この記事の要点
- 防犯カメラの録画は、HDDやmicroSDカードが一杯になると、日付の古い映像から消して上書きされていきます。何日分残るかは台数・画質・容量・設定で変わるので、自分の機器で確かめます。
- トラブルが起きたら、その時間の前後を広めに、レコーダーの書き出し(コピー)機能でUSBメモリーなどへ。機器が書き出した形式のまま、専用の再生ソフトも一緒に残し、書き出した記録を付けます。
- 警察の捜査関係事項照会(刑事訴訟法197条2項)への回答は、個人情報保護法の「法令に基づく場合」にあたり、映っている人の同意がなくても提供できます。警察の任意の求めに応じる場合も、例外の事例に挙がっています。
- 当事者から「見せてほしい」と言われたら、映り込んだほかの人への配慮が要ります。開示請求(33条)に応じる場合でも、第三者の権利利益を害するおそれがあれば、一部を開示しないことができます。
- 提出用の映像を、DVDプレーヤー用の映像のDVDに作り直すと、720×480のMPEG-2に圧縮し直すため、元のデータと同じではなくなります。書き出したままのファイルを原本として残します。
閉店後の店先で起きたトラブル、駐車場での当て逃げ、マンションの共用部分でのいたずら。防犯カメラに映っているはずの場面を確かめたいとき、映像がまだ残っているかどうかは、レコーダーの設定と、気づいてから取り出すまでの早さで決まります。
防犯カメラの録画は、記録先のHDDやmicroSDカードが一杯になると、日付の古い映像から消して新しい映像を書き込みます。何日分が残るかを決めるのは、カメラの台数、画質、1秒あたりのコマ数、記録先の容量、自動で消す設定の組み合わせです。同じ機種でも、記録先の容量によって1日あまりから3か月あまりまで開きます。トラブルに気づいたら、その時間の前後を広めに、機器の書き出し機能で元の形式のまま取り出してください。
警察から求められたときは、個人情報保護法の例外として、映っている人の同意がなくても提供できる場合があります。当事者から「見せてほしい」「データがほしい」と言われたときに要るのは、一緒に映り込んだほかの人の個人情報とプライバシーへの配慮です。どちらの場合も、渡すのは書き出したままのファイル。DVDプレーヤーで見られるように作り直した映像のDVDは、元のデータと同じではありません。
防犯カメラの映像は何日残る?上書きの仕組みと確かめ方
防犯カメラのレコーダーは、記録先の空きがなくなると、古い映像を消して新しい映像を書き込んでいきます。マスプロ電工のワイヤレスカメラセット(WC3A7M)の取扱説明書では、この動きを「上書き録画」と呼び、出荷時の設定は「上書き録画する」です。空きがなくなったときに「日付の古いデータを消去しながら、新しいデータを記録」するのが、この設定。上書きしない設定を選ぶと、空きがなくなった時点で録画が止まります。
残る時間は、記録先の容量とカメラの台数で大きく変わります。同じ説明書にある連続録画の目安から、フルHDで録るときの値を抜き出しました。日数は、時間を24で割った計算です。
記録先と カメラの台数 |
連続録画の 目安 |
microSD 32GB・1台 |
38時間 (約1.6日) |
microSD 128GB・1台 |
142時間 (約6日) |
microSD 256GB・1台 |
305時間 (約13日) |
外付けHDD 2TB・1台 |
2,245時間 (約94日) |
外付けHDD 2TB・4台 |
1,770時間 (約74日) |
128GBのmicroSDカードと2TBの外付けHDDでは、同じ1台の録画でも、残る時間が15倍あまり違います。メーカーの注記は、どれも連続録画の目安で、実際の撮影環境によって変わるというもの。動きを感知したときに録るモーション検知や、時間を決めて録るスケジュール録画にしていれば、残る期間は表の値とは違ってきます。
いつまでさかのぼれるかを画面で確かめる
業務用のレコーダーには、今残っている録画の範囲を画面で確かめられる機種があります。i-PROのネットワークディスクレコーダー(WJ-NUシリーズ)の取扱説明書によると、[メンテナンス]の[HDD情報]で見られる項目に、HDDに録画されている日時の範囲と、これまでの録画から計算した「推定上書き周期」があります。録画の設定画面には、フレームレート(1秒あたりのコマ数。1〜30ips、初期設定は10ips)や画質の設定と並んで、HDDに録画できる日数を計算した「推定録画日数(参考値)」の欄もあり、設定を変える前に何日分残りそうかの見当をつけられる仕組みです。
同じ機種には、録画されてから決めた日数がたつと自動で消す「データ自動消去」(1〜999日、初期設定はOff)の設定もあります。Onにしていると、上書きされる前でも、設定した日数を過ぎた録画は消えてしまいます。家庭用の機器なら、モニターやアプリの録画の一覧で、いちばん古い録画の日付を見ておいてください。今日から何日さかのぼれるかが、トラブルに気づいてから映像を取り出すまでの持ち時間です。
保存期間は何日にするか
個人情報保護委員会のQ&Aは、カメラ画像の保存期間について、個人情報保護法22条に基づき、利用の必要性を考えて保存期間を設定し、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならない、としています。長く残すほど後日の申し出に応えやすくなる一方で、映像を管理する責任も長く続きます。
警察庁は2025年4月、防犯カメラの整備を自治体や民間事業者に働きかけるときの留意事項を、都道府県警察に通達しました(安全・安心まちづくり推進要綱の改正)。保存期間は、用途や予算など使う側の事情やプライバシーの観点などを勘案して総合的に判断されるものとしたうえで、保存された映像を事後に確認する観点からは3か月以上が望ましいことも念頭に置く、という内容です。自分の施設でトラブルが分かるまでにかかる日数と、この2つの考え方を合わせて決めます。
トラブルが起きたら、上書きされる前に書き出す
録画を機器の外に取り出す操作を、i-PROの説明書では、USBメモリーなどへの「コピー」と、ウェブブラウザーを使ったパソコンへの「ダウンロード」と呼んでいます。この記事では、まとめて書き出しと呼びます。手順は次のとおりです。
- トラブルがあった日時を、分の単位まで書き留める。あわせて、レコーダーの画面の時刻と、正確な時計との差を見ておく
- 録画が何日前まで残っているかを確かめ、上書きされるまでの日数を見積もる
- その時間の前後に余裕をもたせて、書き出す範囲を決める。出入口や通路など、同じ時間帯のほかのカメラも一緒に
- フォーマットしたUSBメモリーか外付けHDDを用意し、容量に余裕があることを確かめる
- 機器の書き出し機能で、カメラと、始まりと終わりの日時を指定して書き出す
- 書き出したファイルを、パソコンで最初から最後まで再生して確かめる
- いつ・誰が・どの機器から・どの範囲を・どの媒体に書き出したかを記録する
最初に時刻を見るのは、機器の時計がずれていることがあるからです。マスプロ電工の説明書は、内部の時計に月に約1分の誤差が出るとして、定期的に日時を合わせるよう書いています。i-PROのレコーダーで時刻を自動で合わせる設定は、NTPサーバーを基準にするものと、カメラの時刻をレコーダーに合わせるものです。ずれを見つけたら「レコーダーの時刻は実際より何分進んでいた」と記録に残しておくと、あとで映像の時刻を読み替えられます。
i-PROの説明書には、日時の設定や時刻合わせで同じ時刻の画像が記録されると、コピーが正常に行われない場合があるとも書かれています。時刻を直すのは、書き出しが終わってからにします。
書き出しの途中で元の録画が上書きされたり、HDDが故障したりすると、書き出しは中止されます(i-PROの説明書)。コピー先の容量が足りないときは入るところまで書き込んで終わるので、容量に余裕のある媒体を使うように、という注意書きもあります。ウェブブラウザーからMP4でダウンロードする場合は、指定した範囲の途中に録画のない箇所や設定の変わった箇所があると、そこまでで終了。書き出したファイルを最後まで再生するのは、こうした取りこぼしに気づくためです。
範囲を広めにとるのは、直前の様子や、その後どちらへ向かったかが、あとで必要になることがあるからです。何分とるかは、媒体の容量と相談しながら決め、前後に余裕をもたせてください。ドライブレコーダーやスマホの動画も含めた証拠映像の残し方は、証拠映像の保全ガイドにまとめています。
操作が分からない、上書きまで日がないとき
書き出し方が分からず、上書きまでの日数も少ないときは、説明書を探すより先に、設置した業者やメーカーの窓口に連絡します。上書きしない設定に切り替えれば古い映像は消えなくなりますが、マスプロ電工の説明書にあるとおり、空きがなくなった時点で録画そのものが止まります。防犯カメラが止まってよいかどうかも含めて、相談しながら進めてください。
提出するのは、機器が書き出したままのファイル
書き出したファイルの形式は、機器ごとに違います。i-PROのレコーダーで選べるのは、独自形式(映像はn3r、音声はn3a)とMP4形式の2つです。独自形式は専用のビューワーソフトで再生する形式で、USBメモリーなどに書き出すと、ビューワーソフトの実行ファイル(NX_Viewer.exe)も一緒にコピーされます。MP4形式を選べるのはH.264かH.265で録画した映像で、こちらは汎用の再生ソフトで再生できます。
i-PROの機種では、書き出すときに[改ざん検出コードの付与]をOnにしておくと、ビューワーソフトで再生するときに改ざんの有無を確かめられます。パスワードを付けて書き出すこともでき、その場合は再生のときにパスワードが必要です。書き出したファイルの名前は変えないように、とも説明書にあります。名前を変えると、ファイルの情報が正しく表示されなくなるためです。
モニターと一体のワイヤレスカメラセットには、書き出しの機能を持たない機種もあります。マスプロ電工のWC3A7Mは、録画をmicroSDカードか外付けハードディスクにASF・WMV形式で記録するカメラセットです。モニター単体では録画データのコピーや編集ができず、パソコンなどの市販ソフトを使うよう案内されています。この場合は、録画したmicroSDカードをパソコンで読み込み、該当の時間のファイルを、名前も中身も変えずにコピーします。
警察などから媒体や形式の指定があれば、それに合わせます。指定がなければ、次のものをそろえて渡し、同じものを手元にも残してください。
| 渡すもの |
確かめること |
書き出した ファイル |
名前も中身も 変えていないか |
| 再生ソフト |
独自形式なら、 ビューワーソフトが 一緒に入っているか |
書き出しの 記録の写し |
日時・範囲・機器・ 時刻のずれを 書いてあるか |
映像のDVDに作り直すと、元のデータと同じではなくなる
テレビで見られるDVDにして渡せば親切に思えますが、提出用には向きません。DVDプレーヤーで再生する映像のDVD(DVD-Video)は規格で形が決まっていて、国内向けは画面が720×480、映像はMPEG-2です(オーサリングソフトの仕様)。レコーダーがH.264やH.265で録った映像をこの形にするには、映像を圧縮し直す(再エンコードする)ことになります。圧縮の方式が変わり、フルHDなどで録った映像なら画素の数も減ります。
作り直したディスクに入るのは、VIDEO_TSフォルダのVOBファイルなど、DVDの規格に合わせて組み立て直した別のファイルです。i-PROの説明書で改ざんの有無を確かめられるとされているのは、改ざん検出用のコードを付けて書き出したデータを、専用のビューワーソフトで再生するとき。映像のDVDは、そのデータそのものではありません。
違うのは、ファイルをファイルのまま別の媒体に写す場合です。米国国立標準技術研究所(NIST)の手引きにあるとおり、デジタルの元データをそのまま写したコピーは、元の品質を保ちます。ディスクで渡したり保管したりするなら、書き出したファイルを、データとしてDVD-RやBD-Rに書き込みます。データのディスクと映像のDVDの違いは、データDVDと映像DVDの違いにまとめました。
確認のためにテレビで見る必要があるなら、見るための複製として別に作り、書き出したままのファイルを原本として残します。作り直すと中身の何が変わるのかは動画ファイル形式の違いの再エンコードの節で、コピーで画質が落ちる場合と落ちない場合は画質が劣化しないコピーとはで説明しています。
警察から映像を求められたら|捜査関係事項照会と任意提出
警察が捜査のために防犯カメラの映像を求める手続きには、いくつかの形があります。刑事訴訟法197条2項は「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と定めていて、これが捜査関係事項照会です。このほか、持ち主などが任意に提出した物を警察が預かる領置(221条)と、裁判官の令状による差押え(218条)があります。
個人情報保護法との関係は、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)に事例があります。警察の捜査関係事項照会に応じる場合と、令状に基づく捜査に応じる場合は、「法令に基づく場合」(18条3項1号)の例です。事業者が警察の任意の求めに応じて個人情報を提出する場合は、国の機関などが法令の定める事務を行うのに協力する場合で、本人の同意を得るとその事務に支障を及ぼすおそれがあるとき(18条3項4号)の例に挙がっています。第三者への提供の制限(27条1項)の例外についても、ガイドラインは同じ事例を参照するよう示しています。これらにあたれば、映っている人の同意がなくても提供できる、というのがガイドラインの整理です。
照会には答えるのが基本。相手と日時は控えておく
委員会のQ&Aは、捜査関係事項照会への回答に本人の同意は要らないとしたうえで、照会は相手に回答すべき義務を課すものと解されていて、一般に回答をすべきだと考えられる、としています。警察庁の通達も、照会を受けた側は報告すべき義務を負うと解されているが、その義務の履行を強制する方法はない、と整理しています。
同じQ&Aは、本人との争いを防ぐために、情報の提供を求めた捜査官の役職と氏名を確かめ、求めに応じて提供したことを後日説明できるようにしておくことが必要だとしています。照会の形は照会書に限らず、口頭や電話の場合もある、というのが警察庁の通達の前提です。通達は、必要に応じて照会書を出して公信性を確保すること、口頭や電話で照会したときは警察の側で経過を記録することを求めています。
法令に基づく提供は、個人情報保護法の第三者提供の記録を作る決まり(29条1項)の対象外です。それでも、後日説明できるようにしておくには、自分の側の記録が役に立ちます。求められた日時、相手の所属と役職・氏名、求められた範囲、渡したものを、書き出しの記録と同じ台帳に書いておきます。
USBメモリーやディスクを渡すときの書類
書き出した媒体を任意に提出したときの扱いは、警察の捜査の手続きを定めた犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)にあります。なるべく提出者から任意提出書を出してもらったうえで領置調書を作り、刑事訴訟法120条1項による押収品等目録提供書を交付する、という決まりです。受け取った書面は、書き出しの記録と一緒に保管します。
提出した物の所有権を手放す意思を示したときは、任意提出書にその旨を書くか、所有権放棄書を出すことも定められています。USBメモリーや外付けHDDを返してほしいなら、渡すときにそう伝えておいてください。提出用とは別に同じ内容を手元にも残しておけば、媒体が戻るまでのあいだも映像を確かめられます。
当事者から「見せてほしい」「データがほしい」と言われたら
ぶつけられた車の持ち主、店でトラブルになった相手、映っている本人。警察より先に、当事者から映像を求められることもあります。気をつけたいのは、映像には求めた人だけでなく、同じ時間にそこにいたほかの人も映っていることです。個人情報保護委員会のガイドラインは、防犯カメラに記録された、本人が判別できる映像情報を個人情報の例に挙げています(2条1項)。ほかの人が映った映像を見せたり渡したりすることは、その人たちの個人情報を扱うことでもあります。
開示請求の対象になるのは「保有個人データ」
本人が事業者に自分の情報の開示を求める開示請求(33条)の対象は、保有個人データです。保有個人データは、特定の個人の情報を検索できるように体系的に作った「個人情報データベース等」を構成する情報のうち、事業者が開示などの権限を持つものを指します(16条)。
委員会のQ&Aは、防犯カメラなどで記録した映像について、記録した日時で検索できても、特定の個人の映像を検索できない場合は、個人情報データベース等には当たらないと解されるとしています。この考え方に沿えば、日時で探して再生するだけの録画は保有個人データに当たらず、33条の開示請求の対象にはならないと考えられます。これと違うのが、顔識別機能付きのカメラシステムに顔特徴データなどを登録した場合です。登録したデータが保有個人データにあたるなら、開示請求に適切に対応しなければならない、とQ&Aにあります。
開示請求の対象になる場合でも、開示すると本人や第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがあるときは、全部または一部を開示しないことができます(33条2項1号)。
見せるなら、範囲と方法を絞る
開示請求の対象でなくても、映像を自由に見せたり渡したりしてよいとは限りません。委員会のQ&Aは、本人を判別できる写真の画像について、一般的に個人データではないと解されるので第三者提供の制限(27条1項)に違反するおそれはないとしつつ、プライバシーの権利や肖像権の侵害に当たる場合もある、としています。i-PROの取扱説明書にも、カメラの設置や映像の利用は、被写体のプライバシーや肖像権などを考慮のうえで行うように、という注意があります。応じる場合の絞り方は、たとえば次のとおりです。
- 見せるのは、該当の場面と時間だけにする
- データは渡さず、管理者の立ち会いで画面で確かめてもらう
- ほかの人の顔や車のナンバーが映っているなら、どう扱うかを先に決める
- 事故の処理などでデータが要る場合は、警察や弁護士を通した手続きを案内する
弁護士を通した手続きには、弁護士会からの照会(弁護士法23条の2)があり、委員会のQ&Aは、これへの回答も「法令に基づく場合」にあたり本人の同意は要らないとしています。裁判所からの文書送付の嘱託(民事訴訟法226条など)への対応も、法令に基づく場合の例に挙がっています。保険会社や相手方からの直接の求めは、こうした法令に基づく照会にはあたりません。応じるかどうか迷うときは、個人情報保護委員会の個人情報保護法相談ダイヤルや弁護士に相談してください。
撮る側が日頃から決めておくこと|掲示・保存期間・見られる人
「防犯カメラ作動中」の掲示
委員会のQ&Aによると、カメラの設置状況などから防犯目的だと明らかな場合は、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(21条4項4号)にあたり、利用目的の通知や公表は要らないと考えられます。ただし、カメラで撮られていることを本人が容易に認識できない場合は、認識できるようにする措置を講じなければなりません(20条1項)。その例に挙がっているのが、入口やカメラの設置場所に、防犯カメラが作動中であることを掲示することです。見た目でカメラと分かる場合でも、掲示でより分かりやすくすることが望ましいとされています。
顔識別機能付きのカメラシステムは扱いが違います。防犯目的だけでなく、顔識別機能を使っていることも明らかにして利用目的を特定し、通知か公表をしなければなりません。掲示の文面は、たとえば次のようなものです。
防犯カメラ作動中
防犯のため、カメラで撮影・録画しています。
管理者:(施設名・連絡先)
運用のルールは1枚にまとめる
いざというときに慌てないよう、次の項目を決めて1枚の紙にまとめ、レコーダーのそばに置いておきます。
| 決めること |
中身の例 |
| 保存期間 |
何日分を残すか。 自動で消す日数 |
| 見られる人 |
再生と書き出しが できる人と、 パスワードの管理 |
書き出しの 手順 |
操作の順番と、 使う媒体 |
| 記録 |
書き出し・提出・ 消去の台帳 |
書き出した 媒体 |
保管する場所と、 消す時期 |
| 時刻合わせ |
確かめる間隔と、 担当する人 |
| 掲示 |
貼る場所と、 問い合わせ先 |
委員会のQ&Aは、カメラ画像を扱うときの安全管理の例として、扱える従業者を限る、責任者を決める、規程を整える、画像を保存した電子媒体の盗難や紛失を防ぐ、ネットワークにつなぐカメラにアクセス制御やパスワードの設定をする、といった措置を挙げています。データベースになっていない画像は、23条の安全管理の義務が直接かかる対象ではないものの、これらを参考に適切に扱うことが望ましい、という補足付きです。i-PROのレコーダーでは、ユーザーレベル(管理者・マネージャー・オペレーター・ビューワー)ごとに、できる操作を設定できます(管理者の設定は変えられません)。
防犯目的で撮った映像を、店の宣伝など商業目的に使うときは、あらかじめ本人の同意が要る、というのも委員会のQ&Aの考え方です(18条1項)。記念や宣伝に使う映像は、防犯カメラの録画とは別に撮ります。
マンションの管理組合や自治会でも
Q&Aは、マンション管理組合や自治会・町内会も、個人情報データベース等を事業に使っていれば個人情報取扱事業者に当たり得るとしています。管理組合の運営を担う理事なども、監督の対象になる「従業者」に当たると考えられる、というのがQ&Aの説明です。住民から映像を求められることを見越して、誰が・どんなときに録画を見られるか、書き出しは誰が行うかを、理事会や総会で決めて文書にしておくと、応じるときも断るときも同じ基準で説明できます。
書き出した映像の保管と処分
書き出した映像にも、個人情報が含まれています。i-PROの説明書は、コピーした画像には「個人情報」となる内容が含まれているとして、漏えいさせないよう媒体の管理に十分注意するよう書いています。書き出したUSBメモリーやディスクは鍵のかかる場所に置き、持ち出したときと戻したときを記録してください。個人情報の入った媒体の扱い全般は、個人情報を含む媒体の取り扱いで説明しています。
書き出した媒体の寿命
長く残す映像は、媒体の寿命も考えて置き場所を決めます。カナダ保存研究所(CCI)の資料にある平均の寿命は、一般的なDVD-R(銀合金の反射層)で10〜20年、BD-Rで5〜10年です。HDDは、米国のクラウド保存会社Backblazeのデータセンターで2025年の1年間に1.36%が故障していて、壊れる時期は台ごとに違います。USBメモリーやSDカードについては、長く放置するとデータが揮発して消えることがある、とバッファローが注意しています。
DVD-RやBD-Rのように一度しか書き込めないディスクは、あとから書き換えられません。米国の政府機関US-CERT向けにまとめられたバックアップの手引きによると、書き換えのできないディスクのデータは誤って消されることがなく、元のファイルがあとで壊れたりウイルスに感染したりしても、その影響を受けません。どの媒体も1つに任せず、種類の違う媒体に複製を作り、1つは別の場所に置きます。媒体ごとの寿命はCD・DVD・ブルーレイの寿命とHDD・SSD・USBメモリー・光ディスクの寿命比較、複製の組み方は3-2-1バックアップの実践ガイドにまとめています。
要らなくなったら消して、媒体は壊して捨てる
個人情報保護法22条は、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければならないと定めています。書き出した映像をいつまで残すかは、警察の手続きや当事者との話し合いの見通しを踏まえ、警察や弁護士に確かめて決めます。その時期が来たら消してください。
i-PROの説明書は、機器と一緒に使う記憶媒体を廃棄するときは、データを削除したあとに物理的に破壊することを勧めています。レコーダーを買い替えたり修理に出したりするときも、中のHDDには録画が残っています。ディスクの壊し方はディスクの正しい捨て方にまとめました。
今日のうちに、自分の防犯カメラで確かめておくこと
書き出しを、トラブルが起きてから初めて試すと、操作に迷っているあいだに上書きの日が来ます。何もない日に、次の順で確かめておきます。
- 録画が何日前まで残っているかを、画面で見る
- レコーダーの時刻が合っているかを、正確な時計と比べる
- 書き出しに使うユーザー名とパスワードを、誰が知っているかを確かめる
- フォーマットしたUSBメモリーか外付けHDDを1つ、書き出し用に決めておく
- 数分の範囲で実際に書き出し、手元のパソコンで再生できるかを見る
- 掲示と、見られる人・書き出しの記録の決まりを、1枚にまとめておく
i-PROのビューワーソフトのように、専用の再生ソフトが要る形式もあります。書き出しを試すときは、手元のパソコンでその再生ソフトが動くかどうかも確かめておきます。
よくある質問
Q1. 防犯カメラの映像は、何日くらい保存されますか?
機器と設定で大きく違います。マスプロ電工のワイヤレスカメラセットの説明書では、フルHDで1台を連続録画したとき、128GBのmicroSDカードで約142時間(約6日)、2TBの外付けHDDで約2,245時間(約94日)が目安です。記録先が一杯になると古い映像から上書きされるので、自分の機器で、いちばん古い録画の日付を確かめておいてください。
Q2. 警察に防犯カメラの映像を渡すとき、映っている人の同意は要りますか?
捜査関係事項照会(刑事訴訟法197条2項)への回答は、個人情報保護法の「法令に基づく場合」にあたり、同意は要りません(18条3項1号・27条1項1号)。令状による捜査への対応も同じです。警察の任意の求めに応じる場合も、ガイドラインで例外の事例に挙がっています。求めた警察官の役職と氏名、渡した範囲は記録しておきます。
Q3. 警察にはどんな形式・媒体で渡せばいいですか?
指定があればそれに合わせ、なければレコーダーの書き出し機能で書き出したファイルを、名前も中身も変えずに渡します。独自形式なら、メーカーのビューワーソフトも一緒に入れてください。i-PROの機種では、改ざん検出用のコードを付けて書き出すと、ビューワーソフトで改ざんの有無を確かめられます。同じものを手元にも残します。
Q4. テレビで見られる映像のDVDにして渡してもいいですか?
提出用には向きません。DVDプレーヤー用の映像のDVDは、国内向けは720×480のMPEG-2と規格で決まっていて、H.264やH.265の録画をこの形にすると圧縮し直すことになり、元のデータと同じではなくなります。ディスクで渡すなら、書き出したファイルをデータとしてDVD-RやBD-Rに書き込みます。テレビで見る分は、それとは別に作るものです。
Q5. 事故の相手や保険会社から映像がほしいと言われたら、渡してもいいですか?
気をつけたいのは、映像に求めた人以外の人も映っていることです。委員会のQ&Aは、本人を判別できる写真の画像について、個人データではないと解される場合でも、プライバシーの権利や肖像権の侵害に当たる場合があるとしています。見せる範囲を該当の場面に絞る、データは渡さず立ち会いで見てもらう、といった方法のほか、弁護士会照会など法令に基づく手続きを案内する方法もあります。迷うときは弁護士に相談してください。
Q6. 映っている本人から自分の映像を見せてほしいと言われたら、応じないといけませんか?
個人情報保護法の開示請求(33条)の対象は保有個人データです。委員会のQ&Aは、日時で検索できても特定の人の映像を検索できない録画は個人情報データベース等に当たらないと解されるとしていて、その場合は開示請求の対象にならないと考えられます。応じる場合も、第三者の権利利益を害するおそれがある部分は、開示しないことができます。
Q7. 防犯カメラの映像を、店の宣伝やSNSに使ってもいいですか?
委員会のQ&Aは、防犯目的で取得したカメラ画像をマーケティングなどの商業目的に使う場合は、あらかじめ本人の同意を得なければならないとしています(18条1項)。宣伝や記念に使う映像は、防犯カメラの録画とは別に、撮ることを伝えたうえで撮影します。
Q8. 書き出した映像は、いつまで保管すればいいですか?
個人情報保護法22条が求めているのは、個人データを利用する必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努めることです。警察の手続きや当事者との話し合いがどこまで続くかで必要な期間が変わるので、警察や弁護士に確かめて期限を決め、台帳に書いておきます。期限が来たらデータを消し、媒体は物理的に壊して捨ててください。
Q9. 自宅の防犯カメラの映像も、同じように扱えばいいですか?
書き出しと原本の残し方は同じです。個人情報保護法の義務がかかるのは、個人情報データベース等を事業に使う個人情報取扱事業者(16条2項)ですが、自宅のカメラにも、道路を通る人や隣の家が映り込むことがあります。警察に渡すときは同じように記録を残し、ほかの人に見せるときは、映っている人のプライバシーに配慮します。
Q10. 防犯カメラの録画に使うmicroSDカードは、ふつうのカードでいいですか?
カードのメーカーの案内を確かめてください。キオクシアは、ドライブレコーダーや監視カメラには高耐久のカードを使うよう案内し、それ以外の製品は常時記録を想定して設計されておらず、使った場合は交換保証の対象外としています。高耐久のカードも、交換の目安は累積の録画時間です。上書きを続けるカードは消耗品と考えます。
参考にした公式の情報
条番号は、2026年9月時点で施行されている条文によるものです。個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布され、施行に向けて政令・規則・ガイドラインが整えられているところで、施行後は内容や番号が変わることがあります。この記事は、2026年9月25日時点の各公式ページと取扱説明書の記載をもとにした一般的な説明です。個別の判断は、弁護士や提出先、個人情報保護委員会の相談窓口に確かめてください。
ディスクメーカーへのご依頼・お見積りは以下からどうぞ。