この記事の要点
安全教育の記録は輸送安全規則第10条第1項 により、日時・場所・内容・指導した者・受けた者を記録し、営業所において3年間 保存することが求められます。
記録の保存年限は帳票ごとに違い、指導監督の記録・事故の記録・運転者等台帳は3年 、点呼記録・業務の記録・運行記録計・運行指示書は1年 と分かれています。
出席簿だけでは「何を教えたか」が残らないため、使った教材そのものを記録票と同じ束 にして、後から中身をたどれる状態にしておきます。
点呼や日常点検の実際の様子を撮った映像は、自社の手順をそのまま示せる教材 になり、欠勤者への個別受講にも同じものを流用できます。
事故惹起運転者・新たに雇い入れた運転者・65歳以上の高齢運転者には特別な指導と適性診断 が別枠で必要で、実施状況は運転者等台帳にも記載します。
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巡回指導の連絡が来てから慌てて教育記録を探した、という話は珍しくありません。実施はしている。ドライバーも集めた。ただ、それを示す紙が出席簿一枚しかなく、何を教えたのかは担当者の記憶の中にしか残っていない、という状態です。
貨物自動車運送事業輸送安全規則の第10条第1項は、運転者への指導及び監督を行ったら「その日時、場所及び内容並びに指導及び監督を行った者及び受けた者」を記録し、その記録を営業所において3年間保存することを求めています。逆に言えば、この5項目が埋まった記録が3年分そろっていて、すぐ出せる場所にあれば、見せるものとしては形になります。
同じ運送の記録でも、点呼の記録や業務の記録は1年と、保存年限は帳票ごとに違います。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
巡回指導で見られるのは「やったか」ではなく「記録で示せるか」|輸送安全規則第10条は営業所で3年間保存 「内容」欄には、テーマ名ではなく教えた中身を一行で残す 出席簿だけでは何を教えたか残らない|教材そのものを記録と同じ束にする 点呼と日常点検の様子を撮って、自社の手順を示す教材にする ドライバーが揃わない事業所の個別受講|同じ教材を配り、受講記録で1本に束ねる 保存年限は帳票ごとに違う|指導記録と事故記録は3年、点呼と業務の記録は1年 事故惹起・初任・65歳以上の運転者には、特別な指導と適性診断が別に要る 年間計画は、12か月の割付表と未受講者の確認で抜けを防ぐ 年度末に教材と記録を一式ディスクにまとめる|盤面に年度と事業所名を入れて据え置く よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
巡回指導で見られるのは「やったか」ではなく「記録で示せるか」|輸送安全規則第10条は営業所で3年間保存
巡回指導を行うのは、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関です。この指導は、貨物自動車運送事業法第39条第1号にある「輸送の安全を阻害する行為の防止その他この法律又はこの法律に基づく命令の遵守に関し、貨物自動車運送事業者に対する指導を行うこと」を根拠にしています。つまり見られているのは、法令が求める状態になっているかどうかです。安全教育でいえば、根拠は輸送安全規則第10条にあたります。
第10条第1項は、事業者に対して「国土交通大臣が告示で定めるところにより」、次の事項について運転者への適切な指導及び監督を行うことを求めています。
主な道路の状況その他の運行に関する状況
その状況の下で運行の安全を確保するために必要な運転の技術
法令に基づき運転に関して遵守すべき事項
そして続けて、こう書かれています。
この場合においては、その日時、場所及び内容並びに指導及び監督を行った者及び受けた者を記録し、かつ、その記録を営業所において三年間保存しなければならない。
条文が指定している5項目を、そのまま記録票の欄にする
記録票を自作するときの一番簡単で確実なやり方は、条文の語順どおりに欄を作ることです。
日時
場所
内容
指導及び監督を行った者
指導及び監督を受けた者
この5つが空欄なく埋まっていれば、少なくとも条文が求める記録要件は満たしています。既存の様式を使っている場合も、5項目のうちどれかが落ちていないかを一度だけ確かめておくと、以降は迷いません。
「営業所において」という指定を軽く見ない
見落とされやすいのが保存場所です。条文は「営業所において三年間保存」と書いています。本社で全営業所分をまとめてファイリングしている運用は、巡回指導を受ける営業所に現物がないことになりがちです。複数営業所を持つ事業者なら、その営業所の運転者に対して行った指導の記録は、その営業所に置いてください。本社で全社分を集約したいのであれば、営業所に原本を置いたうえで写しを集約する形にすれば、どちらの目的も両立します。
なお、記録と保存は運行管理者の業務としても明記されています。第20条第1項第14号は、運行管理者が第10条の規定により乗務員等への指導、監督及び特別な指導を行い、あわせて第1項および第3項による記録および保存を行うことを定めています。担当者が異動しても業務として引き継がれる建て付けになっているので、引継ぎ書に「教育記録の保管場所と直近3年分の所在」を一行入れておくと、担当交代で記録の行方が分からなくなるのを防げます。
条文の5項目が埋まった記録が、営業所に3年分そろっていれば見せられる
「内容」欄には、テーマ名ではなく教えた中身を一行で残す
5項目のうち、後で読み返したときに差が出るのが「内容」の欄です。ここに「安全運転について」「交通安全教育」とだけ書かれた記録は、条文の文字面は満たしていても、読んだ人には何も伝わりません。翌年、同じ担当者が「去年これはやったか」を判断する材料にもなりません。
内容欄に入れる3つの要素
実務で使える粒度は、次の3つを一行ずつ書くやり方です。
指針のどの項目に対応する回か 。第10条の指導及び監督は告示で定められた指針に沿って行うものなので、その回がどの項目をねらったものかを書いておくと、年間で漏れている項目が一目で分かります
使った教材の名前 。「協会配布のドライバー向けテキスト第◯章」「自社作成の映像『前面道路の左折巻き込み』」のように、後から現物にたどり着ける名前で書きます
その回だけの具体 。「先月の自社ヒヤリハット3件を題材に、うち2件が同じ交差点であることを共有」のように、その日にしか書けないことを一行足します
3つ目が入っているかどうかで、記録の説得力はかなり変わります。汎用の文言だけが並んだ記録は、そのまま印刷したものを日付だけ変えて綴じたようにも見えてしまいます。逆に自社の実際の出来事が書いてあれば、実施していることは文面から伝わります。
条文にない欄でも、足しておくと運用が回るもの
条文が求めているのは5項目ですが、実務上は次の3つを足しておくと管理が楽になります。
受講者の署名または押印 。受けた者を記録する欄はありますが、本人の筆跡が残っていると、後から「この日いなかったはず」という食い違いが起きません
当日の欠席者と、その補講予定日 。同じ紙の上に未受講者が書いてあると、補講の抜けがその場で見えます
教材の保管場所 。「2026年度教育資料ディスク/第4回」のように書いておくと、3年後に中身を確認するとき探し回らずに済みます
この3つは法令が求めているものではありません。ただ、記録は残すこと自体が目的ではなく、事故が起きたときに何を教えていたかを確認するためのものでもあります。教えた中身にたどり着ける記録にしておくと、その本来の用途で使えます。
出席簿だけでは何を教えたか残らない|教材そのものを記録と同じ束にする
多くの事業所で起きているのは、記録は残っているのに教材が残っていない、という状態です。集合教育で配ったプリントはその場で回収せず、映した資料は担当者のパソコンの中にあり、翌年の入れ替えで消えている。記録票には「安全運転の心構え」とだけある。これでは3年保存の意味が薄くなります。
記録票・教材・受講者名簿を1セットにする
整理の単位は「回」です。1回の教育につき、記録票、その日に使った教材の現物または電子ファイル、受講者名簿の3点を1セットにします。紙のファイルなら記録票の裏に教材を綴じる。電子で持つなら、回ごとにフォルダを作って、フォルダ名を「2026-05-14_第2回_危険予測」のように日付から始めます。日付始まりにしておくと並べ替えを考えずに時系列で並びます。
1回の教育につき記録票・教材・受講者名簿を1つにまとめ、日付から始まる名前で時系列に並べる
教材が動画の場合は、ファイル形式の扱いに一段の注意が要ります。スマートフォンで撮った映像はMP4やMOVで保存されますが、機種や撮影アプリによってコーデックが違い、数年後に別のパソコンで開こうとすると再生できないことがあります。動画ファイル形式の基礎(MP4/MOV/AVI) を押さえたうえで、保存用は素性のはっきりしたMP4に揃えておくと、後で困りにくくなります。
教材に自社の写真を1枚入れるだけで変わる
市販テキストや協会配布資料をそのまま使うこと自体に問題はありません。ただ、その回のテーマに対応する自社の写真を1枚だけ足すと、記録としても教育としても質が上がります。左折時の巻き込みがテーマなら、自社車両でよく通る交差点の写真。荷崩れがテーマなら、実際の積載状態の写真。撮影は数分で終わりますし、写真には自動的に撮影日が入るので、その回に作られたものだという裏づけにもなります。
教材の版を管理する
同じテーマを毎年やると、教材は少しずつ更新されていきます。ファイル名の末尾に年度を付けるか、資料の隅に作成年月を印字しておくと、3年前の記録に付いている教材がその当時のものかどうかが判断できます。法令改正が絡むテーマでは、古い版のまま使い続けないための歯止めにもなります。
点呼と日常点検の様子を撮って、自社の手順を示す教材にする
教材を作るのに一番手間がかからないのは、すでに毎日やっていることを撮ることです。点呼と日常点検は、その代表格です。
点呼の映像は、要件を映像で説明できる
輸送安全規則第7条は、業務前の点呼で、運転者に対して次の事項について報告を求め、確認を行うことを定めています。
酒気帯びの有無
疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
道路運送車両法第47条の2に基づく点検の実施またはその確認
第4項では、酒気帯びの確認にあたって運転者の状態を目視等で確認するほか、その運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いることとされています。
この一連の流れを、実際の点呼場で、実際の運行管理者が、実際の検知器を使って行っているところを撮ると、そのまま教材になります。書面で「目視等の確認を行うこと」と書くより、正しい手順を1本の映像で見せるほうが伝わりますし、新しく入った運転者への説明にも毎回使えます。撮影は据え置きのスマートフォン1台で足ります。
あわせて、第7条第5項が求める点呼記録の項目、すなわち点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、車両を識別できる表示、点呼の日時、点呼の方法などを、記入例つきで画面に映しておくと、記録の書き方まで一度に教えられます。
日常点検の映像は、車種ごとに1本ずつ
日常点検も同じ考え方で撮れます。ただしこちらは車両によって確認箇所の位置が違うので、主要な保有車種ごとに1本ずつ作るほうが実用的です。ボンネットを開ける位置、点検する箇所、判断に迷いやすいところ。撮影しながら口頭で説明を入れておけば、編集はほぼ不要です。
撮影するときの実務上の注意
運転者の顔が映る場合は、教育目的での撮影と利用範囲を先に説明しておく 。後から使いにくくなるのを避けられます
荷主名、行き先、伝票の記載が読み取れる状態で映さない 。教材は社外の目に触れる可能性があります
1本を長くしない 。テーマごとに数分で切ると、必要なところだけを見せる使い方ができます
撮影日を映像の冒頭に入れる 。教材の版管理が楽になります
撮った映像は、その日の教育記録票の「内容」欄に教材名として書き、ファイルは回ごとのフォルダに入れます。ここまでやって、ようやく「何を教えたか」がたどれる記録になります。
ドライバーが揃わない事業所の個別受講|同じ教材を配り、受講記録で1本に束ねる
長距離便を持つ事業所では、全員が同時刻に集まる日を作ること自体が難しいのが実情です。集合教育を組んでも半分は運行中、という月が続きます。これを無理に集合形式で通そうとすると、実施日が後ろにずれ続けて年度末に破綻します。
「同じ教材を全員が受ける」ことを基準にする
第10条第1項は集合形式を要求していません。求めているのは適切な指導及び監督と、その記録です。そこで、実施形態を集合に固定せず、次のように分けます。
教材は1回につき1本に固定する 。集合で見せるものと個別で見せるものを同じにします。これが崩れると、誰が何を受けたかの管理が一気に難しくなります
受講の場は複数用意する 。集合教育の日、点呼後の空き時間、休憩室での個別視聴。どれで受けても同じ回の受講として扱います
記録票は回ごとに1枚とし、受講者欄を日付つきにする 。同じ紙に「5月14日 集合/◯◯、△△」「5月17日 個別/□□」のように追記していきます。第10条が求める日時・場所・受けた者は、行ごとに埋まります
個別視聴の環境をどう用意するか
個別視聴でつまずくのは、たいてい再生環境です。事務所のパソコンは1台しかなく、運転者に貸すと業務が止まる。私物のスマートフォンに送るのは、通信量とデータの持ち出しの両面で気が進まない。
現実的な落としどころは、休憩室や点呼場にDVDプレーヤーを1台置き、教材ディスクを常備しておくやり方です。運転者は入ってディスクを入れるだけで、操作を覚える必要がありません。
ここで注意したいのは、映像ファイルをそのままディスクに書き込んでも据置きプレーヤーでは再生できないという点です。プレーヤーで再生するには、メニューやチャプターの構造を持たせるDVDオーサリング という工程が必要になります。この工程を通しておくと、教材ごとにチャプターを分けて「第3回だけ見る」といった使い方もできます。
未受講者を毎月末に確認する
個別受講を認める運用にすると、必ず取りこぼしが出ます。対策は単純で、月末に記録票の受講者欄と運転者名簿を突き合わせ、その回を受けていない人の一覧を作ることです。名簿は運転者等台帳の一覧でも構いません。この確認を月末の定例作業に入れておくと、年度末にまとめて発覚する事態を避けられます。
どこで受けても同じ教材なら、記録票1枚で同じ回の受講として束ねられる
保存年限は帳票ごとに違う|指導記録と事故記録は3年、点呼と業務の記録は1年
輸送安全規則が定める年限は帳票ごとに違います。「運送の記録は3年」と一括りに覚えていると、短いほうを長く保管して書庫を圧迫したり、長いほうを1年で捨ててしまったりします。
記録の種類
根拠条文
保存年限
保存場所の指定
従業員に対する指導及び監督の記録
第10条第1項
3年
営業所
特定自動運行保安員に対する指導監督の記録
第10条第3項
3年
営業所
事故の記録
第9条の2
3年
運行を管理する営業所
運転者等台帳(運転者でなくなった後)
第9条の5第2項
3年
指定なし(在籍中は営業所に備え置き)
点呼の記録
第7条第5項
1年
指定なし
業務の記録
第8条第1項
1年
指定なし
運行記録計による記録
第9条
1年
指定なし
運行指示書およびその写し
第9条の3第4項
1年(運行終了の日から)
指定なし
運行記録計の対象は、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の普通自動車である事業用自動車、それを牽引する牽引自動車、および特別積合せ貨物運送に係る運行系統に配置する事業用自動車です。業務の記録に貨物の積載状況の記載が要るのは車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上と、運行記録計とは別のしきい値が定められています。車両ごとにどちらに該当するかを一度整理しておくと迷いません。
3年ものは「年度単位で1箱」に寄せる
3年保存の記録は、年度単位でまとめて棚に置き、箱の背に年度を書くのが一番管理しやすい形です。教育記録、事故記録、退職者の運転者等台帳を年度ごとに同じ場所へ入れておくと、3年経った箱から順に処分できます。1年保存の帳票は動きが速いので、同じ棚に混ぜないほうが取り違えが起きません。
電子で持つ場合の物理的な劣化を勘定に入れる
電子ファイルで保存する場合、3年は決して長くありませんが、ハードディスクの故障やパソコンの入れ替えが起きる程度の長さではあります。光ディスクに焼いて棚に置く方法を併用する事業所もあります。ディスク自体にも寿命があるので、記録媒体としてどれくらい持つのかはCD・DVD・ブルーレイの寿命 を目安にしてください。
より堅実なのは、1つの媒体に頼らないことです。事務所のパソコン、クラウド、光ディスクの3か所に置く3-2-1バックアップの考え方 を教育記録にも当てはめると、どれか1つが壊れても記録は残ります。年度末に1回まとめる作業と組み合わせれば、手間は年1回で済みます。
事故惹起・初任・65歳以上の運転者には、特別な指導と適性診断が別に要る
第10条第2項は、第1項の一般的な指導及び監督とは別に、特定の運転者に対する特別な指導と適性診断の受診を求めています。ここを一般教育と混ぜて管理していると、対象者が出たときに気づけません。
対象になる3類型
条文が挙げているのは次の3つです。
死者または負傷者が生じた事故を引き起こした者 。ここでいう負傷者は、自動車損害賠償保障法施行令第5条第2号、第3号または第4号に掲げる傷害を受けた者を指します
運転者として新たに雇い入れた者 (貨物軽自動車運送事業者にあっては、運転者として初めて事業用自動車に乗務する者)
高齢者 。条文は65才以上の者と定義しています
いずれについても、事業者は運行の安全を確保するために遵守すべき事項について特別な指導を行い、あわせて国土交通大臣が告示で定める適性診断であって第12条の3第1項の認定を受けたものを受けさせなければならない、とされています。指導の内容や実施時期の細目は告示に定められているので、様式や時間数は最新の告示および所管の適正化事業実施機関が配布しているチェックリストで確認してください。
実施状況は運転者等台帳にも書く欄がある
見落とされがちなのが、第9条の5の運転者等台帳です。台帳に記載する事項として、第9号に「運転者にあっては、第10条第2項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況」が挙げられています。つまり特別な指導と適性診断は、教育記録票だけでなく台帳側にも記載が要ります。片方だけ書いて、もう片方が空欄という食い違いは、突き合わせればすぐ分かってしまう類の抜けです。
台帳にはほかに、事故を引き起こした場合の概要(第6号)、道路交通法第108条の34の規定による通知を受けた場合の概要(第7号)も入ります。事故惹起運転者に該当したかどうかは、この欄を見れば分かる作りになっています。運転者が転任・退職などで運転者でなくなった場合は、直ちにその年月日と理由を台帳に記載し、3年間保存します。
入社時と誕生月を管理表に書き出す
3類型のうち初任と高齢は、日付が分かっていれば先回りできます。運転者名簿に「選任年月日」と「生年月日」の列があれば、初任者と65歳到達者は自動的に洗い出せます。表計算ソフトで名簿を持っているなら、当月に65歳を迎える人を抽出する式を1本入れておけば、毎月の確認が数秒で終わります。事故惹起だけは事前に予測できないので、事故報告の運用の中に「該当するか判定して、該当なら特別な指導の予定を立てる」という手順を組み込んでおきます。
どの類型も特別な指導と適性診断が要り、実施状況は台帳にも書く
年間計画は、12か月の割付表と未受講者の確認で抜けを防ぐ
ここまでの内容を毎年安定して回すには、年度の初めに割付表を1枚作るのが早道です。凝ったものは要りません。行に月、列に「テーマ」「教材」「実施予定日」「実施日」「受講者数」「未受講者」を並べた表で足ります。
年度初めに埋めるのは3列だけ
年度初めの時点で埋めるのは、月・テーマ・教材の3列です。テーマは告示の指針に沿って割り振ります。教材の欄は「協会テキスト第◯章」「自社作成映像(未作成)」のように、その時点で分かる範囲で構いません。未作成のものが目に見えるようになると、いつ撮るかを前もって決められます。
ここで一緒に決めておくと後が楽なのが、繁忙期の扱いです。年末や年度末に重い教育を置くと、実施日がずれて翌月に押し出されます。逆算して、動きにくい月には既存教材の再視聴や短時間で終わるテーマを置き、映像を新規に撮るような回は余裕のある月に寄せます。
月末に3つだけ確認する
運用中に見るのは次の3点です。多くしないほうが続きます。
その月の回が実施済みか 。実施日の欄が空なら、翌月に振り替えて予定日を書き直します
未受講者が残っていないか 。運転者名簿と受講者欄を突き合わせ、残っていれば補講の日を決めます
特別な指導の対象者が発生していないか 。新規採用、65歳到達、事故惹起の3点を確認します
指導監督は運転者向けだけではない
年間計画を組むときに漏れやすいのが、第10条第1項以外の指導義務です。輸送安全規則には、次の指導の規定がそれぞれあります。
過積載による運送の防止についての指導及び監督(第4条)
貨物の積載方法についての指導及び監督(第5条)
道路法に基づく通行の禁止・制限等に違反する行為の防止についての指導及び監督(第5条の2)
事業用自動車に備えられた非常信号用具および消火器の取扱いについての指導(第10条第4項)
これらをテーマとして年間のどこかに置いておくと、指導義務の全体像が計画上でつながります。
また第10条第5項は、従業員に対して効果的かつ適切に指導及び監督を行うため、輸送の安全に関する基本的な方針の策定その他の告示で定める措置を講じることを求めています。年度初めに方針を1枚にまとめ、掲示と教育の初回で共有しておくと、計画表と方針が同じ年度単位で対応します。
年度初めの割付表と月末の確認で、年度末にまとめて穴が見つかるのを防ぐ
年度末に教材と記録を一式ディスクにまとめる|盤面に年度と事業所名を入れて据え置く
年度が終わったら、その年度に使った教材と記録を1つにまとめます。パソコンの中に置いたままにすると、担当者の交代や機器の入れ替えで所在が分からなくなります。棚に置ける形にしておくと、3年分が物理的に並び、何が欠けているかが見ただけで分かります。
まとめる中身を先に決める
1年度分としてまとめる中身は、たとえば次のようになります。
各回の教育映像(点呼手順、日常点検、自社事例など)
各回の教材ファイル(PDFまたは配布資料のスキャン)
教育記録票のスキャン
年間計画表の最終版
その年度の輸送の安全に関する基本的な方針
映像を据置きプレーヤーで見られる形にしておくと、休憩室での個別視聴にそのまま使えます。回ごとにチャプターを分けておけば、「第5回だけ見る」という使い方ができるので、補講の運用が楽になります。
パソコンで見るだけならデータのまま焼いても構いませんが、事務所の環境が変わっても再生できる可能性を上げたいなら、プレーヤーで再生できる形にしておくほうが無難です。家庭用プレーヤーの互換性 で、どういう作りだと再生されやすいかを押さえておくと判断しやすくなります。
盤面に何を印刷するか
棚から探すときに頼りになるのは、ケースの背表紙と盤面の表記です。入れておくと迷わないのは次の4つです。
年度(例:2026年度)
事業所名(複数営業所なら必須)
内容(安全教育記録一式)
保存期限の目安(例:2029年度末まで保存)
保存期限を盤面に入れておくと、3年経ったものを判断するのに書類を開く必要がありません。同じ体裁で毎年作れば、棚に並んだ背表紙の年度を見るだけで、揃っているかどうかが分かります。
枚数と費用の目安
営業所ごとに1枚ずつ作っても、事業所数が少なければ数枚で済みます。当社では基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で注文を受けています。まとまった枚数が前提の業者だと少数の注文が通らないことがあるので、必要な枚数だけ頼めるかは事前に確認してください。1枚から頼める小ロット対応 に、この点の見方をまとめています。
再生できる形への組み立て(オーサリング)は料金に含まれます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも、オプションで対応しています。盤面とケースの印刷は、年度や事業所名も入れた画像を入稿してもらう形です。
入稿は、ギガファイル便のURLで受け付けています。映像が数十GBになっても、URLを送るだけで済みます。
納期は通常便のほか、お急ぎお届け(+1,500円、平日15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)と特急お届け(+3,000円、平日15時までの注文・入稿で翌日発送)から選べます。当日店舗お渡し(+3,500円、平日12時までの注文・入稿、大阪市北区・梅田の店舗で受け取り)も選べます。巡回指導の日程が決まってから慌てて用意する場合でも、選択肢は残ります。とはいえ本来は、年度末の定例作業として済ませておくのが、いちばん手間のかからないやり方です。
よくある質問
Q. 運送業の安全教育の記録は何年保存すればいいですか? A. 貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項により、運転者に対する指導及び監督の記録は営業所において3年間保存することとされています。事故の記録(第9条の2)も3年間、運転者でなくなった者の運転者等台帳(第9条の5第2項)も3年間です。一方で点呼の記録、業務の記録、運行記録計による記録は1年間、運行指示書およびその写しは運行の終了の日から1年間と定められており、帳票ごとに年限が異なります。まとめて同じ年数と覚えていると過不足が出るため、一度整理しておくことをおすすめします。
Q. 安全教育の記録には具体的に何を書けばよいですか? A. 輸送安全規則第10条第1項が挙げているのは、その日時、場所、内容、指導及び監督を行った者、指導及び監督を受けた者の5項目です。記録票を作るときは、この5つをそのまま欄にすると漏れません。実務では「内容」欄が形骸化しやすいので、その回が指針のどの項目に対応するか、使った教材の名前、その日ならではの具体(自社の直近のヒヤリハットを題材にしたなど)の3点を一行ずつ書き足しておくと、後から読んで中身がたどれる記録になります。
Q. 出席簿だけを残しておけば足りますか? A. 出席簿だけでは、条文が求める5項目のうち「内容」が残りません。誰が出席したかは分かっても、何を教えたのかが記録から読み取れない状態になります。実際の運用では、記録票、その日に使った教材の現物または電子ファイル、受講者名簿の3点を1回ぶんのセットとして束ねておくのが扱いやすい形です。教材は回ごとのフォルダに入れ、記録票の内容欄に教材名を書いておくと、3年後に確認するときも探し回らずに済みます。
Q. 教育記録を本社でまとめて保管してもよいですか? A. 第10条第1項の条文は「その記録を営業所において三年間保存しなければならない」と、保存場所を営業所と指定しています。本社に集約すると、巡回指導を受ける営業所に現物がないことになりがちです。本社でも全社の状況を把握したい場合は、原本を各営業所に置いたうえで写しを本社に集める形にすれば、両方の目的を満たせます。複数営業所がある事業者では、どの営業所の運転者に対する指導かで振り分けてください。
Q. 教育記録は紙で残す必要がありますか。データでも認められますか? A. 輸送安全規則の条文自体は記録の媒体を限定していません。ただし営業所において保存し、求められたときに提示できることが前提になるため、電子で持つ場合も営業所の端末や媒体からすぐ出せる状態にしておく必要があります。電子保存を本格的に導入する際は、運用方法を所管の運輸支局や地方貨物自動車運送適正化事業実施機関に事前に確認しておくと、後から作り直す手間を避けられます。移行期は紙と電子を併用する事業所が多いようです。
Q. ドライバーが集まらない場合、動画を各自に見せる形でもよいですか? A. 第10条第1項は集合形式を要求しておらず、適切な指導及び監督が行われ、その記録が残ることを求めています。実務上は、1回につき教材を1本に固定したうえで、集合教育の日と個別視聴の日を同じ「回」として扱い、記録票の受講者欄に日付つきで追記していく方法が管理しやすい形です。休憩室に据置きプレーヤーと教材ディスクを置いておくと、運転者は操作を覚えずに視聴でき、パソコンの奪い合いも起きません。
Q. 新しく雇い入れた運転者には、通常の教育と別に何が必要ですか? A. 第10条第2項により、運転者として新たに雇い入れた者は特別な指導の対象になります。あわせて、国土交通大臣が告示で定める適性診断であって第12条の3第1項の認定を受けたものを受けさせることも求められています。事故惹起運転者と65歳以上の高齢運転者も同じ枠の対象です。実施状況は教育記録票だけでなく、運転者等台帳(第9条の5第1項第9号)にも記載する欄があります。具体的な内容や時期は告示に定めがあるため、最新の告示と適正化事業実施機関のチェックリストで確認してください。
Q. 教育に使った動画は年度ごとにどうまとめるのが実務的ですか? A. 年度末に、その年度の教育映像、教材ファイル、記録票のスキャン、年間計画表、輸送の安全に関する基本的な方針を1つにまとめる方法が扱いやすいです。パソコンの中に置いたままだと担当者交代や機器入替で所在が分からなくなるため、ディスクに固めて棚に置くと3年分が物理的に並びます。盤面に印刷する画像に、年度・事業所名・内容・保存期限の目安を入れておくと、開かずに判別できます。当社では基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で承っています。