この記事の要点
- 学校行事の録画をDVDにして配るときに関わるのは、曲・振付・脚本の著作権と、市販のCD音源に含まれる歌手やレコード会社の権利(著作隣接権)、写っている人の肖像権です。
- 入場無料で、出演者に報酬を払わず、営利を目的としない行事なら、歌う・演奏する・CDを流す・劇を演じることは許諾なしにできます(第38条)。録画してDVDにし、配ることはこの例外に入りません。
- 学校の授業の例外(第35条)は運動会や卒業式にも及びますが、記念品として配るDVDは「授業」に当たらず、許諾が要ります(文化庁)。1枚だけ作る場合も同じです(第35条運用指針の追補版)。
- 曲の許諾は、JASRACの管理曲なら「J-WID」で調べて「J-RAPP」から、NexToneの管理曲なら作品データベースで調べて「PlayN」から、DVDを作る前に申し込みます。市販のCD音源には、レコード会社などの許諾が別に要ります。
- 保護者などに限ったライブ配信は、学校の設置者が補償金を払う制度の範囲で許諾なしにできます。学校のホームページやSNSで広く公開するのは、授業の範囲を超えます。
運動会のダンス、合唱コンクール、文化祭の劇、卒業式。行事を撮影した映像をDVDにして家庭に配ろうとすると、使った曲や台本の著作権が気になり始めます。先生やPTAの係が最初に迷うのは、「当日は問題なく流せた曲を、そのままDVDに入れて配ってよいか」という点でしょう。
行事の当日に歌う、演奏する、CDを流す、劇を演じることは、入場無料で出演者に報酬を払わない学校行事なら、許諾を得なくてもできます。一方、録画した映像をDVDにすれば「複製」、配れば「頒布」で、当日の例外は使えません。文化庁は学校向けの冊子で、記念品として配る目的で行事の映像を保存する場合は授業に当たらず、著作者や著作隣接権者などの許諾が必要だと説明しています。
手続きが要るかどうかは、3つの問いで分かれます。その場で使うだけか、記録して配るか。音が自分たちの生演奏・生歌か、市販のCDか。作るのは学校(先生・児童生徒)か、保護者やPTAか。保護者がわが子を撮って家で見るぶんには手続きは要らず、問題になるのは、その映像を複製してほかの家庭に配る、ネットで公開する、といった段階です。
その場で使う・家で見るまでは不要。DVDにして配る段階から許諾が要る
学校行事の録画・配布で、手続きが要る場面と要らない場面
JASRACの学校向けの解説(JASRAC PARK「学校で音楽を使うときには」)、文化庁の冊子「学校における教育活動と著作権」(令和5年度改定版)、日本レコード協会のQ&Aをもとに、よくある場面を並べました。
| 場面 |
手続き |
当日に歌う・ 演奏する・ CDを流す |
要らない (入場無料・ 出演者に報酬なし・ 営利目的でない場合。 第38条) |
行事で流す ためにCDを コピー・編集 |
要らない (先生や児童生徒が 行事のためだけに 行う場合。第35条) |
式で上映する 動画に曲を 入れる |
学校が式のためだけに 作るなら要らない (第35条) |
保護者が わが子を撮って 家で見る |
要らない (家庭内の私的使用。 第30条) |
撮った動画を クラス全員に 配る |
要る (私的使用の範囲外) |
記念のDVDを 作って配る |
要る (無料でも、1枚でも。 第35条は使えない) |
入場料を取る 演奏会 |
演奏そのものに 手続きが要る |
保護者に 限った ライブ配信 |
学校の設置者が 補償金を払う制度の 範囲なら要らない (第35条) |
学校の ホームページ・ SNSで公開 |
要る (授業の範囲を 超える) |
「要らない」は、どれも法律が決めた例外の条件を満たしたときだけ当てはまります。当日の演奏や上映(第38条)、授業のための複製(第35条)、家庭の中での複製(第30条)のどれも、記録した映像を記念としてほかの家庭に配ることまでは認めていません。配る段階に進んだら、曲・音源・脚本などの権利者の許諾を得るのが基本です。
関わる権利|曲・振付・脚本の著作権、CD音源の著作隣接権、肖像権
行事の映像には、いくつもの権利が重なっています。著作権法は著作物の例として、音楽のほか、振付にあたる「舞踊又は無言劇」、脚本を含む「言語」の著作物を挙げています(第10条)。
| 権利 |
関わる場面と 確かめる先 |
曲の著作権 (作詞・作曲) |
合唱・演奏・BGMの どれにも関わる。 JASRACやNexTone などが管理 |
振付の 著作権 |
既製の振付を そのまま踊るとき。 振付の作者に確かめる |
脚本の 著作権 |
劇を録画すると 脚本の複製になる。 作者や出版社などに 確かめる |
CD音源の 著作隣接権 |
市販のCDや配信の 音が入るとき。 レコード会社などに 確かめる |
| 肖像権 |
写っている子どもや 来場者。本人や 保護者の承諾を得る |
市販のCDや配信の音源には、作詞者・作曲者の著作権のほかに、歌手や演奏家(実演家)と、レコード製作者の権利(著作隣接権)が含まれています(JASRAC)。JASRACは作詞者・作曲者・音楽出版社などから著作権の信託を受けて管理する団体で、NexToneも、自社が許諾するのは作詞者・作曲者などの著作権だけだと案内しています。CDの音をそのまま使うなら、レコード会社や歌手の所属事務所などの許諾が別に要ります。
児童生徒や先生が自分たちで歌い、演奏した音なら、話が変わります。「改正著作権法第35条運用指針」の特別活動追補版(教育関係者と権利者の団体でつくる「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が策定し、文化庁の著作権テキストが参照先に挙げる資料。以下、追補版)は、市販のCD音源をコピーせず、教員や児童生徒の演奏・歌唱を録音・録画して使う場合は、著作権者の許諾だけで足りるとしています。合唱や吹奏楽の記録が、CDの曲で踊ったダンスの記録より手続きしやすいのは、このためです。
自分たちで歌い演奏した音なら、許諾は曲の著作権者だけで足りる
曲の著作権は、作者の死後70年まで続きます(第51条)。JASRACの学校向けの解説も、原則として著作者の死後70年が経過した作品は手続きなく利用できるとしています。ただし、CDに録音された音(レコード)の権利は、発行の翌年から70年と、別に数えます(第101条)。作曲者が古い時代の人でも、市販のCDの音をそのまま使うなら、録音の権利を確かめます。
肖像権は、自分の肖像をみだりに他人に公開されない権利で、プライバシー権の一つとされています。法律で定めた権利ではなく、判例によって確立されてきた権利です。文化庁は、他人の肖像を使う場合は、あとでトラブルにならないよう、事前に本人や保護者の承諾を得ておくよう勧めています。
その場で歌う・流す・演じるのは許諾なし|第38条の3つの条件
著作権法第38条1項は、公表された著作物を、営利を目的とせず、聴衆や観衆から料金を受けない場合に、公に上演・演奏・上映・口述できると定めています(演じる人や演奏する人に報酬を払う場合は除く)。文化庁の冊子は、この適用例に「文化祭などでブラスバンド部の演奏や演劇部の演劇を行う場合」を挙げています。
市販のCDを会場でそのまま流すことも、法律上は「演奏」に含まれます(第2条7項)。JASRACの学校向けの解説は、運動会の入退場や競技でCDを流すこと、卒業式で合唱し、入退場のBGMにCDを流し、スライドショーを上映することを、3つの条件を満たすので手続きはいらない、と説明しています。
文化庁は、音楽会で観客から鑑賞の料金を取る場合を、条件から外れて「許諾が必要」な例に挙げています。JASRACは、文化祭でも有料の催しや、プロのミュージシャンなど出演者に報酬を払う催しには手続きが必要だとし、観客から募金を受け取るチャリティーコンサートや、実際の額を大きく上回る交通費を出演者に払う場合も手続きが要ると案内しています。
この例外が認めているのは上演・演奏・上映・口述だけです。文化庁の著作権テキストは、条件の1つめに「「複製・譲渡」や「公衆送信」は含まれない」と書いています。当日は自由に歌えた曲でも、録画してDVDにすれば複製、配れば譲渡、ネットに上げれば公衆送信になり、第38条では済まなくなります。JASRACも、合唱祭などを録音・録画したCD・DVDを生徒などに配る場合は、歌うことに手続きが要らない場合でも、録音・録画の手続きが必要だと注意しています。
授業の例外(第35条)では、記念DVDは配れない
第35条は、営利を目的としない学校で、教育を担任する者と授業を受ける者が、授業の過程で使うために必要な限度で、公表された著作物を複製したり公衆送信したりできる、と定めた規定です。著作物の種類や用途、複製の部数や態様から見て、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれます。
入学式、卒業式、運動会、文化祭、合唱祭などの学校行事は、教育課程の「特別活動」にあたり、この「授業」に含まれると考えられています(追補版。文化庁の冊子も「授業」の例に学校行事を挙げています)。そのため、先生や児童生徒が運動会で流すためにCDをコピーしたり、卒業式で上映するスライドショーに曲を入れたりすることには、手続きが要りません(JASRAC)。
行事のあとで記念に配るDVDは、これとは別の扱いです。文化庁の冊子は「記念品として配付する目的で、著作物が含まれる特別活動の映像を保存する場合は、授業に該当せず、教員や児童・生徒等の利用ではないことから、著作者・著作隣接権者等からの許諾が必要です」と書いています。追補版は、DVDを1枚だけ作った場合も、いったん配ったDVDを後から回収して捨てた場合も、第35条の複製には当たらないとしています。JASRACとNexToneの案内も、卒業記念のCD・DVDを作って生徒や保護者に配るには手続きが必要、という点で同じです。
PTAや保護者の有志が作る場合は、そもそも第35条の外です。追補版のチェックシートは「PTA活動」を授業以外の例に挙げ、日本レコード協会も、保護者は授業を受ける対象ではないため、この例外は当てはまらないと説明しています。
授業のために作ったコピーを、あとから記念品として配ったり、ネットで公開したりすることも、許諾なしにはできません。第35条や第30条で作った複製物を、その目的以外で配ったり公衆に見せたりすると、複製を行ったものとみなされます(第49条)。
保護者がわが子を撮るのは私的使用|クラスに配る・SNSに載せるのは別
家庭の中で見るための録画は、第30条の「私的使用のための複製」です。個人的に、または家庭内など限られた範囲で使うために、使う本人が複製するなら、許諾は要りません。JASRACの学校向けの解説でも、保護者が子どもの成長記録として録画する、家族が発表会を撮って家で見る、といった場面は手続きが要らないとされています。どこから、どう撮ってよいかは、著作権とは別に学校のルールで決まります。
範囲を超えるのは、撮った映像を人に渡すときです。日本レコード協会は、劇中でCDの曲を使った文化祭の劇を保護者が撮影し、クラス全員分のDVDを作って配る例について、保護者がそれぞれ家庭用に撮るのは私的使用でも、コピーしてクラスに配るのは範囲外で、CDの権利者の許可が必要だと答えています。インターネットで公開する場合も、手続きが要ります(JASRAC)。
学校や係から受け取ったDVDを、家庭で見るために見る本人がコピーするのも、第30条の範囲です。ただし、コピーガードを外して、または外されていると知りながら複製することは、家庭で見るためでも例外に入りません(文化庁の著作権テキスト)。私的使用のために作ったコピーを、ほかの家庭に配ることもできません(第49条)。市販のDVDやテレビの録画に使われているコピーガードの仕組みと見分け方は、コピーガードとは|DVD・ブルーレイの見分け方と著作権法の決まりにまとめました。
許諾の取り方|JASRAC・NexTone・レコード会社への手続き
手続きは曲ごとに、DVDを作る前に行います。JASRACもNexToneも、製作・製造の前に申し込むよう案内しており、JASRACは、許諾を得ずに作った場合は学校側が法的責任を負うこともあると注意を促しています。
曲ごとに管理者を調べ、DVDを作る前に申し込む
曲の管理者を、作品データベースで調べる
まず、配る映像に入る曲を、曲名と作詞者・作曲者の名前で書き出します。JASRACの作品検索データベース「J-WID」で調べ、管理状況のうち「複製」の「映像ソフト」の区分を確かめます。J-WIDで見つからなければ、NexToneの作品データベースで調べ、「ビデオ」の欄が「◯」ならNexToneの管理、「△」なら一部を管理しています。どちらにもない曲は、音楽出版社や作者に直接問い合わせます。
JASRACは「J-RAPP」、NexToneは「PlayN」から申し込む
JASRACの管理曲は、オンラインの窓口「J-RAPP」から申し込みます。書類でも手続きでき、その場合は許諾番号の通知までに最低1週間ほどかかります。届いた許諾番号とJASRACのロゴマークをディスクなどに表示し、使用料は、許諾番号の通知から2〜3か月後に届く請求書で払います。学校関係者や保護者が作る場合も、この手続きです。
NexToneの管理曲は、初回に利用者登録をしてから、クリアランスシステム「PlayN」の「利用許諾申請(ビデオグラム)」で申し込みます。許諾までは通常5営業日ほどで、申請の画面で使用料の見積もりを確かめられます。許諾マークは製品の1か所に表示すればよく、許諾番号の表示は要りません。
JASRACの使用料(非商用複製の計算方法)
学校やPTA、個人が営利を目的とせず、無償か製作費の実費だけで配るDVDは、JASRACの「非商用複製」の区分です。曲ごとに次の表で計算して合計し、消費税相当額を加えます(2026年9月24日に確認したJASRACの計算方法。資料は2024年11月の更新)。
| 項目 |
計算方法 |
| 基本使用料 |
1分400円× 収録時間 (秒単位切り上げ) |
複製使用料 (50個まで) |
1分110円× 収録時間 |
複製使用料 (51個以上) |
1分2.2円× 収録時間×製造数 |
基本使用料の「1分400円」は国内の曲と一部の外国曲のもので、ほとんどの外国曲は、国内の音楽出版社などが指定する額(指し値)になります。外国曲の録画は、JASRACだけでは許諾できない場合もあります。概算はJASRACのサイトの「使用料計算シミュレーション」でも出せ、NexToneの管理曲はPlayNの見積もりで確かめます。
市販のCD音源は、レコード会社などに別に申し込む
市販のCDや配信の音をそのまま映像に入れるなら、JASRACやNexToneとは別に、レコード会社や歌手の所属事務所などの許諾を得ます。NexToneは、先に音源の許諾を得てから申し込むよう案内しています。主なレコード会社の窓口は日本レコード協会が一覧にしていますが、許諾するかどうかは各社の判断です。曲の許諾は、JASRACなどの著作権等管理事業者が正当な理由なく拒めない(著作権等管理事業法第16条)のに対し、音源の許諾は得られるとは限りません。
学校行事の収録を請け負う事業者に頼む方法
JASRACは、合唱祭などの学校行事を収録して生徒などに配る録音・録画物の製作について、JASRACと利用許諾契約を結んでいる事業者の一覧を公表しています(掲載に同意した事業者のみ)。JASRACの許諾を得たCD・DVDには、許諾番号とロゴマークが表示されています。
運動会のダンスや入場曲の映像を、DVDにして配るには
運動会で市販のCDを流して踊ることは、第38条の3つの条件を満たせば許諾なしにできます。流すためのCDのコピーも、授業のための複製です(JASRAC)。手続きが要るのは、学校が録画して保護者などに配るときです。映像に市販のCDの音楽が入っていれば、曲の許諾に加えて、レコード会社や演奏者の了解も必要になります(JASRAC PARK「運動会」)。
ダンスの映像は、曲の音と動きが一体になっているのが難しいところです。選べる道は、主に次の3つです。
- 曲はJASRACやNexToneに、音源はレコード会社などに、両方の許諾を申し込む
- 市販のCDの音が入った部分の音声を外し、無音にするか、利用規約で動画に入れて配ることが認められた音源に替える(曲に合わせた動きなので、音を替えると合わなくなる)
- その演目は配るDVDから外す。当日来られなかった家庭には、学校が第35条の範囲で保護者に限って配信する方法がある
入場行進を吹奏楽部が生で演奏した場面なら、CD音源の問題はなく、曲の許諾だけで済みます(追補版)。アーティストの振付をそのまま踊った演目は、曲とは別に振付の権利が関わることがあります。JASRACやNexToneの許諾は作詞・作曲の著作権についてのものなので、気になるときは振付の権利を持つ側に確かめます。園の行事で市販の曲を使ったときの考え方は、卒園記念DVDの作り方でも取り上げています。
合唱コンクール・音楽会の録画を配るとき
合唱や合奏のように、児童生徒が自分たちで歌い、演奏した音なら、配るDVDに要るのは曲の著作権者の許諾だけです(追補版)。JASRACの管理曲ならJ-RAPP、NexToneの管理曲ならPlayNから、DVDを作る前に申し込みます。
伴奏に市販のCDやカラオケ音源を使った場合は、その音も映像に入るため、レコード会社などの許諾が加わります。NexToneも、カラオケを含む第三者が作った音源を使う場合は、その音源の許諾が別に要ると案内しています。ピアノ伴奏や生演奏なら、この問題はありません。
校歌にも作詞者と作曲者がいます。JASRACの管理曲かどうかはJ-WIDで確かめられ、JASRACは、J-WIDに校歌が見つからないときは作詞者・作曲者の名前で検索し、その作家がJASRACの会員・信託者かどうかを確かめるよう案内しています。学校のホームページに自校の校歌を載せる場合に限っては、JASRAC管理の曲なら申込書の提出で使用料を当分の間免除する扱いがあります。DVDに入れる場合は、ほかの曲と同じ手続きです。
ほかに、合唱祭で使う楽譜を児童生徒や保護者の人数分コピーして配ることは、楽譜の売り上げに影響するため、権利者の利益を不当に害する可能性がある、と追補版は書いています。吹奏楽部の定期演奏会のように入場料を取る演奏会は、第38条の条件を満たさないため、演奏そのものにも手続きが要ります。体育館で合唱をきれいに録る方法は、卒業式の呼びかけ・合唱を録る手順にまとめました。
文化祭の劇・ダンス・バンドを録画して配るとき
高等学校までの文化祭は教育課程上の「授業」にあたり、催しで上映する動画に音楽を入れる、校内放送で流すためにCDをコピーする、といったことに手続きは要りません(JASRAC)。ただし、日本レコード協会は、生徒や学生の自主的な活動として行われる文化祭は授業に当たらないとしています。
演劇部の上演は、第38条の適用例です(文化庁)。一方で、劇の上演を録画すると、法律上は脚本の複製になります(第2条1項15号イ)。記録DVDを配るなら、脚本の作者や、脚本を出版している出版社などに許諾を得ます。上演のために台本を大きく削ったり結末を変えたりすると、作者の同一性保持権(第20条)にも関わるため、台本を直す段階で確かめておくと安心です。生徒が自分たちで書いた脚本なら、作者は生徒自身です。
劇中でCDの曲を流した場合は、その音の権利者の許可も要ります(日本レコード協会)。バンドのコピー演奏は生演奏なので、配るなら曲の許諾(JASRAC・NexTone)が中心になり、CDの曲で踊ったダンスは、運動会と同じく音源の許諾も要ります。JASRACは、クラブのみんなに配るために演奏会を録画する場合も、販売はもちろん、無料でも手続きが必要だとしています。撮影の分担や、配る枚数の集め方は文化祭・学園祭のDVDの作り方で説明しています。
卒業式・入学式の撮影と、式で流す映像
式で合唱や演奏をする、入退場のBGMにCDを流す、スライドショーや動画を上映する。どれも第38条の3つの条件を満たすので、手続きは要りません。式で上映するために、市販のCDから音楽を入れてスライドショーや動画を作ることも、式のためだけに学校が作るなら、授業のための複製として手続きは要らないとされています(JASRAC PARK「入学式・卒業式」)。
撮影は、使い道で分かれます。保護者が子どもの成長記録として録画し、家庭で見るのは私的使用で、手続きは要りません。卒業記念のDVDにするための録画は手続きが必要で、背景音楽に市販のCDを使っていれば、レコード会社や演奏者の了解も要ります。式の動画を学校のホームページに上げる場合も手続きが必要で、動画投稿サイトは、運営者がまとめて手続きしている場合があります(同)。
謝恩会や卒業記念のムービーを、保護者やPTAの係が作る場合は、第35条の例外に入りません。市販の曲を動画に入れる作業は複製で、第38条の例外(上演・演奏・上映など)にも入りません。考え方はスポーツ少年団の卒団ムービーと同じで、卒団ムービーの作り方のBGMの節に、市販の曲を使うときの選択肢をまとめています。
ライブ配信・YouTube限定公開で保護者に見せるとき
保護者に限った配信は、補償金の制度で許諾なし
運動会や文化祭などの様子を、保護者や協力者(来賓や地域のボランティアなど)に限ってインターネットで配信することは、一定の条件のもとで、第35条の範囲でできます。文化庁の冊子によると、リアルタイムの配信は許諾なし・補償金の支払いで実施できます。その前提として、学校の設置者(教育委員会や学校法人など)が、指定管理団体のSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)に事前に登録します。
あとから見られるオンデマンド配信は、主催者(学校長など)が視聴期間をあらかじめ決め、期間が終わったらすぐ消すことが条件です。どちらの配信でも、URLを広めない、映像を保存しない、ネットに転載しない、といったことについて、保護者から同意を得ておく必要があります(文化庁の冊子)。追補版は、この同意を個人情報や肖像権の面でも同じように求めています。
許諾が要る側に入る例も、追補版に挙がっています。保護者や協力者以外にも見せる配信、必要な期間を超えたオンデマンド配信、いつでも見られるようにサーバーに置いておくこと、の3つです。チェックシートでは、PTA活動も授業以外の例とされています。
YouTubeの限定公開は、URLを知っていれば誰でも見られる
YouTubeの限定公開は、リンクを知っている人だけが見られる設定です。ただ、Googleアカウントがなくても見られ、リンクを知っている人はさらに他の人と共有できます(YouTubeヘルプ)。追補版は、ライブ配信の視聴用のIDやURLを、パスワードを付けずに誰でも見られるホームページやSNSに載せると、誰でも視聴できる状態と解される、と注意しています。限定公開を使うなら、URLの伝え方と扱いを、保護者の同意とあわせて決めておきます。
条件を外れた配信や、期限なく置いておくことは許諾が要る側に入る
ホームページやYouTubeで広く公開するとき
行事の動画を学校のホームページやSNSで公開するのは、授業に必要な限度を超えるため、第35条は使えません(日本レコード協会)。YouTubeはJASRACやNexToneと利用許諾契約を結んでいて、自分たちで演奏・歌唱した動画なら、一定の範囲で投稿者の手続きは要りません。市販のCDや配信の音源を使った動画には、曲とは別に、音源の製作者(レコード会社など)の許諾が必要です(JASRAC・NexTone)。
JASRACは、学校や団体がアップロードする動画に外国の曲が入っている場合、ライブ配信だけのときを除いて、あらかじめ「ビデオグラム録音」の手続きが要るとしています。学校のホームページにYouTubeの動画を埋め込む場合も、学校など個人以外は利用許諾の申請が必要だとNexToneは案内しています。
写っている子どもと家庭への配慮
行事の映像には、ほかの家庭の子どもや来場者も写ります。肖像権は法律に定めのない、判例で確立されてきた権利なので、扱いは学校の方針と、写る本人・保護者の意向を確かめながら決めます。学校や係で準備できるのは、次のようなことです。
- 行事の前に、撮影・配布・配信の予定(誰に、どんな形で)を保護者に知らせ、意向を聞く
- 写ることを避けたい事情のある子どもを、撮影する人と共有し、寄りのカットを避ける
- 配るDVDや配信の案内に、家庭で見る範囲で使い、SNSなどに載せないようお願いを書く
同意書の作り方と文例は、園向けの記事ですが園の動画・写真を配るときの同意書|作り方と、使い道ごとに選べる文例にまとめています。判断に迷うときは、学校の管理職や設置者(教育委員会など)に確かめてください。
記録DVDを作る前に確かめる5つのこと
行事のDVDを配ると決めたら、次の順に進めると、手続きの漏れに早く気づけます。
- 配る映像に入る演目を書き出し、演目ごとに曲名と作詞者・作曲者、音が生演奏・生歌か市販のCDか、脚本や振付が既製のものかを記録する
- 曲の管理を、J-WIDとNexToneの作品データベースで調べる。市販のCDの音が入る演目は、レコード会社などに問い合わせるか、音を外すか、配る映像から外すかを決める
- 配る相手と枚数、費用を無償にするか実費で集めるかを決める(JASRACの非商用複製の条件に関わる)
- DVDを作る前に、J-RAPPやPlayNで申し込み、届いた許諾番号や許諾マークをディスクやケースに表示する
- 写っている子どもの家庭の意向を確かめ、配るときに、家庭で見る範囲で使い、SNSなどに載せないようお願いを添える
担当の分け方や配布枚数の集め方、1枚目の試し方など、学校行事のDVDを配るまでの段取りは体育祭・運動会の映像をDVDで保護者に配布する方法にまとめました。配る相手の再生機器に合わせたDVDとブルーレイの選び方は、DVDとブルーレイの違いで説明しています。
当社(ディスクメーカー・大阪市北区梅田)は、動画データからDVD・ブルーレイを1枚から作る小さな店です。お引き受けできるのは、自分たちで撮影・制作した動画と、権利者の許可がある動画で、市販のDVDやテレビ番組の録画など、他人の著作物の複製はお引き受けできません。完成した動画は、ギガファイル便やGoogle ドライブなどの共有URLを注文フォームに貼って入稿でき、DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080で作ります。許諾番号やロゴマークを盤面に入れるなら、盤面レーベル印刷を選び、それらを入れた画像を入稿します。表示のしかたは、JASRACやNexToneの案内に従ってください。
よくある質問
Q1. 運動会で市販の曲を流すのに、許可は要りますか?
入場無料で出演者に報酬を払わず、営利を目的としない運動会なら、市販のCDを流すことに手続きは要りません(第38条)。流すためにCDをコピーすることも、授業のための複製として手続き不要とされています(JASRACの学校向けの解説)。ただし、その曲が入った映像を録画して保護者に配るときや、ホームページなどで公開するときは手続きが要り、CDの音が入っていればレコード会社などの了解も必要です。
Q2. 運動会のダンスの映像をDVDにして、保護者に配ってもいいですか?
許諾を得れば配れます。曲はJASRACやNexToneに、市販のCDの音源はレコード会社などに、それぞれDVDを作る前に申し込みます。音源の許諾は各社の判断です。得られないときは、その部分の音を外すか、その演目を配る映像から外します。
Q3. 合唱コンクールの録画をDVDにして配るには、どんな手続きが要りますか?
児童生徒が自分たちで歌った音なら、曲の著作権者の許諾だけで足ります。JASRACの管理曲はJ-WIDで確かめて「J-RAPP」から、NexToneの管理曲は作品データベースで確かめて「PlayN」から、DVDを作る前に申し込み、許諾番号や許諾マークをディスクなどに表示します。伴奏に市販のCDやカラオケ音源を使った場合は、レコード会社などの許諾も要ります。
Q4. 文化祭の劇を録画して、クラス全員に配ってもいいですか?
劇を演じることは第38条で許諾なしにできますが、上演を録画すると脚本の複製になります(第2条)。配るなら脚本の作者や出版社などの許諾が要り、劇中で市販のCDを流していれば、その権利者の許可も必要です(日本レコード協会)。保護者が家庭用に撮るのは私的使用でも、コピーしてクラスに配ると範囲を超えます。生徒が書いた脚本なら、作者は生徒自身です。
Q5. 卒業式を保護者が撮影するのに、著作権の手続きは要りますか?
子どもの成長記録として撮り、家庭で見るぶんには要りません(第30条の私的使用。JASRACの学校向けの解説)。撮影できる場所や時間は、学校のルールに従います。撮った映像をコピーしてほかの家庭に配る、ホームページやSNSに載せる、といった使い方は私的使用の範囲を超え、式で歌った曲やBGMの権利者の許諾が必要になります。写っているほかの子どもの肖像にも配慮が要ります。
Q6. 学校行事は授業なのに、記念DVDの配布は第35条の範囲に入らないのですか?
入りません。学校行事は第35条の「授業」に含まれますが、行事のあとで記念品として配るためにDVDを作るのは授業に当たらない、と文化庁の冊子は説明しています。第35条運用指針の追補版も、DVDを1枚だけ作った場合や、配ったあと回収して捨てた場合も第35条の複製に当たらないとし、JASRACとNexToneも、卒業記念のCD・DVDを配るには手続きが必要と案内しています。
Q7. 無料で配るDVDなら、許可はいりませんか?
無料でも要ります。著作権法の「頒布」は、有償か無償かを問わず複製物を公衆に譲渡することで(第2条)、JASRACも、販売はもちろん無料でもみんなに配るときは手続きが必要だとしています。無償か製作費の実費だけで配るなら、JASRACの使用料は「非商用複製」の区分になり、基本使用料と複製使用料を収録時間と製造数から計算します。
Q8. 運動会の動画を、YouTubeの限定公開で保護者に見せてもいいですか?
学校が第35条の範囲で保護者などに限って配信するなら、設置者が補償金を払う制度(SARTRAS)のもとで許諾なしにできます。あとから見られる形は、視聴期間を決めて、終わったら消すことが条件です。限定公開はURLを知っていれば誰でも見られ、共有もできるので、URLを広めない・保存しないことに保護者の同意を得ておきます。PTAが公開する場合や、期限なく置く場合は許諾が要ります。
Q9. 運動会や卒業式をライブ配信するには、何が必要ですか?
学校の設置者(教育委員会や学校法人など)がSARTRASに登録して補償金を払っていれば、保護者や協力者に限ったリアルタイムの配信は許諾なしにできます(文化庁の冊子)。視聴する保護者には、URLを広めない、映像を保存しない、ネットに転載しないことへの同意を得ておきます。誰でも見られる形で配信する場合や、PTAが主催する場合は、許諾が必要な側に入ります。
Q10. もらった記録DVDを、家庭で見るためにコピーしてもいいですか?
家庭内など限られた範囲で使うために、使う本人がコピーするのは、第30条の私的使用として認められています。ただし、コピーガードを外して、または外されていると知りながら複製することは、家庭で見るためでも例外に入りません(文化庁の著作権テキスト)。私的使用のために作ったコピーを、ほかの家庭に配ることもできません(第49条)。
参考にした公式の情報
出典の一覧(21件)を開く
法律の運用や、各団体の手続き・使用料は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月24日時点の法令と各公式ページの記載をもとにしたものです。個別の判断は、学校の管理職や設置者(教育委員会など)、JASRAC・NexTone、レコード会社などの権利者に確かめてください。
ディスクメーカーへのご依頼・お見積りは以下からどうぞ。