この記事の要点
- 自分史ビデオは本人が自分の人生を語る映像、聞き書きの映像は家族が聞き手になって祖父母や親の話を残す映像です。どちらも、話す人と聞く人、見せる相手を先に決め、話す人の了解をもらってから始めます。
- 昔の写真やアルバムを手元に置き、生まれた家、学校、仕事、結婚と子育て、今の暮らしと、時代ごとに質問を用意します。写真に写った人の名前や年も、その場で聞いておきます。
- スマホは三脚に固定して横向きで撮り、マイクを話す人の口元に近づけます。本番の前に試し撮りをして、声がはっきり入っているかをイヤホンで聞きます。
- 長く話してもらった元の動画はそのまま残し、見せる版は時代ごとの章に分けて短くまとめます。家族の外に渡す版は、語った本人に見てもらってから仕上げます。
- 家族が見られるDVDにして1枚目を試し、元のファイルは2か所以上に残します。他人の病歴や家の事情が語られた場面、写っている人、曲の扱いは、渡す範囲に合わせて確かめます。
親が元気なうちに、若いころの話を聞いておきたい。自分の歩んできた道を、声と顔のまま子や孫に残したい。終活の一つとして動画を考え始めると、何を話してもらえばいいのか、どう撮ればいいのか、撮った動画をどんな形で渡せば何十年先でも家族が見られるのかで、手が止まります。
自分史ビデオや終活ムービーも、祖父母や親の話を家族が聞いて残す聞き書きの映像も、進め方は同じです。話す人と聞く人を決め、昔の写真やアルバムを手元に置いて、時代ごとに質問を用意します。撮るときは、スマホを三脚に固定してマイクを口元に近づけ、横向きで撮ります。長く話してもらった元の動画はそのまま残し、見せる版は時代ごとの章に分けて短くまとめます。家族が見られるDVDにして1枚目を試し、元のファイルは2か所以上に残します。
語られる話には、きょうだいや近所の人のこと、誰かの病気のことも出てきます。家族で見る版と、親戚に配ったり人前で流したりする版を分けて考え、写っている人と語られた人への配慮も、撮る前から決めておきます。
自分史ビデオと聞き書きの映像は、どこが違うのか
自分史ビデオと聞き書きの映像の違いは、誰が言い出して、話がどこへ向かうかです。自分史ビデオは、本人が自分の人生を語って残す映像です。元気なうちに子や孫に向けて撮っておく、終活の一つとして考える人もいます。聞き書きの映像は、子や孫が聞き手になり、祖父母や親の話を聞いて残すものです。人の話を聞き取って記録することを、オーラルヒストリーと呼ぶこともあります。
自分史ビデオは本人が思い立ち、カメラの向こうの家族に向けて話します。聞き書きは家族が言い出し、目の前の聞き手の問いに答える形で話が進みます。撮り方と残し方は同じなので、本人が話したいことを決め、家族が質問で話を引き出す、というように両方を組み合わせることもできます。ひとりでカメラに向かうと言葉が続かないときは、家族に聞き手になってもらい、問いに答える形にします。
違いは誰が言い出し、誰に向けて話すか。撮り方と残し方は同じ
亡くなったあとに葬儀やお別れ会で流してほしい、という終活ムービーとして作るなら、流す場の機器や時間を確かめるのは残された家族です。その希望も、動画の置き場所と一緒に家族に伝えておきます。会場で流すときに葬儀社や会場へ聞くことは、追悼ムービー・メモリアルDVDの作り方|葬儀・お別れ会・法要の段取りと配り方にまとめました。
撮る前に決めること|話す人の了解、聞き手、見せる相手
最初に決めるのは、誰が話し、誰が聞き、誰に見せるかです。東京文化財研究所の『無形民俗文化財映像記録作成の手引き』は、地域の祭りや民俗芸能を映像で記録するための手引きです。記録を計画する際に最も大切なこととして、何のために記録するのかという目的をはっきりさせておくことを挙げています。目的によって、撮り方も編集の仕方も変わるからです。家族の記録なら、見せる相手を決めると目的もはっきりします。
家族だけで見るのか、きょうだいや親戚にも配るのか、法事や集まりの席で流すのか。見せる相手が広がるほど、語られた人や写っている人の了解、曲の扱いと、あとで確かめることが増えます。決めきれないときは、家族で見る版を先に作り、外に出す版はそのあとで決めても間に合います。
話す人に、何に使うかを伝えて了解をもらう
聞き書きなら、撮る前に、話す人に何のために撮り、誰に見せるつもりかを伝えます。同じ手引きは、記録する相手(伝承者)には、できるだけ早い段階で説明をして了解を得ておくことが必要だとしています。どこまでをどのように記録し、公開するかを考えるようにも求めています。家族でも同じで、「孫に見せたい」「親戚にも配りたい」と先に話しておけば、話す人も話す中身を選べます。
話したくない話や、撮らないでほしい話もあります。手引きは、事前に確かめる事柄の一つに、伝承者が撮影を望まない場面を挙げています。聞き書きでも、話したくないことは聞かないと約束し、止めてほしいときの合図を先に決めておくと、話す人も安心して話せます。
聞き手は、話す人が話しやすい家族に
聞き手は、話す人がふだんから話しやすい家族にします。子でも孫でも構いません。昔の話をよく知っている家族なら話が早く進み、知らない家族なら説明が増えるぶん、あとで見る家族にも分かりやすくなることがあります。回によって聞き手を替える方法もあります。自分史ビデオをひとりで撮るなら、家族の誰かに向けて話すつもりで、最初にその人の名前を呼んでから始めると、話の宛先がはっきりします。
誰に見せるかと、話したくないことの扱いを、撮る前に話す人と決めておく
祖父母へのインタビューの質問は、昔の写真を手元に置いて時代ごとに作る
質問は、時代の順に並べておくと、聞き漏らしに気づきやすくなります。当日はその順に進まなくても構いません。話が別の時代に飛んだらそのまま聞き、あとでリストの行に印を付けます。先の手引きも、筋書きを書きにくい撮影でも、大まかな構成案や、撮るべき重点を並べた撮影項目表は作っておく必要があるとしています。家族の聞き書きでは、質問リストがこの撮影項目表にあたります。
手引きは、撮影に臨む心構えとして、十分な事前調査で対象をよく知ることと、対象となる民俗や地元の人々に敬意を払うことを挙げています。家族の場合は、親戚に聞いたり、家に残る写真や手紙を見たりして、話す人の生まれた年や住んだ町、勤め先を前もって確かめておくと、質問を具体的にできます。
| 時代 |
聞くことの例 |
生まれた家と 子どものころ |
家族と住まい、 近所の遊び場、 学校までの道。 |
学校と 働き始めたころ |
好きだった科目、 最初の仕事と職場、 初めての給料の使い道。 |
結婚と 子育て |
出会ったころ、 結婚式の日、 子が生まれた日。 |
仕事と 暮らし |
長く続けた仕事、 住んだ町と家、 よく出かけた場所。 |
| 今の暮らし |
毎日の習慣、 好きな食べ物、 家族に伝えたいこと。 |
「どんな人生でしたか」のように大きく聞くより、「生まれた家は何部屋あった?」「最初の給料で何を買った?」と、物や場所、人の名前を入れて聞くと、場面を思い出す手がかりになります。答えが短いときは、「それで、どうなったの?」「そのとき誰がいたの?」と聞き返します。
質問リストを本人に先に渡すかどうかに決まりはありません。話すことを前もって考えておきたい人には、テーマだけを伝えておく方法もあります。
昔の写真やアルバムを見ながら聞く
質問のそばに、昔の写真やアルバムを置いておきます。写真を指して「これはどこ?」「隣に写っているのは誰?」と聞くと、そこから話が広がることがあります。撮るのは写真ではなく、写真を見て話す人の顔と声です。写真そのものは、あとでスキャンして編集のときに入れます。アルバムの写真の取り込み方は、還暦・金婚式の思い出ムービーをDVDで贈る方法|写真の集め方・曲・渡し方の古い媒体の節にまとめました。
写っている人の名前、撮った年と場所は、その場で聞いてメモします。古い写真に写った人や年代は、本人や親戚の記憶の中にしかないことがあるからです。米国国立公文書館(NARA)の家族の資料の手引きも、デジタル化したファイルに「誰が・何を・どこで・いつ」を付けておくよう勧めています。写真の裏に書かれた日付や名前も、表と一緒に写しておきます。
自分史ビデオ・終活ムービーの撮り方|スマホは三脚で横向き、マイクは口元に
撮り方は、話す人が長く座って話す場面に合わせます。
| 確かめること |
やり方 |
| 置き方 |
三脚に固定し、 話す人の胸から上が 入る位置に置く。 |
| 向き |
横向きで撮る。 縦の動画は、 横長のテレビで 幅が約3分の1に なる(計算上)。 |
| マイク |
話す人の口元に 近づける。 エアコンや扇風機の 音を避ける。 |
| 試し撮り |
本番の前に少し撮り、 イヤホンで聞く。 |
| 空き容量 |
iPhoneの 1080p・30fps、 高効率・HDRありで 1時間約3.9GB (計算上)。 |
| 電源 |
充電ケーブルを つないだまま撮る。 |
| HDR |
ディスクで見るなら、 iPhoneの 「HDRビデオ」を オフにする方法もある。 |
声の聞き取りやすさを大きく左右するのは、マイクと口元の距離です。オーディオテクニカは、マイクと口元の距離が離れすぎていると、声を拾うために入力を増幅する「ゲイン」を上げることになり、周りの音も大きくなって雑音が目立ちやすくなると説明しています。同じ説明で、エアコンや扇風機の音を拾っていた例も挙げています。
スマホのマイクは本体に付いているので、撮る位置がそのまま録る位置になります。胸から上を写す距離では声が遠いときは、レコーダーを話す人の近くに置いて、音を別に録る方法もあります。ソニーはレコーダーの説明で、会議の録音なら発表者に近い場所で録り、机から伝わる振動音はハンカチなどの上に乗せると減らせると案内しています。
本番の前に少し撮り、イヤホンで聞いて、声がはっきり入っているかを確かめます。ソニーもレコーダーの説明書で、録音の前にためし録りをするか、録音中の音をモニターしながら録るよう勧めています。録音レベルを手で合わせられるレコーダーやビデオカメラを使うときの合わせ方と、別に録った音を映像に合わせる手順は、卒業式の呼びかけ・合唱をきれいに録る方法|体育館の反響と音割れを防ぐに書きました。
iPhone 16以降は、初めの設定で空間オーディオで録音し、「設定」>「カメラ」>「サウンド収録」で「空間オーディオ」「ステレオ」「モノ」を選べます。空間オーディオで撮ったビデオは、写真アプリの「オーディオミックス」で音を整えられますが、「フレーム」はフレームに写っていない音源からの声を低減させる設定です(Apple)。画面に入っていない聞き手の声も小さくなりうるので、聞き手の声を残したいなら、使う前に聞き比べます。
Androidのスマホは、音の設定の名前もあるなしも機種ごとに違うので、説明書で確かめてください。
iPhoneは対応するモデルなら初めの設定でHDRのビデオを撮りますが、DVDとふつうのブルーレイにはHDRを収める仕組みがありません。ディスクで見るつもりなら、「設定」>「カメラ」>「ビデオ撮影」の「HDRビデオ」(モデルによっては「HDR」)をオフにして撮る方法もあります。縦の動画がテレビで小さく映る理由と、空き容量の数え方は、お盆・正月の帰省で家族の動画を残す|撮り方・集め方と、祖父母に贈るDVDに詳しく書きました。
当日は、いつもの部屋で何回かに分けて聞く
場所は、話す人がふだん過ごしている部屋が向いています。いつもの椅子に座ってもらい、窓の光が顔に当たる向きにします。窓を背にすると、逆光で顔が暗く写りやすくなります。テレビは消しておき、エアコンの風の音が気になるなら、撮るあいだだけ弱めます。
録画は、最初のあいさつの前から回しておき、途中で止めずに回し続けます。話の区切りごとにボタンを押し直すと、押し遅れて話し始めが欠けることがあるからです。言い直しや言いよどみがあっても止めず、切るかどうかは編集のときに決めます。
1回の長さに決まりはありません。話す人の疲れ具合を見て、区切りのよいところで終え、続きは別の日にします。何回かに分けると、前の回のあとで思い出した話を、次の回で聞けることもあります。聞き手は、話の途中で次の質問をかぶせず、話が止まったら少し待ちます。人が多い席では話しにくい話もあるので、家族が集まる日に撮る回とは別に、1人ずつ聞く回も作っておきます。
撮った日のうちにコピーし、名前を付ける
撮り終えたら、その日のうちに動画をパソコンや外付けのドライブ、クラウドにコピーし、スマホの中だけに置いたままにしません。ファイルやフォルダの名前には「2026-10_第2回_結婚と子育て」のように、年月と回、話の中身を入れておくと、何年かたって見返すときに探せます。NARAの手引きも、フォルダの名前に日付と出来事を入れると見つけやすいとしています。本人が「ここは撮らないで」と言った場面があれば、その時刻もメモに残すと、編集のときに外し忘れません。
録画は止めずに回し続け、1回で全部を撮ろうとしない
終活ムービーの構成と編集|元の動画は残し、見せる版を短く
撮った動画は、2つに分けて扱います。1つは、撮ったままの元の動画です。言い直しや脱線、長い沈黙も含めて、手を加えずに残します。東京文化財研究所の手引きは、作品に使わなかった場面を含む未編集素材について、記録としての価値はきわめて高く、将来にわたって活用できる状態で保管することが重要だとしています。
もう1つが、家族が見るために短くまとめた見せる版です。見せる版の長さに決まりはなく、親が家でゆっくり見返すのか、家族の集まりで流すのかで決めます。
構成の一例|時代の順に章を立てる
構成に決まった型はありませんが、時代の順に章を立てると、生まれてから今までの流れがそのまま伝わります。
- はじめに、今の本人の顔と名前、撮った年
- 生まれた家と、子どものころ
- 学校と、働き始めたころ
- 結婚と、子育てのころ
- 仕事や暮らしで、長く続けてきたこと
- 今の暮らしと、家族へのひと言
章の頭にその時代の写真を1枚挟むと、見ている家族にも時代の移り目が分かります。写真を多く入れるなら、枚数は、長さ(秒)を1枚を見せる秒数で割って逆に数えます。ディスクにするなら、章の頭にチャプターを付けておくと、見たい章へ飛べます。付け方はチャプター分けとは?DVD・ブルーレイの章の付け方と数の目安で説明しています。
編集が難しいときは、章ごとのファイルを並べる
編集アプリに慣れていなくても、撮るときに回や章ごとにファイルを分けておけば、ファイル名の頭に「01_」「02_」と番号を付けて並べるだけで、順に見られる形になります。
見せる版を作るなら、iPhoneのiMovieやパソコンの編集アプリなど、手元にあるもので足ります。書き出しは1080p(1920×1080)にし、iPhoneのiMovieでは、HDRのビデオが入っていると初めからオンになる書き出しの「HDR」をオフにします(Apple)。書き出したら、そのファイルを最初から最後まで再生して、名前や年の誤字と、音の大きさの変わり目を確かめます。
方言や話しぶりは直さず、字幕で補う
方言や、その人らしい言い回しは、直さずに残します。手引きも、現場の音や人の声はそれ自体が貴重な記録なので映像と合わせて生かすよう書き、字幕やナレーションを使うときには十分な配慮が必要だとしています。聞き取りにくいところは、話したとおりに文字にした字幕で補い、分かりにくい言葉にだけ括弧で短く意味を添えると、話しぶりを残したまま意味が伝わります。字幕の入れ方は動画に字幕を入れる方法|聞き取りにくい音声を補う実務とDVDでの扱いにまとめました。
外に渡す前に、語った本人に見てもらう
見せる版ができたら、親戚に配ったり集まりで流したりする前に、語った本人に見てもらいます。手引きは、本編集の前に試写をして、記録された伝承者にも確かめてもらうことを原則とするよう勧めています。本人が外してほしいと言った場面は外し、名前や年の間違いもここで直します。
語られる人と写る人への配慮|他人の病歴・家の事情・写真
聞き書きをしていると、本人のことだけでなく、きょうだいや近所の人、昔の職場の人の話も出てきます。誰かの病気や、家の中のもめごとが語られることもあります。家族で見る版に残すかどうかを本人と決め、家族の外に渡す版や人前で流す版からは、語られた人が困る話を外しておきます。
個人情報保護委員会のガイドラインは、本人が判別できる映像や、特定の個人を識別できる音声の録音を、個人情報の例に挙げています。病歴は、不当な差別や偏見が生じないよう取り扱いに特に配慮を要する「要配慮個人情報」の一つです。法律は事業者に、取得するときには原則として本人の同意を得るよう求めています(個人情報保護法第2条第3項・第20条第2項)。
このガイドラインは事業者に向けたものですが、家族の記録でも同じ考え方で、話に出てきた人の病気や家の事情は、家族の外に出す前に、その人か、その人の家族に確かめます。
個人情報は生きている人の情報ですが、亡くなった人の話が、同時に遺族など生きている人の情報でもあるときは、その人の個人情報にあたる、とガイドラインは説明しています。亡くなった親族の病気や家のことが語られた場面も、残された家族が困らないかを考えて、外に出す版に入れるかを決めます。
写っている人の了解
聞き書きの映像には、話す本人のほか、聞き手や同席した家族も写ります。肖像権は、自分の肖像をみだりに他人に公開されない権利で、法律に定めはなく、判例によって確立されてきた権利です。文化庁は学校向けの冊子で、他人の肖像を使うときは、あとでトラブルにならないよう、事前に本人や保護者の承諾を得ておくよう勧めています。
個人情報保護委員会も、会社の行事で撮った写真を社内で展示する例について、プライバシーの権利や肖像権の侵害にあたる場合もあると注意しています。そのうえで、展示の期間を限ること、不特定多数に渡すときに本人の同意を得ることを、望ましい取り組みとして挙げています。親戚に配る前やネットに上げる前には、写っている本人に聞いておき、写りたくない人がいれば、事情は聞かずに外します。
写真館の写真と、人が撮った写真
章の頭に入れる昔の写真にも、権利があります。写真も著作権法で守られる著作物です(第10条に「写真の著作物」が挙がっています)。家庭内など限られた範囲で、仕事以外で使うために、使う本人が複製するのが「私的使用のための複製」です(第30条・文化庁)。
親戚や友人が撮った写真と、写真館で撮ってもらった写真は、撮った人や権利を持つ側に使い方を伝え、確かめてから使います。写真館の写真は、使える範囲が写真館の規約や、データを受け取るときの条件で決まるので、写真館に聞きます。誰が撮ったか分からない写真は、家族で見る版にだけ入れる、という分け方もできます。
見せる相手が広がるほど、あとで確かめることが増える
曲を入れるなら、家で見るか配るかで扱いが変わる
語りが主役の映像なので、曲を入れずに、話す人の声とその場の音だけで仕上げる方法もあります。先の手引きも、BGMや効果音を使うときには十分な配慮が必要だとしています。入れるなら、曲を入れた動画を作ることは複製、無料でも公衆に配ることは頒布にあたる(著作権法第2条)と知ったうえで、見せ方ごとに扱いを確かめます。
| 使い方 |
曲の扱い |
家族が家で 見るために 自分で作る |
私的使用の複製 (第30条)。 許諾は要らない。 |
別の家に住む 家族に渡す |
私的使用に 入るかは、一律には 言えない。 |
| 親戚に配る |
私的使用の範囲を 超えるなら、 曲と音源の 手続きが要る。 無料で配っても、 公衆なら頒布。 |
法事や 集まりの 席で流す |
営利目的でなく、 料金を取らず、 出演者に報酬が なければ要らない (第38条)。 |
席で流す 動画を作る |
複製にあたり、 第38条の例外には 入らない。 |
家族が家で見るために自分で作るのは、著作権法第30条の「私的使用のための複製」として許諾なしにできます。文化庁の説明では、家庭内など限られた範囲で、仕事以外で使うために、使う本人が複製することが条件です。家で見るために作った複製を、その目的の外で配ったり人前で流したりすると、複製をしたものとみなされます(第49条)。店にディスクの作成を頼むと、複製するのが使う本人ではなくなるため、私的使用の例外にはあたりません。
市販のCDや音楽配信の曲には、作詞者・作曲者の著作権のほか、歌手や演奏家、レコード製作者の権利も含まれています(JASRAC)。配る版で市販の音をそのまま使うなら、曲の手続きとは別に、レコード会社などの許諾も要ります。配る版は曲を外すか、規約で使い方が認められた音源に替える方法があります。申し込みの流れは、還暦・金婚式の思い出ムービーをDVDで贈る方法|写真の集め方・曲・渡し方の曲の節にまとめました。
終活で動画を残すなら、家族が開ける形と置き場所まで決める
撮って編集した動画が、話した本人のスマホやパソコンの中にしかないと、家族はたどり着けないことがあります。何十年先に家族が見られるように、残し方は3つを組み合わせます。家のテレビで見るためのDVD、ディスクとは別に置く元のファイル、置き場所を家族に伝えるメモです。
祖父母や親が家のテレビで見るなら、DVDにして1枚目を試す
話した本人が家のテレビで見返せるようにするなら、DVDが基本です。DVDプレーヤーでは、ブルーレイを再生できません(ソニー)。反対に、ブルーレイのプレーヤーやレコーダーはDVDも再生できるものが多いので、見る家の機器が分からないならDVDにします。MP4などの動画ファイルをそのままDVDに書き込んだものは、一般的な家庭用DVDプレーヤーでは再生できない(パナソニック)ので、プレーヤーで見られるDVDビデオの形に組み立てて作ります。
DVDビデオの形で作ったディスクでも、記録状態や記録した機器・ソフトの特性で再生できないことがある、とソニーの説明書は書いています。何枚か作るなら、先に1枚を作り、見る家と同じ種類の機器で最初から最後まで再生して確かめます。ひとりで見返すなら、テレビの入力の切り換え方と、プレーヤーの電源・再生・取り出しのボタンを紙に書き、ディスクと一緒に渡しておきます。配る前の確かめ方は配るDVDを、どの家のプレーヤーでも見られるように作るには|形式・ディスク・確認にまとめました。
DVD-R(4.7GB)に無理なく入るのは、レコーダーのSPモード相当の画質(約5Mbps)で約2時間です。見せる版とは別に、何時間にもなる元の動画までディスクにするなら、何枚かに分けるか、見る家にブルーレイの機器があればブルーレイにします。
ブルーレイはDVDプレーヤーで再生できない。機器が分からないならDVDにする
元のファイルは、ディスクとは別に2か所以上に
ディスクは、テレビで見るための複製です。DVDの映像は720×480、ブルーレイでも1920×1080に作り直されるので、撮ったままの細かさは元のファイルにしか残りません。先の手引きも、DVDは再生の利便性が高く視聴版に向く一方、データを非可逆的に圧縮するため理想的な保存の形とは言えず、作品のマスターは視聴版とは別に保存するのが望ましいとしています。
元の動画と見せる版のファイルは、パソコンと外付けのドライブ、クラウドなど、2か所以上に置きます。NARAの手引きは、複製を3つ、種類の違う媒体に、できれば別々の場所に持つよう勧め、クラウドだけに頼らないよう書いています。カナダ保存研究所の資料では、平均の寿命の目安は、一般的なDVD-Rで10〜20年、BD-Rで5〜10年です。組み方は写真・動画の長期保存はクラウドとDVDのどっち?|3-2-1バックアップの組み方で説明しています。
置き場所を家族に伝える|エンディングノートとアカウント
動画があることと置き場所が伝わっていなければ、家族に見てもらうことはできません。エンディングノートや、通帳などの大事な書類と同じ場所に置くメモに、次のことを書いておきます。
- ディスクを置いた棚
- 元のファイルを置いたドライブ
- 使っているクラウドのサービス名とアカウント(メールアドレス)
実家を片付けるときに、ディスクがほかの荷物と一緒に処分されないよう、作ったことは家族の誰かに話しておきます。実家に残るアルバムやビデオテープの整理は、実家じまいで出てきた写真・ビデオテープの整理とデータ化|急ぐものの順番と残し方で扱っています。
クラウドに置いた分は、アカウントに入れなければ取り出せません。Appleでは、自分の死後にApple Accountの写真などのデータにアクセスできる人を、「故人アカウント管理連絡先」として選んでおけます。申請には、追加したときに作られるアクセスキーと、日本では死亡の記載がある戸籍謄本が要り、Appleはアクセスキーの控えをプリントして遺産相続の書類と一緒に保管しておくと安心だとしています。
Googleのアカウント無効化管理ツールでは、アカウントが一定の期間使われなかったときに、データの一部を共有する相手を10人まで決めておけます。家に置いたディスクや外付けのドライブは、パスワードを掛けていなければ、置き場所さえ分かればログインせずに開けます。
動画は遺言書の代わりにはならない
財産の分け方や葬儀の希望を、自分史の動画で話しておきたい人もいます。気持ちを伝えるには向いていますが、動画に話しただけでは、法律の方式による遺言にはなりません。
民法は、遺言は法律に定める方式に従わなければできないとし(第960条)、ふつうの方式を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つとしています(第967条)。自筆証書なら、全文と日付、氏名を自分で書いて印を押すのが原則です(第968条)。財産の分け方を法律の効力のある形で残すなら、動画とは別に遺言書を作り、方式は法務局や公証役場、弁護士などに確かめてください。
当社に頼むとき|できあがった動画をDVD・ブルーレイにする
当社(ディスクメーカー・大阪市北区梅田)は、1枚から注文できる、DVD・ブルーレイの書き込み代行の小さな店で、受け付けるのは完成した動画のデータです。撮った動画や、編集を終えた見せる版のファイルを、ギガファイル便にアップロードし、その共有URLを注文フォームに貼っていただければ、スマホからも入稿できます。
回や章ごとに動画が分かれているときは、ファイル名の頭に「01_」「02_」と付けて、収める順番を指定してください。ギガファイル便にダウンロードパスワードを付けたときは、URLを貼ると開く「ダウンロードパスワード」の欄に入れてください。入れないと注文に進めません。
受け取った動画はプレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、大阪・梅田の店舗でお渡しします。仕上がりはDVDが720×480(NTSC 29.97fps・MPEG-2)、ブルーレイが1920×1080です。章ごとに飛べるようにするなら、チャプター分けを選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に、2つ目以降の区切りの位置を時刻で入れます(1つ目は動画の冒頭00:00:00に自動で入り、最大50チャプター)。
盤面に題と撮った年を入れるなら、盤面レーベル印刷を選ぶと開く欄に、題と年も入れた画像をアップロードするか、ギガファイル便のURLを入れます。話した本人の家の再生機器や渡す日など、ほかの希望は注文フォームの備考欄に書いてください。
料金は、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)1,500円です。きょうだいや親戚の分のように同じ内容の2枚目からは、追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)1,000円です。見せる版と元の動画のように内容が違うディスクや、DVDとブルーレイの両方を作る場合は、それぞれ1枚目から数えます。
チャプター分け(1枚あたり)+1,500円と盤面レーベル印刷(1枚あたり)+1,000円は基本料金に含まれないオプションで、付けた枚数分かかります。ほかの項目の金額は料金表に載せています。
通常便は受付から5営業日で発送し、お届けは発送から2〜3日です。15時以降のご注文は翌営業日の受付で、発送までの日数は、土日祝・休業日を除いた営業日で数えます。米寿や金婚式のお祝いの日のように渡す日が決まっているなら、その日から逆に数えて注文してください。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。
よくある質問
Q1. 自分史ビデオや終活ムービーは、何から始めればいいですか?
話す人と聞く人、見せる相手を決め、話す人に何に使うかを伝えて了解をもらうところからです。次に、昔の写真やアルバムを出してきて、生まれた家と子どものころ、学校と働き始めたころ、結婚と子育て、今の暮らしと、時代ごとに聞くことを書き出します。撮るのはスマホで足ります。三脚に固定して横向きにし、マイクを口元に近づけます。
Q2. 自分史ビデオと聞き書きの映像は、何が違いますか?
自分史ビデオは、本人が思い立って自分の人生を語る映像です。聞き書きの映像は、子や孫が聞き手になって、祖父母や親の話を聞いて残す映像です。撮り方と残し方は同じなので、本人が話したいことを決め、家族が質問で話を引き出す、というように両方を組み合わせることもできます。ひとりで話しにくいときは、家族に聞き手になってもらいます。
Q3. 終活ムービーは、どんな構成にすればいいですか?
決まった型はありませんが、時代の順に章を立てると組み立てやすくなります。一例は、今の本人の顔と名前、生まれた家と子どものころ、学校と働き始めたころ、結婚と子育て、長く続けてきた仕事や暮らし、今の暮らしと家族へのひと言です。章の頭にその時代の写真を挟み、ディスクにするならチャプターを付けると、見たい章へ飛べます。
Q4. 祖父母へのインタビューでは、どんな質問をすればいいですか?
「どんな人生でしたか」と大きく聞くより、「生まれた家は何部屋あった?」「最初の給料で何を買った?」のように、物や場所、人の名前を入れて聞くと、場面を思い出す手がかりになります。質問は時代の順に並べ、昔の写真やアルバムを見ながら「これはどこ?」「隣は誰?」と聞いていきます。話したくないことは聞かないと、先に約束しておきます。
Q5. カメラの前だと固まってしまいます。うまく話すにはどうすればいいですか?
ひとりでカメラに向かわず、家族に聞き手になってもらい、問いに答える形にします。場所はふだん過ごしている部屋のいつもの椅子にし、録画は最初のあいさつの前から回しておきます。言い直しても止めずに続け、切るかどうかは編集のときに決めます。1回で全部を撮ろうとせず、疲れたら区切りのよいところで終えて、続きは別の日にします。
Q6. スマホだけで撮っても、声ははっきり録れますか?
マイクと口元の距離で変わります。オーディオテクニカは、口元から離れすぎると入力を増幅するゲインを上げることになり、周りの音も大きくなって雑音が目立ちやすくなると説明しています。スマホを話す人に近づけるか、レコーダーを話す人の近くに置いて音を別に録ります。本番の前に試し撮りをして、イヤホンで聞いて確かめます。
Q7. 方言が強くて、孫の世代が聞き取れないかもしれません。どうすればいいですか?
方言は直さずに残し、字幕で補います。話したとおりに文字にして、分かりにくい言葉にだけ括弧で短く意味を添えると、話しぶりを残したまま意味が伝わります。
Q8. 自分史の動画は、遺言の代わりになりますか?
動画に話しただけでは、法律の方式による遺言にはなりません。民法は、遺言は法律に定める方式に従わなければできないとし(第960条)、ふつうの方式を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つとしています(第967条)。気持ちや思い出は動画で伝え、財産の分け方などは遺言書で残します。方式は法務局や公証役場、弁護士などに確かめてください。
Q9. 祖父母の家にはDVDプレーヤーしかありません。どう渡せばいいですか?
DVDにします。ブルーレイはDVDプレーヤーでは再生できず(ソニー)、MP4などの動画ファイルをそのまま書き込んだDVDも、一般的な家庭用DVDプレーヤーでは再生できません(パナソニック)。プレーヤーで見られるDVDビデオの形に組み立てて作り、1枚目を同じ種類の機器で最後まで再生して確かめてから渡します。操作のボタンを紙に書いて添えると、ひとりでも見返せます。
Q10. 撮影や編集も、ディスクメーカーに頼めますか?
当社は撮影と編集をしていません。撮るのは家族かご本人で、編集は家族か、映像の制作会社などです。当社は、できあがった動画をDVD・ブルーレイにする書き込み代行の店です。ギガファイル便のURLを注文フォームに貼って入稿でき、回や章ごとに分かれた動画は、ファイル名の頭の「01_」「02_」で収める順番を指定できます。実際のプレーヤーで再生を確かめてから発送するか、店舗でお渡しします。
参考にした公式の情報
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法律の運用、アプリや機器の機能と画面は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月23日から27日にかけて確かめた法令と各公式ページの記載をもとにしたものです。東京文化財研究所の手引きは地域の祭りや民俗芸能の映像記録のための資料で、家族の記録には考え方を当てはめて書きました。遺言の方式は法務局や公証役場、弁護士などに、曲の扱いはJASRACなどの権利者に確かめてください。
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