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ドライブレコーダー映像の社内保存|提出依頼に備えた切り出しと管理

2026 10/21
ドライブレコーダー映像の社内保存|提出依頼に備えた切り出しと管理

この記事の要点

  • 民法724条・724条の2の消滅時効と、交通事故証明書の申請期限は、同じ長さでそろっています。そのため、保存年限の下限は人身5年・物損3年に置くのが実務の起点になります。
  • 32GBのカードにフルHD約12Mbpsで1台分を記録した場合、単純計算でおよそ6時間です。上書き周期は容量と画質とカメラ台数で決まるため、機種ごとに取扱説明書で確認します。
  • 警察への提出は刑事訴訟法221条の領置にあたります。カードごと預けると返還時期が読めないため、渡す前に社内へ複製を残す手順を運用に組み込みます。
  • 事故映像を切り出すときは、原本を無編集のままハッシュ値つきで封印し、提出用の切り出しファイルは常に別名で作ります。これが、改変を疑われないための、いちばん手早い防御です。
  • 一般貨物自動車運送事業者は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2により事故の記録を3年保存する義務があります。ドラレコ映像もこの記録に紐づけて管理すると、年限がぶれません。

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社用車で事故が起きた翌日、保険会社から「ドライブレコーダーの映像はありますか」と連絡が入ります。運転者に確認すると「カードは入れっぱなしです」。そのまま車は翌朝も走り、上書きが進んでいく。運行管理の現場で、これがいちばんよくある取りこぼし方です。

ドラレコの映像は、記録した瞬間から、上書きで消えるまでの残り時間が減り始めています。しかも消えるまでの猶予は機種と設定で数時間から十数時間と幅があり、「あとで確認しよう」が通用する長さではありません。一方で、いったん退避させたあとに何年持っておくべきかは、上書き周期とはまったく別の理屈、つまり相手から請求が届きうる期間で決まり、人身なら5年、物損なら3年が起点になります。

退避は事故の当日中に済ませ、原本はいっさい編集せずに残し、警察と保険会社には形を分けて渡します。そのうえで、事案の種類ごとに保存年限を決め、期限が来たら消すところまでを社内の手順にします。

この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります

  1. 保存期間は「上書きまでの時間」ではなく年単位で決める|人身5年・物損3年が逆算の起点
  2. SDカードは記録媒体であって保存媒体ではない|32GB・フルHD1台なら単純計算で約6時間
  3. 事故直後は救護と警察への報告が先、映像の保全はその後で当日中に
  4. 抜き出す範囲は前後10分では足りない|原本は無編集で封印し、切り出しは別ファイルにする
  5. 提出先で形式を分ける|警察には原本、保険会社には再生できる形
  6. 映っている人への配慮は、警察・保険会社への提供と社内での上映でまったく別の話
  7. 保存年限は事案の種類別に3段で決め、人身5年・物損3年・ヒヤリハット1年
  8. 長期保管は3-2-1と書き換わらない媒体で、1事案1枚にまとめると取り違えが減る
  9. よくある質問

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保存期間は「上書きまでの時間」ではなく年単位で決める|人身5年・物損3年が逆算の起点

「ドラレコの映像は何時間で消えるのか」を調べている時点で、問いの立て方が半分ずれています。上書きまでの時間は、カードから映像を退避させるための猶予にすぎません。本当に社内で決めなければならないのは、退避させたあと何年持っておくかです。ここが決まっていないと、退避の手順もいずれ形骸化します。

年数の根拠は、相手から請求が届く可能性が残っている期間に置きます。民法第724条は、不法行為による損害賠償請求権が「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間」行使しないとき、時効で消滅すると定めています。同条は、「不法行為の時から二十年間」行使しないときにも時効で消滅するとしています。

さらに第724条の2で、人の生命または身体を害する不法行為については、この「三年間」が「五年間」に読み替えられます。人身なら5年、物損なら3年。これが出発点です。

ドラレコ映像の2つの期間を比べた表。上書きまでの時間は、映像を退避させるための猶予で、機種と設定で数時間から十数時間。容量・画質・カメラ台数で決まる。保存年限は、退避させたあと持っておく年数で、相手から請求が届きうる期間に置き、人身5年・物損3年が起点
上書きまでの時間は退避の猶予。何年持つかは、相手から請求が届きうる期間で決める

この長さは、別の制度とも符合します。自動車損害賠償保障法第19条は、被害者請求権が「損害及び保有者を知つた時から三年を経過したとき」に時効消滅するとしています。また、自動車安全運転センターが交付する交通事故証明書は、申請できる期間が人身事故で事故発生から5年以内、物件事故で3年以内とされています。証明書が取れる期間と、映像が必要になりうる期間は、ほぼ重なると考えられます。

逆算の根拠になる期間

根拠 期間 内容
民法724条の2 5年 人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権(損害及び加害者を知った時から)
民法724条1号 3年 上記以外(物損など)の不法行為の損害賠償請求権(同上)
民法724条2号 20年 不法行為の時から
自賠法19条 3年 被害者請求権(損害及び保有者を知った時から)
交通事故証明書の申請 人身5年/物件3年 自動車安全運転センターの申請受付期間
貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の2 3年 事故の記録を営業所で保存する義務

民法724条2号の20年まで映像を持ち続ける会社は現実にはほとんどないはずです。社内規程では「原則は人身5年・物損3年、係争中の事案は解決まで延長」と書き、20年の存在は例外扱いの根拠として残しておくのが扱いやすい形です。

一般貨物自動車運送事業者や旅客自動車運送事業者には、これとは別に法定の保存義務があります。貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の2は、事業用自動車に係る事故が発生した場合に、次の事項を記録するよう定めています。

  • 乗務員等の氏名
  • 車両番号
  • 発生日時
  • 発生場所
  • 当事者の氏名
  • 事故の概要
  • 原因
  • 再発防止対策

その記録は、運行を管理する営業所において3年間保存しなければなりません。旅客自動車運送事業運輸規則第26条の2も同じ3年です。映像そのものを保存せよとは書かれていませんが、この「事故の記録」に映像ファイルを紐づけて一体で管理すれば、年限の判断が二重にならずに済みます。

SDカードは記録媒体であって保存媒体ではない|32GB・フルHD1台なら単純計算で約6時間

ドライブレコーダーは、カードの空き容量が尽きると古いファイルから順に上書きしていく循環記録(ループ記録)で動いています。したがって、退避までの猶予は「何時間」という固定値ではなく、カードの容量と記録画質、そしてカメラの台数の割り算で決まります。

単純化した計算をしておくと感覚がつかめます。32GBのカードに、1台のカメラでフルHD・約12Mbpsのビットレートで記録する場合、32×8=256ギガビットを12Mbpsで割ると約21,000秒、つまりおよそ6時間です。前後2カメラで同時に記録すればその半分の約3時間、64GBに増やせば倍の約12時間。ここに音声や駐車監視の記録が加われば、さらに短くなります。

これはあくまで前提を置いた計算で、実機のビットレートは機種と画質設定で変わります。社内で確認すべきなのは、導入している機種の取扱説明書に書かれた「記録時間の目安」の表です。運行管理者がその数字を読み取り、社内手順書に「当社の車両は◯時間で上書きが始まる」と具体的な数字で書き写しておくと、事故報告を受けた担当者が猶予を即座に判断できます。

取扱説明書で確認しておく4項目

  • 常時記録の上書き周期。現在の画質設定・カメラ台数での実際の記録時間。
  • イベント記録(衝撃検知)の扱い。別フォルダへ退避される機種が多い一方、その領域にも上限があり、上限に達すると古いイベントから消える設計もあります。「イベント記録なら永久に残る」と思い込まないことです。
  • 駐車監視機能の有無と動作条件。エンジンを切ったあとも書き込みが続く設定になっていると、事故後に車を置いておくだけで上書きが進みます。
  • メーカーが示すフォーマットの推奨頻度。フラッシュメモリは書き換え回数に限りがあり、常時記録は書き換えの負荷が高い使い方です。推奨頻度が示されている機種では、その間隔で定期フォーマットを運用に組み込みます。

カードそのものの寿命も見落とされがちです。フラッシュメモリは、通電せずに置いておくだけでもデータの保持能力が落ちていくと考えられています。そのため、「事故映像の入ったカードを金庫にしまって5年」という運用は、5年後に読めない可能性を抱え込むことになります。記録媒体ごとにどのくらいの期間を見込めるかはCD・DVD・ブルーレイの寿命の記事で整理していますが、いずれにせよ長期保管は別の媒体に移す前提で考えるのが安全です。

もうひとつ、月に一度でよいので記録が実際に残っているかの点検を車両点検の項目に加えてください。記録ランプが点いていてもカードが壊れていて何も書けていない、という状態は起こります。数分ぶんを再生し、映像と時刻表示が出ることを目で確認する。それだけで、いざというときに「録れていませんでした」を防げます。

ドライブレコーダーの上書きに備える確認項目。今の画質とカメラ台数での上書き周期、その時間を手順書に数字で書くこと、イベント記録の領域の上限、駐車監視でエンジン停止後も書き込むか、フォーマットの推奨頻度、月1回の再生点検、長期保管は別の媒体へ移すこと
退避までの猶予は機種と設定で変わる。自社の車両の数字を手順書に書いておく

事故直後は救護と警察への報告が先、映像の保全はその後で当日中に

順序を間違えないでください。道路交通法第72条第1項は、交通事故があったとき、車両等の運転者その他の乗務員は直ちに運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等の必要な措置を講じなければならないと定めています。そのうえで運転者は、警察官に対し、事故が発生した日時と場所、死傷者の数と負傷の程度、損壊した物とその程度、積載物、講じた措置を報告しなければなりません。映像の保全はこれらの義務を果たしたあとの話です。運転者に配る事故対応カードにも、この順番のまま書いておきます。

停止して負傷者を救護し、物損でも警察に通報し、会社に連絡する。そのあと運行管理者の指示で、上書きを止め、カードを書き込み禁止にして封をし、予備カードで記録の再開を確かめ、その日のうちに複製する、という7つの手順
救護と警察への報告が先。映像の保全はその後、当日中に済ませる

運転者が現場でやること

  1. 停止し、負傷者を救護し、後続車への危険を防止する。
  2. 警察に通報する。物損で相手から「警察は呼ばなくていい」と言われても届け出ます。届出がないと交通事故証明書が交付されません。
  3. 会社に連絡する。このとき運行管理者は「ドラレコの電源を落としてカードを抜くまで、車を通常運行に戻さない」と明確に指示します。

運行管理者が指示して当日中に済ませること

  1. 上書きを止める。電源が入っている限り記録は続きます。駐車監視機能が有効な車両では、エンジンを切っても書き込みが継続する場合があります。機種の仕様に応じて、電源を完全に落とすか、カードを抜いてしまいます。
  2. カードを抜き、書き込み禁止にする。SDカードの側面にあるロックスイッチを書き込み禁止側へスライドさせます。誤って別の機器に挿しても上書きされません。
  3. 封をして情報を書く。封筒か小袋に入れ、車両番号、運転者名、事故発生日時、カードを抜いた日時、抜いた人の氏名を書きます。あとから「いつ誰が触ったか」を説明できる状態にしておくことが、映像の証拠価値を保ちます。
  4. 予備カードに差し替えて記録再開を確認する。ランプの点灯だけで済ませず、数分走ったあとに再生して映っていることを確かめます。予備カードは各営業所に台数分を常備しておきます。
  5. その日のうちに複製する。事務所のパソコンへ、次の章の手順でコピーします。カードに入れたまま一晩置かないことです。

運送事業者には、これに加えて行政への報告期限があります。自動車事故報告規則第4条は、一定の重大な事故について「二十四時間以内においてできる限り速やかに」運輸監理部長または運輸支局長へ速報するよう定めています。同規則第3条は、対象となる事故があった日から30日以内に、自動車事故報告書3通を運輸監理部長または運輸支局長を経由して国土交通大臣に提出することを求めています。映像の保全は、この30日間の事実確認をそのまま支える作業でもあります。

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抜き出す範囲は前後10分では足りない|原本は無編集で封印し、切り出しは別ファイルにする

事務所に戻ったら、カードの中身をパソコンへ写します。ここで守る原則はひとつだけです。原本はいっさい編集しない。提出用に切り出したいファイルは、原本とは別に新しく作る。この分離ができていないと、あとで「編集されているのでは」と問われたときに反論する材料がありません。

原本の作り方

  1. カード内のフォルダ構成ごと、ファイルを一式まとめてコピーします。事故の瞬間が入ったファイルだけを抜き取らないでください。前後のファイルが連続していること自体が、映像が途切れていない証拠になります。
  2. コピー後にハッシュ値を取ります。Windowsなら certutil -hashfile ファイル名 SHA256、macOSやLinuxなら shasum -a 256 ファイル名 で計算できます。結果をテキストに保存し、事案フォルダに一緒に置きます。以後この値が変わっていなければ、中身が書き換えられていないことを説明できます。
  3. コピーした日時と担当者名を、事故の記録の台帳に書きます。
  4. コピー先のファイルは読み取り専用にします。

コピーのときにファイルの更新日時が書き換わらないよう注意してください。エクスプローラーやFinderの通常のコピーでは維持されますが、変換ソフトを通すと失われます。映像の証拠価値を落とさないという意味では、再エンコードをはさまずそのまま複製するのが基本です。この考え方は画質が劣化しないコピーで扱っている、データをそのまま移す方法と同じ発想です。

提出用に切り出す範囲

「事故時刻の前後10分」で足りることは、実はあまりありません。争点になりやすいのは衝突の瞬間そのものより、その手前の運転状況と、直後のやりとりだからです。

  • 直前の走行状況。速度の推移、車間距離、信号の色、進路変更のタイミング。過失割合の議論では、衝突の数十秒前から数分前が意味を持ちます。
  • 直後の状況。相手方が車から降りてきたときの様子や発言は、後日の主張と食い違うことがあります。
  • 同じ日の運行全体。可能であれば、その日の運行開始から終了までを原本として残します。長時間の連続運転や無理な運行計画が問われる場面で、運行の全体像が説明材料になります。

切り出したファイルには、原本と区別できる名前を付けます。たとえば「20260809_大阪1234_原本」と「20260809_大阪1234_提出用_保険会社」のように、フォルダ名の時点で役割が読み取れるようにしておくと、担当者が替わっても取り違えが起きません。編集した映像だけを残して原本を消す、という運用は避けてください。

提出先で形式を分ける|警察には原本、保険会社には再生できる形

同じ映像でも、警察と保険会社では求められる形が違います。まとめて同じものを渡すと、どちらかで不都合が起きます。

警察と保険会社への映像の渡し方を比べた表。警察には原本をカードか複製の媒体で渡し、先に社内へ複製を残し、提出先と日付を台帳に書く。返却時期は読めない。保険会社には先方で再生できるMP4と静止画を渡し、時刻のずれを確かめ、取り付け位置や機種を添え書きする。独自形式は開けないことも
同じ映像でも、警察には原本、保険会社には開ける形で渡す

警察へ渡すとき|返ってくる時期は読めないと考える

捜査の場面で映像を渡す方法として一般的なのは任意提出です。刑事訴訟法第221条は、検察官、検察事務官または司法警察職員は「所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物」を領置することができると定めています。領置された物は捜査機関が保管し、いつ返却されるかは捜査の進行によります。SDカードごと提出すれば、そのカードはしばらく手元に戻りません。

  • 提出する前に、社内に複製を残します。原本を渡してしまい、社内に何も残っていないという状態を作らないことです。
  • 提出した物の名称、提出日、提出先の警察署名と担当者名を台帳に記録します。任意提出書や領置調書の控えを受け取れる場合は、それも事案フォルダに保管します。
  • カードそのものではなく、複製を収めた媒体で受け取ってもらえるかは、担当の警察署に確認します。

保険会社へ渡すとき|担当者が開けることが最優先

保険会社に渡す映像でいちばん多いつまずきは、「先方のパソコンで再生できない」です。ドライブレコーダーには、専用ビューアソフトでしか開けない独自形式でファイルを書き出す機種があります。GPSの位置情報や加速度のグラフを一緒に見せられる利点はありますが、受け取る側にそのソフトが入っていなければ、ただ開けないファイルです。

  • 専用形式の原本と、汎用形式に変換した提出用の両方を用意します。汎用形式としてはMP4がもっとも通りがよく、どの形式がどう違うかは動画ファイル形式の基礎(MP4/MOV/AVI)で整理しています。
  • 決定的な場面は静止画としても切り出して添えます。相手方の位置関係や信号の色は、一枚の画像のほうが伝わります。
  • 映像の時刻表示が実時刻とずれていないかを確認します。GPS同期していない機種では、電源を落とした期間に時計が狂うことがあります。確認方法は簡単で、電波時計や携帯電話の時刻表示をカメラに向けて数秒撮り、映像内の表示と見比べるだけです。ずれがあれば「映像の表示は実時刻より◯分◯秒進んでいる」とメモを添えて渡します。
  • 添え書きには、事故発生日時、車両番号、運転者名、カメラの取り付け位置と向き(フロントガラス上部・前方向き、リアガラス・後方向きなど)、記録した機種名を書きます。カメラの画角と取り付け位置がわからないと、映像の距離感を誤解されます。
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映っている人への配慮は、警察・保険会社への提供と社内での上映でまったく別の話

ドライブレコーダーの映像には、事故の当事者だけでなく、通行人、歩行者、周囲の車のナンバー、車内カメラがあれば同乗者や自社の運転者まで映り込みます。特定の個人を識別できる映像は個人情報にあたると考えられ、事業者が体系的に保管すれば個人データとしての取扱いが問題になります。

外部へ渡すとき

個人情報保護法第27条第1項は、本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供してはならないと定めたうえで、例外を列挙しています。次のような場合が、それにあたります。

  • 第1号の「法令に基づく場合」
  • 第2号の「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」
  • 第4号の「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合」

捜査機関への任意提出や、損害賠償の処理に必要な範囲での保険会社への提供は、これらの例外のいずれかで整理できる場面が多いと考えられます。ただし個別の判断になりますので、大量の映像をまとめて渡すような場面では顧問弁護士に相談してください。

社内で使うとき

厄介なのはこちらです。ヒヤリハット映像を安全教育に使うのは有益ですが、外部提供とは別の話になります。実務としては次の線を引いておくと運用しやすくなります。

  • 教材として使う映像は、顔とナンバープレートにぼかしをかけた別ファイルを作り、それだけを教材フォルダに置きます。原本は事案フォルダから出しません。
  • 教材から日付・場所・運転者が特定できる情報を落とします。誰の事故かがわかる状態で研修に使うと、教育ではなく見せしめになります。
  • 映像の閲覧権限を、運行管理者と安全担当に限定します。誰がいつ見たかを記録できるなら、そこまで整えておくと安心です。

車内カメラと運転者

運転席を向いたカメラを入れる場合は、導入時点で利用目的を運転者に明示し、就業規則や社内規程に位置づけます。同法第24条は従業者への必要かつ適切な監督を求めており、映像を扱う担当者側の管理も同じ枠組みで考えることになります。

そして、保存年限を決めること自体が法の要請と一致しています。同法第22条は「利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない」と定めています。捨てる仕組みがない会社ほど、何年も前の映像が共有フォルダに散らばっていて、漏えいしたときの影響範囲が読めません。残す年限を決めることと、期限が来たら消すことは、セットで初めて意味を持ちます。

保存年限は事案の種類別に3段で決め、人身5年・物損3年・ヒヤリハット1年

すべての映像を同じ年数で持つ必要はありませんし、そうすると保管量が現実的でなくなります。事案の重さで段を分けます。

区分 保存年限 年限の根拠
人身事故(死傷が発生) 5年+係争中は解決まで延長 民法724条の2の消滅時効、交通事故証明書の申請期間
物損事故 3年+係争中は解決まで延長 民法724条1号、自賠法19条、交通事故証明書の申請期間
自損・軽微な接触(相手なし) 1年 社内の再発防止と車両修理の記録として
ヒヤリハット・苦情対応 1年(教材化したものは別管理) 安全教育のサイクルに合わせる
運送事業者の「事故の記録」に該当するもの 3年(人身は上記により5年) 貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の2、旅客自動車運送事業運輸規則26条の2

運送事業者の場合、ドラレコ映像の年限を、すでに義務がある他の記録の年限とそろえておくと管理が単純になります。

参考までに、貨物自動車運送事業輸送安全規則が定める主な保存期間は次のとおりです。

  • 第7条第5項の点呼の記録が1年
  • 第8条の業務の記録が1年
  • 第9条の運行記録計による記録が1年
  • 第9条の3第4項の運行指示書が運行終了の日から1年
  • 第9条の5第2項の運転者等台帳が3年
  • 第10条の指導監督の記録が3年
  • 第9条の2の事故の記録が3年

第9条の運行記録計による記録の対象は、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の普通自動車などです。

起算日をどこに置くか

時効の起算点は「損害及び加害者を知った時」ですが、社内規程でそこまで厳密に扱うと運用が回りません。事故発生日を起算日にし、示談成立日が後になる場合は示談成立日から数え直すという二段構えにしておくと、判断に迷いません。示談が長引いた事案ほど映像が必要になりやすいので、示談成立まではどの区分でも消さない、というルールを上乗せしておきます。

事故発生日を起算日にして台帳の保存期限に日付を入れ、示談成立まではどの区分でも消さず、示談成立日が後なら数え直す。年に1回、期限切れを抽出して安全担当と確認し、係争中や請求中は除く。削除したら台帳に廃棄日を記録し、行は残す
起算日は事故発生日と示談成立日の二段構え。消したことも台帳に残す

捨てるところまで手順にする

  • 事案台帳に「保存期限」の列を作り、登録時に日付を入れます。
  • 年に一度、期限が過ぎた事案を抽出し、削除してよいかを安全担当と確認します。係争中・保険金請求中のものは除外します。
  • 削除したら、台帳に廃棄日と担当者名を記録します。台帳の行そのものは残し、映像だけを消します。「あった映像を消した」ことの説明がつく状態を保つためです。
  • 物理媒体で保管していたものは、読み取れない形にしてから廃棄します。

長期保管は3-2-1と書き換わらない媒体で、1事案1枚にまとめると取り違えが減る

年限が決まったら、次はその年数のあいだ確実に読める置き方です。ここでSDカードのまま金庫に入れる運用に戻ってしまうと、最初の問題に逆戻りします。

基本の考え方は、データを3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つは別の場所に置く、いわゆる3-2-1です。具体的な組み方は3-2-1バックアップの実践で解説していますが、事故映像の場合はもう一段、性質の違う要件が加わります。あとから書き換えられていないことを説明できる置き方であることです。共有サーバーやクラウドストレージは、権限のある人が上書きも削除もできてしまいます。運用としては正しくても、証拠としての説明はしにくくなります。

そこで、一度書き込んだら内容が変わらない媒体を1本入れておくと、性質の異なる二重化になります。光ディスクはその役割に向いており、事案ごとに1枚焼いて封をしてしまえば、以後は「開封されていない」ことが目に見えます。書き込んだディスクを何年も読める状態に保つには置き方もかかわってきますので、DVD・CDの正しい保管方法も併せて確認してください。

ディスクにまとめるときの実務

当社でも、事故映像やドラレコ記録をまとめたいというご相談をいただきます。実務で役立つのは、次のような点です。

  • 1枚から注文できること。事案は1件ずつ発生します。まとめて何十枚も作る性質のものではありません。当社は基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位でお受けしています。
  • 盤面へのレーベル印刷。事案番号、車両番号、事故発生日、保存期限を盤面に印字しておくと、棚から取り出した時点で中身と期限がわかります。手書きラベルのような貼り替えも起きません。ケースと背表紙の印刷にも対応していますので、背表紙に事案番号を入れておけば、棚に並べたまま期限切れの事案を探せます。どちらも、印刷する画像を入稿してもらう形です。
  • メニュー画面とチャプター分け。前方カメラ・後方カメラ・車内カメラ、あるいは同じ日の複数の時間帯といった複数の映像を1枚に収める場合、映像の変わり目にチャプターを入れておくと、後日パソコンに不慣れな担当者や第三者が見るときに迷いません。チャプターの位置は、「チャプター分け」を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に時刻で入れます。再生できる形式への組み立て(オーサリング)は料金に含まれています。
  • 入稿はギガファイル便のURL。ギガファイル便の共有URLを、注文フォームに貼ってお送りいただけます。カードを郵送する必要はありません。
  • 納期。通常便のほか、お急ぎお届け(+1,500円/平日15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送)、特急お届け(+3,000円/平日15時までのご注文・ご入稿で翌日発送)、当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までのご注文・ご入稿、大阪市北区の店舗で受け取り)をご用意しています。保険会社への提出期限が迫っている場合にご利用いただけます。

なお、外部の業者に映像を渡すこと自体が、個人情報保護法第25条にいう委託にあたる場面があります。同条は、個人データの取扱いを委託する場合、委託先に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています。どの映像をどこまで外部に出すかは、社内で線を引いたうえでご判断ください。当社の作業内容や取扱いについてご確認が必要な場合は、ご注文前に相談・問い合わせフォームからお問い合わせください。

よくある質問

Q. ドラレコの映像は何時間で上書きされますか?

A. カードの容量、記録画質、カメラの台数で決まります。32GBのカードにフルHD・約12Mbpsで1台分を記録した場合、単純計算でおよそ6時間です。前後2カメラなら約3時間、64GBなら約12時間という見当になります。実際のビットレートは機種と画質設定で変わりますので、お使いの機種の取扱説明書にある記録時間の目安を確認し、社内の手順書に具体的な時間を書き写しておくことをおすすめします。衝撃検知で退避されたイベント記録も、専用領域が上限に達すると古いものから消える設計の機種があります。

Q. ドラレコの事故映像は、どれくらい保存しておけばよいですか?

A. 人身事故なら5年、物損事故なら3年を下限の目安にしてください。民法724条は不法行為の損害賠償請求権が損害及び加害者を知った時から3年で時効消滅すると定め、724条の2で人の生命または身体を害する場合は5年に読み替えられます。自賠法19条の被害者請求権も3年です。交通事故証明書の申請期間も人身5年・物件3年とされており、同じ長さでそろっています。示談が成立していない事案は、期限が来ても解決するまで延長する運用にしておくと安全です。

Q. 警察に映像を提出したら返してもらえますか?

A. 任意に提出した物は刑事訴訟法221条により捜査機関が領置でき、保管されます。返還の時期は捜査の進行によりますので、いつ戻るかを前提にした運用は避けてください。実務上は、提出する前に社内へ複製を残しておくことが要点になります。提出した物の名称、提出日、提出先の警察署名と担当者名を台帳に記録し、任意提出書などの控えを受け取れる場合は事案フォルダに一緒に保管しておくと、後日の説明がしやすくなります。

Q. 保険会社にはどの形式で映像を渡せばよいですか?

A. 担当者のパソコンでそのまま再生できる形が第一です。専用ビューアソフトでしか開けない独自形式のまま送ると、開けないという連絡で往復が発生します。MP4に変換した提出用ファイルと、専用形式の原本の両方を用意し、決定的な場面は静止画としても切り出して添えると伝わりやすくなります。あわせて、事故発生日時、車両番号、カメラの取り付け位置と向き、映像内の時刻表示が実時刻とずれていないかをメモに書いて渡してください。

Q. SDカードのまま保管しておいてはいけませんか?

A. 長期保管には向きません。フラッシュメモリは書き換え回数に限りがあり、通電せずに置いておくだけでもデータの保持能力が落ちていくと考えられています。数年後に読めない可能性を抱えたまま保管することになります。事務所のパソコンへ複製したうえで、3-2-1の考え方でデータを3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つは別の場所に置いてください。書き換えの起きない媒体を1本入れておくと、内容が変わっていないことの説明もしやすくなります。

Q. 他人が映っている映像を警察や保険会社に渡すのに、本人の同意は必要ですか?

A. 個人情報保護法27条1項は本人同意のない第三者提供を原則禁止したうえで、1号の法令に基づく場合、2号の人の生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意を得ることが困難な場合、4号の国の機関等の事務への協力が必要な場合などを例外としています。捜査機関への任意提出や、損害賠償の処理に必要な範囲での保険会社への提供は、これらで整理できる場面が多いと考えられます。ただし個別の判断になりますので、範囲が広い場合は弁護士にご相談ください。

Q. ヒヤリハット映像を社内研修で使ってもよいですか?

A. 外部提供とは別に整理が必要です。実務としては、顔とナンバープレートにぼかしをかけた教材用の別ファイルを作り、原本は事案フォルダから出さない運用が扱いやすくなります。日付や場所、運転者が特定できる情報も落としてください。誰の事故かがわかる状態で使うと、教育ではなく見せしめになり、運転者からの報告が上がりにくくなります。原本の閲覧権限は運行管理者と安全担当に限定しておくとよいでしょう。

Q. 運送事業者はドライブレコーダーの映像も3年保存しなければなりませんか?

A. 法令が保存を義務づけているのは映像そのものではなく、事故の記録です。貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の2は、乗務員等の氏名、車両番号、発生日時、発生場所、当事者の氏名、事故の概要、原因、再発防止対策を記録し、運行を管理する営業所で3年間保存するよう定めています。旅客自動車運送事業運輸規則26条の2も3年です。映像をこの記録に紐づけて一体で管理すれば年限の判断がぶれませんし、人身事故は5年に延ばしておくと時効の期間もカバーできます。

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  • プレスリリース1

この記事の目次

  1. 保存期間は「上書きまでの時間」ではなく年単位で決める|人身5年・物損3年が逆算の起点
  2. SDカードは記録媒体であって保存媒体ではない|32GB・フルHD1台なら単純計算で約6時間
  3. 事故直後は救護と警察への報告が先、映像の保全はその後で当日中に
  4. 抜き出す範囲は前後10分では足りない|原本は無編集で封印し、切り出しは別ファイルにする
  5. 提出先で形式を分ける|警察には原本、保険会社には再生できる形
  6. 映っている人への配慮は、警察・保険会社への提供と社内での上映でまったく別の話
  7. 保存年限は事案の種類別に3段で決め、人身5年・物損3年・ヒヤリハット1年
  8. 長期保管は3-2-1と書き換わらない媒体で、1事案1枚にまとめると取り違えが減る
  9. よくある質問

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