この記事の要点
文部科学省ガイドラインはUSBメモリを一律禁止していません 。求めているのは学校支給の公的な媒体に限ることと、暗号化機能つき媒体の利用(推奨事項)です。
外部持ち出しの定義は「学校が構築・管理する環境の外に出すこと」 。学校管理下のクラウド内にデータを置くだけなら外部持ち出しには該当しません。
外部ストレージやメールで送る場合、重要性分類Ⅲ以上はアクセス制限か暗号化が必須 で、使ってよいのは学校から提供される公式サービスだけです。
Google ドライブの共有は既定30日の有効期限を設定でき 、ギガファイル便はダウンロードパスワードと削除キーを設定できます。渡した後に閉じられる経路を選びます。
公立学校でUSBを紛失すると、個人情報保護法上は発覚日から3〜5日以内の速報 が求められる事態になり得ます。記録簿は、そのときに役に立ちます。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
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運動会の記録映像を保護者に配りたい。卒業アルバム用の動画を制作会社に渡したい。部活動の大会映像を他校と共有したい。どれも去年までUSBメモリ1本で済んでいたのに、今年から「外部記録媒体の持ち出し禁止」が通知され、手が止まっている。情報担当の先生や事務職員から、こうした相談は毎年この時期に増えます。
文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月改訂)は、USBメモリの使用を一律には禁じていません。映像データを規程に触れずに外部へ渡す経路は、学校が契約する公式クラウドの共有リンク、自治体が認めた約款サービス、許可・暗号化・記録をそろえた物理媒体の3つです。基本は、公式クラウドの期限付き共有リンクです。
困るのは、禁止された理由は説明されても、代わりにどうすればいいかまでは通知に書かれていないことです。管理職に聞いても「セキュリティポリシーを見て」と返され、そのポリシーは条文が抽象的で、目の前にある30GBのMP4をどう外に出すのかは読み取れません。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
USB禁止のきっかけは、持ち帰り作業と、紛失で懲戒処分を受けた教員62名 禁止されているのは媒体か行為か|ガイドライン本文はUSBを一律禁止していない 映像データの重要性分類を先に決める|行事の記録映像はⅢ、評価が加われば実質Ⅱ 映像を外部へ渡す3つの経路|公式クラウド、約款サービス、物理媒体 共有リンクは期限とダウンロード可否をセットで設定する|Google ドライブは既定30日 受け渡し記録の項目はガイドラインが列挙しているので、そのまま様式に写す 業者へ入稿するときは5点を確かめ、共有URLで受けられるかを最初に聞く 紛失したときの報告期限は3〜5日で、公立学校は本人100人超で報告対象になる よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
USB禁止のきっかけは、持ち帰り作業と、紛失で懲戒処分を受けた教員62名
USBメモリの持ち出しを禁じる規程は、どの自治体でも唐突に生まれたわけではありません。文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は、この対策が必要になった理由を本文にはっきり書いています。
ひとつは、成績処理等を自宅で行うことを目的として、教員が個人情報を自宅に持ち帰る場合があることです。もうひとつは、個人情報が記載された電子データを紛失することにより懲戒処分等を受けた教員が、平成27年度で62名存在したこと(同省「平成27年度公立学校教職員の人事行政状況調査」)です。これを踏まえて、平成29年のガイドライン策定時に、教員が個人情報を外部に持ち出す際のルールについて考え方が明確化されました。
つまり規程の出発点は「USBという物が危ない」ではなく、「学校が管理できない場所に、児童生徒の情報の複製が残ってしまう」という状態そのものです。ここを取り違えると、代替手段の選び方を間違えます。USBをやめて個人のクラウドに上げれば、管理外に複製が残るという構造は何ひとつ変わっていないからです。
ガイドラインは5回改訂されている。手元の規程が何年版を参照しているか確認する
平成29年10月の策定後の改訂は、次の5回です。
令和元年12月(GIGAスクール構想の始動に対応)
令和3年5月(クラウドサービスの活用を前提としたネットワーク構成等に対応)
令和4年3月(アクセス制御による対策の技術的詳細を追記)
令和6年1月(次世代の校務DX環境を見据えた考え方の提示)
令和7年3月
最新の令和7年3月改訂は、GIGAスクール構想の進展により、教育現場のクラウド活用が進んでいることを踏まえています。情報資産の分類・仕分け・管理方法の見直しと、次世代校務DX環境への移行に必要なセキュリティ対策の記載の見直しを、主な目的としています。
実務では、どの版を下敷きにしているかで差が出ます。校内で運用している実施手順が令和3年版や令和4年版のガイドラインを下敷きにしていると、クラウドを前提とした最新の考え方が反映されていない可能性があります。「USBはだめ、クラウドも許可されていない」と身動きが取れなくなっている学校は、たいてい規程の版が古いままです。まず自校の実施手順の巻末に書かれている参照年月を確認してください。
禁止されているのは媒体か行為か|ガイドライン本文はUSBを一律禁止していない
意外に思われるかもしれませんが、文部科学省のガイドライン本体は、USBメモリの使用を全面的に禁止してはいません。第2編3.3「情報資産の外部持ち出し」の③「外部電磁的記録媒体を用いた情報の外部持ち出し」は、USBメモリ等の物理的な媒体による外部持ち出しは紛失・盗難リスクを伴うとしています。そのうえで、遵守事項を2つ挙げています。
管理された外部電磁的記録媒体以外の使用禁止 。教育委員会又は学校から支給された公的な媒体のみを利用すること
外部電磁的記録媒体の暗号化の徹底 。暗号化機能つきの媒体を利用し、暗号化機能を活かすこと(【推奨事項】と明記)
禁じられているのは私物の媒体を使うことであり、公的媒体を暗号化して使うこと自体は想定内です。それでも各自治体が「全面禁止」にまでするのは、ガイドラインがあくまで、教育委員会等がポリシーを策定・見直しする際の参考文書だからです。実際に先生方を拘束するのは、自治体が独自に定めたポリシーです。
運用の手間と事故時の説明責任を天秤にかけて、支給媒体の管理そのものをやめた自治体は珍しくありません。ここは一般論ではなく、自校に適用されている教育委員会のポリシー本文を読んで確認するしかない部分です。
「外部持ち出し」の定義を読むと、抜け道ではなく正攻法が見える
同じ章の解説に、外部持ち出しの定義が書かれています。外部持ち出しとは、教育委員会・学校が構築・管理している環境の外に、情報資産を持ち出すことを指します。ここでいう環境には、ガイドラインが適用されているクラウドサービスや、学校外での利用が認められている情報端末等も入ります。
この定義をもとに、令和7年3月版は具体的な整理をしています。第2編9「SaaS型パブリッククラウドサービスの利用」の解説には、学校が管理するパブリッククラウドサービスにおいては、パブリッククラウド内にデータを保管しても情報資産の外部持ち出しには該当しない と明記されています。
一方で、SaaS型パブリッククラウドから、教育委員会が貸与するなど管理が及ぶ端末以外の外部の端末にファイルをダウンロードして情報処理をする場合には、外部持ち出しに該当するとしています。その場合は安全管理措置が必要になる、としています。求められるのは、第一に外部端末の安全性確認、第二に情報処理した学校の情報資産を端末内に残置せず消去することです。
読み替えると、規程に触れずに映像を外へ渡す要点は、「学校管理下のクラウドから外に出る瞬間を、どう設計して、どう記録するか」に集約されます。物理媒体を避けること自体が目的ではありません。
鍵は、学校管理下のクラウドから外に出る瞬間をどう設計して記録するか
映像データの重要性分類を先に決める|行事の記録映像はⅢ、評価が加われば実質Ⅱ
ガイドラインは情報資産を重要性分類Ⅰ〜Ⅳの4段階に分け、分類ごとに外部持ち出しの手続きを変えています。渡し方を検討する前に、その映像がどの分類かを決めておかないと、必要な許可も暗号化も判断できません。
分類
ガイドラインの定義(要旨)
映像での該当例
Ⅰ
セキュリティ侵害が教職員又は児童生徒の生命、財産、プライバシー等へ重大な影響を及ぼすもの。要配慮個人情報はすべからくⅠに該当
健康診断・特別支援・相談記録に関わる映像
Ⅱ
セキュリティ侵害が学校事務及び教育活動の実施に重大な影響を及ぼすもの(Ⅰを除く)。健康、指導、成績、進路に関わる情報等
個別の指導記録が付された映像、評価目的の実技動画
Ⅲ
セキュリティ侵害が学校事務及び教育活動の実施に影響を及ぼすもの(Ⅱ以上を除く)。学習活動の中で生成される情報など
運動会・文化祭・卒業式の記録映像、部活動の練習動画
Ⅳ
侵害が発生しても学校事務及び教育活動の実施にほとんど影響を及ぼさない情報
児童生徒が映らない校舎・設備の撮影素材
行事の記録映像は、通常はⅢで運用できます。ガイドラインは、ワークシートや授業中の確認テストなど学習活動の中で生成される情報は、児童生徒が教室等において相互に閲覧することが想定されるため、Ⅲに分類されるとしています。
ただし注意書きも添えられていて、学習活動の中で生成される情報であっても、教職員等の評価等が加えられ、児童生徒が相互に閲覧すること等が想定されない状態のものについては、Ⅱとして取り扱うことが適当な場合もある とされています。実技テストの撮影や、指導コメントを重ねた動画はここに当たると考えられます。
分類で変わるのは「誰の許可が要るか」と「記録を残すか」
第2編3.3(7)①は、分類に応じた外部持ち出し制限をこう定めています。重要性分類Ⅱ以上を外部持ち出しする場合は、限定されたアクセスの措置設定(アクセス制限や暗号化)を行い、教育情報セキュリティ管理者の個別許可 を得たうえで、持ち出し・持ち帰りの記録をつけなければなりません。Ⅲについては、管理者の判断で包括的許可 を可としています。いずれの場合も、外部持ち出しツールにアクセス制限や暗号化の機能があるなら、その機能を有効にしなければならないとされています。
実務としては、行事映像をⅢと位置づけて包括的許可を1件取っておくのが最も摩擦が少ないやり方です。たとえば「本校の行事記録映像(児童生徒の氏名・所属を含み、成績・健康情報を含まないもの)は重要性分類Ⅲとして扱い、公式クラウドの期限付き共有リンクによる外部提供を包括的に許可する」という1枚の決裁を、年度当初に通しておきます。そうすると、行事のたびに稟議を回さずに済みます。
なお、映像は分類を決める前に容量とファイル形式を把握しておくと、以降の判断が速くなります。同じ1時間の映像でも、撮って出しのMOVと書き出し済みのMP4では10倍近く容量が違うことがあり、選べる経路が変わります。形式ごとの特性はMP4・MOV・AVIの違いを整理した記事 にまとめています。
映像を外部へ渡す3つの経路|公式クラウド、約款サービス、物理媒体
ガイドラインの条文に沿うと、映像データを外部へ渡す経路は3つに整理できます。それぞれ、何が条件になっているかが明確に違います。
どの経路も条件つきで使える。条件の重さがそれぞれ違う
経路A|学校が契約する公式クラウドの共有リンク(最も摩擦が少ない)
Google Workspace for EducationやMicrosoft 365など、教育委員会・学校が正式に契約しているサービスから共有リンクを発行する方法です。第2編3.3(7)②は、電子メールや外部ストレージサービスによる外部送信について2点を定めています。
(ア)重要性分類Ⅲ以上の情報を外部送信する者は、限定されたアクセスの措置設定(アクセス制限や暗号化)を行わなければならない
(イ)利用する電子メール、外部ストレージサービスは教育委員会又は学校から提供される公式サービスのみを利用し、私的に契約したサービスを利用してはならない
(イ)が実務では決定的です。先生個人のGmailアドレスや、個人契約のDropboxで渡す運用は、この一文で明確に否定されています。逆に言えば、学校アカウントから発行した共有リンクであれば、条文が想定している正規の経路そのものです。
経路B|ギガファイル便などの約款による外部サービス(要・事前の規定整備)
ガイドラインは第2編9.4「約款による外部サービスの利用」で、ファイル転送サービスを名指しで例示しています。ここでいう約款による外部サービスとは、インターネット上に約款を掲示し、同意した利用者に情報処理機能を提供するサービスを指します。ただし、利用者が必要とする情報セキュリティに関する十分な条件設定の余地があるものは除きます。個別に特約を結べない個人向けWebサービスが該当します。
使ってはいけない、とは書かれていません。書かれているのは前提条件です。教育情報システム管理者は、次の3つを含む規定を整備しなければならない、とされています。
(ア)約款によるサービスを利用してよい範囲
(イ)業務により利用する約款による外部サービス
(ウ)利用手続及び運用手順
加えて、約款に次の2点が規定されていることを、確認しなければならないとされています。
「利用者が登録した情報が、利用者の同意なく無断使用(目的外利用、第三者への提供等)されないこと」
「サービス事業者が業務上知り得た情報の守秘義務が守られること」
ガイドラインが挙げるリスクも具体的です。挙げられているのは次の5点です。
利用者データの取扱いについてのセキュリティ遵守事項が約款に示されていない場合がある
利用者データの利用権限がサービス提供者側に帰属する前提の場合がある
インシデント調査に必要なアクセス記録の提供協力が約款に示されていない場合が多い
安全管理措置が不明な場合が多い
約款や利用規約が予告なく一方的に変更されたりサービスが停止する可能性がある
したがって現場の動きはひとつです。自治体が公開している「利用可能サービス一覧」に当該サービスが載っているかを先に確認し、載っていなければ利用申請を出す。申請時に書く項目もガイドラインが列挙しています。
利用する組織名
利用するサービス
利用目的
利用期間
利用責任者
転送サービスを使う場合の具体的な操作はギガファイル便での入稿手順をまとめた記事 が参考になります。
経路C|物理媒体で渡す(許可・暗号化・記録がセット)
USBメモリや外付けHDDに加え、DVD・ブルーレイも物理媒体です。第2編3.3(7)⑤は、情報資産の運搬について定めています。車両等により重要性分類Ⅲ以上の情報資産を運搬する場合は、必要に応じ暗号化又はパスワードの設定を行う等の安全管理措置を講じ、宛名・差出名を明記して厳重に封印しなければならない、としています。運搬する教職員等は、教育情報セキュリティ管理者の許可を得なければならない、ともしています。
映像は容量が大きいため、これまで物理媒体といえばUSBが選ばれてきました。ただし記録型ディスクは書き換えができない分、渡した後に内容が書き換わらないという性質があります。容量はDVD-Rが片面1層で4.7GB、片面2層で8.5GB、BD-Rが1層25GB、2層50GBです。1時間程度の行事映像であればDVDに収まりますが、画質を保ったまま渡すなら容量差が影響します。DVDとブルーレイの容量・画質・互換性の違い を先に確認しておくと、どちらで焼くかの判断が早くなります。
共有リンクは期限とダウンロード可否をセットで設定する|Google ドライブは既定30日
共有リンクを発行して終わりにすると、そのURLは事実上、期限のないUSBメモリと同じになります。リンクが転送され、退職した職員のブラウザ履歴に残り、誰も回収できない。ガイドラインが求める「限定されたアクセスの措置」は、まさにこの状態を防ぐための設定です。
Google ドライブ|有効期限は既定30日、変更はカレンダーから
Google ドライブでは、共有相手ごとにアクセスの有効期限を設定できます。共有ダイアログで相手を追加したあと、権限の横のメニューから有効期限を追加すると、既定で30日の有効期限になります。カレンダーから任意の日付に変更できます。
ファイルについては閲覧者、閲覧者(コメント可)、編集者に設定でき、フォルダについては閲覧者のみが対象です。この機能は対象となる仕事用アカウントまたは学校用アカウントで利用でき、個人のGmailアカウントでは使えません 。学校のGoogle Workspace for Educationアカウントを使う理由のひとつがここにあります。
閲覧者・閲覧者(コメント可)に対するダウンロード、印刷、コピーの可否は、オーナーが共有設定から切り替えられます。ただし映像を業者や外部に渡す目的ではダウンロードを許可する必要があるため、この制限は使えません。代わりに有効期限を短く設定して補う、というのが実務上の落としどころです。渡す相手が確実に受け取れる日数(多くの場合3〜7日)を見積もって設定します。
ギガファイル便|ダウンロードパスワードと削除キーを両方使う
ギガファイル便は1ファイル300GBまで、個数無制限でアップロードできます。アップロード画面で保持期限を変更でき(初期表示は5日)、ダウンロードパスワードを設定できます。アップロード後には削除キーが表示され、削除キーを控えておけば期限を待たずに自分でファイルを消せます。
見落とせないのは、パスワードを設定してもURLと同じメールに書いてしまえば意味がないという点です。ガイドラインが求めているのは「限定されたアクセスの措置」であって、パスワード欄を埋めることではありません。URLはメールで、パスワードは電話または別のメールで、と経路を分けます。そして相手からダウンロード完了の連絡が来たら、期限を待たずに削除キーで消す。この2手間で、管理外に複製が存在する時間を数日から数時間に縮められます。
「リンクを知っている全員」は最後の手段にする
Google ドライブの一般的なアクセスを「リンクを知っている全員」にすると、URLさえあれば誰でも開けます。相手のメールアドレスを指定する方式に比べて格段に手軽ですが、第2編3.3(7)②(ア)が要求するアクセス制限を満たしているとは言いにくい設定です。重要性分類Ⅲ以上の映像を扱うなら、宛先を個別指定するか、それが難しい相手(フリーメールしか持たない外部業者など)にはパスワード付きの転送サービスを使う、という切り分けが現実的です。
渡した後に閉じられるよう、期限と削除まで決めてから送る
受け渡し記録の項目はガイドラインが列挙しているので、そのまま様式に写す
「記録を残しましょう」で終わる解説が多いのですが、ガイドラインは記録簿の項目まで具体的に書いています。第2編7「運用」の解説(1)情報資産の管理には、次のように列挙されています。
区分
ガイドラインが挙げる記録項目
持ち出し
所属名、名前、日時、持出物、個数、用途、持出の場所、返却日、管理者の確認欄
持ち込み
所属名、名前、日時、持込物、個数、用途、持込の場所、持ち帰り日、管理者の確認欄
さらに解説(3)では、情報資産の持ち出し・持ち込みだけでなく、端末そのもの等の持ち出し及び持ち込みについても記録し保管しなければならないとされています。ノートPCを持ち帰って編集するなら、そのPC自体も記録の対象です。
オンライン送信にも同じ様式を流用できる
この様式は物理媒体を前提に書かれていますが、共有リンクでの送信にもそのまま読み替えて使えます。読み替えの対応はこうなります。
持出物 → ファイル名と重要性分類(例:R7運動会_本編.mp4/分類Ⅲ)
個数 → ファイル数と合計容量
用途 → 提供目的(例:DVD制作委託のための入稿)
持出の場所 → 送信先の組織名と担当者名、使用したサービス名
返却日 → リンクの失効日、または削除を実行した日
管理者の確認欄 → 包括的許可の決裁番号、またはⅡ以上なら個別許可の日付
運用が続く形にすることが何より大事です。スプレッドシート1枚に1件1行で入れていく方式なら、行事のたびに30秒で済みます。紙の様式を印刷して押印する運用は、忙しい行事期に真っ先に省略されます。
年1回の自己点検で見られるのがこの記録
ガイドラインは、教育情報セキュリティ管理者に年1回の学校の自己点検を行い、その結果を情報セキュリティ委員会に報告することを求めています。点検の際に「映像データはどう外部へ渡していますか」と問われたときに、経路と設定と記録がそろっていれば、それが回答そのものになります。逆に、記録がない状態で「クラウドで渡しています」とだけ答えると、その場で運用の見直しを指示されることになりがちです。
記録は事故が起きたときにも役に立ちます。何が、いつ、誰に渡り、いつ失効したかが行として残っていれば、影響範囲の特定が数分で終わります。残っていなければ、全職員への聞き取りから始めることになります。
業者へ入稿するときは5点を確かめ、共有URLで受けられるかを最初に聞く
行事映像をDVDやブルーレイにして保護者に配る、卒業記念として在校生分を作る、といった場面では外部の制作業者に渡すことになります。ここで確認すべき点は、価格や納期より前に5つあります。
価格や納期より前に確かめる。最初に聞くのは、共有URLで受けられるか
1. 入稿を共有URLで受けられるか
最初に聞くべきはここです。共有URLで受けられる業者であれば、USBメモリを校外に持ち出す必要がそもそも発生しません。学校のGoogle ドライブやOneDriveで発行した期限付きリンクをそのまま渡せば、経路Aで完結します。
当社の場合は、ギガファイル便のURLでの入稿に対応しており、ギガファイル便が使えます。USBメモリを郵送して入稿できるかは、注文の前に相談・問い合わせフォームで確かめてください。
2. 約款の2点が確認できるか
ガイドライン第2編9.4(1)②が求めている確認事項です。利用者が登録した情報が同意なく無断使用(目的外利用、第三者への提供等)されないこと、業務上知り得た情報の守秘義務が守られること。業者の利用規約またはプライバシーポリシーで、この2点が読み取れるかを見ます。読み取れなければメールで問い合わせ、その回答を記録簿に添付します。
3. 納品後のデータ削除の時期
制作が終わったあと、預けた映像データがいつ消えるのかを書面で確認します。「納品後○日で削除」という回答が得られれば、記録簿の返却日欄にその日付を書けます。ここが曖昧な業者は、管理外に複製が残り続けることになります。
4. 受領と完了の記録が残るか
入稿を受け取った時点、制作が完了した時点で連絡が来る業者であれば、そのメールをそのまま記録の証跡にできます。
5. オーサリングが料金に含まれるか
見落とされやすいのがこれです。MP4ファイルをディスクに書き込んだだけでは、家庭用のDVDプレーヤーやレコーダーでは再生できません。映像を再生できる形式に組み立てる工程(オーサリング)が別途必要で、この工程が別料金の業者と、料金に含まれる業者があります。オーサリングが必要な理由 を理解しておくと、見積もりの比較で判断を誤りません。
当社ではオーサリングは料金に含まれており、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚から注文できます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも、オプションで対応しています。盤面とケースの印刷は、学年や年度、行事名も入れた画像を入稿してもらう形です。
納期は通常便のほか、お急ぎお届け(+1,500円、平日15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)と特急お届け(+3,000円、平日15時までの注文・入稿で翌日発送)から選べます。当日店舗お渡し(+3,500円、平日12時までの注文・入稿、大阪市北区の店舗で受け取り)も選べます。
できあがったディスクは、学年・年度・行事名を盤面に印刷しておくと、数年後に学校のディスク棚から探すときに役に立ちます。保管そのものにもコツがあり、ケースに立てて置く、高温多湿と直射日光を避けるといった基本を外すと数年で読めなくなることがあります。詳しくはDVD・CDの正しい保管方法 を参照してください。
紛失したときの報告期限は3〜5日で、公立学校は本人100人超で報告対象になる
ここまでの手順を面倒に感じるかもしれません。ただ、実際に事故が起きたときに何が起きるかを知っておくと、手順の重さの意味が変わります。
公立学校は個人情報保護法上の「行政機関等」に含まれます。個人情報保護委員会が示す漏えい等報告の対象となる事態は、行政機関等の場合、次のとおりです。
要配慮個人情報を含む保有個人情報の漏えい等(USBメモリの紛失が例として挙げられています )
財産的被害が生じるおそれがある保有個人情報の漏えい等
不正の目的による漏えい等のおそれ(不正アクセス、ランサムウェア、盗難、改ざん等)
本人の数が100人を超える漏えい等(民間事業者の1,000人超より厳しい基準)
条例要配慮個人情報を含む漏えい等(地方公共団体の機関・地方独立行政法人のみ)
報告期限は、速報が発覚日から3〜5日以内、確報が発覚日から30日以内(不正の目的による場合は60日以内)です。学年1クラス35人として3クラス分の名簿が入ったUSBを1本落とせば、それだけで本人100人超の基準に触れます。発覚から3〜5日以内に、個人情報保護委員会への速報を出す事態になります。映像データも、児童生徒の顔と氏名が特定できる形で含まれていれば同じ土俵です。
本人100人超で報告対象になり、速報は発覚から3〜5日以内
期限付きリンクは「回収できる」ことに価値がある
この観点から見ると、期限付き共有リンクの本当の利点は、手軽さではありません。渡した後に閉じられること です。USBメモリは一度手を離れたら回収できませんが、共有リンクは失効させれば、それ以降のアクセスは止まります。削除キーを使えば実体そのものを消せます。管理外に複製が存在する時間を短くできる経路を選ぶ、というのが規程の趣旨に一番素直に沿った考え方だと言えます。
渡すことと残すことは別の設計にする
最後にひとつ。外部へ渡す経路を整えることと、学校に原本を残すことは別の課題です。共有リンクを失効させ、転送サービスから消したあと、原本がどこにあるかを決めておかないと、次は「行事映像が消えた」という別種の事故になります。
実務的には、クラウド上に1つ、校内のNASや外付けドライブに1つ、そして書き換えのできない記録型ディスクに1つ、という三層構成が扱いやすいと考えられます。媒体と場所を分けて複数持つ考え方は3-2-1バックアップの実践 にまとめています。ディスクを1枚焼いておけば、クラウドの契約が切れても、担当者が異動しても、盤面の年度表記だけで内容にたどり着けます。
よくある質問
Q. 学校でUSBメモリの持ち出しが禁止されているのに、外部に映像データを渡すにはどうすればいいですか? A. 学校が正式に契約しているGoogle Workspace for EducationやMicrosoft 365から、期限付きの共有リンクを発行して渡すのが基本の経路です。文部科学省のガイドラインは、外部ストレージサービスを使う場合は教育委員会または学校から提供される公式サービスのみを利用すること、重要性分類Ⅲ以上の情報を外部送信する際はアクセス制限や暗号化を行うことを定めています。公式クラウドの共有リンクは、この条文が想定している正規の経路そのものです。相手がファイル転送サービスしか使えない場合は、自治体の利用可能サービス一覧に載っているかを先に確認してください。
Q. ギガファイル便は学校で使ってもいいのですか? A. 自治体のポリシーで利用が認められていれば使えます。文部科学省のガイドラインは第2編9.4でファイル転送サービスを「約款による外部サービス」として明示的に扱っており、禁止ではなく条件つきで想定しています。条件は、教育情報システム管理者が利用してよい範囲・利用するサービス・利用手続を規定として整備していること、そして約款に「登録した情報が同意なく無断使用されないこと」「事業者の守秘義務」が示されていることの確認です。まず自治体の許可済みサービス一覧を確認し、載っていなければ利用申請を出してください。無断で使うと規程違反になります。
Q. 先生個人のGoogle ドライブやDropboxで渡すのはだめですか? A. だめです。ガイドライン第2編3.3(7)②は「利用する電子メール、外部ストレージサービスは教育委員会又は学校から提供される公式サービスのみを利用し、私的に契約したサービスを利用してはならない」と明記しています。個人アカウントは学校の管理が及ばず、退職・異動時にデータを回収できず、事故時にアクセス記録も追えません。加えて実務上の問題として、Google ドライブの共有有効期限機能は仕事用または学校用アカウント向けで、個人のGmailアカウントでは利用できません。学校アカウントを使う実利的な理由がここにあります。
Q. 共有リンクにパスワードは必要ですか? A. 重要性分類Ⅲ以上の情報を送る場合は、パスワードか宛先の個別指定のいずれかが求められます。ガイドラインは、外部ストレージサービスで分類Ⅲ以上を外部送信する者は「限定されたアクセスの措置設定(アクセス制限や暗号化)」を行わなければならないとしているためです。相手のメールアドレスを指定して共有する方式ならアクセス制限を満たせます。フリーメールしか持たない相手など個別指定が難しい場合は、パスワード付きの転送サービスを使い、URLとパスワードを別の経路で送ってください。同じメールに両方書くと設定した意味がなくなります。
Q. 運動会や卒業式の映像は重要性分類のどれになりますか? A. 多くの場合、重要性分類Ⅲとして運用できます。ガイドラインは、学習活動の中で生成され児童生徒が相互に閲覧することが想定される情報をⅢに分類しています。行事の記録映像はこれに近い性質です。ただし注意書きがあり、教職員の評価等が加えられ相互閲覧が想定されない状態のものはⅡとして扱うのが適当な場合があるとされています。実技テストの撮影や指導コメント付きの動画はⅡ寄りと考えられます。健康情報や特別支援に関わる内容が含まれる場合は、要配慮個人情報としてⅠに該当します。
Q. USBメモリを紛失したら、どこまで報告する必要がありますか? A. 公立学校は個人情報保護法上の行政機関等にあたり、個人情報保護委員会への報告義務が生じます。個人情報保護委員会はUSBメモリの紛失を、要配慮個人情報を含む保有個人情報の漏えい等の例として挙げています。加えて、本人の数が100人を超える漏えい等も報告対象です(民間事業者は1,000人超)。報告期限は速報が発覚日から3〜5日以内、確報が30日以内、不正の目的による場合は60日以内です。3クラス分の名簿が入っていれば100人基準に触れるため、規模は小さくありません。
Q. 映像データの受け渡し記録には何を書けばいいですか? A. ガイドラインが項目を列挙しています。持ち出しは、所属名、名前、日時、持出物、個数、用途、持出の場所、返却日、管理者の確認欄です。共有リンクで送る場合も同じ様式を流用でき、持出物にファイル名と重要性分類、個数にファイル数と合計容量、持出の場所に送信先の組織名と使用サービス、返却日にリンクの失効日または削除日を書きます。端末そのものの持ち出し・持ち込みも記録の対象です。紙の様式より、スプレッドシート1枚に1件1行で残す方式のほうが運用が続きます。
Q. 業者にDVD制作を頼むとき、データはどうやって渡すのが安全ですか? A. 共有URLでの入稿に対応している業者を選べば、USBメモリを校外に持ち出さずに完結します。学校の公式クラウドで期限付きリンクを発行して渡し、制作完了後にリンクを失効させる流れです。当社の場合、ギガファイル便のURLで入稿を受けています。発注前には、約款で目的外利用の禁止と守秘義務が確認できるか、納品後にデータをいつ削除するか、そしてオーサリングが料金に含まれるかの3点を確認してください。