この記事の要点
映像が保有個人データ に当たるかは、その人を手掛かりに探し出せる形で整理して持っているかどうかで分かれる。
開示を断れる事由は法第33条第2項の三つに限られ、該当部分を除いた残りは開示する のが原則の考え方になる。
第三者を外す作業は毎フレームの追跡と音声の処理 まで含み、原本を凍結して作業コピーで進めるのが安全。
交付方法は本人が請求した方法 が原則で、困難なときは理由を説明して代替方法を通知する必要がある。
手数料は実費を勘案した合理的な範囲 で、額を定めたなら本人が知り得る状態に置いておく。
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「先週の何時ごろ、自分が映っている映像を見せてほしい」。事業者や施設、学校の窓口や総務にこの一言が届いた瞬間から、担当者は法律の判断と映像編集の作業を同時に抱えることになります。応じる義務があるのか、他の来客や他の生徒が映り込んでいる部分をどうするのか、渡すならどんな形で渡すのか。どれも社内に前例がないまま、期限までの時間だけが気づかないうちに進みます。
応じる義務が生じるのは、その映像が「保有個人データ」に当たる場合です。当たるかどうかは、請求した人を手掛かりに、その人の映像を探し出せる形で整理して持っているかで分かれます。当たる場合でも、開示を断れるのは法第33条第2項の三つの事由に限られます。第三者が映り込んでいることは、その部分を処理する理由にはなっても、映像全体を渡さない理由にはならない、と整理するのが実務的です。渡し方は本人が請求した方法が原則で、期限は民間事業者なら「遅滞なく」、行政機関等なら開示決定等を30日以内に行うこととされています。
電磁的記録での交付を求められたときは、ディスクで渡す方法もあります。マスキング済みの映像を、相手の環境に左右されにくい形で、渡した記録を残しながら手渡したいという実務上の求めに、ディスクが合う場面があるためです。
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開示請求の対象になる映像|その人を手掛かりに探し出せる形で持っているもの 開示を断れる事由は三つだけで、該当部分を除いた残りは開示する 第三者を外すマスキングは毎フレームで行い、原本を凍結して工程を分ける 交付方法|本人が請求した方法が原則、長時間や複数カメラならディスクが確認しやすい 手数料は実費を勘案した合理的な範囲。額を定めたなら先に公表しておく 対応期限とスケジュール|民間は「遅滞なく」、行政機関等は30日以内・最大30日の延長 交付後は、渡した内容を再現できる控えを劣化しない条件で保管する よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
開示請求の対象になる映像|その人を手掛かりに探し出せる形で持っているもの
開示請求の対象になるのは、個人情報保護法が段階的に定義する情報のうち、いちばん内側の「保有個人データ」だけです。法は、特定の個人を識別できる情報を「個人情報」とし、そのうち検索できるよう体系的に構成したものを「個人情報データベース等」としています。さらに、事業者が開示や訂正、利用停止などを行う権限を持つものを「保有個人データ」と定義しています。
防犯カメラやビデオカメラで記録された映像については、個人情報保護委員会のQ&A(Q1-41)に考え方が示されています。特定の個人を識別できる映像であっても、特定の個人に関する映像を検索できるように体系的に構成されていなければ、個人情報データベース等には当たらない、としています。日時でしか遡れず、来訪者の名前からその人の映像を引き出す仕組みを持っていない録画装置は、この「当たらない」場合に当てはまることが多いと考えられます。
対象になりやすいのは、こういう持ち方をしているとき
顔識別機能を使い、顔の特徴データを本人と結び付けて登録している
事故やトラブルの報告書に、当事者名を付けて該当区間の映像を添付し保存している
入退室記録や会員IDと映像を突き合わせられる台帳を作っている
撮影した映像を氏名やクラス名でフォルダ分けし、後から呼び出す運用にしている
判定は理屈より手を動かすほうが早く済みます。請求してきた本人の氏名や会員番号を手掛かりに、自分たちの仕組みで実際にその映像へ辿り着けるかを試してみてください。辿り着けるなら、それは検索できるように整理して持っているということです。
なお、現行の条文では、保有個人データの定義に、短期間で消去するデータを除くという規定は置かれていません。上書き周期が一週間の機器で撮ったものであっても、検索できるように整理して持っていれば対象から外れるわけではない、という前提で動くのが安全です。
公立学校や自治体の機関は枠組みが変わります。これらは民間事業者に適用される規律ではなく、同じ法律の第五章「行政機関等の義務等」の規律に従い、開示請求の手続も対応期限も別に定められています。私立と公立で担当者の作業が変わってくるため、自分の組織がどちらのルールで動くのかを最初に確認してください。
公立学校や自治体の機関は、手続も期限も手数料も別のルールで動く
開示を断れる事由は三つだけで、該当部分を除いた残りは開示する
対象だと判定できたら、次は開示しないという選択肢が使えるかどうかです。法第33条第2項は、開示によって次のいずれかに当たる場合に、その全部または一部を開示しないことができると定めています。
本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
当該事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
他の法令に違反することとなる場合
ここで多くの担当者がつまずくのは、この三つを「映像は防犯設備に関わるから全部お断りできる」と読んでしまう点です。ガイドラインは、不開示事由に該当する部分を除いた部分については開示しなければならない、という部分開示の考え方を示しています。第三者が映り込んでいることは、その第三者が映っている部分を処理する理由にはなっても、映像全体を渡さない理由にはならない、と整理しておくのが実務的です。
第三者の映り込みは部分を処理する理由で、映像全体を渡さない理由にはならない
断るなら、支障の中身を具体的に書けるかを先に検討する
二つ目の「業務の適正な実施に著しい支障」を使う場合、書面に「防犯上の理由」と一言書くだけでは不十分です。書けるのは、その映像を渡すと何がどう推知され、その結果どんな支障が生じるのかという筋道です。カメラの死角や画角の範囲、警備の巡回間隔、現金の取扱手順が読み取れてしまうといった具体性がなければ、後から説明を求められたときに立ちゆかなくなります。判断は個別の事案ごとに行うもので、映像だから一律に断れるという扱いはできません。
開示しないと決めたとき、請求された保有個人データが存在しないとき、本人が請求した方法での開示が困難なときは、いずれも遅滞なくその旨を本人に通知する必要があります(法第33条第3項)。さらに法第36条は、その措置をとらない旨や異なる措置をとる旨を通知する場合に、本人へ理由を説明するよう努めなければならないと定めています。努力義務ではありますが、理由を書かない通知は苦情や紛争のきっかけになりやすく、書ける材料を整理してから通知したほうが、結果的に手間が減ります。
行政機関等の場合は、部分開示について第79条が置かれています。不開示情報に該当する部分を容易に区分して除けるときと、他人を識別できる部分を除けば権利利益が害されないと認められるときは、その部分を除いて開示することが定められています。この定めは、民間側が処理方針を組み立てるときの参考にもなります。
第三者を外すマスキングは毎フレームで行い、原本を凍結して工程を分ける
映像のマスキングが写真の加工と決定的に違うのは、対象が動くことと、時間の長さぶんだけ確認が必要になることです。三十分の映像を一度通して確認するだけで三十分かかります。作業時間は、編集そのものより検証のほうに多くかかる、と見積もっておいてください。
工程は七つに分け、それぞれ終わった時刻を記録する
録画装置から該当区間を書き出して原本を凍結し、以後は原本に触れない。作業は複製に対して行う
請求された日時、カメラ台数、前後の余白をどこまで取るかを決め、範囲を特定する
第三者の顔や識別できる部分にぼかしやモザイクを当て、移動に追従させる
他人の会話が入っている区間の音声を、ミュートまたは処理する
解像度とフレームレートを維持したまま書き出す
作業者以外の担当が等倍で通し再生して検証し、見落としをなくす
処理した箇所、担当者、日時、出力ファイルのハッシュ値などを台帳に記入する
原本を凍結する理由は二つあります。作業ミスからの復旧と、後から「加工前の映像はどうなっていたのか」を問われたときに示せる状態を保つためです。録画装置の中だけに置いておくと上書きで消えるため、書き出したうえで媒体と場所を分けて持っておくのが堅実です。保存先の分散については3-2-1バックアップの実践 の考え方がそのまま使えます。
追尾が外れる場所と、忘れられやすい情報
自動追尾のマスキングは、対象が柱の陰に入る、他の人とすれ違う、カメラが切り替わる、といった場面で外れます。外れた数フレームだけ素の顔が出る失敗は、二倍速の確認では見落とします。人が交差する瞬間と、映像の切り替わり点は、等倍で目視する箇所として台帳に明示しておくと漏れにくくなります。
顔以外にも識別につながる情報が残ります。名札、社員証、制服の刺繍、車両のナンバープレート、ガラスや鏡に映った像、画面内に映り込んだモニターや座席表、宅配伝票。音声については、他人の会話がそのまま入っていることに気付かないまま書き出してしまう例が起きます。映像だけを見て確認を終えず、音を切らずに一度通しで聞いてください。
追尾が外れる場面と顔以外の情報は、等倍で通して確かめる
書き出し設定では、解像度を落として顔を見分けにくくする処理に頼らないことです。全体の解像度を下げれば第三者は判別しにくくなりますが、同時に本人の映像も判別できなくなり、何を開示したのか分からない成果物になります。ぼかしは対象領域に限定して当て、それ以外は元の画質を保つ。出力は再生環境を選びにくいMP4(H.264)を基本にしておくと、この後の交付方法の選択肢が狭まりません。
交付方法|本人が請求した方法が原則、長時間や複数カメラならディスクが確認しやすい
交付方法は事業者が一方的に決めるものではなく、本人が指定でき、事業者はその方法で開示するのが原則です。法第33条第1項は、本人が電磁的記録の提供による方法その他の規則で定める方法による開示を請求できると定めています。施行規則第30条は、その方法として電磁的記録の提供による方法、書面の交付による方法、その他当該事業者の定める方法を挙げています。
ただし、請求された方法での開示が困難な場合の例外も用意されています。技術的に困難であるなどの合理的な理由があるときは別の方法によることができ、その場合は本人にその旨を通知し、理由を説明して代替方法を提案するという流れになります。指定されたファイル形式に対応できないときも同じ考え方です。
方法ごとの向き不向き
方法
向いている場面
注意点
窓口での閲覧
短時間、内容の確認だけで足りる
撮影の可否を先に決めておく
ダウンロードURL
ファイルが小さく、相手がPCに慣れている
期限切れ、受け取れないという申立てが起きやすい
メール添付
数十MB程度まで
誤送信のリスク、容量制限
USBメモリ
容量が大きく、渡す相手が限られる
相手のPC環境に依存する
DVD・ブルーレイ
長時間、複数カメラ、PCを使わない相手
再生できる形式に組み立てる工程が要る
ディスクを選ぶ理由は画質ではなく、確認のしやすさと記録の残りやすさにあります。テレビとプレーヤーだけで再生でき、配達記録や受領印で「いつ何を渡したか」が残り、複数のカメラや時間帯をメニュー画面とチャプターで分けておけば、相手が目的の場面へ直接たどり着けます。
一方で、編集ソフトから書き出した動画ファイルをそのままディスクに書き込んでも、家庭用プレーヤーでは再生できません。DVDオーサリングとは何か(焼くだけでは再生できない理由) を押さえたうえで作業を発注してください。
容量の見当も先に付けておきます。DVDは片面一層で4.7GB、ブルーレイは一層25GBで、複数台のカメラを長時間ぶん収めるならブルーレイのほうが分割せずに済みます。相手がブルーレイの再生環境を持っているかは分からないため、そこは請求者に確認してから決めるのが確実です。判断材料はDVDとブルーレイの違い に整理してあります。
ディスク化を外部に頼むときは、渡すデータの範囲を先に決める
ディスク化を外部に頼むことは個人データの取扱いの委託に当たり、委託先を監督する義務が生じます(法第25条)。実務上いちばん確実な線引きは、マスキングと検証を自組織で終えてから、完成した映像だけを渡すことです。未処理の原本を業者に送って「ここを消しておいてください」と依頼する形にすると、第三者の情報をそのまま外部に出すことになります。
当社(ディスクメーカー、運営は株式会社プラスカルチャー)でお引き受けする場合も同じ前提で、受け付けるのは完成した動画のデータです。入稿は、ギガファイル便のURLでお送りいただきます。当社では、届いたデータを再生できる形式に組み立てる作業(オーサリング)まで行います。
料金は基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)からで、1枚だけのご注文にも対応しており、オーサリングは料金に含まれます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも、オプションで対応しているので、カメラ別・時間帯別にチャプターを切った状態でお渡しできます。盤面の印刷は、受付番号や交付日も入れた画像を入稿してもらう形です。
通常便は受付から5営業日で発送します。納期は、通常便のほかに、短納期のオプションを三つご用意しています。お急ぎお届け(内容1種類につき)は+1,500円で、平日15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送します。特急お届け(内容1種類につき)は+3,000円で、平日15時までのご注文・ご入稿で翌日発送です。当日店舗お渡し(内容1種類につき)は+3,500円で、平日12時までのご注文・ご入稿で、大阪市北区の店舗でお渡ししています。期限が迫っている場合の組み立て方はDVDを急いで作るときの締切と逆算 もあわせてご覧ください。
手数料は実費を勘案した合理的な範囲。額を定めたなら先に公表しておく
法第38条第1項は、利用目的の通知を求められたときと開示の請求を受けたときに、その措置の実施に関して手数料を徴収できると定めています。第2項は、その額を実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において定めなければならないとしています。個人情報保護委員会のQ&Aでも、開示の手数料で利潤を得ることは想定されておらず、実費相当額にとどめる趣旨が示されています。
実費として積める費目と、積みにくい費目
積みやすい:ディスクやUSBなど媒体の代金、郵送料、書留や配達記録の料金、印刷代
実費の範囲で説明が必要:マスキングと検証にかかった作業時間ぶんの人件費
積みにくい:設備の減価償却、平常の管理コスト、対応の手間賃という名目の上乗せ
もう一つ、金額そのものより重要なのが「先に決めて示しているか」です。法第32条第1項では、次のことを本人の知り得る状態に置くことが求められます。
事業者の氏名または名称および住所
代表者の氏名
すべての保有個人データの利用目的
開示等の請求等に応じる手続など
手数料の額を定めたときは、その額も、この手続の一部として示すことになります。プライバシーポリシーに手続だけ書いて金額を書いていない状態で、請求を受けてから「実費で三万円かかります」と伝える運びは、たとえ計算が正しくても紛争になります。
映像の開示は、書面の写しを送るのと比べて作業時間の幅が大きく、事前に一律の額を決めにくい領域です。実務的には、基本額(受付と媒体、送料)を定額で公表しておき、処理に要する時間に応じた加算の考え方と単価もあわせて示しておくと、請求を受けた時点で見積もりを提示できます。本人は、その見積もりを見て、請求を続けるかどうかを判断できます。
行政機関等は扱いが異なり、法第89条が、国の行政機関は政令、地方公共団体の機関は条例で、いずれも実費の範囲内で額を定めると規定しています。独立行政法人等および地方独立行政法人は、実費の範囲内で、それぞれ政令または条例の額を参酌して自ら定め、その定めを一般の閲覧に供することとされています。公立学校の担当者は、自分の判断で金額を決めるのではなく、設置者の条例と規程を確認してください。
対応期限とスケジュール|民間は「遅滞なく」、行政機関等は30日以内・最大30日の延長
民間事業者に何日以内という法定の日数はなく、法は「遅滞なく」開示することを求めています。Q&Aでも、対象データの検索や集約に相応の期間を要する場合があることが前提とされています。逆に言えば、作業に時間がかかる事情があること自体は問題になりにくく、放置していたと見られる空白の期間があることが問題になります。受付日、途中経過の連絡日、交付日を記録に残す運用にしておいてください。
受付から交付までの組み方(民間事業者の目安)
時点
やること
受付当日
該当区間を録画装置から書き出して隔離する。上書きされる前の確保を最優先にする
受付当日〜数日
本人確認、請求内容(日時・場所・希望する交付方法)の特定、対象該当性の判定
判定後すぐ
手数料の見積もりと概ねの所要日数を本人へ連絡する
作業期間
マスキング、音声処理、書き出し、別担当による検証
交付前
交付物の控えを作成し、台帳に記入する
交付
指定された方法で引き渡し、受領の記録を残す
この表で動かせないのが一行目です。防犯カメラの多くは古い記録から自動で上書きされるため、法的な判断を終えてから映像を探しに行くと、対象そのものが消えていることがあります。開示するかどうかの結論が出る前でも、該当区間の確保だけは受付当日に済ませてください。存在しないものは開示できず、その場合は不存在として遅滞なく通知することになります。ただ、確保できたはずのものを消してしまった経緯は、説明が難しくなります。
行政機関等は日数が明示されています。開示決定等は開示請求があった日から30日以内に行うこととされ(法第83条)、補正に要した日数は算入されません。事務処理上の困難など正当な理由があるときは30日を限度に延長でき、その場合は延長後の期間と理由を書面で通知します。
また、第三者に関する情報が含まれるときは、その第三者に意見書を提出する機会を与えることができ、一定の場合には与えなければならないとされています(法第86条)。反対意見書が出たうえで開示すると決めたときは、開示決定の日と開示を実施する日の間に少なくとも2週間を置く必要があります。開示の実施方法の申出は、開示決定の通知があった日から30日以内とされています(法第87条)。
これらを逆算すると、行政機関等では第三者への意見照会と2週間の待機が入る前提で、映像の処理作業をどこに置くかを決めることになります。30日という数字を編集作業の持ち時間だと思って計画すると、意見照会の段階で足りなくなります。
意見照会と2週間の待機が入るので、30日を編集の持ち時間と考えない
交付後は、渡した内容を再現できる控えを劣化しない条件で保管する
交付物とまったく同じ内容の控えを一つ作り、原本と分けて保管しておきます。交付して終わりにできない理由は単純です。後日「開示された映像は改変されていたのではないか」「他人の顔まで見えていた」といった申立てを受けたときに、何を渡したのかを再現できなければ答えようがないからです。
台帳に残す項目
受付日、請求者、請求された日時・場所・交付方法
対象該当性の判定結果と根拠
不開示とした部分があればその範囲と理由(第33条第2項のどの事由か)
マスキングの担当者、検証の担当者、それぞれの作業日時
出力ファイル名、容量、ハッシュ値
交付日、交付方法、受領の記録(配達記録の番号など)
徴収した手数料の内訳
控えの持ち方は、組織の運用に合わせて構いませんが、書き換えられない形で一つ持っておくとやり取りが早く済みます。ディスクに書き込んだ控えは、上書きや誤削除の心配がなく、盤面に受付番号と交付日を印字しておけば探し出す手間もかかりません。原本の映像そのものは録画装置の上書きで消えていくため、開示に関わった区間だけでも別媒体で残しておくと、後から経緯を追えます。
保管の条件は意外と雑になりがちです。ディスクは直射日光と高温多湿を避け、立てて保管し、記録面に触れないというだけで持ちが変わります。書庫の窓際や、空調の効かない倉庫に平積みするのは避けてください。具体的な置き方はDVD・CDの正しい保管方法 にまとめています。
最後に、今回の一件で作った工程は次の請求でも使えます。判定の手順、不開示事由の当てはめ方、マスキングの確認箇所、交付方法の選択肢、手数料の内訳。この五つを一枚の手順書にしておけば、次に窓口で同じ一言を聞いたとき、担当者が最初から考え直さずに済みます。
よくある質問
Q. 防犯カメラの映像を見せてほしいと言われたら、応じる義務がありますか? A. 応じる義務が生じるのは、その映像が保有個人データに当たる場合です。個人情報保護委員会のQ&Aは、特定の個人を識別できる映像であっても、特定の個人に関する映像を検索できるように体系的に構成されていなければ個人情報データベース等には当たらないとしています。日時でしか遡れない録画装置はこれに当てはまることが多い一方、顔の特徴データを本人と結び付けて登録している場合や、氏名を付けて該当区間を保存している場合は対象になります。まず請求者の氏名や会員番号から実際に映像へ辿り着けるかを試し、判定結果と根拠を記録に残してください。
Q. 開示する映像に他の人が映っている部分は、どう処理すればいいですか? A. 第三者が映っていることは、その部分を処理する理由にはなりますが、映像全体を渡さない理由にはなりません。ガイドラインは、不開示事由に該当する部分を除いた部分は開示するという部分開示の考え方を示しています。実務では、第三者の顔に追従するぼかしを当て、他人の会話が入っている区間の音声を処理し、名札や車両ナンバー、鏡やガラスへの映り込みも確認します。全体の解像度を落として顔を見分けにくくする方法は、本人の映像まで判別できなくなるため避けてください。作業者とは別の担当が等倍で通し再生して検証すると、追尾が外れた数フレームの見落としを防げます。
Q. 開示請求に対して何日以内に回答すればいいですか? A. 民間事業者に何日以内という法定の日数はなく、法は遅滞なく開示することを求めています。検索や集約に相応の期間を要する場合があることは前提とされているため、作業に時間がかかること自体より、連絡のない空白期間があることが問題になります。受付日、途中経過の連絡日、交付日を記録に残してください。行政機関等は日数が明示されており、開示決定等は開示請求があった日から30日以内、正当な理由があるときは30日を限度に延長でき、その際は延長後の期間と理由を書面で通知します。
Q. 本人が指定した方法で渡さないといけませんか。USBやDVDでもいいですか? A. 法第33条第1項により、本人は電磁的記録の提供による方法その他の規則で定める方法による開示を請求でき、施行規則第30条は電磁的記録の提供、書面の交付、その他事業者の定める方法を挙げています。原則は本人が請求した方法です。技術的に困難であるなどの合理的な理由があるときは別の方法によることができますが、その旨を遅滞なく通知し、理由を説明して代替方法を提案する必要があります。USBやディスクはいずれも電磁的記録の提供に含まれますが、相手の再生環境を確認してから決めるのが確実です。
Q. 開示の手数料はいくらまで請求できますか? A. 法第38条は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内で額を定めなければならないとしており、手数料で利潤を得ることは想定されていません。媒体代、郵送料、書留の料金、印刷代は積みやすく、マスキングと検証にかかった作業時間ぶんの人件費は実費の範囲で説明できるようにしておきます。金額以上に重要なのは、額を定めたなら開示等の請求等に応じる手続の一部として本人の知り得る状態に置いておくことです。請求を受けてから初めて金額を伝える運びは紛争のもとになります。
Q. マスキング作業やディスク化を外部の業者に頼んでもいいですか? A. 委託自体は可能ですが、個人データの取扱いの委託に当たるため、委託先を監督する義務が生じます。実務上いちばん安全な線引きは、マスキングと検証を自組織で終えてから、完成した映像だけを外部に渡すことです。未処理の原本を送って消す作業まで依頼すると、第三者の情報をそのまま外部に出すことになります。ディスク化だけを外部に出す場合も、入稿するデータは処理済みのものに限り、共有URLの有効期限やアクセス制限、作業後のデータ削除の扱いを事前に取り決めておいてください。
Q. 映像がすでに上書きされて残っていない場合はどうすればいいですか? A. 請求された保有個人データが存在しないときは、その旨を遅滞なく本人に通知する必要があります(法第33条第3項)。あわせて、法第36条は措置をとらない旨を通知する場合に本人へ理由を説明するよう努めることを求めているため、上書きの周期と、請求を受けた時点ですでに保存期間を過ぎていた経緯を説明できる形にしておきます。これを避けるには、開示するかどうかの結論が出る前に、受付当日のうちに該当区間を録画装置から書き出して隔離する運用にしてください。
Q. 警察や保険会社から映像を求められた場合も同じ対応でいいですか? A. 扱いが変わります。開示請求は本人からの請求を前提とした制度で、本人以外からの求めは第三者提供の可否という別の枠組みで判断することになります。捜査機関からの照会や、保険会社、相手方の代理人からの依頼は、それぞれ根拠と判断基準が異なるため、同じ手順で処理しないでください。誰から、どの根拠で求められているかを受付段階で確認し、提供の可否を誰が判断するのかを社内で決めておくと、窓口で即答してしまう失敗を防げます。