この記事の要点
稽古用と記録用は求めるものが正反対のため、レコーダーを2台 (高座の近くと客席の中〜後方)走らせ、開演前から終演まで回しっぱなしにするのが現実的です。
客席の笑い声は客席の中ほどから後方 で拾うと厚みが出ます。前列のすぐ近くに置くと、特定の一人の笑いだけが突出して入ります。
録音は48kHz/24bitのWAV で録り、ピークは-6dBFS前後に抑えます。笑いの立ち上がりで音が割れるトラブルがいちばん多いためです。
演目ごとの区切りはCDなら最大99トラック 、DVDなら1タイトルあたり最大99チャプターまで設定でき、聴き返しの手間が大きく変わります。
著作権法第91条 で、実演家は自分の実演を録音する権利を専有します。録ること・誰が持つか・どこまで配るかを、会の前に文字で残しておきます。
式や イベントの 映像を、 配れる ディスクに。
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高座を降りた直後は、自分が何をしゃべったか意外と覚えていないものです。受けたはずの箇所で笑いが来なかった、逆に何気ない一言で客席が沸いた。その手応えは翌日には薄れ、一週間経てば「たしか良かった気がする」に変わります。だから録る。ここまでは多くの演者が納得するところです。ところが実際に録ってみると、自分の声が遠い、笑い声だけがやたら大きい、どこからどこまでが誰の高座か分からない、といった音源が手元に残ります。
原因のほとんどは機材の値段ではなく、置き方と段取りにあります。落語や講談は、演者が座って低い位置からしゃべり、聴衆の笑いが音の半分を作る、録音としてはかなり特殊なジャンルです。歌や楽器の録り方をそのまま持ち込むとうまくいきません。レコーダーは高座の近くと客席の中ほどから後方に1台ずつ置き、開演前から終演まで止めずに回します。
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稽古用と記録用は求めるものが正反対|レコーダーを2台走らせるのが現実的 マイク位置|演者から1〜2mの斜め前、口と同じ高さかやや上、高座の上には置かない 録音は48kHz/24bitのWAVで、笑いで割らないことが最優先 前座から中入りまで録音は止めず、出囃子でマークを打って後から切る 演目ごとのトラック分けは、CDなら最大99トラック、DVDなら1タイトル99チャプターまで 著作権法第91条により、実演の録音には実演家の許諾が要る マクラは、稽古用なら全部残し、配布用はトラックを分けて選べるようにする 盤面に書く4項目は、会名・開催日(年入り)・演者・演目 ディスクにする手順は、共有URLで入稿し、必要な枚数だけ作る よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
稽古用と記録用は求めるものが正反対|レコーダーを2台走らせるのが現実的
録音を始める前に決めておくことがひとつあります。その音源を、あとで自分が聴き返すために使うのか、人に渡す記録として使うのか。この二つは求めるものが正反対で、同じ置き方では両方を満たせません。
稽古用に要るのは、自分の声の細部です。
息継ぎの位置
間の長さ
噛んだ箇所
語尾が流れたところ
上下(かみしも)を切ったときに声の向きが変わって痩せる瞬間
これらは演者の近くで拾わないと、客席の残響に埋もれて聞き取れなくなります。
一方、記録用に要るのは会場の空気です。どこで笑いが起きて、どれくらい続いて、どう引いていったか。演者の口元だけを拾った音源は、聴き返すと妙にスカスカした印象になり、その日の会の記録としては物足りないものになります。
現実的な解決は、レコーダーを2台走らせることです。1台を高座の近くに、もう1台を客席の中ほどから後方に置き、どちらも開演前から終演まで回しっぱなしにします。2台目は高価な機材である必要はありません。ここで求めているのは音質ではなく、位置が違うことそのものだからです。あとで稽古用には近い方、記録用には両方を混ぜたもの、と使い分けられます。
求めるものが正反対なので、レコーダーを2台置いて使い分ける
1台しか用意できない場合は、演者に近い側を優先します。笑いが遠い音源は「もう少し客席が聞こえたらよかった」で済みますが、声が客席のノイズに埋もれた音源は、稽古にも記録にも使えなくなるためです。
2台を回すときの最低限の段取り
開演の30分前に両方を録音開始し、終演の拍手が完全に消えるまで止めない。演者ごとに止めると、出囃子の頭や高座に上がってからの第一声を取りこぼします
録音開始後、両方のレコーダーの前で一度手を叩く。この破裂音が、あとで2つのファイルの時間軸を合わせる目印になります
電池は新品か満充電、記録メディアは空にしておく。長い会では容量よりも電池のほうが先に尽きます
本番前に1分だけ試し録りして、その場で再生して確認する。録れているつもりで録れていない、が最も多い失敗です
マイク位置|演者から1〜2mの斜め前、口と同じ高さかやや上、高座の上には置かない
落語も講談も、演者は座って演じます。口の位置は立って話す場合よりずっと低く、しかも上下を切るたびに左右へ向きが変わります。この二つが、マイク位置を決める前提です。
演者側のマイクは、高座の正面からわずかに外した位置に、演者から1〜2mほど離して立てます。高さは演者の口とほぼ同じか、やや上から見下ろす角度にします。
真正面の至近距離は避けます。破裂音(パ行・バ行)がポップノイズになって目立つうえ、扇子で見台や膝を打つ音、講談なら張扇の音がそこだけ突出して入り、あとから直すのが難しくなるためです。斜めに外しておけば、上下を切って左右どちらを向いても、音量の落ち込みが片側だけ極端になることを避けられます。
もうひとつ欠かせないのは、マイクを高座(座布団のある台)の上に置かないことです。高座の上に置くと、演者の膝の動き、座布団のきしみ、めくりを返す音、床を伝わる振動をそのまま拾います。マイクスタンドか三脚を高座の外に立て、床から浮かせます。会場の床が薄い場合は、スタンドの脚の下にタオルを一枚敷くだけでも足音の伝わり方が変わります。
笑い声は客席の中〜後方で拾う
客席側のレコーダーは、最前列ではなく客席の中ほどから後方に置きます。前列の直近に置くと、たまたま近くに座っていた一人の笑い声だけが極端に大きく入り、会場全体の反応として聞こえなくなります。少し後ろに下げると、個々の声が混ざって面としての笑いになります。可能なら耳の高さより少し上、天井方向にわずかに角度をつけると、椅子の軋みや衣擦れの直接音を減らせます。
ステレオで録る場合、マイク方式は一致点に近いXY方式のほうが扱いやすいと考えられます。左右を大きく離す方式は空間の広がりが出る反面、あとからモノラルにまとめる際に音が薄くなる場合があるためです。CDにして車のプレーヤーやラジカセで聴くことまで想定するなら、モノラルにしても崩れない録り方を選んでおくと安全です。
会場に音響設備がある場合
ホールや会館でPA(拡声)を使う場合、卓のライン出力(REC OUTやAUX OUT)から直接もらえないか、音響担当に聞いてみる価値があります。声だけを見れば、最もクリアな音源になります。ただしこの音には、客席の笑いがほとんど入りません。ライン録音だけで済ませると、笑いのない不思議な音源ができあがります。ライン出力をもらえた場合も、客席側のレコーダーは別に走らせて、あとで混ぜる前提で組み立てます。
会場ノイズの下見も、本番前に5分だけやっておきます。空調の吹き出し口の近く、厨房や自販機のコンプレッサー、掲示物のはためき、非常口の誘導音。これらは本番中の耳では気づかず、録音を聴いて初めて分かります。録りながらヘッドホンで一度モニターすれば、その場で置き場所を変えられます。
録音は48kHz/24bitのWAVで、笑いで割らないことが最優先
設定はシンプルで構いません。迷ったら48kHz/24bitのWAVで録ります。音だけのCD(CD-DA)は規格上44.1kHz/16bitのリニアPCMですが、録音時に高いほうで押さえておけば、CDにするときもDVDにするときも変換で対応できます。DVD-VideoのリニアPCMは48kHzまたは96kHz、16bitまたは24bitに対応しているため、48kHzで録っておくと映像付きにする場合の相性も良くなります。
MP3などの圧縮形式で直接録るのは、編集を前提にするなら避けます。トラックを切って音量を整えて書き出す工程で、圧縮を二度かけることになるためです。容量が心配になる数字ではありません。
形式
1分あたり(概算)
90分の会(概算)
44.1kHz/16bit ステレオ WAV
約10.6MB
約950MB
48kHz/24bit ステレオ WAV
約17MB
約1.6GB
MP3 128kbps ステレオ
約1MB
約86MB
レベル設定は「笑いで割らない」を基準にする
落語の録音でいちばん多いトラブルは、笑いの立ち上がりで音が割れることです。演者の声に合わせてちょうど良いレベルにすると、客席が沸いた瞬間に振り切ります。割れた音は編集で戻せません。
そこで、演者の声のピークが-12〜-6dBFSあたりに収まるくらいに抑えて設定します。全体としては小さめに聞こえますが、あとから持ち上げれば済みます。レコーダーにリミッターがあれば入れておきます。設定レベルより低い音量で同じ音をもう一本記録する機能(デュアル録音、バックアップ録音などと呼ばれます)が付いた機種なら、それを有効にしておくと、万一割れても低いほうから救い出せます。
レベルは開演前のリハーサルか、開口一番のあいだに決めて、そのあとは本番中に触りません。途中で動かすと音量が段差になり、編集時にかえって直しづらくなります。
複数の会をまとめるときの音量の基準
別の日に録った会を1枚のディスクにまとめると、演目ごとに音量がばらついて、聴き手がリモコンを触り続けることになります。基準として使いやすいのが、放送分野のラウドネス規格です。欧州放送連合のEBU R 128は、番組全体のラウドネスを-23 LUFSに揃え、トゥルーピークは-1 dBTPを超えないこととしています。許容の幅は±0.5 LUで、生放送など予測しにくい素材では±1 LUまで認めています。測定アルゴリズムは、ITU-R BS.1770で定義されています。
放送用の値なので家庭で聴くには少し小さめですが、複数の音源を同じ物差しで揃える、という考え方はそのまま流用できます。編集ソフトのラウドネス表示をこの値に合わせておけば、演目をまたいだ音量差はほぼ気にならなくなります。
前座から中入りまで録音は止めず、出囃子でマークを打って後から切る
寄席形式の会は、前座、二ツ目、色物、真打、そして最後にトリ(主任)という流れで進みます。中入り(休憩)が入る会も多く、演者は次々と入れ替わります。
録音の運用でやりがちな失敗は、演者ごとにレコーダーを止めて録り直すことです。次の出囃子が鳴ってから慌てて録音ボタンを押すことになり、出囃子の頭と、高座に上がってからの第一声が欠けます。落語の音源で第一声が欠けるのは、写真で顔が切れているのと同じくらい惜しい欠落です。
正しい運用は、通しで回しておいて、あとから切ることです。そのうえで、切る位置がすぐ分かるように印を残します。
切り位置を残す3つの方法
レコーダーのマーク機能を使う。多くのICレコーダーには、録音中に押せるトラックマーク/インデックスのボタンがあります。出囃子が鳴った瞬間に一度押すだけで、編集ソフトにその位置が読み込まれます
進行表に時刻を書く。マーク機能がない機種でも、進行表の余白に各演者の上がった時刻を腕時計で書き込んでおけば、ファイルの録音開始時刻から差し引いて位置を割り出せます
受付で拍手のタイミングをメモする。主催者側が客席で聴いているなら、笑いが特に大きかった箇所の時刻も一緒にメモしておくと、あとで演者に渡すときの手がかりになります
中入りと長時間録音の分割に注意する
中入りの休憩はまるごと切ります。ただし前後をぴったり詰めず、2〜3秒は残します。客席のざわめきが唐突に途切れると、聴いていて落ち着かない音源になるためです。
もうひとつ、長時間録音では記録メディアのファイルシステムの制約で、ファイルが自動分割されることがあります。FAT32でフォーマットされたSDカードでは1ファイル4GBが上限で、そこを超えると機器が新しいファイルを作ります。この分割点は当然ながら会の進行とは無関係で、演目の途中で切れます。編集を始めるときは、まず分割されたファイルを時系列につなぎ直してから、演目ごとの切り出しに入ります。順番を逆にすると、切り出したトラックのどこかに継ぎ目が紛れ込みます。
各トラックの頭と尻の作法も決めておきます。頭は出囃子が鳴り始める少し前から、尻はサゲのあとの拍手が自然に減衰しきるまで。拍手を途中でフェードアウトさせると、その一手間だけで音源全体が急に素人くさくなります。
止めずに録って印を残し、つないでから切る。順番を逆にしない
演目ごとのトラック分けは、CDなら最大99トラック、DVDなら1タイトル99チャプターまで
2時間の会を1本の音声ファイルのまま渡されても、聴き手は目当ての演目にたどり着けません。トラック分けは、録音の善し悪しと同じくらい、その音源が使われるかどうかを左右します。
音楽CDの規格(CD-DA、いわゆるレッドブック)では、1枚に最大99トラックまで置けます。トラックの中にはさらに最大99のインデックスを持てます。収録時間は規格上は97分ですが、実際に流通しているディスクは72分または80分が中心です。つまり、2時間の落語会は音だけのCDでは1枚に収まりません。2枚組にするか、収録時間の長いDVDにするかを、ここで判断します。
DVD-Videoにすると事情が変わります。1枚のディスクに最大99タイトルを置け、1つのタイトルの中に最大99のチャプターを設定できます。演者ごとにタイトルを分け、その中でマクラと本編にチャプターを切る、といった二段構えの整理ができます。メニュー画面で演目名を選んで、そこから再生する作りにもできます。
ただし、動画ファイルをそのままディスクに書き込んでも、この構造にはなりません。チャプターやメニューを持つDVD-Videoの形に組み立てる工程が必要で、これをオーサリング(焼くだけでは再生できない理由) と呼びます。当社の制作では、この工程を料金に含めています。演目の区切りは、オプションの「チャプター分け」を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に時刻で入れれば、そのままチャプターとして設定できます。当社のチャプター分けは最大50チャプターです。
長い会や演目の多い会は、タイトルとチャプターの二段で整理できるDVDが扱いやすい
渡す側が用意する「トラック表」の形
切り位置は、時分秒で書くのがいちばん誤解がありません。ファイルの先頭からの経過時間で書きます。
No.
開始位置
演者
演目
1
00:00:00
開演あいさつ
—
2
00:03:12
◯◯(前座)
子ほめ
3
00:16:40
◯◯
権助魚
4
00:38:05
—
中入り(カット)
5
00:38:05
◯◯(トリ)
芝浜
この表はトラック分けの指示書であると同時に、そのままジャケット裏面と背表紙の原稿になります。作り直す手間が省けるので、会が終わった当日のうちに作ってしまうのが結局いちばん早い方法です。
著作権法第91条により、実演の録音には実演家の許諾が要る
機材の話より先に片づけておくべきなのが、出演者の了解です。日本の著作権法第91条は、実演家がその実演を録音し、または録画する権利を専有すると定めています。つまり、高座を録音する行為そのものに、演じている本人の許諾が必要です。主催者が会場を押さえ、木戸銭を集め、機材を持ち込んだとしても、この点は変わりません。
また第30条は、個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合に、その使用する者が複製できると定めています。自分の高座を自分の稽古のために録って一人で聴く、という使い方はこの範囲に近いものですが、出演者全員に配る、来場者に頒布する、SNSに上げる、といった行為はこの範囲を明確に超えます。段階が上がるごとに、確認しておくべき相手が増えていくと考えてください。
なお第38条は、営利を目的とせず、聴衆または観衆から料金を受けず、実演家に報酬も支払われない場合には、公表された著作物を公に口述できるとしています。無料の地域寄席が古典の演目を口演できる根拠になる条文ですが、これは「その場で演じること」についての規定であり、録音して残すこと・配ることは別の話です。ここを混同しないでください。
新作落語や創作講談を録る場合は、台本そのものに著作権があり、作者の許諾が別途必要になると考えられます。作者と演者が別人であれば、確認先は二人になります。
会の前に文字で残しておく3点
録音することと、どの機材をどこに置いて録るか。当日その場で機材を見せられると、演者は断りにくくなります。事前に伝えます
誰が原本を持つか。主催者が保管するのか、演者本人に渡すのか。原本の所在が曖昧なまま数年経つと、あとから使いたいときに誰も出せなくなります
どこまで配るか。本人のみ/出演者全員/来場者に無償で/来場者に有償で。有償頒布は最も慎重な確認が要る段階です
やり取りはメッセージアプリでも構いませんが、口頭だけで済ませないことです。文面は簡潔で足ります。「◯月◯日の会は記録用に録音させていただきます。音源は出演者のみの共有とし、外部への公開や販売はいたしません」といった一文を、出演依頼のときに一緒に送っておくのが実務的です。
客席側も忘れずに。笑い声には来場者の声が入ります。有償頒布や公開を予定するなら、開演前のアナウンスと受付での掲示で伝えます。会場によっては施設側の規定で録音自体が制限される場合があるため、公民館や寺院、ホールを借りるときは申し込みの段階で確認しておきます。
マクラは、稽古用なら全部残し、配布用はトラックを分けて選べるようにする
マクラを残すかどうかは、その音源の使い道によって答えが変わります。
稽古用なら、迷わず全部残します。本編は稽古してきた通りに運ぶ部分が多いのに対し、マクラはその日の客席の反応を見ながら組み立てる即興の割合が高く、聴き返して発見がある箇所です。どの話題で客席が乗ってきたか、乗らないと分かってからどう切り替えたか、本編にどう繋いだか。ここを削った音源は、稽古の材料としては半分になります。
配布用は事情が違います。時事ネタのマクラは半年で古びます。来場者をいじった一言は、その場にいなかった人が聴くと前後のつながりが見えず、笑いどころが分からない箇所になります。数年後に聴き返す前提の記録なら、マクラを短くするか外す判断もあり得ます。
そこで実務としては、最初からマクラと本編でトラックを分けておく のが合理的です。CDならトラックを2つ、DVDならチャプターを2つ切っておけば、聴く側が選べます。あとで削るか残すかを決めるより、分けておいて選ばせるほうが手間もかかりません。
切る位置には注意が要ります。落語はマクラから本編への繋ぎ自体が芸で、「ええ、こんなことを申しますが」と入っていく息のところに味があります。マクラの最後の一拍で切ると、この繋ぎが両側に割れます。本編の最初の一言が始まる直前、演者が息を吸ったところに切り位置を置くと、どちらのトラックも単体で成立します。
編集前に無編集のマスターを1本確保する
どの判断をするにせよ、編集に入る前に、無加工の元データをそのまま1本残しておきます。トラックを切った版、音量を整えた版、マクラを外した版は、すべてこのマスターから作ります。数年後に「あのときのマクラをやはり残したかった」となる可能性は十分にあり、その時点で元データがなければ手の打ちようがありません。
マスターの保管先は、パソコンの中だけにしないことです。外付けドライブとクラウド、そして再生機で聴けるディスクの形、と置き場所を分けておくと、どれか一つが失われても残ります。ディスクで残す場合は置き方で寿命が変わりますので、DVD・CDの正しい保管方法 を確認しておくと安心です。
盤面に書く4項目は、会名・開催日(年入り)・演者・演目
ディスクにしたあと、実際に使えるかどうかを決めるのは盤面の表記です。棚に並んだ十数枚の中から目当ての一枚を探す場面を想像すると、書いておくべき情報が絞れます。
盤面に入れる項目は4つです。会の名称、開催日、演者、演目。このうち書き忘れやすいのが年 です。「第12回◯◯亭 3月8日」とだけ書かれたディスクは、5年後にどの年のものか分かりません。年を含めた日付で書きます。曜日まで入れておくと、会の記録としての手がかりが一つ増えます。
盤面には印刷できない領域があります。中心の穴のまわりには、ディスクを重ねたときに記録面が擦れないよう凸部が設けられており、この帯には印刷が乗りません。文字を中心寄りに詰めると欠ける場合があるため、レイアウトは外周寄りに置くのが安全です。
棚に立てたときに唯一見えるのが背表紙です。ここには会名と日付だけを大きく入れます。演目リストまで詰め込むと、背幅が細いために全部が読めない大きさになります。演目と演者の一覧は、ケースの中に入るジャケット裏面に回します。前の章で作ったトラック表が、ほぼそのまま使えます。
5年後に棚から探す場面を考えると、年と背表紙の表記が効く
当社の盤面レーベル印刷とケース+背表紙印刷は、会名・日付・演目リストも入れた、印刷する画像を入稿していただく形です。画像のデータを作るときは、塗り足しや解像度、文字の配置に決まった作法があります。DVD・CDのレーベルとジャケットの入稿データの作り方 にまとめてありますので、作り始める前に一度目を通しておくと、作り直しを避けられます。
出演者に渡す枚数の考え方
会の記録は、主催者用に1枚あれば足りるものではありません。出演者それぞれが自分の高座を持ち帰りたいと考えるのが自然で、しかも欲しいのは自分の出た演目だけとは限らず、その日の会全体であることが多いものです。出演者の人数プラス保管用に2枚、というあたりが実際の必要枚数になります。
ディスクにする手順は、共有URLで入稿し、必要な枚数だけ作る
編集が終わったら、あとは形にするだけです。当社は、動画のデータからDVD・ブルーレイを作る書き込み代行の店です。音声CDは、自分で焼くか、CDを作る業者に頼む方法があります。当社に頼めるかは、相談・問い合わせフォームで確かめてください。
映像のディスクを当社に頼むときの流れ
データをまとめる。編集済みの動画ファイル(MP4など)を、ひとつのフォルダに入れます
共有URLを作る。ギガファイル便のURLの形で入稿していただきます。ギガファイル便、Google ドライブ、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなど、お使いのサービスで構いません。手順が分からない場合はギガファイル便での入稿ガイド をご覧ください
仕様を選ぶ。注文フォームで、メニュー画面作成・チャプター分け・盤面レーベル印刷・ケース+背表紙印刷のうち、要るオプションを選びます。チャプターの位置は、「チャプター分け」を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に、トラック表の開始位置を時刻で入れます。オーサリングは料金に含まれています
枚数を決める。出演者分と保管用。1枚から頼める小ロット対応 ですので、まず1枚だけ作って内容を確認してから追加で出す、という進め方もできます
納期の選び方
通常便は、受付から5営業日で発送です。急ぐときのために、次の3つをご用意しています(料金は税抜)。
お急ぎお届け(+1,500円/平日15時までのご注文・ご入稿で翌々日までに発送)
特急お届け(+3,000円/平日15時までのご注文・ご入稿で翌日発送)
当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までのご注文・ご入稿)。受け取りは大阪市北区・梅田の店舗です
会の翌週に打ち上げがあり、そこで出演者に渡したい、といった予定がある場合は逆算して選んでください。
録音そのものは一度きりで、やり直しがききません。だからこそ、当日の段取りに時間をかけ、ディスクにする工程は必要な分だけ外に出す。会を続けていくと、この配分がいちばん無理がないところに落ち着きます。
よくある質問
Q. スマホの録音アプリでも高座の録音はできますか? A. 録れます。ただし、内蔵マイクは目の前の人の声を拾う設計になっているため、客席後方から会場全体を録るような使い方では厳しくなります。演者から1〜2mの位置に固定できるなら実用的です。注意点は3つで、機内モードにして着信や通知音の混入を防ぐこと、録音形式をWAVなど非圧縮に設定できるアプリを選ぶこと、そして本番の長さぶんの空き容量と電池を確保することです。90分の会をWAVで録ると、48kHz/24bitなら約1.6GB、44.1kHz/16bitでも約950MBになります。
Q. 客席の笑い声が大きすぎて演者の声が聞き取れません。どうすればいいですか? A. マイクが客席寄りに置かれている可能性が高いです。次回は演者から1〜2mまで近づけてください。すでに録れてしまった音源については、編集ソフトのコンプレッサーで大きい部分を抑え、全体を持ち上げると多少は改善します。ただし笑いで音が割れている箇所は元に戻せません。根本的な対策は、演者用と客席用でレコーダーを分けて、あとから混ぜる比率を自分で決められる状態にしておくことです。
Q. 会場のPA(音響設備)から直接録れば一番きれいに録れますか? A. 演者の声だけを見れば最もクリアです。ただしPAのライン出力には客席の笑いがほとんど入らないため、それだけで仕上げると笑いのない不自然な音源になります。落語や講談の記録では、客席の反応が内容の半分を占めます。ライン出力をもらえる場合も、客席に置いたレコーダーを別に走らせ、あとで両方を混ぜる前提で組んでください。録音開始後に手を叩いておくと、2つのファイルの時間軸を合わせる目印になります。
Q. 録音した落語をCDにして来場者に販売してもいいですか? A. 演者の許諾が必要です。著作権法第91条により、実演家は自分の実演を録音する権利を専有します。頒布や販売はさらに踏み込んだ利用にあたるため、録ることの了解とは別に、配布範囲まで含めた合意を文字で残してください。新作落語や創作講談の場合は、台本の著作者の許諾も別途必要になると考えられます。また来場者の笑い声が入るため、開演前のアナウンスと受付の掲示で録音・頒布の予定を伝えておきます。
Q. 2時間の落語会は1枚のCDに収まりますか? A. 収まりません。音楽CDの規格では収録時間が72分または80分のディスクが中心で、2時間の会は入りきりません。選択肢は2つあります。ひとつは中入りの前後で分けて2枚組にする方法で、区切りが自然になるという利点があります。もうひとつはDVDにする方法で、1枚に収めたうえで演目ごとのチャプターとメニュー画面を付けられます。演目数が多い会や、あとから特定の演目だけ聴き返したい場合はDVDのほうが扱いやすくなります。
Q. 演目ごとにトラックを分けるには、どんなデータを用意すればいいですか? A. 通しで録った音声ファイル1本と、切り位置を書いた表を一緒に用意するのが最も確実です。表には、ファイル先頭からの経過時間(00:16:40のような時分秒)、演者名、演目名を並べます。自分でトラックごとにファイルを分割して、01_子ほめ.wav のように連番付きのファイル名にしておく方法もあります。この表はそのままジャケット裏面と背表紙の原稿にもなりますので、会の当日に作っておくと二度手間になりません。音声CDは、自分で焼くか、CDを作る業者に頼む方法があります。当社に頼めるかは、相談・問い合わせフォームで確かめてください。
Q. 映像も撮ったのですが、音声のCDと映像のDVDはどちらにすべきですか? A. 用途で分かれます。稽古のために繰り返し聴くなら、移動中や作業中に流せる音声のほうが実際に聴く回数が増えます。会の記録として残し、出演者や関係者に配るなら、所作や表情が入る映像のほうが情報量があります。両方作る選択もあります。演目ごとのチャプターとメニュー画面を付けられるのは映像側で、目当ての演目から再生できる利便性はDVDのほうが上です。予算と枚数を見ながら、まず1枚ずつ作って比べる進め方もできます。
Q. マクラの時事ネタが古くなってしまいました。あとから編集で外せますか? A. 外せます。ただし、マクラから本編への繋ぎを切る位置に気をつけてください。マクラの最後の一拍で切ると繋ぎが両側に割れて、どちらのトラックも収まりが悪くなります。本編の最初の一言が始まる直前、演者が息を吸ったところに切り位置を置くと、それぞれが単体で成立します。編集の前に、無加工の元データを必ず別に保管してください。数年後に「やはり残しておけばよかった」となる可能性があり、元データがなければ戻せません。