この記事の要点
社史の映像資料でまず失われるのは中身ではなく所在の記憶 で、担当者の異動や退職を挟むたびに、どこに何があるかを説明できる人が社内から減っていきます。
棚卸しは中身を見る前に媒体・保管場所・把握している人・内容の見当 の4列だけを埋めた台帳から始めると、限られた時間を優先度の高いものへ回せます。
VHSやHi8などの磁気テープは再生できる機器を確保できるかどうか が最初の分岐点になるため、テープを探すのと並行して社内の機材の生死を確認します。
写真と映像は作業の単位が違い、写真は1点ずつ、映像は1本まるごと無編集で 取り込んでから中身を切り出すほうが、後戻りの手間が少なくなります。
著作権の保護期間は実名の著作物で著作者の死後70年 、団体名義や映画の著作物で公表後70年 のため、古い記録ほど権利者の確認から入る必要があります。
社史編纂や周年事業の担当になって最初に出る指示は、たいてい「素材を集めておいて」の一言です。ところが集め始めて一週間もすると、多くの担当者が同じところで止まります。資料が無いのではありません。どこに何があるのかを説明できる人が、社内にもういないのです。
創立50年の会社であれば、最初の20年分の記録を実際に見た人はほぼ全員が退職しています。ロッカーの奥のVHS、誰かの引き出しのアルバム、退職者のPCから引き継いだ共有フォルダ。ものとしては残っているのに、中身の説明がどこにも付いていない。この状態のまま編纂のスケジュールだけが進むと、締め切り直前に「使える素材が思ったより少ない」という結論に行き着きます。
この記事では、社内に散らばった映像・写真資料を、所在の棚卸しから、古い媒体からの取り出し、権利の確認、そして次の周年まで持たせる保管の形まで、担当者が今日から手を動かせる順番で整理します。編纂の企画そのものより前、素材が消えないうちにやっておく作業の話です。
社史の映像資料は退職者とともに消える|先に失われるのは中身ではなく所在
社史編纂で資料が使えなくなるとき、物理的に捨てられているケースは実はそれほど多くありません。もっと多いのは、ものは残っているのに誰も説明できなくなっている状態です。記録が失われる過程は、おおむね三段階に分かれます。
第一段階は、所在がわからなくなる段階です。総務のロッカー、倉庫の段ボール、旧社屋から引っ越したときの未開封の箱。中身は無事ですが、それを知っている人が異動や退職でいなくなり、誰も箱を開けなくなります。
第二段階は、所在はわかるが中身がわからない段階です。ラベルに「H12 式典」とだけ書かれたテープが十数本出てきても、どれが本編でどれがリハーサルなのか、誰も判別できません。この段階になると、確認のために全部を再生する必要が出て、作業量が一気に膨らみます。
第三段階は、再生できなくなる段階です。媒体そのものの劣化に加えて、再生機器が社内から無くなることでも起こります。テープは無事でも、それを回せる機械が一台も無ければ、実務上は失われたのと同じです。
「探す」より先に「所在を書き留める」
ここで担当者がやりがちなのが、見つけた順に中身を確認しはじめることです。気持ちはわかりますが、これは順番が逆になります。中身の確認は時間がかかるうえ、古い媒体は再生するたびに負荷がかかります。先にやるべきは、社内のどこに何がありそうかを、中身を見ずに書き出す作業です。
具体的には、社内報のバックナンバー、周年記念行事の稟議書、旧社屋の写真、退職者の送別会の記録あたりから、「この年に何かを撮っていたはずだ」という当たりを付けていきます。稟議書や請求書は特に効きます。撮影を外注していれば発注記録が残っており、そこから制作会社の名前と撮影年月日が確定します。制作会社が現存していれば、素材が先方に残っていることもあります。
着手のタイミングは編纂の企画より前
社史編纂そのものは、企画・執筆・校正で年単位の仕事になります。ただし映像・写真資料の棚卸しは、企画が固まる前でも始められます。むしろ企画が固まってから探し始めると、「この年のこの場面が欲しい」という要求に対して素材が無い、という詰み方をします。何があるかを先に把握しておけば、企画のほうを素材に合わせて組めます。
また、社内に「昔のことを覚えている人」が在籍しているうちに動くことにも意味があります。ラベルの無いテープの中身を判別できるのは、その場にいた人だけです。写っている人の名前も同じで、後から特定するのは実務上かなり難しくなります。
棚卸しは4列の台帳から始める|媒体・場所・把握している人・内容の見当
棚卸しの最初の成果物は、映像でも写真でもなく、一枚の表です。列を増やしすぎると埋まらなくなるので、最初は四つに絞ります。媒体の種類、保管場所、内容を知っていそうな人、内容の見当。この四つだけなら、箱を開けてラベルを読むだけで埋まります。
実際の台帳は、次のような形になります。
No.
媒体
保管場所
把握していそうな人
内容の見当
状態メモ
優先度
01
VHS 12本
3F 総務ロッカー下段
元総務・田中氏(退職)
ラベル「創立30周年」他
ケースに白い粉、要確認
高
02
miniDV 8本
倉庫 段ボールB-4
広報 佐藤
2000年代の社内行事か
未開封
中
03
紙焼き写真 約400点
会議室 アルバム3冊
不明
旧社屋・工場ライン
台紙に日付書き込みあり
高
04
DVD-R 20枚
広報キャビネット
広報 佐藤
2010年以降の式典
盤面に手書き
低
05
共有サーバー
\\fileserv\広報\過去
情シス 鈴木
2015年以降の写真データ
フォルダ名が日付のみ
低
優先度は「古さ」と「代替の効かなさ」で付ける
全部を同じ熱量で扱おうとすると終わりません。優先度は二つの軸で決めます。ひとつは古さで、古い媒体ほど劣化と機器の問題が同時に来るため先に手を付けます。もうひとつは代替の効かなさです。工場のラインが動いている映像や、今はもう無い旧社屋の外観は、撮り直しができません。一方で近年の式典の記録写真は、参加者のスマートフォンにも残っている可能性があり、社内のデータが唯一とは限りません。
社内に声をかけるときの文面を決めておく
棚卸しは総務・広報だけでは完結しません。各部署への呼びかけが要りますが、「昔の写真はありませんか」という漠然とした依頼はほぼ反応がありません。効くのは、探す対象と期限を具体的に切ることです。
探しているもの:VHS、8mmビデオ、miniDV、写真アルバム、紙焼き写真、CD-R/DVD-R、フロッピー、外付けHDD
お願いしたいこと:中身の確認は不要で、「ある」ことだけ総務まで連絡
置き場所:処分・移動をせず、そのままにしておく
期限:◯月◯日まで
「中身を確認しなくていい」と明記するのがコツです。確認を求めると、面倒に感じて回答が来なくなります。また「処分しないでください」は必ず入れてください。棚卸しの告知をきっかけに、良かれと思って古い媒体を捨てられてしまう事故が起こり得ます。
退職者への接触は会社としてのルートで
台帳の「把握していそうな人」に退職者の名前が並ぶのは普通のことです。OB会や役員経由で連絡が取れる場合、当時の記録について話を聞けると台帳の精度が一気に上がります。ただし個人の連絡先を担当者が私的に辿るのは避け、人事や役員を通した会社としての接触にします。個人所有の写真や映像を提供いただく場合も、後述する権利の確認が必要になるため、口頭のやり取りで終わらせず記録を残しておきます。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
1枚から 作れます。 同じ 内容の 追加は 1枚1,000円 (税抜)です。
1枚1,500円(税抜)から・ 1枚から注文できます
古い媒体は中身より先に再生機器を確保する|機器が消えると資料も消える
棚卸しでVHSや8mmビデオ、miniDVが出てきたら、テープの中身を見る前に「それを再生できる機械が社内にあるか」を確認します。順番を逆にすると、機械が無いことに気付いた時点で作業が止まります。
社内で探す場所は、視聴覚室、会議室のAVラック、旧応接室、廃棄予定機材の置き場あたりです。デッキが見つかったら、テープを入れる前に単体で電源が入るか、テープを入れずにローディングの動作音がするかを確認します。長期間動かしていない機械は、ゴムベルトが劣化して回らないことがあります。
テープを入れる前の物理チェック
再生機が動いても、いきなり大事なテープを入れてはいけません。劣化したテープを再生すると、テープが機械の内部に巻き付いて、テープと機械の両方を痛めることがあります。入れる前に、次を目視で確認します。
カセットの窓から見えるテープに、白い粉や斑点(カビ)が付いていないか
テープの縁が波打っていないか(保管中の湿気や熱による変形が疑われます)
巻きが緩んでいないか、逆に固く締まりすぎていないか
カセット外装にひび割れがないか
カビや変形が見られるものは、社内の機械にかけないほうが安全です。この段階で専門の業者に相談するかを判断します。また、どうしても社内で試すなら、価値の低いテープで先に機械の調子を確かめてから本命に進みます。
再生できたら、その場で一度だけ通しで取り込む
古いテープは再生の回数がそのまま消耗です。「中身を確認してから、あとで本番の取り込みをする」という二段構えは、テープにとっては二倍の負荷になります。再生できることがわかったら、内容の良し悪しの判断は後回しにして、その一回で頭から終わりまで通して取り込むのが実務的です。中身の選別は、取り込んだデータ上でやれば何度でもやり直せます。
取り込みには、アナログ映像をデジタルに変換する機器か、DV端子を持つ機材が要ります。ここで機材を新規に用意するかどうかは、本数次第です。数本なら外部に頼んだほうが早く、数十本あるなら社内に環境を作る判断も成り立ちます。
8mmフィルムは自前でやらない
1970年代以前の記録では、磁気テープではなく8mmフィルムが出てくることがあります。フィルムは映写機にかけること自体がリスクで、乾燥や収縮が進んでいると送りの穴が切れます。映写機で壁に映したものをビデオカメラで撮る方法も、画面のちらつきと歪みが出るため記録としては質が下がります。フィルムはフィルム専門の取り扱いができるところに任せる、と割り切ったほうが結果的に早く済みます。
取り出した映像は、確認用の形にしておくと社内が動く
テープから取り出したデータをファイルのまま共有フォルダに置くと、実務上は誰も見ません。再生ソフトや形式の問題で、経営層や年配の関係者ほど手が止まります。編纂委員会や役員に中身を見てもらう段階では、DVDやブルーレイに焼いた確認用の盤を数枚回すほうが、結局スムーズです。ディスクメーカーでも1枚1,500円から、1枚単位でお受けしています。再生できる形への組み立て(オーサリング)は料金に含まれており、テープごとにチャプターを分けておけば、会議の場で見たい場面まで飛ばせます。
写真と映像は作業の単位が違う|写真は1点ずつ、映像は1本まるごと
棚卸しの台帳が埋まると、写真と映像を同じ流れで処理したくなります。ただしこの二つは、作業の単位も、後で困るポイントも違います。
写真は「1点ごとに情報が付く」
紙焼き写真は、1枚ごとに撮影年、場所、写っている人が違います。つまり、スキャンした画像ファイルと、それに対応する情報が1対1で必要になります。ここで効いてくるのが、写真そのものではない部分です。
写真の裏面:日付やスタンプ、現像所の記録が入っていることがあります。裏面もスキャンします
アルバムの台紙:手書きのキャプションが書かれていることが多く、写真を剥がすと情報が失われます。剥がす前に台紙ごと撮影します
アルバムの並び順:時系列で貼られている場合、順番そのものが情報です。ページ番号を振ってから作業します
アルバムから写真を剥がす作業は、粘着が劣化していると写真ごと割れることがあります。剥がさずに済むなら剥がさない、という判断も選択肢です。台紙ごと平置きで撮影しても、社史の本文に使えるだけの質は得られることが多くあります。
映像は「1本まるごと」が単位になる
一方の映像は、テープ1本の中に複数の行事が入っていたり、途中で録画が切れていたりします。ここで「使いそうな場面だけ取り込む」をやると、後で必ず戻ることになります。編纂が進むと、当初は不要と思っていた場面が必要になるためです。
映像は無編集のまま1本を通しで取り込み、その上で「00:12:30から社長挨拶」「00:34:10から工場見学」といった時間のメモを別に作ります。このメモがあれば、実際の切り出しはいつでもできます。テープを再生し直す必要が無い状態を先に作る、というのが原則です。
ファイル名は最初に決めて、途中で変えない
写真も映像も、ファイル名の付け方を最初に決めておかないと、数百点の段階で収拾がつかなくなります。凝った命名規則は続かないので、単純なものにします。
先頭に年(不明なら推定年に「c」を付ける。例:1988、c1975)
次に台帳の通し番号(棚卸し表と突き合わせられるようにする)
最後に連番
例:1988_03_012.tif / c1975_01_004.jpg
年が不明なものを「不明」フォルダにまとめてしまうと、そこから先に進まなくなります。推定でもいいので年を入れ、推定であることが見てわかる印を付けておくほうが、後の突き合わせが楽になります。
撮影者と写っている人を確認する|著作権は死後70年・公表後70年で続いている
社内で撮った写真だから自由に使える、とは限りません。社史は社外にも配られる出版物であり、周年映像は式典で上映され、Webに載ることもあります。使う範囲が広いほど、確認しておくべきことが増えます。
撮影者が誰かで権利の所在が変わる
まず分けるべきは、社員が業務として撮ったものか、外部に発注して撮ってもらったものか、社員が私的に撮ったものかの三つです。稟議書や請求書が残っていれば、外注かどうかは書類で確定します。外注の場合、契約書に成果物の権利の扱いが書かれているはずなので、当時の契約書を探します。書類が見つからない場合は、制作会社が現存していれば直接照会するのが早道です。
著作権の保護期間は、実名の著作物であれば著作者の死後70年、団体名義の著作物と映画の著作物であれば公表後70年です(いずれも死亡・公表の翌年1月1日から起算します。公益社団法人著作権情報センターの解説による)。つまり創立50年の会社が扱う範囲の記録は、まだ保護期間の中にあると考えるのが自然です。「古いから大丈夫」という判断は成り立ちません。
写っている人の確認は、使う範囲を決めてから
写真や映像に写っている人については、著作権とは別に、本人の意向を確認する話になります。ここで担当者が悩みがちなのが「全員に連絡が付かない」という問題です。数百人が写った集合写真で、全員の所在を追うのは現実的ではありません。
実務的には、使う範囲を先に決めてから確認の要否を判断します。判断の材料になるのは次のあたりです。
その写真がすでに社内報や当時の広報物で公表されているか
個人が特定できる大きさで写っているか、群衆の一部か
掲載先が社内配布のみか、社外配布や公開Webを含むか
現職の社員か、退職者か、故人か
個人が大きく写っていて、社外に広く配る場合は、本人(故人の場合はご遺族)に連絡を取るのが穏当です。連絡の際は、掲載媒体、掲載範囲、掲載時期を具体的に伝え、やり取りを記録に残します。口頭の了解だけだと、10年後の担当者が同じ確認をやり直すことになります。
「使えない素材」も台帳に残す
確認の結果、今回は使わないと判断した素材も、台帳から消さないでください。「◯◯の理由で今回は不使用」と記録しておけば、次の周年で同じ検討を一からやらずに済みます。逆に台帳から消してしまうと、10年後に誰かがまた同じ箱を開けて、同じ確認をすることになります。
なお、社史や周年映像に関わる権利の判断で迷う場面が出たら、社内の法務や顧問弁護士に確認するのが確実です。この記事の内容は一般的な整理であり、個別の案件の結論を保証するものではありません。
変換して保管する|元データは触らず、閲覧用を別に作る二本立てにする
取り込みと確認が終わったら、保管の形を決めます。ここでの原則はひとつで、元データと閲覧用を分けることです。
マスターは加工しない
テープから取り込んだままのデータ、スキャンしたままの画像を「マスター」として、一切加工せずに置いておきます。色を補正したい、明るくしたい、という要求は必ず出ますが、それはマスターのコピーに対して行います。マスターを直接いじってしまうと、後から「補正しすぎだった」となったときに戻せません。
スキャンした写真であれば、圧縮のかからない形式でマスターを持ち、社史のレイアウトに渡すのはそこから書き出したJPEGにする、という分け方が一般的です。映像も同様に、取り込み時の元ファイルを残し、上映用・Web用はそこから別途書き出します。
保管先は「場所」ではなく「数」で考える
マスターの置き場所として、社内サーバー、外付けHDD、クラウドストレージのいずれか一つだけ、という状態は避けます。HDDは物理的に壊れますし、クラウドは契約が切れれば消えます。同じデータを複数の場所に置き、そのうち少なくとも一つは社屋の外に置く、という考え方が広く使われています。
そのうえで、ネットワークに繋がっていない形の控えを一つ持っておくと、誤操作や暗号化被害でサーバー上のデータがまとめて失われた場合の逃げ道になります。ディスクはこの「繋がっていない控え」として使える形式のひとつです。棚に置いておくだけで、外部からの操作を受けません。
上映用・配布用のディスクは、作り方で使い勝手が変わる
周年式典で上映する映像、関係者や退職者に配る記念映像は、ディスクの形にすると届けやすくなります。映像のDVDは多くの家庭のプレーヤーで見られ、式典会場の機材でも扱いやすいためです。再生できるディスクは機種によって違うので、配る前に1枚目を試しておきます。式典で流す周年ムービーの構成と、社員や卒業生に配るディスクの作り方は、周年記念ムービーの作り方 にまとめています。
ディスクメーカーでは、動画データからDVD・ブルーレイを制作しています。1枚1,500円から、1枚単位でお受けできます。再生できる形式への組み立て(オーサリング)は料金に含まれており、加えて次のような仕上げに対応しています。
盤面へのレーベル印刷(社名やロゴ、周年の表記を入れられます)
ケースと背表紙の印刷(棚に並べたときに背から内容が読めます)
メニュー画面の作成(複数の映像を1枚にまとめて選べるようにします)
チャプター分け(式典の場面ごとに頭出しできます)
入稿はダウンロードできる共有URLでお送りいただく形です。ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorage などに対応しています。なおギガファイル便は1ファイル300GBまでアップロードでき、保持期限は設定で変更できます。式典の日程が決まっている場合は、URLの有効期限が当日より前に切れないようご確認ください。
納期は通常便のほか、お急ぎ(+1,500円/15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送)、特急(+3,000円/15時までのご注文・ご入稿で翌日発送)をご用意しています。大阪市北区の店舗でお受け取りいただく場合は、当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までのご注文・ご入稿)も選べます。日々多くのご注文をお受けしており、記念行事や記録映像のご依頼も含まれています。
周年のたびに使い回せる形にする|10年後の担当者が読める説明を一緒に置く
社史編纂の作業は、完成した瞬間に終わるものではありません。10年後、あるいは20年後に、また同じ立場の人が同じ箱を開けます。そのときに何が残っているかで、次の周年事業の難易度が決まります。
台帳を成果物として引き継ぐ
棚卸しで作った台帳は、編纂が終わったら捨てるものではなく、いちばん価値の高い成果物です。完成後の台帳には、次の情報が入っている状態を目指します。
元の媒体が何で、いつ、誰が、どこから取り出したか
取り込み後のデータがどこに置いてあるか(パスと、控えの置き場所)
撮影者と、権利についてどこまで確認したか、確認の記録の在り処
今回どこに使ったか(社史の何ページ、記念映像の何分あたり)
今回使わなかったものは、その理由
元の媒体そのものを、廃棄したのか保管したのか
この台帳は、社内の共有サーバーに置くだけでなく、印刷したものを社史の関連資料として保管しておくと、システムが入れ替わっても読めます。
10年後の人に向けた説明を1枚付ける
データの構造は、作った本人には自明でも、他人には読めません。フォルダの最上位に、A4で1枚のテキストを置いておきます。書く内容は難しいものではなく、「どのフォルダに何が入っているか」「ファイル名の年の部分に付いている c は推定という意味」「マスターは加工しないこと」といった、口頭で申し送っている内容をそのまま文字にしたもので十分です。
あわせて、映像データの形式と、どの機材で取り込んだかも書いておきます。技術は入れ替わるため、10年後に「この形式は何で開くのか」という疑問が出たときの手がかりになります。
ディスクは棚で読める形にしておく
ディスクを長期保管の控えとして使う場合、盤面とケース背表紙の印刷が効いてきます。手書きのマジックで「30周年」とだけ書かれた盤が20枚並んでいる状態と、盤面に年と内容が印刷され、背表紙で棚から内容が読める状態とでは、10年後の探しやすさがまったく違います。前章のとおり、盤面・ケース・背表紙の印刷には対応していますので、保管用のディスクを作る際は、社内の人が10年後に読む前提で文字を決めておくことをおすすめします。
また、ディスクは高温多湿と直射日光を避け、立てて保管します。段ボールに平積みにして倉庫に置く、という形は避けたいところです。
社外に残す選択肢もある
完成した社史は、社内に置いておくだけが道ではありません。国立国会図書館法により、国内で発行されたすべての出版物は国立国会図書館へ納入することが義務付けられています。社史のように部数が限られた出版物も出版物であり、扱いについては同館の納本の窓口に確認できます。
また、神奈川県立川崎図書館は会社史・経済団体史・労働組合史を重点的に収集しており、約2万2千冊を所蔵する全国有数の社史コレクションを持っています。閲覧室で誰でも自由に閲覧でき、新たに刊行された会社史の寄贈も受け付けています。社内の倉庫だけに置いておくと20年後に行方不明になり得る資料も、こうした形で社外にも残しておけば、会社の記録として参照される可能性が残ります。
次の担当者に渡すもの
周年事業が終わったら、次の担当者に渡すものを一箱にまとめます。台帳の印刷、説明の1枚、控えのディスク、完成した社史と記念映像。この箱の存在を、総務の引き継ぎ書類に1行書いておく。それだけで、次の10年で最初の一週間が丸ごと省けます。
よくある質問
Q. 社史編纂の映像資料は、いつから集め始めればいいですか
A. 編纂の企画が固まる前から始めるのが現実的です。企画を先に決めると「この年のこの場面が欲しい」という要求に素材が追いつかず、途中で構成を組み直すことになります。何が残っているかを先に把握しておけば、企画のほうを素材に合わせて組めます。また、ラベルの無いテープの中身や写真に写っている人を判別できるのは、当時を知る人が在籍しているうちだけです。周年の年から逆算するより、担当が決まった時点で棚卸しだけ先行させるのが安全です。
Q. VHSやHi8のテープは、自社でデジタル化できますか
A. 再生機器が社内にあり、テープの状態が良ければ可能です。ただし手順があります。まずデッキ単体で電源とローディング動作を確認し、次にテープの窓から白い粉(カビ)や縁の波打ちが無いかを目視します。異常があるものは社内の機械にかけず、専門の業者に相談してください。劣化したテープは再生中に機械へ巻き付き、テープと機械の両方を痛めることがあります。また古いテープは再生回数がそのまま消耗になるため、確認と本番を分けず、一度で頭から終わりまで通して取り込むのが実務的です。
Q. 8mmフィルムが出てきました。映写機で映して撮影すればいいですか
A. おすすめできません。フィルムは乾燥や収縮が進んでいると映写機の送りで穴が切れることがあり、かけること自体がリスクです。また壁に映したものをビデオカメラで撮る方法は、画面のちらつきや歪みが出て、社史用の記録としては質が落ちます。フィルムはフィルムの取り扱いができるところに任せると割り切ったほうが、結果的に早く安全に済みます。棚卸しの段階でフィルムが見つかったら、優先度を高めに設定して早めに相談先を決めてください。
Q. 昔の社内写真を社史に載せるとき、写っている人全員の許可が必要ですか
A. 使う範囲によって判断が変わります。すでに当時の社内報などで公表されているか、個人が特定できる大きさで写っているか、掲載先が社内配布だけか社外配布や公開Webを含むか、といった点が材料になります。個人が大きく写っていて社外に広く配る場合は、本人(故人の場合はご遺族)へ掲載媒体・範囲・時期を具体的に伝えて確認するのが穏当です。やり取りは口頭で終わらせず記録に残してください。判断に迷う場面は社内の法務や顧問弁護士にご確認ください。
Q. 昔の記念式典ビデオを制作会社に発注していました。自社の判断で使えますか
A. 当時の契約内容によります。まず稟議書や請求書から発注の事実と相手先を確定し、契約書に成果物の権利の扱いが書かれていないかを探します。書類が見つからず制作会社が現存していれば、直接照会するのが早道です。著作権の保護期間は、実名の著作物で著作者の死後70年、団体名義や映画の著作物で公表後70年とされています(著作権情報センターの解説による)。創立数十年の会社が扱う範囲の記録は保護期間の中にあると考えるのが自然で、古いから自由に使えるという判断は成り立ちません。
Q. 取り込んだ映像は、どういう形で保管しておくのがいいですか
A. 取り込んだままの元データを加工せずマスターとして残し、補正や書き出しはそのコピーに対して行う二本立てにします。置き場所は一か所にせず、同じデータを複数の場所に持ち、少なくとも一つは社屋の外に置きます。あわせて、ネットワークに繋がっていない控えを一つ持っておくと、サーバー上のデータがまとめて失われた場合の逃げ道になります。ディスクはこの繋がっていない控えとして使える形式で、棚に置いておくだけで外部からの操作を受けません。
Q. 周年の記念DVDは何枚から作れますか。費用はどのくらいですか
A. 1枚1,500円から、1枚単位でお受けしています。再生できる形式への組み立て(オーサリング)は料金に含まれます。あわせて、盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、複数の映像を選べるメニュー画面の作成、場面ごとのチャプター分けに対応しています。式典で上映する1枚だけ、あるいは役員会で回覧する数枚だけ、といったご依頼も可能です。入稿はダウンロードできる共有URLで、ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorage などに対応しています。
Q. 式典の日程が迫っています。急ぎの納期はありますか
A. 通常便のほか、お急ぎ(+1,500円/15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送)、特急(+3,000円/15時までのご注文・ご入稿で翌日発送)をご用意しています。大阪市北区の店舗でお受け取りいただける場合は、当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までのご注文・ご入稿)も選べます。なお共有URLで入稿される際は、URLの有効期限が制作日より前に切れないようご確認ください。ギガファイル便は保持期限を設定で変更できますので、余裕のある日数に設定してからお送りください。