この記事の要点
図書館・アーカイブ向けのNIST/CLIRのガイドでは、長期保存の目安は温度18℃・相対湿度40% とされ、CDとDVDをまとめて置く書庫の条件としては4℃以上20℃未満・湿度20〜50%が推奨されています。
日本の住宅でこの数値を保つのは難しいため、置き場所は1日の温度と湿度の振れ幅がいちばん小さい場所 という相対的な基準で選ぶのが現実的です。
押し入れ・物置・車内は温度と湿度の変動が大きく、夏の車内に置いた記録型のディスクは数日で読めなくなり得る と専門機関のガイドは指摘しています。
ディスクはケースに入れて本のように立てて並べる のが基本です。年単位の横積みは反りを生み、データが無事でもドライブが読めなくなることがあります。
点検は再生できるかではなく全ファイルのコピーが最後まで通るか で確かめ、大切なものは複製して別の場所にも置くのが安全です。
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DVDやブルーレイを何枚か持っていて、それが家のどこに置いてあるか。テレビ台の引き出し、押し入れの衣装ケースの上、本棚の端に平積み、あるいは車のドアポケット。多くの家庭では「空いていた場所」に置かれているだけで、そこを選んだ理由はありません。
ところが光ディスクは、置かれた環境で寿命がはっきり変わる記録媒体です。置き場所は「家でいちばん涼しい場所」ではなく、「1年を通じていちばん温度と湿度が動かない場所」を選びます。この基準で選ぶと、候補は自然と、人が生活していて冷暖房が効く居室の壁面収納、その中段から上段あたりに寄っていきます。押し入れ・物置・車内・窓際は避けます。
光ディスクの劣化はエラー訂正に隠れて進むため、再生できているうちは気づけません。ある日いきなり「読み込めません」になったとき、原因のかなりの部分は、それまで何年も置かれていた場所にあります。
この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります
保管の狙いは18℃・湿度40%、ただし家庭では「動かない場所」で選ぶ 置き場所の決め方|候補の3か所に温湿度計を2週間置き、差で判定する 押し入れ・物置・車内が向かない理由|「暑い」より「振れ幅が大きい」ほうが問題 窓際が危ない理由|ガラスは紫外線を減らすが、赤外線は通して熱をためる 立てて並べる収納の作り方|横積みは年単位でディスクを反らせる よく使うディスクは「涼しい場所」ではなく「使う部屋と同じ温度」に置く ケースの中の紙は外へ出し、粘着ラベルは貼らない 1年に1回の点検は「再生できるか」ではなく「全ファイルをコピーできるか」で確かめる 大切なものは複製して別の場所に置く よくある質問 撮った動画は、1枚1,500円(税抜)からDVD・ブルーレイにできます。料金を見る
保管の狙いは18℃・湿度40%、ただし家庭では「動かない場所」で選ぶ
ディスクを長く持たせたいなら、狙う環境は温度18℃前後・相対湿度40%前後 です。米国立標準技術研究所(NIST)と米国図書館情報資源振興財団(CLIR)は、図書館員・アーカイブ担当者向けにガイド『Care and Handling of CDs and DVDs』を出しています。このガイドは、CDとDVDをまとめて保管する書庫の条件として4℃以上20℃未満、相対湿度20〜50% を挙げています。そのうえで「18℃・40%RHが長期保存に適していると考えられる」と記しています。
ただ、この数字をそのまま自宅に持ち込むと行き詰まります。日本の住宅で、年間を通じて20℃未満かつ湿度50%以下を保てる場所は、専用の設備でも入れない限りほぼありません。梅雨時に湿度40%の押し入れも、真夏に20℃の物置もない。数値そのものを目標にすると、「うちにはどこにもない」で話が終わってしまいます。
そこで見る角度を変えます。同じガイドには、各規格・各国公文書館の推奨条件を並べた比較表が載っていて、そこには温度や湿度そのものだけでなく、変化の速さに対する上限 が繰り返し出てきます。
出典
温度
相対湿度
変化の制限
ISO 18925(IT9.25)/CD・DVD
-10〜23℃
20〜50%
湿度の変動は±10%を超えないこと
米国国立公文書記録管理局(NARA)/CD・DVD
20℃
40%
温度±0.6℃/日、湿度5%/日
カナダ国立図書館/CD
15〜20℃
25〜45%
温度2℃/24時間、湿度5%/24時間
専門機関が管理しているのは「何℃か」だけではありません。「1日にどれだけ動くか」を、温度なら0.6〜2℃、湿度なら5〜10%という単位で押さえています。ここが家庭に応用できる部分です。数値そのものは達成できなくても、変動の小ささなら家の中で選べます 。屋外に近いほど、また人の生活圏から遠いほど、条件は悪くなります。ディスクの種類ごとにどれくらい持つのかという前提は、CD・DVD・ブルーレイの寿命 で整理しています。
置き場所の決め方|候補の3か所に温湿度計を2週間置き、差で判定する
「たぶんここが涼しい」で決めると、だいたい外れます。壁の向こうが外気なのか、床下から冷気が来るのか、日中に日射が当たる面なのかは、手で触っただけでは分かりません。手間は小さいので、次の手順で測ってから決めます。
候補を3か所選ぶ。例として、リビングの本棚の中段、北側の廊下収納、寝室クローゼットの中段など、性格の違う場所を選ぶ
最高値と最低値を記録できるデジタル温湿度計を用意する。実売で1個あたり千円前後から手に入る
3個同時に買い、3か所に同時設置する。1個を移動させながら測ると、測った時期の天候差が結果に混ざる
2週間置く。毎日決まった時刻に、表示されている最高・最低の温度と湿度を書き取り、記録をリセットする
2週間後、各候補の「最高−最低」を計算し、差がいちばん小さい場所 を採用する
判定で見るのは、1日の最高と最低の差(日較差)です。平均が22℃で日較差1℃の場所と、平均が19℃で日較差7℃の場所なら、前者を採ります。前掲の表が示しているのは、専門機関がそこまで変動を嫌っているという事実です。湿度についても同様で、平均が45%でも1日で30%から60%まで振れる場所より、常時52%で動かない場所のほうが扱いやすくなります。
あわせて、湿度が60%を超えた日が何日あったかを数えておくと役に立ちます。高い湿度は、ディスク内部に水分と酸素を運び込む経路になります。前掲のガイドは、湿度の高い環境ではアルミの反射層が酸化して反射率を失い、高温が加わるとその速度が上がると説明しています。60%超えが常態化する場所は、平均値が良く見えても候補から外します。
平均が良く見えても、1日の差が大きい場所や湿度60%超えが続く場所は外す
可能なら、季節を変えて2回測ります。梅雨時と真冬の2回を押さえると、その場所の1年間の振れ幅がほぼ見えます。1回で済ませるなら、湿度の条件が最も厳しい梅雨時を選ぶのが実用的です。置き場所が決まったあとの扱い方全般は、DVD・CDの正しい保管方法 にまとめています。
押し入れ・物置・車内が向かない理由|「暑い」より「振れ幅が大きい」ほうが問題
この3か所は定番の保管場所ですが、「動かない場所」という基準ではどれも落ちます。落ちる理由は「暑いから」ではなく「動くから」です。
押し入れ は、多くの場合その背面が外壁に接しています。外気温の影響を直接受けるうえ、扉を閉めていると空気が動かず、湿気がたまったまま抜けません。特に床に近い下段は、外気との温度差で水分が結露しやすい位置だと考えられます。
前掲のガイドは、ディスクの主材料であるポリカーボネートが水分を吸収する性質を持つことを指摘しています。湿った空気に長くさらされると、水分がディスクの内部に入り込み、各層と反応し得るとも述べています。乾いた環境に戻せば水分は時間をかけて抜けていきますが、水に溶けた不純物は内部に残る場合があります。
物置・屋根裏・ベランダ収納 は、夏場に外気温を上回ります。日射で温められた空間は、日中と夜間の差も大きくなります。温度が高く、かつ日較差が大きいという、避けたい条件が二つ重なります。
車内 は、家の中ではありませんが最も避けたい場所なので触れておきます。前掲のガイドは、直射日光が当たり極端に熱がこもる環境に置かれた記録型ディスク(CD-R、DVD-R、CD-RW、DVD-RWなど)について、色素や相変化膜が急速に劣化し、数日で読めなくなり得ると明記しています。その環境の例として、「夏のダッシュボードの上」「窓際のヒーターの脇」を挙げています。極端な熱の蓄積はディスクの反りも招きます。
見落とされがちですが、同じガイドは、ケースに入れていても、そのケースが直射日光や熱源にさらされていれば熱の蓄積からは守られない とも述べています。ケースは汚れや傷、急な環境変化を和らげる緩衝材にはなりますが、断熱材ではありません。「ケースに入れてあるから大丈夫」という判断は成り立たないと考えてください。車で持ち運ぶ場合は、置きっぱなしにせず、その日のうちに室内へ戻すのが現実的な運用です。
よく使うものは使う部屋に、長く残すものは振れ幅の小さい収納に分ける
窓際が危ない理由|ガラスは紫外線を減らすが、赤外線は通して熱をためる
「カーテン越しだから大丈夫」「ガラスがUVカットだから平気」という判断は、半分だけ当たっていて、危険なほうの半分を見落としています。
前掲のガイドの説明を追うと、直射日光が記録型ディスクを傷める経路は二つあります。一つは紫外線による光化学反応で、記録層の色素の分子構造を変えてしまう経路。もう一つは、赤外線から紫外線まで広い波長を含む日光がディスクに熱を与え、その温度上昇が色素の分解を加速する経路です。
ここが重要なのですが、紫外線の多くは窓ガラスに吸収されるのに対して、波長の長い赤外線はガラスを通り抜けてディスクを温めます 。つまりガラス越しなら安全になるのは二つの経路のうち片方だけで、熱による劣化の経路は残ります。さらに同ガイドは、濃い色のレーベル印刷や着色がされたディスクほど光を吸収しやすく、直射日光下で熱がこもりやすいとも指摘しています。
影響の受け方は、ディスクの成り立ちによっても違います。工場でデータを物理的に刻んで作る市販のプレス盤(ROM)は、通常の室内照明や窓越しの光の影響が、寿命を考えるうえで無視できる程度とされています。一方、色素に記録する記録型(R)は紫外線に弱く、書き換え型(RW・RAM)は光には鈍いものの熱に弱く、熱による劣化は記録型より速いとされています。
プレスとコピーの違い で説明しているとおり、家庭で焼いたディスクや小ロットで作ったディスクは、市販のプレス盤とは中身の作りが違います。手元にあるディスクの多くが記録型なら、光と熱への警戒は市販ソフト以上に必要です。
実務的な結論はシンプルです。窓から直射日光が差し込む線上に、ディスクの棚を置かない。間取りの都合でどうしても窓際になる場合は、扉のある収納に入れる、遮光カーテンを閉める、少なくとも夏場の日中に日が当たる位置からは外す。この3つのどれかは実行できるはずです。
立てて並べる収納の作り方|横積みは年単位でディスクを反らせる
置き方の原則は一つです。ケースに入れ、本と同じように立てて棚に並べる 。前掲のガイドも、推奨事項の筆頭に近い位置で「ディスクは専用のプラスチックケースに入れ、本のように立てて保管する」を挙げています。やってはいけないことの側には、「長期間(年単位)、水平に置いたまま保管する」が挙がっています。
横積みが問題になる理由は、データ側ではなく素材側にあります。ディスクの大部分を占めるポリカーボネートは、水平のまま長期間置かれると、特に温度の高い環境で恒久的に反ることがあります。同ガイドは、こうなるとデータ自体は無傷でもドライブが正常に動作せず、レーザーがトラックを追従できなくなる場合があると説明しています。読めなくなる原因が「記録が消えた」ではなく「盤の形が変わった」であるケースが実際にあるということです。
棚を作るときの具体的な注意点は次のとおりです。
ケースのハブ(中央の爪)には1枚だけ 。1つの爪に2枚重ねて留めない。取り出すときは爪を押し下げながら外周を指で持ち上げ、ディスクをたわませない
詰め込みすぎない 。棚に隙間なく押し込むと、ケースの変形を通じて中身に力がかかる。指1本が入る程度の余裕を残す
スカスカにもしない 。支えがないと斜めに倒れ、その姿勢のまま何年も置かれることになる。ブックエンドで立てた姿勢を保つ
棚板は水平か確認する 。傾いた棚では、立てているつもりでも常に片側へ荷重がかかる
不織布ケースやスリーブに入れて箱にまとめる方法は、省スペースですが、水平に積み重なるうえ、ディスク同士や袋の素材と記録面が接触します。長く保存したいものについては、立てて並べられる形のケースに移すほうが安全です。ケースの種類ごとの向き不向きは、CD・DVDケースの種類と選び方 で比べています。
よく使うディスクは「涼しい場所」ではなく「使う部屋と同じ温度」に置く
ここまで「涼しく、乾いた場所」と書いてきましたが、これには重要な例外があります。前掲のガイドは、頻繁に使うディスクは、それを使う環境と近い温度で保管すべきだ と明記しています。理由は、頻繁な温度変化によるストレスを最小限にするためです。
同ガイドによれば、急激で大きな温度変化は、緩やかな変化よりも大きなストレスをディスクに与えます。ディスクは性質の違う層が貼り合わされた構造なので、温度が急に動くと層ごとに膨張・収縮の度合いが変わり、その差が内部のひずみになると考えられます。使うたびに5℃も10℃も違う環境へ出し入れするなら、少し温度が高くても、使う部屋と同じ条件に置いておくほうが結果的に穏やかです。
年に一度しか触らないアルバム類は、変動の小さい涼しい収納へ。月に何度も再生する家族の記録は、再生する部屋の棚へ。この二段構えで分けるのが、実際に管理しやすいやり方です。
低温の場所から持ち出すときの作法も決まっています。同ガイドは、使用環境に対してかなり低い温度で保管していた場合、ストレスと結露を減らすためにディスクを徐々に環境になじませるべきだとし、パッケージやケースに入れたままにしておくことで緩やかな順応ができる と説明しています。
家庭で起きやすい場面に置き換えると、冬に外から持ち帰ったディスク、暖房のない部屋から暖かい部屋へ運んだディスクがこれに当たります。冷えたディスクを暖かい部屋でいきなりケースから出せば、表面に結露します。濡れた状態でドライブに入れれば読み取りは不安定になり、水分が残れば内部への吸収も起こり得ます。
運用としては、ケースごと部屋に置き、室温になじむまで開けない 。時間の目安は出典に示されていませんが、ケースの外側を触って冷たさを感じなくなってから開けるという判断で足ります。
ケースの中の紙は外へ出し、粘着ラベルは貼らない
場所と置き方が決まったら、最後にケースの中を点検します。ここには見過ごされやすい要素が二つあります。
一つは紙 です。前掲のガイドは、長期保管においては、ケース内部のラベルインサートやブックレットを取り出して外側に移すことが賢明な場合があると述べています。理屈としては、紙が湿気を引き寄せてケース内部の水分量を高め、さらに接触によって水分をディスクへ移す可能性があるためです。ただし同ガイドは、これは紙の影響を測定した特定の試験に基づくものではなく、あくまで考慮事項だと明記しています。
紙が入っていれば傷むという話ではなく、ケース内の紙が多い場合や、推奨より湿度の高い環境で保管する場合に意味を持つ配慮 だと考えられます。分厚い歌詞カードや説明書が入っているものは、外に出して別に保管する価値があります。
もう一つは粘着ラベル です。同ガイドは、5年を超える長期保存を前提とするディスクには粘着ラベルを貼るべきではないとしています。時間の経過とともにラベルが剥離してドライブの動作を妨げる可能性があるためです。すでに貼ってあるラベルを剥がしたり、貼り直したりすることも避けるべきとされています。剥がす作業そのものがディスクを傷めます。
盤面に文字を書く場合は、盤面用のペン(ペン先の柔らかいフェルトペン)でレーベル面に書きます。ボールペンやシャープペンシル、先の硬いペンは、CDの場合は記録層がレーベル面のすぐ下にあるため傷の原因になります。最も安全なのは、データのない中央の透明なハブ部分か、その外側のミラーバンドに書く方法です。
紙は湿気を運ぶことがあり、粘着ラベルは剥がれてドライブを妨げることがある
枚数が多い、あるいは見た目を整えたい場合は、盤面に直接印刷してしまうのが根本的な解決になります。貼るものがなければ、ラベルが剥がれるという故障そのものが発生しません。当社でも、盤面へのレーベル印刷と、ケースと背表紙の印刷に対応しています。印刷する画像を入稿してもらう形です。
1年に1回の点検は「再生できるか」ではなく「全ファイルをコピーできるか」で確かめる
年に1回の点検を勧める記事は多いのですが、点検の中身まで書かれていることは多くありません。ここが実は勘所です。
前掲のガイドは、CDとDVDの初期の劣化をユーザーが認識できない理由を明確に説明しています。システムに組み込まれたエラー検出・訂正機能が一定数のエラーを訂正してしまうため、訂正しきれなくなるまで利用者は問題に気づけない のです。言い換えると、劣化はまず「訂正されたエラーの数」として気づかないうちに増え、その余力を使い切った瞬間に、表面上は突然の症状として現れます。
この構造からすると、「再生できたから大丈夫」という点検はほとんど意味を持ちません。再生できる状態は、劣化が始まっていないことではなく、余力がまだ残っていることしか示さないからです。もう少し詳しい確認が要ります。
家庭でできる範囲では、パソコンのドライブでディスク内の全ファイルをハードディスクへコピーしてみる のが最も実用的です。読み出しをディスクの内周から外周まで一通り走らせることになるので、部分的な読み取り不良があればコピーの失敗やエラーとして表に出ます。見るべき点は3つです。
コピーが最後まで完了するか。途中でエラーが出るなら、そのディスクは要対応
所要時間が以前より明らかに延びていないか。リトライが増えると読み出しは遅くなる
特定の箇所で毎回引っかからないか。再現するなら、その位置に問題がある可能性が高い
全部を毎年やるのは現実的ではないので、抜き取りにします。最も古い1枚、最も大切な1枚、保管条件がいちばん悪い場所にある1枚 の計3枚を選べば、コレクション全体の傾向はおおむね掴めます。点検した日付を紙に書いてケースに入れておくと、次回の判断材料になります。なお、光学ドライブを積まないパソコンが増えているので、点検の前提として外付けドライブが1台必要になる場合があります。
再生できるかではなく、全ファイルのコピーが最後まで通るかで確かめる
点検中に指紋や汚れが見つかったら、中心から外周へ向かって直線的に、乾いた綿の布で拭き取ります。円を描くように拭く方法は、ディスクにとって最も不利な向きに傷を作るため避けます。
大切なものは複製して別の場所に置く
ここまでの内容をすべて実行しても、残る弱点があります。すべてが同じ1か所にある ということです。理想的な温湿度で、立てて並べて、毎年点検していても、火災・水害・盗難・引っ越し時の紛失は保管条件では防げません。1枚しかないものは、その1枚を失った時点で終わりです。
前掲のガイドは、この点についても詳しく書いています。デジタルからデジタルへのコピーは元と同じ品質を保てるので、コレクションのうち1部(できればオリジナル)をアーカイブ用と位置づけ、日常的に使うコピーとは別の場所に保管することが可能であり、推奨される としています。
アーカイブの最大の利点として挙げられているのは、災害・盗難・取り扱いミスによる情報の消失を防げることです。別の場所を確保できない場合は、同じ場所に複数枚を持ち、1枚を「保存用」、もう1枚を「利用用」と決めておく方法も示されています。
実際に組むなら、ディスクだけで完結させないほうが安全です。ディスクは保管に強い一方、ドライブという再生手段の側が先に手に入らなくなる可能性があります。手元のハードディスク、クラウド、そしてディスクという性格の違う3つに分けて持つ考え方は、3-2-1バックアップの実践 で具体的に説明しています。
複製は、元の動画データが残っているなら、既存のディスクからコピーするのではなく、元データから作り直す ほうが確実です。すでに劣化が進んだディスクを読み取り元にすると、その時点の状態を引き継いでしまいます。撮影データやパソコンの中の動画ファイルが残っているなら、そちらを使います。
当社では、お手元の動画データからDVD・ブルーレイを基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位でお作りしています。プレーヤーで再生できる形式に組み立てるオーサリングは料金に含まれています。メニュー画面の作成やチャプター分け、盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷にも、オプションで対応しています。
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保管環境を整えることと、大切なものをもう1枚作って別の場所に置くこと。この二つを組み合わせておくと、置き場所の失敗が取り返しのつかない損失に直結しなくなります。
よくある質問
Q. DVDの保管に最適な温度と湿度は? A. 図書館・アーカイブ向けのNIST/CLIRガイドは、CDとDVDをまとめて保管する書庫の条件として4℃以上20℃未満、相対湿度20〜50%を挙げ、長期保存には18℃・40%が適するとしています。ただし一般の住宅でこの数値を年間を通じて維持するのは現実的ではありません。家庭では絶対値を追うより、1日の温度と湿度の振れ幅がいちばん小さい場所を選ぶほうが実際的です。冷暖房の効く居室の壁面収納が有力な候補になります。
Q. 押し入れにDVDを保管しても大丈夫? A. あまりおすすめできません。押し入れは背面が外壁に接していることが多く外気温の影響を受けやすいうえ、扉を閉めていると空気が動かず湿気がこもります。特に床に近い下段は結露しやすい位置だと考えられます。ディスクの主材料であるポリカーボネートは水分を吸収する性質があり、高い湿度は反射層の酸化を促します。押し入れしか選べない場合は、上段の内壁側に置き、除湿剤を併用し、湿度計で60%を超えていないか確認してください。
Q. DVDは立てて保管するべき? 寝かせて保管するべき? A. 立てて保管します。NIST/CLIRのガイドは、ディスクを専用ケースに入れ本のように立てて置くことを推奨し、年単位で水平のまま保管することを避けるべき事項に挙げています。長期間の横積みは、特に温度の高い環境でディスクを恒久的に反らせることがあり、データが無傷でもドライブがトラックを追従できず再生できなくなる場合があります。棚に並べるときは詰め込みすぎず、ブックエンドで倒れないように支えます。
Q. 車の中にDVDを置きっぱなしにするとどうなりますか? A. 記録型のディスクは短期間で読めなくなる可能性があります。同ガイドは、夏のダッシュボードの上のように直射日光が当たり極端に熱がこもる環境では、データを保持している色素や相変化膜が急速に劣化し、数日でディスクが読めなくなり得ると明記しています。極端な熱の蓄積は反りの原因にもなります。ケースに入れていても、そのケース自体が直射日光にさらされていれば熱からは守られません。持ち運んだディスクはその日のうちに室内へ戻してください。
Q. 窓際の本棚はダメですか? カーテン越しやUVカットガラスなら平気? A. 万全ではありません。窓ガラスは紫外線の多くを吸収しますが、波長の長い赤外線は通り抜けてディスクを温めます。日光がディスクを傷める経路は紫外線による化学変化と熱の蓄積の二つあり、ガラスで防げるのは前者だけです。濃い色のレーベル印刷があるディスクほど光を吸収して熱がこもりやすいとも指摘されています。扉のある収納に入れる、遮光カーテンを閉める、夏場に日が当たる位置から外す、のいずれかを行ってください。
Q. 磁石や空港のX線検査でDVDは壊れますか? A. どちらも心配は要りません。NIST/CLIRのガイドは、磁気はCDやDVDに影響を与えないこと、空港の検査機などによるX線照射は光ディスクを傷めないことを明記しています。一方で電子レンジはディスクを破壊します(ディスク内の金属により電子レンジ側が壊れる可能性もあります)。光ディスクで警戒すべきは磁気や放射線ではなく、熱・湿度・紫外線・物理的な傷です。保管場所を選ぶときもこの4つを基準に考えてください。
Q. きちんと保管したディスクは何年くらい持ちますか? A. 言い切れる数字はありません。同ガイドによると、試験を行ったメーカーの間では、推奨される保管条件下でCD-R・DVD-R・DVD+Rは100〜200年以上、CD-RW・DVD-RW・DVD+RW・DVD-RAMは25年以上という見方が共通しています。一方でNISTの加速劣化試験では、あるオーサリング用DVD-Rについて25℃・湿度50%で保管した場合の寿命を30年と見積もった例もあります。市販のプレス盤は情報が少なく20〜100年と幅があります。この幅の大きさを前提に、複製を持っておくのが安全です。
Q. 何年かに一度、新しいディスクに作り直したほうがいいですか? A. ディスク自体が無事でも、再生する側の技術のほうが先に手に入らなくなる可能性があります。同ガイドは技術的な陳腐化がより差し迫った脅威になり得ると指摘しており、実際に20年前の記録媒体の多くは現在の機器で読めなくなっています。光学ドライブを搭載しないパソコンも増えました。元の動画データが残っているなら、劣化したディスクからコピーするのではなく、元データから作り直すほうが確実です。