この記事の要点
削除依頼を受けた直後に「消します」とも「消せません」とも答えず、回答期限だけ先に伝える のが、後戻りできない約束を避ける唯一の方法です。
対応の分岐は未配布か配布済みか で決まり、配布済みの場合は回収より先に「追加配布の停止」と「共有URLの停止」を優先します。
集合映像で1人だけを消す方法はカット・マスク・差し替えの3択 で、いずれも編集からオーサリングまでやり直しになります。
肖像権に明文の規定はなく、個人情報保護法35条 も多額の費用がかかる場合は代替措置で足りると定めているため、全部消す以外の着地点があります。
次回の予防は撮影可否の確認ではなく、配布範囲と撤回窓口 を同意書に書き込むことで、依頼が来た時点の判断の手間が減ります。
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発表会の記録映像を配り終えて一息ついたところに、一本の連絡が入ります。「うちの子が映っているところ、消してもらえませんか」。悪意のある問い合わせではなく、たいていは言いにくいことを勇気を出して言ってきた連絡です。それだけに、こちらも雑には返せません。けれど手元にあるのは、すでに何十枚か配ってしまったディスクと、参加者に共有したダウンロードURLと、来年も同じ行事があるという事実です。回収できるのか、一部だけ消せるのか、費用は誰が持つのか、そもそも応じる義務があるのか。判断材料がないまま、返事だけが遅れていきます。
削除依頼を受けたら、最初の返信は「消します」とも「消せません」とも答えず、受け取ったことと回答の期限だけを伝えれば足ります。対応は、映像が未配布か配布済みかで分かれます。配布済みなら、回収より先に、未発送の在庫と共有URLを止めることを優先します。1人だけ消す方法はカット・マスク・差し替えの3つで、どれも編集し直してディスクを作り直すことになります。法律上も、削除に応じる義務が常にあるわけではありません。
最初の返信では答えを約束せず、回答の期限だけを伝える
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最初の返信では、回答の期限だけを先に伝える 配布済みなら、回収より先に出回る経路を止める 1人だけ消す方法はカット・マスク・差し替えの3つで、作業量が変わる 再配布の費用は「枚数×単価」だけでは出ない|手間の内訳を先に出す 法律上どこまで義務か|肖像権に明文はなく、35条も代替措置を認めている 本人への回答は3点セットで書く|できたこと・できないこと・いつまでに 次回の予防は「撮ってよいか」ではなく「どこまで配るか」で同意を取る 記録には9項目を残し、担当が代わっても同じ判断ができるようにする よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
最初の返信では、回答の期限だけを先に伝える
最初の返信に入れるのは、受け取ったという事実と、回答の期限だけで足ります。「ご連絡ありがとうございます。事実関係を確認したうえで、8月14日までに対応方針をご連絡します」。この一文があると、相手はそれ以上追い立てる必要がなくなります。期限は短く見積もらず、確認と関係者への相談に必要な日数を素直に置いてください。
削除依頼を受けた直後にやってはいけないのは、その場で「消します」と答えることと、「もう配ってしまったので無理です」と答えることです。「消します」と答えると、あとから回収が現実的でないと分かった時点で二重に信頼を失います。「無理です」と答えると、相手が何を求めているのかを聞く前に話を打ち切ってしまいます。集合映像の削除依頼は、実は「全部消してほしい」ではなく「せめて自分の家の分だけ差し替えてほしい」「今後の上映では使わないでほしい」であることが少なくありません。
期限を伝えたうえで確認する3点
誰からの依頼か 。映っている本人か、未成年の保護者か、あるいは第三者か。第三者からの申し出の場合、本人の意思がどこにあるかを確認しないまま動くと、別の人の意向を無視することになります。
どの映像のどこか 。ディスクのタイトル、収録日、おおよその再生位置(何分ごろ)、該当する場面。「全編に少しずつ映っている」のか「1シーンだけ」なのかで、後の工数が10倍変わります。
何を求めているか 。配布済み分の回収か、今後の配布停止か、上映での不使用か、データの完全な破棄か。ここを言葉にしてもらわないと、こちらが用意した対応が的外れになります。
そして、聞かなくてよいことがあります。理由です。転居や家庭の事情、保護命令が出ているケース、就学や就労上の事情など、理由そのものが本人にとって最も知られたくない情報である場合があります。「差し支えなければ背景を教えてください」と一度だけ添えるのは構いませんが、答えが返ってこなくても対応を進める前提で組み立ててください。理由を聞き出さないと動けない運用は、その時点で設計が間違っています。
配布済みなら、回収より先に出回る経路を止める
対応の難易度は、依頼が来た時点で映像がどこまで出ているかでほぼ決まります。まだ手元にある在庫なら、直して作り直すだけの話です。すでに人の家に渡っている分は、こちらの意思では動かせません。
ここで多くの担当者が間違えやすいのは、「配ったものを取り戻さなければならない」と考えてしまうことです。任意で返却をお願いすることはできますが、返ってこない分は返ってきません。回収を対応の前提に置くと、いつまでも「対応中」から抜けられなくなります。優先順位はこうです。まず、これ以上出回る経路を止める。次に、本人に事実を正確に伝える。回収の依頼は、その後に選択肢として置きます。
配布形態
止められるか
実際の作業
未発送の在庫・未配布分
止められる
配布を保留し、修正版に差し替える
ダウンロード用の共有URL
止められる
ファイル削除またはリンク共有の解除
限定公開の動画ページ
止められる
非公開に変更(すでに保存された分は残る)
手渡し・郵送済みのディスク
止められない
任意の返却依頼、または差し替え版の送付
受け取った人がコピーした分
把握できない
周知のみ。追跡は現実的でない
共有URLの止め方は事前に控えておく
意外な盲点が、自分たちが配ったダウンロードURLを止められないケースです。アップロードした担当者が異動していて削除用の情報が分からない、という状況は珍しくありません。ギガファイル便であればアップロード時に削除KEYを設定でき、保持期限も既定の5日から変更できます(1ファイル300GBまで、個数は無制限)。保持期限は、アップロードしたあとに変えたり延ばしたりはできません。この削除KEYと期限設定は、アップロードした本人しか知らないまま流れてしまいがちなので、配布担当者の共有メモに必ず残してください。
Google ドライブやDropboxなら、「リンクを知っている全員」の共有を解除すれば、それ以降のダウンロードは止まります。共有URLでのデータの受け渡し全般についてはギガファイル便での入稿ガイド に手順をまとめてありますので、次回の配布設計の参考にしてください。
止めた後は、本人に「どこまで止まって、どこは止められないか」を具体的に伝えます。曖昧に「対応しました」と言うより、「配布用URLは削除済み、未発送の12枚は差し替え、すでにお渡しした38枚は回収をお願いする案内を出します」と数字で伝えたほうが、結果的に納得されます。
1人だけ消す方法はカット・マスク・差し替えの3つで、作業量が変わる
集合映像の難しさは、「その人だけ」を消せない場面が多いことです。集合写真の一列目、リレーの走順、全体合唱の並び。前後の映像との連続性があるため、単純に切ると不自然になります。実務的な選択肢は次の3つで、選び方は「本人が特定できるかどうか」が基準になります。
カット 。該当シーンを丸ごと削る。作業は最も単純ですが、全体の尺が変わるため、チャプターの位置やメニュー画面の記載もずれます。他の参加者の見せ場がそのシーンに含まれていると、別の苦情の種になります。
マスク・ぼかし 。尺を保ったまま、該当する人物にモザイクやぼかしを重ねる。人が動く場面では追従処理が必要になり、単純なカットより手間がかかります。ただし、他の参加者への影響が最も小さい方法です。
差し替え 。同じ時間帯の別アングル素材や、引きの絵に置き換える。複数台で撮影していた場合に限り使えます。仕上がりは最も自然です。
「消せば終わり」ではなく、作り直しになる
ここで見落とされやすいのが、映像を1カット直しただけではディスクにならないという点です。編集ソフトで書き出した動画ファイルは、そのままディスクに書き込んでも家庭用プレーヤーでは再生できません。
メニュー、チャプター、再生順序といった構造を組み直す工程が必要で、これをオーサリングと呼びます。つまり1シーンの修正でも、編集・書き出し・オーサリング・書き込みの4工程を通ることになります。なぜ焼くだけでは再生できないのかはオーサリングとは?DVD・ブルーレイを再生できる形にまとめる作業と手順 で詳しく説明しています。
どれを選んでも、編集から書き込みまでやり直しになる
もうひとつ気にしておきたいのが画質です。完成したディスクから映像を吸い出して編集し直すと、圧縮済みの映像をもう一度圧縮することになり、画質は元に戻りません。編集元の素材データが残っていれば、そこから作り直したほうが良い状態を保てます。この考え方は画質が劣化しないコピー に整理してあります。削除依頼が来る可能性を考えるなら、編集元データは納品後も一定期間保管しておくのが現実的です。
なお、後ろ姿だけ、遠景で数十人の中の1人、といった場合は「本人が特定できるか」を一度冷静に見てください。特定できない映り方であれば、マスク処理そのものが不要な場合もあります。ただし、判断するのはこちらではなく本人の感覚に近いところに置くべきで、迷ったら本人に該当箇所を確認してもらうのが早いです。
再配布の費用は「枚数×単価」だけでは出ない|手間の内訳を先に出す
修正版を作ると決めたら、次は費用と負担者の話になります。ここを曖昧にしたまま作業に入ると、後で主催者と担当者の間でもめます。内訳は、おおむね次のように分解できます。
映像の修正工数(該当箇所の特定、編集、確認)
ディスク制作費(盤面のレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷を含めるかどうかで変わる)
発送費と梱包の手間
回収の案内、問い合わせ対応の人件費
枚数の決め方には2通りあります。参加者全員分を刷り直す方法と、希望者にだけ差し替え版を渡す方法です。全員分は公平ですが費用が跳ね上がります。希望者のみは安く済む一方、「なぜ差し替わったのか」を説明する必要が出てきます。多くの場合、依頼者の家庭分と、今後新たに配る分だけを修正版にするのが落としどころになります。
少部数だからこそ、単価より下限枚数を見る
数枚だけ作り直したいとき、問題になるのは単価より「最低ロット」です。50枚単位でしか受けない業者に3枚を頼むことはできません。1枚から受ける先を確保しておくと、削除依頼への対応が現実的な選択肢になります。1枚から頼めるかどうかの見分け方は1枚から頼める小ロット対応 にまとめました。
当社では基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で受け付けており、再生できる形に組み立てるオーサリングは料金に含まれています。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも対応しています。
急ぐ場合の選択肢も、金額として先に把握しておくと判断が速くなります。当社には通常便のほかに、追加料金の納期オプションがあります。お急ぎお届け(内容1種類につき)は1,500円の加算で、平日15時までのご注文・ご入稿なら翌々日までに発送します。特急お届け(内容1種類につき)は3,000円の加算で、平日15時までのご注文・ご入稿なら翌日発送です。当日店舗お渡し(内容1種類につき)は3,500円の加算で、平日12時までのご注文・ご入稿分を大阪市北区の店舗でお受け取りいただけます。
納期をどう見積もるかの考え方はDVDを急いで作るときの締切と逆算 にまとめています。急ぎたいのは主催者側の事情であって、依頼した本人が急かしているとは限らないので、そこも一度確認してから追加料金を判断してください。
費用の負担者については、行事の記録映像である以上、主催者側が持つのが自然だと考えられます。同意の設計が甘かったことに起因する修正であれば、依頼者に請求するのは筋が通りません。ただし「本人が個人的な事情で撮影後に撤回した」場合の扱いは団体ごとに考え方が分かれるため、次回の同意書に負担のルールを書き込んでおくのが確実です。
法律上どこまで義務か|肖像権に明文はなく、35条も代替措置を認めている
法律上、削除に応じる義務が常にあるわけではありません。肖像権には明文の条文がなく、個人情報保護法第35条も、利用停止等が困難な場合には代替措置で足りるとしています。以下は一般的な整理であり、個別の事案の判断は弁護士など専門家にご相談ください。
肖像権は明文の条文がない
肖像権という名前の条文は日本の法律に存在しません。人格的な利益として、裁判例が民法の不法行為の枠組みで積み重ねてきたものです。したがって「写っているから消さなければならない」わけでも、「同意を取ったから何をしてもよい」わけでもありません。撮影された場所、目的、態様、必要性、その映像がどこまで広がったかといった要素を総合して判断されると考えられます。行事の記録という目的で、参加者に限って配布した映像は、不特定多数への公開に比べれば侵害と評価されにくい方向に働くと考えられますが、断定はできません。
個人情報保護法では「代替措置」が明記されている
映像についても、特定の個人を識別できるものであれば個人情報に当たります。ただし個人情報保護委員会のQ&Aでは、それが「個人情報データベース等」に当たるかは別問題で、特定の個人情報を検索できるように体系的に構成されたものでない限り該当しないと解される、と説明されています。
また、自分たちは学校やPTA、自治会だから関係ない、という認識は改める必要があります。ガイドライン通則編は「事業」について営利・非営利の別は問わないとしており、かつて存在した5,000人以下の除外規定も撤廃されています。個人情報データベース等を事業に用いていれば、規模にかかわらず個人情報取扱事業者に当たります。
そのうえで、利用停止や消去を求める権利を定めた個人情報保護法第35条の構造を見ると、実務上とても役に立つ設計になっています。第1項は違法な取扱いや不正な取得があった場合、第5項は利用する必要がなくなった場合や本人の権利利益が害されるおそれがある場合に、本人が請求できると定めています。一方で第2項・第4項・第6項は、請求に理由があっても、多額の費用を要するなど利用停止等を行うことが困難な場合には、本人の権利利益を保護するため必要な代替措置を講じることで足りるとしています。
つまり法律自体が、「全部消す」以外の着地点を用意しているということです。配布済み分の回収が現実的でないなら、今後の配布と上映を止める、該当箇所にマスクをかけた版に差し替える、次回以降は撮影対象から外す、といった代替措置を具体的に示して合意する。これは妥協ではなく、条文の設計に沿った対応です。
どちらも「写っていれば必ず全部消す」ではない。個別の判断は専門家に相談
SNSに転載されていた場合
参加者の誰かが映像をSNSに上げていた場合、こちらでは削除できません。プラットフォーム側の申出窓口を使うことになります。2024年に改正された情報流通プラットフォーム対処法では、大規模な事業者について、権利侵害の申出を受けたら遅滞なく調査を行い、申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に対応状況を通知することが定められています(2025年4月1日時点の条文)。窓口の場所と必要な情報を、依頼者に丸投げせずこちらで調べて案内すると、対応の印象が変わります。
本人への回答は3点セットで書く|できたこと・できないこと・いつまでに
方針が固まったら回答です。ここで長い経緯説明を書くと、かえって言い訳に読まれます。伝えるのは3つだけです。
できたこと 。何を、いつ、どこまで止めたか。数字と日付で書きます。
できないこと 。理由とセットで。「回収できません」ではなく「すでにお渡しした38枚は、任意の返却をお願いすることはできますが、返却の有無をこちらで確認する手段がありません」と書くと、事実として伝わります。
いつまでに何をするか 。差し替え版の発送予定日、次回行事での取り扱い、社内での記録の扱い。
謝罪を入れるかどうかは、こちらに落ち度があったかで決めます。同意の範囲を超えて配っていたなら謝罪が要ります。同意の範囲内だったが本人の事情が変わっただけなら、謝るより「ご連絡いただいてよかったです」と受け止めるほうが、関係が続きます。過剰な謝罪は、こちらに非があったという記録として残るという実務上の副作用もあります。
他の参加者への説明は最小限にする
差し替え版を配るとき、「削除依頼があったため」と説明したくなりますが、これは避けてください。誰が依頼したのかを推測させる情報になり、依頼者を二次的に傷つけます。「収録内容の一部を修正した版に差し替えます」で十分です。回収をお願いする場合も同様に、理由は「制作上の都合により」程度にとどめます。
回収したディスクをどう扱うかも決めておきます。廃棄するなら、盤面を割る、シュレッダー対応機で処理するなど、読み取れない状態にしてから捨てます。しばらく保管する場合は、ケースに立てて、直射日光と高温多湿を避けた場所に置きます。ディスクの保管条件についてはDVD・CDの正しい保管方法 にまとめてありますが、削除依頼で回収したものについては、保管そのものが目的に反していないかを先に確認してください。手元に置き続ける理由がないなら、破棄したほうが管理は簡単になります。
次回の予防は「撮ってよいか」ではなく「どこまで配るか」で同意を取る
同意書に「撮影に同意します」とだけ書いてある団体は多いのですが、削除依頼の場面ではほとんど役に立ちません。争点は撮影の可否ではなく、その映像がどこまで広がるかだからです。同意書に足すべきは次の項目です。
利用目的 。行事の記録、参加者への配布、次年度の広報など、具体的に列挙する。「その他当団体の活動」のような包括表現は同意として弱くなります。
配布範囲 。参加者本人と家族に限るのか、団体の会員全員か、ウェブで公開するのか。
媒体 。ディスク、ダウンロードURL、限定公開の動画ページ、館内上映など。
保存期間 。編集元データを何年保管し、いつ破棄するか。
撤回の方法と窓口 。誰に、どうやって伝えれば止まるのか。担当者の個人名ではなく、役職か窓口名で書く。
撤回した場合の限界 。配布済みの分は回収できない場合があること、上映や公開は以後停止すること。ここを先に書いておくと、依頼が来た時点で説明が一往復で済みます。
現場で判別できる仕組みを作る
紙の同意書は当日の撮影現場では役に立ちません。撮影担当者がその場で見分けられる印が要ります。色違いの名札、リストバンド、受付での座席区分など、方法は問いませんが、「この印の人はアップで撮らない」というルールを撮影の担当者全員に共有します。ボランティアの保護者に撮影を頼む場合ほど、この共有が抜けます。
撮影しない対象も先に決めておきます。
更衣室とその前の廊下
トイレの入口
参加者名簿や座席表の掲示物
名札のアップ
車のナンバープレート
住所や電話番号の書かれた書類
これらは削除依頼が来る前に、こちらの落ち度として問題になり得る要素です。
配布前に完成データを通しで一度見る
最も効果があるのに、最も省略されるのがこの工程です。編集担当者は該当箇所を繰り返し見ているため、背景の映り込みに気づきません。編集に関わっていない人が、倍速でよいので通しで一度見る。名簿が映っていないか、意図しない会話が録れていないか、映りたくないと言っていた人が入っていないか。この確認を配布前に置くだけで、後から作り直す確率が下がります。
ディスクにする段階では、盤面のレーベルやケースの背表紙に個人名を入れるかどうかも同じ観点で見直せます。印刷用データの作り方はDVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方 にまとめてあります。
編集担当は背景の映り込みに気づきにくい。別の人が一度通して見る
記録には9項目を残し、担当が代わっても同じ判断ができるようにする
削除依頼への対応は、その年だけで終わりません。翌年も同じ行事があり、担当者は代わります。記録が残っていないと、翌年また同じ人に同じ確認をして、同じ思いをさせることになります。逆に、対応した内容が残っていれば、翌年は撮影前の段階で配慮できます。
項目
書く内容
受付日
連絡を受けた日付と手段(メール、電話、対面)
依頼者
本人か代理か。代理の場合は本人との関係
対象
映像のタイトル、収録日、該当箇所
依頼内容
相手の言葉のまま。要約して意味を変えない
確認した事実
配布枚数、共有URLの状況、同意書の有無と内容
対応方針
誰が決めたか(決裁者)も含める
実施内容と実施日
URL削除、差し替え発送、回収案内など
本人への回答日
回答文の控えも保存
翌年への申し送り
撮影時の配慮事項として1行
保管場所は、担当者個人のメールボックスではなく、団体の共有フォルダにします。ただしこの記録自体が個人情報なので、閲覧できる人を限定し、保存期間を決めて期限が来たら削除します。「念のため永久保存」は、管理していないのと同じです。
編集元データの扱いも同時に決める
差し替え版を作ったあと、修正前の編集元データをどうするか。次年度の広報に使う可能性があるなら残す判断もありますが、その場合は「削除依頼のあった箇所を含む」という注記を必ずデータと一緒に残してください。注記のないまま残ると、数年後に事情を知らない担当者が使ってしまいます。残す場合の保存方法は、ディスク1枚に頼らず、別の場所にもう1系統持っておくのが安全です。ディスクの経年変化についてはCD・DVD・ブルーレイの寿命 を参考にしてください。
削除依頼への対応は、うまくやっても誰にも褒められない仕事です。それでも、手順が決まっていれば判断に迷う時間が減り、依頼した人を待たせずに済みます。今回の依頼を来年の同意書1枚に反映できれば、この対応には十分な価値があったことになります。
よくある質問
Q. 動画の削除依頼は断ってもいいですか? A. 応じる義務が常にあるわけではありませんが、断るかどうかを法律論だけで決めるのは得策ではありません。肖像権には明文の条文がなく、撮影の場所や目的、映像がどこまで広がったかなどを総合して判断されると考えられます。個人情報保護法第35条も、利用停止等が困難な場合には必要な代替措置で足りると定めています。全部消せない場合でも、今後の配布と上映を止める、該当箇所を修正した版に差し替える、といった中間の対応を示して合意するのが現実的です。
Q. 配布済みのDVDは回収しなければいけませんか? A. 任意で返却をお願いすることはできますが、こちらの意思で取り戻すことはできません。回収を対応の前提に置くと、いつまでも完了しない状態になります。優先すべきは、これ以上出回る経路を止めることです。未発送の在庫を保留し、ダウンロード用の共有URLを削除し、限定公開ページを非公開にする。そのうえで、すでに渡した分は何枚で、返却をお願いする案内を出す、という事実を依頼者に数字で伝えてください。
Q. 集合写真や集合映像で1人だけを消すことはできますか? A. 方法は3つあります。該当シーンを丸ごとカットする、尺を保ったままモザイクやぼかしを重ねる、別アングルの素材に差し替える、です。カットは作業が単純ですが全体の尺が変わり、チャプター位置やメニューの記載もずれます。マスクは他の参加者への影響が小さい反面、動く場面では追従処理に手間がかかります。いずれの方法でも、編集し直したあとに再生できる形へ組み立て直すオーサリングと書き込みの工程が必要になります。
Q. 撮影時に同意書をもらっていれば削除依頼に応じなくてよいですか? A. 同意書があっても、撤回の申し出そのものを無効にはできません。とくに「撮影に同意します」としか書かれていない同意書は、配布範囲や媒体を定めていないため、削除依頼の場面ではほとんど判断材料になりません。同意書に意味を持たせるには、利用目的、配布範囲、媒体、保存期間、撤回の窓口、そして撤回しても配布済み分は回収できない場合があることまで書き込む必要があります。次回の同意書に反映してください。
Q. 削除依頼の対応費用は誰が負担するのですか? A. 行事の記録映像である以上、主催者側が負担するのが自然だと考えられます。とくに同意の範囲を超えて配っていたなど、こちらに落ち度がある場合に依頼者へ請求するのは筋が通りません。費用の内訳は、映像の修正工数、ディスクの制作費、発送費、問い合わせ対応の手間に分かれます。参加者全員分を刷り直すか、依頼者の分と今後配る分だけを修正版にするかで金額が大きく変わるので、先に方針を決めてから見積もってください。
Q. 数枚だけ作り直したいのですが受けてもらえますか? A. 最低ロットが設定されている業者では、数枚の作り直しを受けられない場合があります。削除依頼への対応では、1枚から受け付ける先を確保しておくと選択肢が広がります。当社は基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で承っており、動画データを再生できる形に組み立てるオーサリングは料金に含まれています。盤面のレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも対応しています。
Q. 急いで差し替え版を作りたい場合、どのくらいで届きますか? A. 当社には通常便のほか、追加料金の納期オプションがあります。お急ぎお届け(内容1種類につき)は1,500円加算で、平日15時までのご注文・ご入稿であれば翌々日までに発送します。特急お届け(内容1種類につき)は3,000円加算で、平日15時までのご注文・ご入稿であれば翌日発送です。当日店舗お渡し(内容1種類につき)は3,500円加算で、平日12時までのご注文・ご入稿分を大阪市北区の店舗でお受け取りいただけます。急ぐ必要が主催者側の都合なのか、依頼者の希望なのかは一度確認してから選んでください。
Q. 参加者がSNSに上げてしまった映像はどうすればいいですか? A. こちらでは削除できないため、プラットフォームの申出窓口を使うことになります。2024年に改正された情報流通プラットフォーム対処法では、大規模な事業者について、権利侵害の申出を受けたら遅滞なく調査を行い、申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に対応状況を通知することが定められています。窓口の場所と申出に必要な情報は、依頼者に調べさせるのではなく、こちらで確認して案内するようにしてください。
Q. 対応の記録はどこまで残すべきですか? A. 受付日、依頼者、対象映像と該当箇所、依頼内容、確認した事実、対応方針と決裁者、実施内容と実施日、本人への回答日、翌年への申し送りの9項目を残してください。担当者が代わっても同じ判断ができ、翌年の撮影前に配慮できるようになります。保管は個人のメールボックスではなく共有フォルダにしますが、記録自体が個人情報なので閲覧者を限定し、保存期間を決めて期限が来たら削除する運用にしてください。