この記事の要点
- 設計図書は、建築士事務所が作成した日から15年保存します(建築士法第24条の4第2項、同施行規則第21条第4項・第5項)。業務の帳簿も、事業年度の末日で閉じた翌日から15年です(同第21条第3項)。
- 建設業者の帳簿と契約書などの添付書類は、目的物を引き渡したときから5年、発注者(宅地建物取引業者を除く)と結んだ新築住宅の工事は10年。下請を含むすべての建設業者にかかります(建設業法第40条の3、同施行規則第28条第1項)。
- 完成図と発注者との打合せ記録は、元請が引き渡したときから10年保存します。2025年12月12日からは見積書とその打合せ記録も加わり、こちらは下請も対象です(同施行規則第26条第5項・第28条第2項)。
- 新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は、引き渡した時から10年、請負人や売主が瑕疵担保の責任を負います。特約で20年まで延ばせます(住宅品確法第94条・第95条・第97条)。
- 残し方は、元のCADのファイルと図面のPDFを両方。保存先は2か所以上に分け、種類の違う媒体を使い、1か所は事務所の外に置きます。
設計図書の保存期間は、建築士事務所なら作成した日から15年です。建築士法第24条の4第2項と建築士法施行規則第21条第4項・第5項が、建築士事務所の開設者に、配置図や各階平面図、構造計算の図書、工事監理報告書などの保存を求めています。契約や報酬の額を書いた業務の帳簿も、事業年度ごとに閉じ、その翌日から15年です。
工事を請け負う側には、建設業法の決まりがあります。建設業者は営業所ごとに帳簿を備え、目的物を引き渡したときから5年(発注者と結んだ新築住宅の工事は10年)保存します。元請は、完成図と発注者との打合せ記録を、引き渡したときから10年。新築住宅では住宅品確法が、構造と雨水の浸入を防ぐ部分について、引き渡した時から10年の瑕疵担保の責任を定めています。
建築士法と建設業法の年数は、少なくともその期間は保存しなければならない、という決まりです。住宅品確法の10年は保存の決まりではなく責任を負う期間ですが、記録を残す期間を決めるときの目安になります。
住宅品確法の10年は保存の決まりではないが、記録を残す期間の目安になる
図面そのものは、元のCADのファイルと図面のPDFを両方、事務所の外も含めた2か所以上に残します。
保存期間の早見表|設計図書は15年、建設業の図書は10年
建築の記録にかかわる主な年数です。表の上の5行が建築士法と建設業法の保存の年数で、いちばん下の行は住宅品確法の瑕疵担保の期間です。
| 対象 |
年数と数え始め |
建築士事務所の 設計図書など |
15年 作成した日から |
建築士事務所の 帳簿 |
15年 事業年度の末日で 閉じた翌日から |
建設業者の 帳簿 |
5年 引き渡したときから |
発注者と結んだ 新築住宅の 工事の帳簿 |
10年 引き渡したときから |
完成図などの 営業に関する 図書 |
10年 引き渡したときから |
新築住宅の 瑕疵担保の 期間 |
10年 引き渡した時から 特約で20年まで |
建築士法の2つは建築士事務所の開設者に、建設業法の3つは建設業の許可を受けた建設業者にかかります。建築士事務所として設計し、建設業者として施工もする会社なら、1つの物件に両方の年数が重なります。数え始めが「作成した日」「事業年度の末日で閉じた翌日」「引き渡したとき」と分かれている点に気をつけてください。
税理士・社会保険労務士・行政書士・司法書士など、ほかの士業の帳簿と事件簿の保存期間は、士業の記録の保存期間の記事にまとめました。
建築士事務所の設計図書は、作成した日から15年(建築士法第24条の4)
建築士法第24条の4は、建築士事務所の開設者に2つの保存を求めています。第1項が業務の帳簿、第2項が業務に関する図書です。帳簿に何を書き、どの図書を残し、何年保存するかは、建築士法施行規則第21条が決めています。
保存する図書は、事務所の建築士が業務で作ったもの
対象は、その事務所に属する建築士が、事務所の業務として作成した図書のうち、次の表のものです(施行規則第21条第4項)。建築士法でいう設計図書は、工事の実施に必要な図面と仕様書を指します(第2条第6項)。保存が義務になっているのは、設計図書のうち表の上3行に挙げたものと、工事監理報告書などです。
| 図書 |
中身 |
| 図面 |
配置図 各階平面図 2面以上の立面図 2面以上の断面図 基礎伏図・各階床伏図 小屋伏図・構造詳細図 |
構造計算の 図書 |
構造計算で安全性を 確かめた建物のとき |
壁や継手の 確認の図書 |
木造の壁・筋かいの 配置や、継手・仕口 などの基準に合う ことを確かめる図書 (該当する建物のとき) |
| 工事監理報告書 |
工事監理を終えて 建築主に出す報告書 |
再エネ設備の 説明の書面 |
市町村の条例で決めた 建物を設計したとき (説明不要の書面も) |
数え始めは、図書を作成した日です(第21条第5項)。工事監理報告書は、工事監理を終えたときに建築主へ出す報告書なので(建築士法第20条第3項)、15年の数え始めは竣工のころになります。設計の途中で図面を直すことに備えて、図面ごとに作成や変更の日付を残しておくと、どの日から数えるかを後で確かめられます。
表のいちばん下は、建築物再生可能エネルギー利用促進区域の中で、市町村の条例が決めた用途と規模の建物を設計したときの書面です。建築士は建築主に、その建物に設置できる再生可能エネルギー設備を書面で説明します(建築物省エネ法第63条)。建築主から説明は要らないという意思表明の書面を受け取った場合は、その書面を、受け取った日から15年保存します。
設計の一部を別の事務所に頼んだときも、考え方は同じです。それぞれの事務所が、自分の事務所の建築士が作った図書を保存します。
帳簿は事業年度ごとに閉じて15年
帳簿は各事業年度の末日で閉じ、閉じた日の翌日から数えて15年保存します(第21条第3項)。たとえば3月末で事業年度が終わる事務所なら、2027年3月31日に閉じた帳簿は、4月1日から数えて2042年3月31日まで残します。
帳簿には、次の事項などを書きます(第21条第1項)。
- 契約の年月日
- 契約の相手方
- 業務の種類と概要
- 業務の終了の年月日
- 報酬の額
- 業務に従事した建築士・建築設備士の氏名
- 業務の一部を委託したときの委託先
帳簿の事項は、パソコンのファイルに記録してもかまいません。必要なときに事務所で機器を使い、紙に明確に表示できることが条件です(第21条第2項)。
2007年6月20日から15年に
建築士事務所の図書と帳簿の保存期間は、以前は5年でした。2007年6月20日に施行された省令(平成19年国土交通省令第66号)で、どちらも15年に延びています。国土交通省の住宅局長の通知(技術的助言)は、建築士事務所の図書の保存期間を、設計図書の作成日から15年に延ばしたと説明していました。そのうえで、施行の時点で5年を過ぎていない図書も、15年が経つ日まで保存するよう求めていました。古い資料に「5年」とあれば、この改正より前の年数です。
2026年7月31日に公布された建築士法の改正(令和8年法律第74号)は、試験の受験資格や、契約の書面と見積書についての見直しで、この保存の決まりには手を入れていません。
古い資料に「5年」とあれば、2007年の改正より前の年数
工務店など建設業者の帳簿は5年、完成図などの図書は10年(建設業法第40条の3)
建設業法第40条の3は、工事を請け負う建設業者に、営業所ごとに帳簿を備えて保存すること、あわせて営業に関する図書を保存することを求めています。中身と年数は、建設業法施行規則の第26条から第28条にあります。数え始めはどちらも、請け負った工事ごとに、目的物を引き渡したときです。
条文でいう「建設業者」は、建設業の許可を受けて営む者のことです(建設業法第2条第3項)。許可を受けていない事業者はこの条文の対象に入りませんが、後で見る住宅品確法は、許可の有無にかかわらず、住宅の新築工事の請負人にかかります。
帳簿と契約書は、引き渡したときから5年
帳簿に書くのは、営業所の代表者、注文者と結んだ請負契約、下請負人と結んだ下請契約などです(施行規則第26条第1項)。請負契約について書くのは、工事の名称と現場の所在地、契約日、注文者、完成検査の日、引き渡した日です。
帳簿には、契約書かその写しなどを添えます(第26条第2項)。保存は工事ごとに、目的物を引き渡したときから5年で、注文者との請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、消滅したときから数えます(第28条第1項)。
発注者と結んだ新築住宅の工事の帳簿は、10年になります。ここでいう発注者は、ほかから請け負ったのではない工事の注文者で(建設業法第2条第5項)、宅地建物取引業者は除かれます(施行規則第26条第1項第3号・第28条第1項)。施主から直接請け負った新築住宅の元請が10年で、宅地建物取引業者から請け負った新築住宅の工事は5年の扱いです。
帳簿の決まりは、下請も含めて、許可を受けたすべての建設業者にかかります。国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版・2026年1月)も、帳簿や添付書類が5年間保存されていなかった場合を、第40条の3に違反する例に挙げています。
営業に関する図書は、元請と下請で範囲が違う
帳簿とは別に保存する「営業に関する図書」は、請け負い方によって範囲が変わります(施行規則第26条第5項)。年数はどれも、目的物を引き渡したときから10年です(第28条第2項)。
| 建設業者 |
保存する図書 |
発注者から 直接請け負った 元請 |
完成図 発注者との打合せ記録 見積書と その打合せ記録 |
施工体系図を 作る元請 |
上の4つと 施工体系図 |
下請など それ以外 |
見積書と その打合せ記録 |
完成図は、施工のために作ったものか、発注者から受け取ったものが対象です。打合せ記録は、工事の内容について発注者と打ち合わせた記録のうち、契約の当事者どうしが互いに渡したものに限られます。
施工体系図は、施工体制台帳を作る決まりのある工事の元請、施行規則でいう「作成建設業者」だけの図書です。施工体制台帳を作る工事として、国土交通省のガイドラインは、公共工事で下請契約を結んだ場合と、それ以外の工事で下請契約の総額が政令の額以上になる場合を挙げています。
保存する見積書は、工事の種別ごとの材料費・労務費などの内訳と、工程ごとの日数を書いた「材料費等記載見積書」です(建設業法第20条第1項)。作ったときに、その見積書を残します。契約の前に、その内容を注文者と打ち合わせた記録も含まれ、こちらも当事者どうしが互いに渡したものに限られます。
見積書とその打合せ記録の2つは、2025年12月12日に施行された改正で加わり、下請を含むすべての建設業者が対象になりました。完成図・発注者との打合せ記録・施工体系図は、いまも発注者から直接請け負った元請だけの決まりです。
工事写真は、この図書の一覧には入っていません。それでも、基礎の配筋や金物、防水、断熱のように完成後は隠れる部分は、後から目で確かめられず、写真が当時の施工を示す手がかりになります。
新築住宅の瑕疵担保は、引き渡した時から10年(住宅品確法)
住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)第94条第1項は、住宅を新築する工事の請負契約について定めています。請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、担保の責任を負います。新築住宅の売買でも、売主は買主に引き渡した時から10年です(第95条第1項)。売主が請負人から引き渡しを受けた住宅なら、その引き渡しの時から数えます。
期間を縮めるなど、この決まりに反して注文者や買主に不利な特約は無効です(第94条第2項・第95条第2項)。反対に、引き渡した時から20年以内までなら、特約で延ばせます(第97条)。国土交通省も、新築住宅の売主等は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任を負うと説明しています。
| 部分 |
施行令第5条の中身 |
構造耐力上 主要な部分 |
基礎・基礎ぐい 壁・柱・小屋組・土台 斜材(筋かいなど) 床版・屋根版 横架材(はり・けた) |
雨水の浸入を 防止する部分 |
屋根・外壁 開口部に設ける 戸・枠などの建具 雨水の排水管のうち 屋根・外壁の中と 屋内にある部分 |
構造耐力上主要な部分は、表の部材のうち、住宅の重さや積雪、風圧、地震などを支えるものです。売買で「新築住宅」にあたるのは、まだ人が住んだことがなく、工事の完了から1年を過ぎていない住宅です(第2条第2項)。
表の部分の多くは、完成すると壁や床、屋根の中に隠れます。10年のあいだに雨漏りや傾きの相談を受けたとき、どの材料でどう施工したかを示せるのは、図面と工事写真、使った材料の記録です。保存の決まりがある図書に加えて、これらも引き渡しから少なくとも10年は取り出せるようにしておくと、相談に答えやすくなります。
長期優良住宅の記録は、認定を受けた人が作って残す
長期優良住宅の認定を受けた住宅では、長期優良住宅法第11条第1項が、認定を受けた人(認定計画実施者)に、建築と維持保全の状況の記録を作って保存するよう求めています。記録に入れるのは、認定の内容、申請のときの添付図書に示した事項、維持保全をした日と内容などです(同法施行規則第16条)。条文に保存の年数は書かれていません。
国土交通省によると、認定を申請するのは建築主か分譲事業者です。認定を受けた人は、所管行政庁から建築・維持保全の状況の報告を求められたとき、作って保存している記録を出すなどして報告します。注文住宅で施主(建築主)が認定を受けたなら、記録を作って残すのは施主です。施工した会社が、図面や工事の記録を引き渡しのときにそろえて渡しておくと、施主が記録を作る手間が減ります。
紙の図面をPDFにして保存してもよいか
建築士事務所の図書は、電子の記録で保存できます。書面の保存を電子で行えるようにする法律(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)第3条第1項と、国土交通省の施行規則(平成17年国土交通省令第26号)の別表第一に、建築士法第24条の4第2項が入っているためです。
方法は、パソコンで作ったファイルをそのまま保存するか、紙の図面をスキャナで読み取ったファイルを保存するかのどちらかです。どちらの場合も、必要なときに、すぐ画面に表示して紙に出せるようにしておきます(同規則第4条)。
建設業者の帳簿・添付書類・営業に関する図書も、ファイルで保存できます(建設業法施行規則第26条第6項〜第8項。添付書類はスキャナで読み取る方法も可)。条件は、必要に応じて営業所でパソコンなどを使い、紙や画面に明確に表示できることです。国土交通省のガイドラインも、帳簿・添付書類・図書は電磁的記録によることも可能としています。
保存期間を過ぎた記録は、使い道を決めて整理する
建築士法と建設業法の年数は、どちらも「その期間は保存しなければならない」という決まりです。期間が過ぎたあとの扱いは、建築士法にも建設業法にも書かれていません。瑕疵担保の期間を特約で延ばした住宅なら、延ばした期間に合わせて、記録を残す期間も決めておきます。修理や増改築の相談で図面を使う見込みがあるなら、その見込みも期間に入れて考えます。
一方で、図面や契約の記録に載るのは、施主の氏名や住所、間取りです。個人情報保護法第22条は、個人情報取扱事業者に、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めています。法令の年数を過ぎた記録は、何のために、いつまで残すかを社内で決めておき、残すものは置き場所と見られる人を管理してください。媒体の保管から廃棄までの扱いは、個人情報の入ったUSBメモリ・DVDの管理の記事にまとめました。
図面や契約の記録には施主の氏名や住所が載る。何のために、いつまで残すかを決める
図面は、元のCADとPDFの両方で残す
図面のデータは、元のCADのファイルと、図面を書き出したPDFを両方残します。CADのファイルは、修理や増改築のときに図面を直して使うための元です。ただ、十数年たったとき、同じソフトの同じ版が事務所のパソコンに入っているとは限りません。PDFなら、CADのソフトが無いパソコンでも、PDFを開くソフトがあれば中身を見られます。書き出すときに用紙の大きさと縮尺を図面どおりにしておくと、後で印刷しても寸法を追えます。
引き渡しのときに、1件ごとのフォルダへまとめておきたいものの例です。
- 確定版の図面一式(CADのファイルとPDF)。変更があったなら、最終の版がどれか分かる名前に
- 構造計算の図書と、工事監理報告書
- 確認申請と検査の書類の写し
- 工事写真。基礎の配筋、金物、防水、断熱など、完成後に隠れる部分を工程ごとに
- 発注者との打合せ記録、見積書、契約書の写し
- 使った材料と設備の品番、保証書、取扱説明書
ファイル名には、物件名か工事番号、図面の番号、作成日や版を入れておくと、担当者が替わっても探せます。クラウドの施工管理サービスに写真や記録を置いているなら、引き渡しのときに書き出して、自社の保存先にも入れておきます。解約したあとに記録を取り出せるかどうかも、規約で確かめておいてください。
保存先は2か所以上、種類を分けて1か所は事務所の外に
保存先は1か所に頼らず、2か所以上に分けます。米国の政府機関US-CERT向けにまとめられたバックアップの手引きは、次の「3-2-1」を勧めています。
- 大事なファイルを、元と2つのバックアップの3つ持つ
- 2種類の違う媒体に分ける
- 1つは事務所の外に置く
1つを事務所の外に置くのは、事務所が火事や水害にあえば、中にある保存先がまとめて失われるからです。組み方の例は、写真・動画の長期保存はクラウドとDVDのどっち?|3-2-1バックアップの組み方で紹介しました。
事務所のNASやHDDは、ふだんの出し入れがいちばん楽な保存先です。ただ、NASのRAIDは、中のHDDが1台使えなくなっても読めるようにする仕組みで、別の場所に置いた複製の代わりにはなりません。バッファローは、RAIDを組んだ製品の中のHDDは同じ時期に寿命を迎えることが想定される、と説明しています。交換したあとの再構築(リビルド)の負荷で、劣化した別のHDDが使えなくなることもある、としています。
クラウドは、事務所の外に置く1か所になります。預けた記録を取り出せるのは、契約とアカウントが続いているあいだです。支払いの方法や管理者のアカウントは、担当者が替わっても引き継げるようにしておきます。
BD-RやM-DISCのように書き換えのできないディスクは、確定した竣工の記録を閉じて残すのに向きます。US-CERT向けの手引きも、書き換えのできないディスクのデータは、誤って消されることも、あとから元のファイルに起きた破損やマルウェアを引き継ぐこともない、としています。ネットワークから切り離した複製を持つ意味は、ランサムウェア対策のオフラインバックアップの記事で説明しました。
3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つは事務所の外に置く
ディスクが何年もつかは、製品と置き場所で変わります。記録用のブルーレイには、色素を使う有機のものと使わない無機のものがあると、M-DISCの開発元も説明していますが、無機だから長くもつとは限りません。M-DISCは、開発元が写真や文書などを「1,000年以上」残せるとうたうディスクで、その根拠は寿命を推定する国際規格の試験です(M-DISCとは)。
種類ごとの寿命の目安はCD・DVD・ブルーレイの寿命は何年かに、HDDやクラウドとの比べ方はHDD・SSD・USBメモリ・光ディスクの寿命比較にまとめています。
ディスクで残すなら、読むためのドライブも手元に残してください。媒体の側も変わっていて、ソニーは記録用のブルーレイディスクの生産を2025年2月で終えました(後継機種なし)。しまっておく保存先は、年に一度など時期を決めてファイルが開けるかを確かめ、読めるうちにそのときの保存先へ移します。ディスクの置き方と温度・湿度の目安はDVD・CDの正しい保管方法に書きました。
引き渡しまでに記録を閉じる手順
引き渡しの後にまとめて片づけるより、工事の流れに合わせて閉じていくほうが、抜けに気づけます。
- 着工のときに、1件ごとのフォルダの形を決める(図面、申請と検査、工事写真、打合せ記録、材料と設備、引き渡し)
- 工事写真は、撮った人の端末に残さず、その日のうちに案件のフォルダへ移す
- 竣工図を確定したら、CADのファイルとPDFを同じフォルダに入れ、最終の版に印を付ける
- 引き渡しの日を台帳に書き、図書ごとに保存期間が終わる年を書き添える
- フォルダを事務所の保存先と事務所の外の保存先に入れ、ディスクに残すなら正副2枚を別の場所に置く
- 年に一度など時期を決め、しまっておく保存先から実際にファイルを開いて確かめる
竣工の記録動画を、施主に渡すDVD・ブルーレイにする
完成見学のときの映像や空撮など、竣工の記録を動画でも撮っているなら、施主に渡すDVDやブルーレイにする方法があります。当社(ディスクメーカー・大阪市北区梅田)は、動画ファイルからプレーヤーで再生できるDVD・ブルーレイを1枚から作る小さな店です。自社で撮影した動画を上げたギガファイル便のURLを注文フォームに貼っていただければ、再生できる形に組み立てて書き込みます。実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか店舗でお渡しします。
空撮の素材の扱いはGoPro・ドローンの動画をDVD・ブルーレイにする方法に書きました。テレビで見る映像のディスクと、図面や写真を入れるデータのディスクの違いは、データDVDと映像DVDの違いにまとめました。
よくある質問
Q1. 設計図書の保存期間は何年ですか?
建築士事務所なら、作成した日から15年です(建築士法第24条の4第2項、同施行規則第21条第4項・第5項)。対象は、事務所の建築士が業務として作った配置図・各階平面図・2面以上の立面図と断面図・基礎伏図・各階床伏図・小屋伏図・構造詳細図、構造計算の図書、工事監理報告書などです。2007年6月20日に施行された省令より前は、5年でした。
Q2. 建築士事務所の帳簿は、いつから15年を数えますか?
各事業年度の末日で帳簿を閉じ、閉じた日の翌日から数えて15年です(建築士法施行規則第21条第3項)。3月末で事業年度が終わる事務所なら、2027年3月31日に閉じた帳簿は2042年3月31日まで保存します。帳簿には、契約の年月日と相手方、業務の種類と概要、業務の終了の年月日、報酬の額、従事した建築士の氏名などを書きます。
Q3. 工務店は、完成図を何年保存すればいいですか?
建設業の許可を受けていて、発注者から直接請け負った工事なら、完成図と発注者との打合せ記録を、引き渡したときから10年保存します(建設業法第40条の3、同施行規則第26条第5項・第28条第2項)。帳簿と契約書などは5年で、発注者と結んだ新築住宅の工事は10年です。建築士事務所として設計もしているなら、設計図書には建築士法の15年もかかります。
Q4. 下請の業者にも、帳簿や図書を保存する決まりはありますか?
あります。帳簿と添付の契約書などは、下請を含むすべての建設業者が、引き渡したときから5年保存します。営業に関する図書のうち、完成図・発注者との打合せ記録・施工体系図は元請だけの決まりです。2025年12月12日からは、材料費等記載見積書を作ったときの見積書と、その内容の打合せ記録が下請も対象になり、引き渡したときから10年保存します。
Q5. 紙の図面をスキャンしてPDFで保存すれば、紙は要りませんか?
建築士事務所の図書は、書面の保存を電子で行えるようにする法律と国土交通省の施行規則により、スキャナで読み取ったファイルで保存できます。必要なときに、すぐ画面に表示して紙に出せることが条件です。建設業者の図書や帳簿の添付書類も、建設業法施行規則でファイルでの保存が認められています。紙の原本を手放すかどうかは、契約書などほかの書類の扱いも合わせて社内で決めます。
Q6. 新築住宅の瑕疵担保の10年は、いつから数えますか?
請負なら、請負人が注文者に引き渡した時から10年です(住宅品確法第94条第1項)。売買なら売主が買主に引き渡した時からで、売主が請負人から引き渡しを受けた住宅は、その時から数えます(第95条第1項)。対象は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分で、特約で引き渡しから20年以内まで延ばせます(第97条)。
Q7. 保存期間を過ぎたら、図面は捨ててもいいですか?
建築士法と建設業法は保存しなければならない期間を決めていますが、過ぎたあとの扱いは決めていません。瑕疵担保を特約で延ばした住宅は、その期間に合わせて残します。図面に載るのは、施主の氏名や住所、間取りです。個人情報保護法第22条は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めているので、使い道を決めてから、残すか消すかを判断します。
Q8. 長期優良住宅の記録は、工務店が保存するのですか?
長期優良住宅法第11条第1項で記録を作って保存するのは、認定を受けた人(認定計画実施者)です。国土交通省によると、認定を申請するのは建築主か分譲事業者なので、注文住宅で施主が認定を受けたなら、記録を残すのは施主です。記録には申請の添付図書に示した事項や維持保全の内容が入るので、図面や工事の記録を引き渡しのときにそろえて渡しておくと役に立ちます。
Q9. 設計と施工の両方をする会社は、何年に合わせればいいですか?
建築士事務所として作った設計図書は、建築士法で作成から15年。建設業者としての完成図などの図書は建設業法で引き渡しから10年、建設業の帳簿は5年(新築住宅の元請は10年)と、それぞれの決まりがかかります。1件ごとの図面や記録をまとめて残すなら、長いほうの15年を引き渡しから数えて社内の決まりにしておくと、書類ごとに期限を調べずに済みます。建築士事務所の帳簿は事業年度ごとに数え、瑕疵担保を延ばした住宅は延ばした期間が目安です。
Q10. 建築図面のデータを、DVDやブルーレイに保存してもいいですか?
保存先の1つとして使えます。BD-Rのように1回だけ書き込めるディスクは、誤って消したり、あとから元のファイルに起きた破損を引き継いだりしない点が、US-CERT向けの手引きでも挙げられています。何年もつかは製品と置き場所で変わるので、ディスクだけに任せず、HDDやクラウドにも複製を置いて、ときどき読めるかを確かめてください。読むためのドライブも、手元に残しておくと安心です。
参考にした公式の情報
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法律の条文や国土交通省の説明は、改正で変わります。この記事は、2026年9月25日時点で施行されている法令と、各公式ページの記載をもとにしたものです。個別の契約や事情の判断に迷うときは、所管の行政庁や弁護士などの専門家に確かめてください。
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