この記事の要点
スマホの縦動画は画素そのものは横長のまま 記録され、ファイルのヘッダーに「表示するときは90度回して」という指示だけが書き込まれています。
再生アプリはこの指示を読みますが、変換ソフトやオーサリング工程では無視されることがある ため、同じファイルが環境によって横倒しに見えます。
向きを固定するならtransposeフィルタで画素そのものを回して再エンコード し、出力側の回転情報が消えたことをffprobeで確認するのが確実です。
rotate=0のタグを付けるだけの古い手順は効かない場合があります 。手元のFFmpeg 8.1.1では、その方法では回転情報が90のまま残りました。
DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080 の横長の枠なので、縦動画をそのまま入れると左右に黒帯が入り、横幅の3分の1ほどしか使えません。
スマホでは縦向きにちゃんと再生できていた動画が、パソコンに移した途端に横倒しになった。編集ソフトに読み込んだら90度回っていた。業者に渡したら「向きが違います」と連絡が来た。動画を扱っていると、この現象にはかなりの確率でぶつかります。しかも厄介なことに、自分の手元では正しく見えているので、何が起きているのか分からないまま話が進みます。
原因は、動画ファイルの中で向きがどう表現されているかにあります。多くの場合、映像そのものは回っていません。「回して表示してください」というメモだけが付いています。そのメモを読むソフトと読まないソフトがあり、その差がそのまま見え方の差になります。ここが分かると、対処は驚くほど単純になります。
この記事では、向きの情報がファイルのどこにどう入っているか、自分の動画がどちらのパターンかを判別する手順、画そのものを回して固定する具体的なコマンド、縦動画をテレビやディスクで見たときの実際の見え方、そして縦と横が混ざった素材を1本にまとめるときの手順までを扱います。掲載しているコマンドと出力例は、FFmpeg 8.1.1で実際に動かして確認したものです。
向きはどこに入っているか|画素は横長のまま、ヘッダーに「90度回して」と書いてあるだけ
スマホを縦に構えて撮っても、カメラのイメージセンサーは本体の中で固定されたままです。読み出される映像は横長の並びで出てきて、本体をどう持ってもその形は変わりません。それでも撮った動画が縦に再生されるのは、撮影時の傾きを加速度センサーで判定し、ファイルのヘッダーに「表示するときは90度回してください」という指示だけを書き込んでいるからです。
MP4やMOVの場合、この指示はトラックヘッダー(tkhd)に置かれた行列として保存されます。表示行列、display matrixなどと呼ばれるもので、映像の各点をどの座標に写して表示するかを表しています。回転だけでなく反転や平行移動も表現できる汎用的な仕組みですが、スマホが使うのはほぼ90度単位の回転です。
この設計には理由があります。撮影直後に画素そのものを回して書き直すとなると、全フレームを読み直して並べ替え、もう一度エンコードすることになります。処理時間もバッテリーも食いますし、再エンコードの分だけ画質も落ちます。行列を数バイト書くだけで済ませるほうがはるかに軽い、という判断です。
ファイルが「横1920×1080ですが90度回して」と主張していることを確かめる
FFmpegに同梱されているffprobeで中を見ると、この構造がそのまま見えます。次のコマンドで、映像トラックの解像度と回転情報だけを取り出せます。
ffprobe -v error -select_streams v:0 -show_entries stream=width,height:stream_side_data=rotation -of default input.mp4
手元で試した縦向き扱いのファイルでは、次のように返ってきました。
width=1920
height=1080
rotation=90
解像度は横長の1920×1080だと言っているのに、回転は90度だと言っています。矛盾しているように見えますが、これが正常な状態です。画素の並びは1920×1080、それを90度回して1080×1920として見せる、という二段構えになっているわけです。より詳しく見ると、この回転情報の実体は「Display Matrix」という側情報として保存されており、中身は9個の数値からなる行列です。
ここで押さえておきたいのは、1080×1920と表示されるファイルと、1920×1080+回転90度のファイルは、見た目が同じでも中身がまったく違う という点です。前者は画素そのものが縦向きに並んでいるので、どのソフトで開いても縦になります。後者は解釈に依存します。トラブルになるのは、ほぼ後者です。
ソフトによって解釈が違う|再生アプリは回すが、変換・オーサリング工程では無視されることがある
表示行列を読むかどうかは、ソフトごとの実装次第です。スマホの写真アプリ、パソコンの標準的な動画プレイヤー、主要な動画共有サービスは、たいてい読んで正しく回してくれます。一方で、変換ツール、古い編集ソフト、DVDやブルーレイを組み立てるオーサリング工程などでは、行列を見ずに画素の並びだけを取り込む実装が残っています。その場合、横長のまま扱われて横倒しになります。
FFmpegは、この挙動を明示的に切り替えられるので、何が起きているのかを確かめる教材として便利です。公式ドキュメントには「-autorotate ファイルのメタデータに従って自動的に映像を回転する。既定で有効。-noautorotate で無効にできる」とあります。つまりFFmpegは既定では読む側です。
手元の1920×1080+回転90度のファイル(rot90.mp4)に対して、いくつかの操作を実際に試した結果が次のとおりです。
操作
コマンド
出力の解像度
出力の回転情報
そのまま再エンコード
ffmpeg -i rot90.mp4 -c:v libx264 out.mp4
1080×1920(縦)
なし
回転を無視して再エンコード
ffmpeg -noautorotate -i rot90.mp4 -c:v libx264 out.mp4
1920×1080(横倒し)
なし
回転情報を0で上書きして無変換コピー
ffmpeg -display_rotation 0 -i rot90.mp4 -c copy out.mp4
1920×1080
なし
rotate=0のタグを付けて無変換コピー
ffmpeg -i rot90.mp4 -c copy -metadata:s:v:0 rotate=0 out.mp4
1920×1080
90が残った
1行目と2行目は、入力ファイルがまったく同じで、オプション1つの違いだけで出力の向きが90度変わっています。「動画が回っている/回っていない」は、ファイル単体では決まらず、ファイルと処理系の組み合わせで決まる ということが、この2行に凝縮されています。
4行目には注意が必要です。ネット上には「rotate=0のメタデータを付ければ回転を打ち消せる」という手順が古くから出回っていますが、手元のFFmpeg 8.1.1で試したところ、このやり方では表示行列そのものが残り、ffprobeは引き続きrotation=90を返しました。タグを追加しても、tkhdの行列は書き換わらなかったということです。この方法を試して「直らない」と感じている場合、間違っているのは手順であってファイルではありません。
ちなみに、MP4からMKVへ無変換で入れ替えた場合も回転情報は保持されました。コンテナを変えれば消える、という性質のものではないと考えられます。
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自分の動画がどちらか判別する|寸法と回転情報を1コマンドで突き合わせる
対処を決める前に、手元のファイルがどの状態かをはっきりさせます。判別の軸は2つだけです。画素の並びが縦か横か 、そして回転情報が付いているかどうか 。この組み合わせで4通りになります。
ffprobeの寸法
回転情報
状態
やること
1920×1080
90または270
横長の画素+回転指示。いちばんトラブルが多い
画素を回して焼き付ける
1080×1920
なし
画素そのものが縦。解釈のブレは起きない
そのままで問題なし
1920×1080
なし
ふつうの横動画
そのままで問題なし
1920×1080
180
上下逆さま。三脚や自撮り棒の向きで起きる
180度回して焼き付ける
コマンドを使わずに見当をつける
ffprobeを入れずに済ませたい場合、いくつか代替があります。macOSならファイルを選んで情報を見ると「寸法」が出ます。Windowsならファイルを右クリックしてプロパティの詳細タブに「フレーム幅」「フレーム高さ」が出ます。VLCなら、再生中にツールメニューのコーデック情報で解像度を確認できます。
ここで見えている数字と、実際に画面に映っている向きを突き合わせてください。画面では縦長に映っているのに、寸法が1920×1080(横長)と表示されるなら、それは回転情報で縦に見せているファイル です。逆に、寸法も1080×1920と縦長で出るなら、画素そのものが縦向きです。
なお、こうしたプロパティ表示は環境によって回転を反映した数値を出す場合と、生の画素数を出す場合があります。表示が食い違って迷ったときは、ffprobeで側情報まで見るのがいちばん確実です。
1コマ抜き出して目視する
数字だけで判断しづらいときは、1フレームだけ画像に書き出して見るのが早いです。
ffmpeg -i input.mp4 -frames:v 1 check.png
この書き出しにも自動回転が効きます。手元の1920×1080+回転90度のファイルから抜いたPNGは1080×1920の縦長になりました。つまり、このPNGが縦に見えるなら「回転情報を読むソフトでは正しく見える」ということが確認できます。次の工程で横倒しになるなら、その工程が回転情報を読んでいないと切り分けられます。
変換で向きを固定する|メタデータをいじるのではなく、画素そのものを回す
どんな処理系に渡しても向きが変わらないファイルにするには、画素の並びそのものを回してしまうのが確実です。再エンコードは発生しますが、そのぶん解釈のブレが消えます。
90度回して焼き付ける
FFmpegのtransposeフィルタを使います。ヘルプに出る値の意味は次のとおりです。
0(cclock_flip)反時計回りに回転し、さらに上下反転
1(clock)時計回りに回転
2(cclock)反時計回りに回転
3(clock_flip)時計回りに回転し、さらに上下反転
実務で使うのは1か2です。時計回りに90度回すなら次のようになります。
ffmpeg -noautorotate -i input.mp4 -vf transpose=1 -c:v libx264 -crf 18 -pix_fmt yuv420p -c:a copy output.mp4
ここで-noautorotate を付けているのがポイントです。付けないと、FFmpegが回転情報を読んで先に回し、そのうえでtransposeがもう90度回すため、結果が180度ずれます。回転情報が付いているファイルを手動で回すときは、自動回転を切ってから回す と覚えてください。
180度回したい場合はtransposeを2回かけるか、-vf "hflip,vflip" で済みます。
どちらに回すか分からないときの決め方
時計回りなのか反時計回りなのかは、考えるより試したほうが速いです。1コマだけ書き出して確認します。
ffmpeg -noautorotate -i input.mp4 -vf transpose=1 -frames:v 1 try1.png
これを開いて向きが正しければtranspose=1、逆さになっていればtranspose=2です。2秒で終わります。全編をエンコードしてから間違いに気づくより、はるかに安上がりです。
再エンコードせずに回転情報だけ書き換える
画質を1ミリも落としたくない、かつ渡す先が回転情報を読むと分かっている場合は、無変換のまま回転情報だけを書き換える方法もあります。FFmpegのドキュメントには「-display_rotation は映像の回転メタデータを設定する。回転量は表示前に反時計回りに回す角度を10進数の度で指定する。このオプションはファイルに保存されている回転/表示変換のメタデータを上書きする」とあります。入力側のオプションなので、入力ファイルの前に書きます。
ffmpeg -display_rotation 90 -i input.mp4 -c copy output.mp4
回転情報を消したい場合は0を指定します。手元では、この方法なら回転情報が消えることを確認できました。前述のとおり、-metadata:s:v:0 rotate=0 を付けるだけでは行列が残ったので、こちらを使ってください。
ただし、この方法で直るのは「回転情報を読む相手」に対してだけです。読まない相手に渡す予定なら、結局は画素を回して焼き付けることになります。渡す先が分からないときは、焼き付けておくほうが事故が少ない と考えられます。
GUIで済ませたい場合
コマンドを使わない場合でも、考え方は同じです。iMovie、DaVinci Resolve、Adobe Premiere Proといった編集ソフトで回転を適用し、書き出せば画素として焼き付きます。HandBrakeにも回転の設定があります。いずれの場合も、書き出したファイルを先ほどのffprobeか、別のパソコンでの再生で確認してから次の工程に進んでください。編集ソフトのプレビューが正しくても、書き出し設定で回転が反映されていないことがあります。
縦動画をテレビで見るとどうなるか|DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080の横長の枠に収まる
ここまでは「正しい向きにする」話でした。次は「正しい向きにしたうえで、テレビの画面にどう映るか」です。縦動画の場合、ここでもう一段の判断が必要になります。
DVD-Videoの映像フォーマットは、NTSC(日本や北米の方式)で720×480ピクセル、PALで720×576ピクセルが標準です。画面比は4:3と16:9のいずれかで、16:9はアナモルフィックという方式で横に引き伸ばして表示します。ブルーレイは1920×1080を中心に、1440×1080、1280×720、720×480なども規格に含まれています。
重要なのは、どれも横長の枠しか用意されていない ということです。縦長の映像を入れる枠は規格上ありません。縦動画をディスクにする場合、横長の枠の中に縦の映像を配置する形になります。
1920の横幅のうち、映像が入るのは約608ピクセル
1080×1920の縦動画を、高さを合わせて1920×1080の枠に入れると、横幅は1080×(1080÷1920)で約608ピクセルになります。1920ピクセルの横幅のうち、映像が占めるのは3分の1ほど。残りの左右は黒帯です。テレビでいう「ピラーボックス」の状態になります。
画素数で比べると差が実感しやすくなります。DVDの720×480は約35万画素、ブルーレイの1920×1080は約207万画素です。ブルーレイの枠に縦動画を入れると、実際に映像が使うのは608×1080で約66万画素。207万画素の枠を用意しているのに、そのうち3割ほどしか使っていないことになります。
黒帯を減らす3つの選び方
これをどう扱うかは、素材と目的で決まります。手はだいたい3つです。
1つめは、黒帯のまま入れる 。元の映像を1ピクセルも切らずに済みます。運動会やライブなど、画面の端に大事なものが写っている素材ではこれが無難です。コマンドは次のようになります。
ffmpeg -i input.mp4 -vf "scale=1920:1080:force_original_aspect_ratio=decrease,pad=1920:1080:(ow-iw)/2:(oh-ih)/2:black" -c:v libx264 -crf 18 -pix_fmt yuv420p output.mp4
2つめは、背景にぼかした同じ映像を敷く 。黒帯部分に、元の映像を拡大してぼかしたものを置きます。テレビで見たときの見栄えはこれがいちばん自然です。
ffmpeg -i input.mp4 -filter_complex "[0:v]scale=1920:1080:force_original_aspect_ratio=increase,crop=1920:1080,gblur=sigma=20[bg];[0:v]scale=-1:1080[fg];[bg][fg]overlay=(W-w)/2:0" -c:v libx264 -crf 18 -pix_fmt yuv420p output.mp4
3つめは、横長に切り出す 。縦の映像の中央付近だけを16:9で切り取ります。画面いっぱいに映りますが、上下が大きく失われます。人物の全身が写っている縦動画では顔か足かどちらかが切れることになるので、素材を見て判断してください。
どれを選ぶかは好みの問題に見えますが、テレビの前で家族と一緒に見る用途なら、黒帯のままかぼかし背景のどちらか になることが多いと考えられます。切り出しは、あとから元に戻せない処理だからです。
縦と横が混在する素材のまとめ方|先に枠を揃えないと、結合の時点で破綻する
1本のディスクにまとめたい動画が10本あって、そのうち3本が縦、7本が横。よくある状況です。ここで手順を間違えると、結合した瞬間に映像が壊れます。
無変換の結合は、静かに失敗する
FFmpegのconcatデミューサで無変換のまま結合すると、解像度が違うファイルが混ざっていてもエラーにならずに処理が通ってしまうことがあります。手元で、1080×1920の縦動画と1920×1080の横動画をこの方法で結合したところ、コマンドは成功し、出力ファイルの解像度は先頭に置いた縦動画の1080×1920になりました。後続の横動画は、縦の枠に押し込まれた状態で入っています。
厄介なのは、エラーメッセージが出ないことです。処理は完了したように見え、ファイルも生成されます。最初の数十秒を再生して問題なければ、そのまま次の工程に進んでしまいます。結合の前後で必ず全体を通して確認する、というより、そもそも解像度を揃えてから結合する のが正しい順序です。
全部を同じ枠に正規化してから結合する
手順は3段階です。
1. すべての素材の向きを固定する(前の章のtransposeで焼き付ける)
2. すべてを同じ解像度・同じフレームレートに揃える(縦素材は黒帯かぼかし背景で16:9の枠に入れる)
3. そのうえで結合する
2の段階で使うコマンドは、素材が縦でも横でも同じもので済みます。前の章で挙げたscaleとpadの組み合わせは、横素材に対しては何も起きず、縦素材には左右の黒帯を足します。フレームレートも-r 30 のように明示して揃えておくと、結合後の音ズレを避けやすくなります。
1本ずつ変換したら、結合前にそれぞれの解像度を確認します。
for f in *.mp4; do ffprobe -v error -select_streams v:0 -show_entries stream=width,height -of csv=p=0 "$f"; done
全ファイルが同じ数字を返すことを確かめてから、concatに進みます。ここを飛ばして時間を稼いだつもりが、あとで全部やり直しになる、というのがこの作業でいちばん多い失敗です。
並べる順番も設計する
技術的に揃えられても、見る側の体験は別の問題です。横→縦→横→縦と交互に並ぶと、テレビの前では黒帯が出たり消えたりして落ち着きません。縦の素材が複数あるなら、まとめて連続で配置するほうが見やすくなります。
もうひとつの手が、チャプターで区切ることです。縦で撮った分をひとつのチャプターにまとめておけば、見る人はそこを飛ばすことも、そこだけ見ることもできます。ディスクメーカーではチャプター分けとメニュー画面の作成に対応 していますので、素材の構成が決まっていれば「ここからここまでを1章に」といった形で指定していただけます。
撮影時に決めてしまうのが確実|あとから回すと、画質と手間の両方を失う
ここまで対処法を書いてきましたが、いちばん手間が少ないのは、撮影の時点で向きを決めてしまうことです。
テレビやディスクで見る予定なら横で撮る
撮った動画をテレビで見る、DVDやブルーレイにする、という予定があるなら、横向きで撮ってください。前の章のとおり、DVDもブルーレイも横長の枠しか持っていません。縦で撮ると、どう工夫しても画面の3分の1ほどしか使えません。逆に、SNSにしか上げないと決まっているなら縦のほうが向いています。出口を先に決めると、撮影の向きは自動的に決まります 。
撮影中に持ち替えない
1つの動画ファイルに記録できる向きの情報は、原則としてファイル全体に1つです。撮影の途中でスマホを縦から横に持ち替えると、途中から傾いた映像がそのまま記録されます。あとから直そうとしても、前半と後半で必要な回転量が違うので、分割してそれぞれ処理し、また結合するという作業になります。
撮り始める前に向きを決め、その撮影が終わるまで持ち替えない。これだけで、後工程の作業がひとつ丸ごと消えます。
画面の自動回転ロックを意識する
スマホの画面回転ロックがかかっていても、カメラアプリが記録する向きは加速度センサーの判定によることが多く、ロックの有無と一致しない場合があります。寝転がって撮る、真上から見下ろして撮る、といった姿勢では、本体の傾きが正しく判定されず、意図と違う向きの情報が書き込まれることがあります。
真上や真下に向けて撮るときは、いったん本体を少し傾けて向きを確定させてからカメラを構えると、判定が安定しやすいと考えられます。撮影後にその場で1本再生して向きを確認しておけば、撮り直しがきく段階で気づけます。
あとから回すと画質が落ちる
すでに撮ってしまったものを回すのは可能ですが、代償があります。画素そのものを回すには再エンコードが要るので、元のファイルと比べて画質は落ちます。-crf 18 程度の高品質設定にすればほとんど気になりませんが、ファイルサイズは増えます。さらに縦動画を横長の枠に入れる場合、その時点で有効な画素数が3割ほどに減ります。
すでに撮ってある思い出の映像なら、そこは受け入れて処理するしかありません。ただし、これから撮るものについては、向きを決めるだけで避けられる損失です。
入稿前に確認する項目|ここを潰しておけば、向きの差し戻しは起きにくい
制作を業者に依頼する場合、入稿前に確認しておきたいことをまとめます。所要時間は、ファイル数にもよりますが10分から20分ほどです。
確認項目
やり方
問題があるときの対処
寸法と回転情報が一致しているか
ffprobeで width, height, rotation を確認
transposeで焼き付ける
自分以外の環境でも正しく見えるか
別のパソコンかテレビで再生してみる
回転を焼き付けて再確認
複数ファイルの解像度が揃っているか
全ファイルの width, height を一覧で出す
scaleとpadで同じ枠に揃える
縦素材の見せ方が決まっているか
黒帯/ぼかし背景/切り出しのどれかを選ぶ
依頼時に希望を書き添える
共有URLが第三者からダウンロードできるか
ログアウトした状態か別ブラウザで開いてみる
共有設定を「リンクを知る全員」に変更
共有URLの有効期限が納期より後か
アップロード時の期限設定を確認
期限を延ばすか再アップロード
4つめの「縦素材の見せ方」は、意外と伝え忘れが起きるところです。制作側は元の映像を勝手に切ることができないので、指定がなければ黒帯のまま仕上げるのが自然な判断になります。切り出しやぼかし背景を希望する場合は、その旨を伝えてください。
ディスクメーカーへの入稿について
ディスクメーカーは、動画データからDVD・ブルーレイを制作する書き込み代行サービスです。運営は株式会社プラスカルチャー、大阪市北区太融寺町に実店舗があります。
料金は1枚1,500円からで、1枚から注文できます。再生できる形式への組み立て(オーサリング)は料金に含まれます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも対応しています。
入稿はダウンロードできる共有URLでお送りください。ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなどに対応しています。
納期は次のとおりです。
通常便
お急ぎ(+1,500円)15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送
特急(+3,000円)15時までのご注文・ご入稿で翌日発送
当日店舗お渡し(+3,500円)平日12時までのご注文・ご入稿、大阪市北区の店舗で受け取り
向きの扱いに迷う素材がある場合は、判断を保留したまま送っていただいても構いません。縦の素材が含まれる場合の見せ方については、ご希望を伺ったうえで進めます。
よくある質問
Q. 縦で撮った動画がパソコンでは横向きに再生されます。撮り直すしかありませんか
A. 撮り直す必要はありません。多くの場合、映像の画素は横長のまま記録されていて、ファイルのヘッダーに「表示時に90度回して」という指示が入っています。その指示を読まないソフトで開くと横倒しになります。FFmpegのtransposeフィルタで画素そのものを回して書き出せば、どのソフトで開いても同じ向きになります。再エンコードが発生するので画質はわずかに落ちますが、-crf 18程度の設定にすれば実用上ほとんど気になりません。
Q. 動画の回転を保存したのに、別のパソコンで見るとまた横になります。なぜですか
A. 回転が画素として焼き付いておらず、メタデータの書き換えだけで終わっている可能性が高いです。編集ソフトによっては、回転を適用しても書き出し時に表示行列として記録するだけで、画素の並びは元のままにすることがあります。この場合、回転情報を読む環境では正しく見え、読まない環境では横倒しになります。ffprobeで書き出したファイルを調べ、rotationの値が残っているようなら焼き付けができていないと判断できます。
Q. 再エンコードせずに向きを直す方法はありますか
A. あります。FFmpegの-display_rotationオプションを入力ファイルの前に指定すると、無変換コピーのまま回転情報だけを書き換えられます。たとえば「ffmpeg -display_rotation 0 -i input.mp4 -c copy output.mp4」で回転指示を消せます。ただしこれはメタデータの書き換えなので、回転情報を読まないソフトに渡すと結局横倒しになります。渡す先が分からない場合は、画素を回して焼き付けるほうが安全です。
Q. rotate=0のメタデータを付けたのに直りません
A. その手順は現在のFFmpegでは効かない場合があります。手元のFFmpeg 8.1.1で「-c copy -metadata:s:v:0 rotate=0」を試したところ、ffprobeは引き続きrotation=90を返しました。タグを追加してもトラックヘッダーの表示行列そのものは書き換わらなかったためです。同じ目的なら、入力オプションとして-display_rotation 0を指定してください。こちらは手元で回転情報が消えることを確認できました。
Q. 縦動画をDVDにすると左右の黒帯は消せますか
A. 枠自体を縦にすることはできません。DVD-VideoはNTSCで720×480、ブルーレイは1920×1080が標準で、どちらも横長の枠しか規格に用意されていないためです。黒帯を目立たなくする方法は2つあります。ひとつは背景に同じ映像を拡大してぼかしたものを敷く方法、もうひとつは縦の映像から16:9の範囲を切り出す方法です。後者は上下が大きく失われるので、人物の全身が写っている素材では注意が必要です。
Q. 縦と横が混ざった動画をひとつにまとめられますか
A. まとめられますが、結合の前に全ファイルを同じ解像度に揃えてください。解像度が違うまま無変換で結合すると、エラーが出ないまま先頭ファイルの解像度が採用され、後続の映像が歪んだ状態で入ります。手順は、各素材の向きを焼き付ける、全部を1920×1080など同じ枠に入れる、それから結合する、の順です。結合前に全ファイルの寸法を一覧で出して、同じ数字になっていることを確認してください。
Q. 時計回りと反時計回りのどちらに回せばいいか分かりません
A. 考えるより試すほうが速いです。「ffmpeg -noautorotate -i input.mp4 -vf transpose=1 -frames:v 1 try1.png」で1コマだけ画像に書き出し、開いて確認してください。正しければtranspose=1(時計回り)、逆さになっていればtranspose=2(反時計回り)です。数秒で終わります。なお、回転情報が付いているファイルを手動で回すときは-noautorotateを付けてください。付けないと自動回転と二重にかかり、結果が180度ずれます。
Q. ディスクメーカーに縦動画をそのまま入稿してもいいですか
A. そのままお送りいただけます。向きの判断に迷う場合も、保留のままご入稿いただいて構いません。縦の素材が含まれる場合、横長の画面の中でどう見せるか(左右を黒帯にする、背景にぼかした映像を敷く、16:9で切り出す)にご希望があれば、その旨を添えてください。指定がない場合は、元の映像を切らずに済む形で仕上げます。入稿はダウンロードできる共有URLで、ギガファイル便やGoogle Driveなどに対応しています。