコーダーで録るの3つです。曲目が決まったら、曲名・作曲者・編曲者を書き出して、J-WIDとNexToneの作品データベースで管理を調べます。レコーダーの置き場所と録音レベルは、リハーサルで試し録りをして決めます。
Q2. 録音レコーダーは、ホールのどこに置けばいいですか?
どのホールでもよいという位置はないので、リハーサルで2〜3か所に置いて同じ曲を録り、聞き比べて決めます。舞台に近いと近くの楽器が大きく入りやすく、離れると響きや客席の物音が増えやすくなります。ソニーのヘルプガイドは、大きな音でひずむなら距離を離すこと、ピアノの上のように振動が伝わる場所に置かないことを挙げています。
Q3. 録音レベルは、どのくらいに合わせればいいですか?
ソニーのリニアPCMレコーダー、PCM-A10のヘルプガイドは、ピークレベルメーターの−12dBを目安に、音源に合った範囲に調節するとしています。リハーサルで、いちばん大きな音が出る曲のいちばん大きなところを録り、「OVER」などの表示が出ないことを確かめます。本番は録り直せないので、迷ったら低めにします。
Q4. 録音の形式は、何kHz・何bitにすればいいですか?
CDの音は44.1kHz・16bitなので、WAV(リニアPCM)の44.1kHz・16bitで録れば、CDにするときに形式を変えずに済みます。24bitや96kHz、32bitフロートで録ってもよく、その場合はCDにする前に44.1kHz・16bitへ変換します。MP3で録ると、省かれた音はCDにしても戻りません。
Q5. 入場無料の定期演奏会でも、録音をCDにして配るには手続きが要りますか?
保護期間が残る曲なら要ります。営利を目的とせず、入場無料で、出演者に報酬を払わない演奏会なら、当日の演奏は許諾なしにできます(第38条1項)。ただ、この例外は演奏などだけで、録音してCDにする複製と、配る譲渡は含まれません(文化庁の著作権テキスト)。JASRACも、演奏に手続きが要らない場合でも、録音物を配るときは録音の手続きが必要としています。
Q6. 部員と家族だけに配るCDでも、JASRACやNexToneに申し込むのですか?
JASRACやNexToneが管理する曲なら、申し込みます。JASRACは、クラブのみんなに配るために演奏会を録音する場合、無料でも手続きが必要と説明しています。よくある質問でも、サークル内の記録などは私的利用の範囲を超えると答えています。NexToneも、課外活動の録音物を作って生徒や保護者に配るときは、事前の許諾が必要としています。私的使用(第30条)は、家庭内など限られた範囲で、使う本人が複製する場合の例外です。
Q7. 作曲者が亡くなって70年を過ぎたクラシックの曲なら、手続きは要りませんか?
曲そのものは、原則として手続きなく使えます(第51条・JASRAC)。ただ、吹奏楽用に編曲した楽譜で演奏したなら、編曲は元の曲とは別の著作物(第2条1項11号)で、編曲した人の権利が残っていないかを確かめます。外国の作曲者の曲は、戦時加算(アメリカ・イギリス・フランスなどは3794日)や相互主義で計算が変わるので、J-WIDなどで管理を確かめます。
Q8. 定期演奏会が80分を超えたら、CD1枚に入りますか?
入りません。音楽用のCD-Rに録音できるのは約80分で、曲間の無音も含めた長さです(マクセル)。第1部を1枚目、第2部とアンコールを2枚目のように、区切りのよいところで2枚に分けるか、拍手やMCを短くして収めます。2枚組にするなら、盤面とジャケットに1枚目・2枚目の区別を入れて、取り違えを防ぎます。
Q9. 焼いたCDがパソコンでは聴けるのに、CDプレーヤーで鳴らないのはなぜですか?
マクセルは原因として、プレーヤーがCD-Rの再生に対応していない可能性、書き込みでディスクのクローズの処理をしていないこと、ディスクの記録の特性や再生機器の側の問題を挙げています。MP3などのファイルのまま書き込んだディスクも、その形式に対応したプレーヤーでしか鳴りません。書き込みソフトで「オーディオCD」の形式を選び、別の何台かで確かめます。
Q10. 演奏会の映像をDVDやブルーレイにして配るときも、同じ手続きですか?
曲の手続きが要る点は同じですが、区分と窓口が違います。JASRACでは映像ソフト(DVD・ブルーレイなど)の製作、NexToneでは「利用許諾申請(ビデオグラム)」として、ディスクを作る前に申し込みます。JASRACは、映像ソフトで外国曲を使う場合、業務用の音源などを除いて、使用料を音楽出版社が指定する額(指し値)としています。写っている出演者の了解も確かめます。
参考にした公式の情報
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法律の運用や各団体の手続き・使用料、機器の仕様は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月26日時点の法令と各公式ページの記載をもとにしたものです。個別の判断は、JASRAC・NexTone、音楽出版社などの権利者や、会場・学校に確かめてください。
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