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AI生成画像を映像に使うときの整理|規約・著作権・表示の実務

2026 9/28
AI生成画像を映像に使うときの整理|規約・著作権・表示の実務

この記事の要点

  • AI画像を使えるかどうかは、サービス規約・著作権・表示という性質の違う3つの問いが重なっているため、分けて確認しないと判断を誤ります。
  • 著作権侵害が成立するのは類似性と依拠性の両方がそろったときだけで、これは文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)の整理です。
  • 利用者が既存の著作物を知らなくても、学習段階でその著作物が使われていれば依拠性は推認されると整理されており、知らなかったことだけでは止まりません。
  • 文化庁のチェックリストは、生成自体は適法でも配信や複製物の譲渡は権利制限の範囲外になる場合が多いとしており、ディスク配布はこの段階にあたります。
  • 日本に一般的なAI表示義務はありませんが、YouTubeなど配信先には開示ルールがあり、規約でメタデータの除去を禁じるサービスもあります。

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映像の背景、タイトル画面、ディスクのレーベル面。生成AIで作った画像を差し込みたい場面は増えました。ただ、いざ使う段になると「商用利用OKと書いてあったから平気だろうか」「学習データの話が引っかかる」「AIで作ったと書くべきなのか」と、性質の違う不安が同時に来ます。しかもその不安は、動画をアップロードするときより、ディスクにして人に渡すときのほうが強くなるはずです。渡してしまったものは、あとから差し替えられないからです。

この記事では、AI生成画像を映像に使うときに確認することを、サービス規約・著作権・表示の3つに切り分けて整理します。判断の根拠は、文化庁 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)と、文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)を中心に置きました。どちらも公開されている資料です。

読み終えたときに、自分の案件について「どこまで確認すれば入稿してよいか」が決められる状態を目指します。法律の解説そのものより、手を動かす順番のほうを厚く書きました。

判断の順番|「規約」「著作権」「表示」は別の話で、まとめて考えると詰まる

AI生成画像を映像に使ってよいか、という問いは、実際には性質の違う3つの問いが重なっています。分けずに考えると「商用利用OKと書いてあったから大丈夫」という一点だけで結論を出してしまい、あとから別の方向で問題が出ます。

レイヤー 何に基づくか 外したときに起きること 確認先
サービスの利用規約 事業者との契約 アカウント停止、生成物の利用停止、契約上の責任 各サービスの規約ページ
著作権 著作権法 差止請求、損害賠償請求、刑事罰 文化庁の公開資料、必要なら弁護士
表示・開示 配信先のポリシー、取引先との約束 動画へのラベル付与や削除、納品後の説明トラブル 配信先ヘルプ、発注書・仕様書

この3つは独立して動きます。規約で商用利用が認められていても、生成された画像が既存の作品に似ていれば著作権の問題は別に起きます。逆に著作権上の懸念がなくても、規約が禁じている入力方法を使っていれば契約違反です。片方を確認しただけで安心してしまうのが、いちばんよくある詰まり方です。

文化庁のチェックリストも、AI利用者が陥りやすい誤解として「AI生成物の生成・利用に伴い、既存の著作物の著作権侵害が生じるかという問題と、AI生成物の著作物性の有無の問題とを混同する」ことを挙げています(3-1-1④)。「自分が作った画像だから自分のものだ」という話と、「他人の権利を侵していない」という話は、まったく別の判断です。

先に決めておくと後半が速くなること

  • その画像を最終的にどう使うか(社内検討だけか、配信するか、ディスクにして渡すか)
  • 誰に渡すか(不特定多数か、身内か、クライアントの納品物か)
  • 入力に他人の素材を入れるか(参考画像、ロゴ、既存キャラクター、実在人物の写真)

この3点が決まっていれば、規約を読むときも著作権を考えるときも見る場所が絞れます。逆にここが曖昧なまま調べ始めると、どの記述が自分に効くのか分からないまま時間が溶けます。

サービス規約で見るのは4か所|権利の帰属・商用の条件・入力の禁止・メタデータの扱い

規約を全文読むのは現実的ではありません。映像制作で効いてくるのは、だいたい次の4か所です。

1. 生成物の権利がどう扱われるか

「生成物の権利はユーザーに帰属する」と書くサービスもあれば、事業者側に一定の利用権を残すサービスもあります。後者の場合、自分が作った画像を事業者が広告や作例に使えることがあります。クライアント案件では、この一点が問題になることがあります。

2. 商用利用の条件

「商用利用可」の一言で終わらず、プランの種類、事業規模、生成物の再配布可否といった条件が付いていることがあります。無料プランと有料プランで結論が変わるサービスは珍しくありません。条件文のほうを読んでください。

3. 入力してよいものの制限

文化庁のチェックリストは、AI利用者が確認すべき情報のひとつとして利用規約を挙げ、「著作権侵害のおそれがある利用方法を禁止又は制限している場合があります(他人の著作物を入力することの禁止等)」と書いています(3-1-1③)。参考画像を放り込む運用をしている場合は、ここを読み飛ばさないほうがよいところです。

4. メタデータ・来歴情報の扱い

意外と見落とされるのがここです。たとえばCanvaのAI Product Terms(2026年6月26日更新時点)は、禁止行為として「Remove, alter, or disable any provenance or metadata tags from any AI-generated content」(AI生成コンテンツから来歴情報やメタデータのタグを除去・改変・無効化すること)と「Mislead anyone that the content generated by AI Products is human-generated」(AIが生成したコンテンツを人間が作ったものと誤認させること)を挙げています。同時に「You are solely responsible for evaluating the accuracy and appropriateness of all Outputs」として、出力の妥当性を判断する責任はユーザー側にあるとしています。

映像制作では、画像を編集ソフトに取り込んで書き出す過程で、こうしたメタデータが落ちる場合があります。除去を目的とした操作でなくても結果として消えることはあるため、規約が来歴情報の保持を求めているサービスを使うなら、書き出し後にタグが残っているか一度は確かめておくのが安全だと考えられます。

商用利用の可否は3層で決まる|サービス・入力素材・出力の使い道

「このAIは商用利用できますか」という質問は、答えが1つに定まりません。実際には次の3層すべてが通って初めて、商用の場面で使えます。

第1層:サービスが認めているか

これが規約の話です。前章の4か所を見れば足ります。ここが通らなければ先に進む意味がありません。

第2層:入力に使った素材に問題がないか

ここが見落とされやすい層です。テキストだけで生成した場合と、他人の画像を入力した場合とでは、考えることが変わります。

文化庁のチェックリストは、いわゆるImage to Imageで既存の画像を入力する場合について、入力に伴う複製は「情報解析して生成AIに対する生成の指示(プロンプト)とするためのもの」であり原則として著作権法第30条の4が適用されると考えられるとしています。ただし続けて、「入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる」といった目的で入力を行う場合は「享受」目的が併存している場合に当たるとして、同条が適用されない場合があるとし、その場合は権利者の許諾が必要になるとしています(3-1-3)。

つまり、他人のイラストを「こういう雰囲気で」と参考に入れるところまでと、「これに似せて」と入れるところの間に線があるという整理です。実務では、参考画像は自分で撮った写真や自分で描いたラフに置き換えるのがいちばん揉めません。

第3層:出力をどう使うか

同じ画像でも、社内で構成を検討するために画面に出すのと、ディスクにして配るのとでは、著作権法上の評価が変わります。ここは第7章で詳しく扱います。

層ごとに答えを書き出す

  • 第1層:使用サービス名、プラン名、商用可否の条項の位置
  • 第2層:入力に使った素材の出所(自分で用意した/他人のもの/なし)
  • 第3層:最終用途(社内検討/配信/複製物の頒布)

3行のメモで足ります。案件フォルダに残しておくと、後日クライアントから聞かれたときに調べ直さずに答えられます。

著作権侵害が成立するのは「類似性」と「依拠性」がそろったときだけ

AI画像の話になると「学習データに他人の絵が入っているから、生成物はすべてグレー」という受け止めをされることがあります。しかし著作権法の判断枠組みは、AIを使うかどうかで変わりません。

文化庁「AIと著作権に関する考え方について」は、既存の判例では「ある作品に、既存の著作物との類似性と依拠性の両者が認められる際に、著作権侵害となるとされている」とし、生成AIによる生成物についても、生成・利用段階で類似性および依拠性が認められれば、権利者は差止請求や損害賠償請求をし得ると整理しています。参照されている判例には、最判昭和53年9月7日(ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)などが挙げられています。

言い換えると、既存の著作物に似ていない生成物については、著作権法上は特段の許諾を要しないという整理になります。チェックリストも「既存の著作物との関係で『類似性』がないAI生成物については、その利用について、著作権法上、特段の許諾を得ることは不要です」と明記しています(3-1-5)。全部がグレー、という話ではありません。

「侵していないか」と「守られるか」は別の問題

もうひとつ、混ざりやすいのがAI生成物自体の著作物性です。著作権法上「著作者」は「著作物を創作する者」と定義されており、AIは法的な人格を持たないためこれに該当しない、と同資料は整理しています。AI生成物が著作物と判断される場合でも、著作者になるのはAIを利用して創作した人です。

そのうえで、著作物性は人間の「創作的寄与」の程度によって個別に判断されるとして、次の3つの要素が挙げられています。

  • 指示・入力(プロンプト等)の分量・内容。創作的表現を具体的に示す詳細な指示は創作的寄与があると評価される可能性を高める一方、長大でもアイデアにとどまる指示は判断に影響しない
  • 生成の試行回数。回数が多いこと自体は影響しないが、生成物を確認して指示を修正しながら試行を繰り返す場合は著作物性が認められることも考えられる
  • 複数の生成物からの選択。単なる選択行為自体は影響しない

また、人間がAI生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分については、通常、著作物性が認められると考えられるとしています。プロンプト一行で出した画像をそのまま納品物の中心に据えると、その部分は他人が真似しても止めにくい、という実務上の帰結になります。なお、これらの資料は考え方を示すもので、それ自体が法的拘束力を持つものではないと明記されています。

学習データ由来の懸念|知らない著作物でも、学習されていれば依拠性は推認される

依拠性は「元の作品を知っていて、それに基づいて作ったか」という要件です。人間が描く場合は、その作品に接する機会があったかどうかで推認されてきました。AIの場合はここが独特で、利用者が知らない作品に似たものが出てくることがあります。

文化庁の整理は、この場面を2つに分けています。

  • 利用者が既存の著作物を認識していた場合。生成AIを使って当該著作物の創作的表現を有するものを生成させたときは依拠性が認められ、著作権侵害が成立すると考えられる。例として、既存の著作物そのものを入力する場合や、既存の著作物の題号などの特定の固有名詞を入力する場合が挙げられている
  • 利用者は認識していなかったが、学習段階でその著作物が学習されていた場合。客観的に当該著作物へのアクセスがあったと認められることから、類似した生成物が生成された場合は「通常、依拠性があったと推認され」、著作権侵害になりうると考えられる

後者が、多くの人が漠然と不安に感じている部分の正体です。「知らなかった」だけでは依拠性の推認は覆らない、という整理になっています。ただし同資料は、学習された著作物の創作的表現が生成段階で出力される状態になっていないと法的に評価できる場合には、依拠性がないと判断される場合はあり得るとも書いています。

侵害が認められても、受ける措置は主観によって分かれる

措置 成立に必要なもの
差止請求 故意・過失を問わない
損害賠償請求 故意または過失が必要
刑事罰 故意が必要
不当利得返還請求 認識がなくても認められることがあり得る

実務的な意味はこうです。まったく知らずに似た画像を使ってしまった場合でも、「使うのをやめてください」「作ったものを廃棄してください」という請求は起こり得ます。金銭の請求まで進むかは別として、止められること自体は防げません。

だからこそ、公開や配布の前に確認する工程に意味があります。とくにディスクのように配ったあと回収が難しい形にする場合、確認は入稿前に終わらせておくべき作業になります。

似てしまう問題への対処|固有名詞を外し、公開前に画像で逆引きする

ここは考え方の話ではなく、手順の話です。文化庁のチェックリストは、AI生成物の利用に先立って既存の著作物と類似していないかを確認することが必要だとし、確認方法として「インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など」を挙げています(3-1-5)。やることは、そこまで大がかりではありません。

生成する前にやること

  • プロンプトから固有名詞を外す。作品名、キャラクター名、実在のアーティスト名、ブランド名が代表格です。チェックリストは、こうした特定の固有名詞の入力が「AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実」になり、依拠性が認められやすくなると書いています(3-1-7)
  • 参考画像は自分で用意したものに置き換える。他人の画像を入力する運用は、前述の享受目的の議論に踏み込みます
  • 作風を指定したいときは、固有名詞ではなく描写で書く。「1970年代の日本の観光ポスター風、太い輪郭線、色数を4色に抑えた」といった書き方なら、特定の作品を指していません

使う前にやること

  • Google画像検索の「画像で検索」に生成物を投げて、似たものが出ないか見る。完成形だけでなく、特徴的なモチーフを切り出して個別に投げると引っかかりやすくなります
  • キャラクターや意匠性の強い形を含む場合は、テキスト検索でも当たりを取る。「赤い帽子 配管工 キャラクター」のような、自分が意図せず寄せてしまった要素を言葉にして検索します
  • 結果を日付つきでメモに残す。「いつ、何で、どう確認したか」が残っていれば、後から説明できます

この確認は、盤面やジャケットに使う画像でとくに効きます。映像の中で数秒流れる背景と違い、レーベル面やジャケットの絵柄はパッケージの顔になり、静止画として長く人目に触れるからです。印刷用データの作り方はDVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方にまとめていますが、解像度やカラーモードを整える前に、まず絵柄そのものの確認を済ませておくと手戻りが減ります。

なお、チェックリストは依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれるとも書いています(3-1-7)。この控えの残し方は最後の章で扱います。

配布物に使うとき|生成が適法でも「複製物の譲渡」で権利制限の外に出る

ここが、映像をディスクにする人にとっていちばん効く論点です。文化庁のチェックリストは、生成と利用で判断が変わることを独立した項目として立てています(3-1-4)。

要旨はこうです。生成AIによる生成自体は、個人が私的使用の目的で生成する場合(著作権法第30条第1項)や、企業・団体等の内部において権利者から許諾を得て利用することを前提に検討の過程で生成する場合(同法第30条の3)は、これらの権利制限規定の範囲内であれば権利者の許諾なく適法に行えます。これに対して、AI生成物の利用、つまり「インターネットでの配信、複製物の譲渡等」については、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと考えられる、とされています。

DVDやBlu-rayを作って人に渡す行為は、この「複製物の譲渡」そのものです。同じ画像を使っていても、社内のモニターで確認していた段階と、ディスクにして配った段階とでは、評価の土俵が変わります。「考え方」本体も、生成時の複製が権利制限規定の範囲内であっても、生成物の譲渡や公衆送信といった利用時には権利制限規定の範囲を超える行為として著作権侵害となる場合があるため留意が必要だと書いています。

ディスクは差し替えが効かない

Webにアップした動画なら、問題が分かった時点で差し替えるか非公開にできます。ディスクは違います。渡した相手の手元に残り、こちらからは触れません。だから確認の締切は「公開したとき」ではなく「入稿する前」になります。

入稿前に見る5か所

  • 本編映像に使ったAI画像(背景、インサート、タイトルバック)
  • メニュー画面の背景。ディスク特有の要素で、忘れられがちです。動画データをそのまま焼いても再生機で再生できる形にはならず、オーサリングという組み立て工程でメニューやチャプターを作ります。この工程で使う静止画も同じ確認対象です
  • 盤面のレーベル印刷の絵柄
  • ジャケットと背表紙の絵柄
  • AI画像以外の要素。BGM、他人が撮った写真、企業ロゴ、映り込んだ人物。AIの話に集中していると、こちらの確認が抜けます

ディスクメーカーでは、動画データをお預かりして再生できる形に組み立てるところまでを基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)からの料金に含めており、オーサリング、盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けに対応しています。1枚から注文できるので、絵柄の確認が済んだ段階でまず1枚だけ作り、実物を見てから残りを発注するという進め方もできます(1枚から頼める小ロット対応)。

絵柄の差し替えが発生すると、その分だけ工程が後ろにずれます。納期に余裕がない案件では、確認を先に、入稿を後に、という順番を崩さないほうが安全です。納期の考え方はDVDを急いで作るときの締切と逆算にまとめています。

表示するかどうか|配信には開示ルールがあり、ディスクは自分で基準を決める

「AIで作りました」と書く義務があるのか、という問いには、場面によって答えが分かれます。

配信プラットフォームにはルールがある

YouTubeは、改変または合成されたコンテンツの開示をクリエイターに求めています。開示が必要な例として、実在の人物が実際には発言・行動していないことをそのように見せている場合、実際の出来事や場所の映像を改変している場合、実際には起きていない場面を現実のように見せるコンテンツを生成している場合が挙げられています。一方、非現実的な内容、美顔フィルタや色調整・背景ぼかしといった特殊効果、スクリプト作成やサムネイル制作などの制作支援は開示不要とされています。ラベルは説明欄に表示され、写真のようにリアルなAIコンテンツについては動画プレーヤーにも表示されます。

ここで注目したいのは、線の引き方が「AIを使ったかどうか」ではなく「実在するものを実在しない形で見せているかどうか」に置かれている点です。この基準は、配信以外の場面で自分の方針を決めるときにも使えます。

サービス規約側の要求

前述のとおり、Canvaは人間が作ったものと誤認させる行為と、来歴情報やメタデータのタグの除去・改変を禁止しています。表示を積極的に求めるというより、消したり偽ったりするなという方向の規定です。

技術面では、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)が、コンテンツの出所と編集履歴を示すオープンな技術標準を策定しており、Content Credentialsという仕組みをデジタルコンテンツの「栄養成分表示のようなもの」と説明しています。運営に関わる企業として、Adobe、Amazon、BBC、Google、Meta、Microsoft、OpenAI、Publicis Groupe、ソニーグループ、TikTok、Truepicが挙げられています。

ディスクの場合は自分で基準を作る

DVDやBlu-rayの配布物に、AI利用の表示を義務づける仕組みは日本にはありません。そのぶん、判断を自分で決める必要があります。次の3つで振り分けると迷いにくくなります。

  • 実在の人物・場所・出来事を扱っているか。扱っているなら表示する
  • 受け取る人が実写と受け取る見た目か。受け取るなら表示する
  • 取引や納品の対象か。文化庁のチェックリストは、AI生成物をライセンス契約等の取引の対象とする場合には、AIを利用したものであることやその著作物性について関係するステークホルダーに適切に説明することが求められるとしています(3-1-6)。クライアント案件はここに当たります

書き方は一行で足ります。「本作の映像の一部は生成AIを用いて制作しています」をジャケット裏かメニュー画面のクレジットに置く程度で、実務上は機能します。パッケージのどこに入れるかで見え方が変わるので、ケースの形状も含めて考えるならCD・DVDケースの種類と選び方も合わせて見ておくとよいと思います。

控えは3点セットで残す|規約・生成過程・確認記録を日付つきで

規約は改定されます。改定後の規約を読んでも、自分が生成した時点の条件は分かりません。数年後にクライアントから「あの映像のこの絵は大丈夫でしたか」と聞かれたとき、当時の条件を示せるかどうかは、控えを残したかどうかで決まります。

1. 規約の控え

  • サービス名とプラン名
  • 規約ページのURLと、自分が確認した日付
  • 規約に記載された更新日または版数
  • 該当する条項の本文(要約ではなく、そのまま)

ページをPDFに印刷して案件フォルダに置くのが手軽です。原文を短く引用したテキストも一緒に残しておくと、後から探しやすくなります。

2. 生成過程の控え

文化庁のチェックリストは、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれるとしています。あわせて、生成物の著作物性を関係者に説明する観点からもプロンプトを確認可能にしておくことが望まれると書いています(3-1-7)。守りと攻めの両方に効く控えです。

  • プロンプトの全文(要約や抜粋ではなく、投げた文字列そのまま)
  • 使用したサービス名とモデル名、生成した日時
  • 参考画像を入れた場合は、その画像と出所
  • 採用した生成物と、その後の加筆・修正の内容

3. 確認記録

  • 画像検索を実施した日と、使った検索手段
  • 検索結果で似たものが出なかったこと(またはどう対処したか)

この3つを1つのテキストファイルにまとめ、映像の元データと同じ場所に置いておきます。ディスクは長く手元に残る形式です。ディスクの寿命を考えると、10年単位で残ることも珍しくありません。控えのほうが先に消えると、あとから説明できなくなります。

制作を外部に頼む場合は、この控えの一部を業者側にも共有しておくと話が早くなります。ディスクメーカーでは、動画データや印刷用データをダウンロードできる共有URLでお預かりしており、ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなどをご利用いただけます。入稿時に「この絵柄はAI生成で、確認は済んでいる」と一行添えていただければ、こちらも確認の観点を合わせられます。

なお、ここで紹介した文化庁の資料は考え方や望ましい取組を示すもので、個別の案件についての判断を保証するものではありません。金額が大きい案件や、実在の人物・キャラクターに近い表現を含む案件では、弁護士に相談する判断も選択肢に入れてください。

よくある質問

Q. AIで生成した画像は商用利用できますか?
A. 使うサービスの規約が認めていれば、契約上は使えます。ただし規約が認めていることと、著作権上の問題がないことは別です。生成された画像が既存の作品に似ていれば、規約とは無関係に著作権の問題が起きます。確認は、サービスの規約、入力に使った素材の出所、そして最終的な使い道の3層に分けて行ってください。プランによって商用条件が変わるサービスもあるため、「商用利用可」の一言ではなく、その条件文まで読むことをおすすめします。

Q. AI生成画像に著作権はありますか?
A. 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、AIは法的な人格を持たないため著作者にはなれず、AI生成物が著作物と判断される場合の著作者はAIを利用して創作した人だと整理しています。著作物性は人間の創作的寄与の程度で個別に判断され、判断要素として指示の分量・内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択が挙げられています。人間が創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分については、通常、著作物性が認められると考えられるとされています。

Q. AI画像を使った動画をDVDにして配っても大丈夫ですか?
A. 生成した時点で問題がなくても、配る段階では別の評価になります。文化庁のチェックリストは、私的使用の目的での生成などは権利制限規定の範囲内で適法に行える一方、配信や複製物の譲渡といった利用は権利制限規定の範囲外となる場合が多いとしています。ディスクを作って渡す行為はこの複製物の譲渡にあたります。Webと違って配布後の差し替えができないため、確認は入稿前に済ませておくのが安全です。

Q. 映像やパッケージに「AI生成」と表示する義務はありますか?
A. 日本にディスク配布物への一般的な表示義務はありません。ただしYouTubeのように、実在の人物が実際にはしていないことをしているように見せる場合などに開示を求める配信プラットフォームがあります。またサービス規約側で、人間が作ったと誤認させる行為や、来歴情報の除去を禁止している例もあります。実在の人物や出来事を扱うか、受け手が実写と受け取るか、取引の対象かの3点で判断し、必要ならジャケット裏やメニュー画面に一行入れるとよいでしょう。

Q. 他人のイラストを参考画像としてAIに入力するのは問題ありますか?
A. 文化庁のチェックリストは、Image to Imageのような入力に伴う複製は情報解析のためのものとして原則は著作権法第30条の4が適用されると考えられるとしつつ、入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる目的で入力する場合は、享受目的が併存しているとして同条が適用されない場合があり、その際は権利者の許諾が必要になるとしています。またサービス規約が他人の著作物の入力を禁止している場合もあります。参考画像は自分で用意したものに置き換えるのが確実です。

Q. 生成した画像が既存作品に似ていないか、どうやって確認しますか?
A. 文化庁のチェックリストは、確認手段としてインターネット検索の活用を挙げています。実務では、Google画像検索の「画像で検索」に生成物を投げるのが基本です。完成形だけでなく、特徴的なモチーフを切り出して個別に投げると引っかかりやすくなります。あわせて、自分が寄せてしまった要素を言葉にしてテキスト検索でも当たりを取ってください。確認した日付と手段をメモに残しておくと、後から説明できます。

Q. 知らずに既存作品と似た画像を使ってしまった場合はどうなりますか?
A. 文化庁の整理では、利用者がその著作物を認識していなくても、学習段階で学習されていた場合は通常、依拠性があったと推認されるとされています。受け得る措置は主観によって分かれ、差止請求は故意・過失を問わず可能、損害賠償請求は故意または過失が必要、刑事罰は故意が必要とされています。つまり知らなかった場合でも、利用の停止や生成物の廃棄を求められることはあり得ます。配布物では回収が難しいため、事前確認の価値が大きくなります。

Q. プロンプトの控えは残しておくべきですか?
A. 残すことをおすすめします。文化庁のチェックリストは、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれるとしています。さらに、生成物の著作物性を関係者に説明する観点からも有用だとしています。プロンプトの全文、使用サービスとモデル名、生成日時、参考画像の有無、その後の加筆・修正内容をテキストにまとめ、映像の元データと同じ場所に保管してください。

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