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映像制作の発注書の書き方|下請法3条書面は2026年に4条明示へ

2026 10/26
映像制作の発注書の書き方|下請法3条書面は2026年に4条明示へ

この記事の要点

  • 2026年1月1日に下請法は「取適法」(中小受託取引適正化法)へ変わり、発注書の根拠条文は第3条から第4条へ移りました。呼び方も「3条書面」から「4条明示」です。
  • 映像制作の外注は情報成果物作成委託にあたり、発注側が資本金5,000万円超、資本金1,000万円超5,000万円以下、または今回新設された従業員100人超のいずれかで、受注側がそれぞれ下位の区分に当たれば適用対象です。
  • 明示事項のうち映像案件で漏れやすいのは検査を完了する期日と著作権など知的財産権の譲渡・許諾の範囲の2つで、後者は代金にも反映が要ります。
  • 支払期日は検査の有無を問わず受領日から起算して60日以内。「納品後30日以内」のような書き方は日が特定できず認められません。
  • ディスク納品を含む案件は、データか盤か、DVDかブルーレイか、枚数を給付の内容として書き分けておくと、受領と検査の線引きで揉めません。

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外部の映像制作者に発注するとき、メールの本文で「例の件、来月中に90秒でお願いします」と伝えて終わりにしていないでしょうか。金額も納期も後から詰める前提で走り出し、初稿が上がってから「思っていたものと違う」「その修正は追加費用です」というやり取りになる。映像制作の現場では珍しくない流れですが、発注側にとってはここが法律上のリスクになります。

しかも2026年1月1日、この分野の基本法である下請法が改正され、名称も条文番号も変わりました。長く「3条書面」と呼ばれてきた発注書面の根拠は、いまは第4条です。社内の発注書テンプレートやチェックリストが「下請法3条書面」のままなら、参照先がずれた状態で運用していることになります。

発注書には、取適法第4条と明示規則が定める事項を、発注の都度、書面または電磁的方法で示す必要があります。法定の項目のうち、映像の発注書で空欄になりがちなのは、検査を完了する期日と、著作権など知的財産権の譲渡・許諾の範囲です。ディスク納品まで含む案件では、「データか盤か、何枚か」を給付の内容として書き分けておくと、受領と検査の線引きで揉めません。

この記事の目次見出しを押すと、その場所へ移ります

  1. まず前提が変わった|2026年1月1日から「下請法3条書面」は「取適法の4条明示」
  2. 自社の発注が対象になる条件|映像制作は資本金5,000万円超・1,000万円超・従業員100人超が分岐点
  3. 発注書に書く項目|法定は12項目、映像で落ちやすいのは「検査完了期日」と「権利の範囲」
  4. 仕様が固まらないときは、「未定」に理由と確定予定日を添えて書く
  5. 支払期日の起算点は受領日、検査中でも60日は止まらない
  6. 納品物は「データか盤か、何枚か」まで給付の内容に書く
  7. 修正回数と追加費用は、協議した記録とあわせて先に決める
  8. 相手が個人なら、資本金に関係なくフリーランス法の明示義務がかかる
  9. よくある質問

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まず前提が変わった|2026年1月1日から「下請法3条書面」は「取適法の4条明示」

2025年に成立した「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和7年法律第41号)により、下請代金支払遅延等防止法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へと題名が変わりました。略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法(とりてきほう)です。施行日は2026年(令和8年)1月1日で、すでに動いている法律です。

用語も入れ替わりました。発注側は「親事業者」から委託事業者へ、受注側は「下請事業者」から中小受託事業者へ、代金は「下請代金」から製造委託等代金へ。社内規程や発注書のヘッダーに旧称が残っていると、監査や取引先からの照会のたびに説明が必要になります。

下請法から取適法への改正で変わった呼び方の比べ表。通称は下請法から取適法、発注側は親事業者から委託事業者、受注側は下請事業者から中小受託事業者、代金は下請代金から製造委託等代金、発注書面は3条書面から4条明示へ
社内規程や発注書のヘッダーに旧称が残っていないかを確かめる

条文番号の対応を先に押さえる

実務で影響が大きいのは条番号のずれです。旧法では発注書面の交付義務が第3条にあったため「3条書面」と呼ばれていましたが、取適法では第4条に移りました。現行の並びは次のとおりです。

取適法の条文 内容
第3条 支払期日を定める義務(受領日から起算して60日以内)
第4条 発注内容等の明示義務(旧「3条書面」にあたる)
第5条 禁止行為(受領拒否、支払遅延、減額、買いたたき、不当なやり直しなど11項目)
第6条 遅延利息(年14.6%)
第7条 書類等の作成・保存義務(2年間)
第14条 罰則(50万円以下の罰金・両罰規定)

検索するときは「3条書面」でも実務解説にはたどり着けますが、条文や公式資料を引くときは第4条・明示規則で探すほうが早くなりました。公正取引委員会の令和7年版テキストでも「4条明示」という言い方に統一されています。

今回の改正で発注書まわりが変わった点

  • 適用基準に従業員基準(300人・100人)が加わり、資本金1,000万円以下でも従業員数によって規制対象になる会社が出てきた
  • 書面交付義務について、受注側の承諾がなくても電子メールなどの電磁的方法で明示できるようになった(旧法では事前承諾が要件だった)
  • 禁止行為に「協議に応じない一方的な代金決定」が追加された
  • 手形払が禁止され、電子記録債権等でも支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものは禁止された

電磁的方法が使いやすくなった一方で、受注側から書面の交付を求められたときは、原則として遅滞なく書面を渡す必要がある点は残っています。メール送付で完結させる運用にするなら、請求があった場合に紙で出して渡す手順も決めておくと安全です。

自社の発注が対象になる条件|映像制作は資本金5,000万円超・1,000万円超・従業員100人超が分岐点

取適法が適用されるのは、取引の内容と当事者の規模という2つの条件を同時に満たす場合だけです。どちらか一方でも外れれば取適法は適用されません(ただし後述のフリーランス法や独占禁止法の優越的地位の濫用が別途問題になることはあります)。

取引の内容|映像は「情報成果物作成委託」

取適法の対象取引は、製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の5類型です。このうち情報成果物には、法律上「映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの」が明記されています。公正取引委員会のテキストは、テレビ番組、テレビCM、ラジオ番組、映画、アニメーションを例に挙げています。企業のプロモーション動画や採用動画も、この区分に入ると考えられます。

該当する類型は3つあります。

  • 類型1 自社が業として提供する情報成果物の作成を外注する(例:放送事業者が番組制作を制作会社に委託)
  • 類型2 自社が請け負った作成の一部を外注する(例:広告会社が広告主から請け負ったテレビCMの制作を制作会社に委託)
  • 類型3 自家使用の情報成果物を業として作成している会社が、その一部を外注する(例:自社で映像制作部門を持つ会社が広告宣伝映像の一部を外注)

見落としやすいのが類型3です。純粋に無償で配る広告宣伝物やリクルート映像は類型1には当たりませんが、社内に制作部門があって同種の映像を反復継続的に作っているなら、類型3として対象になり得ます。逆に、社内に映像に詳しい社員がいるだけで同種の映像を自社作成していない場合は該当しない、というのがテキストの整理です。

撮影だけを頼むと区分が変わる

テキストは「最終的な情報成果物を構成することとなる情報成果物」と「作成に必要な役務」を分けています。放送番組を例にすると、脚本、BGMなどの音響データ、タイトルCGは情報成果物ですが、監督、AD、俳優、照明、撮影は役務です。ただし括弧書きで「撮影したデータを納める場合は情報成果物を構成することとなる情報成果物に該当」と明示されています。カメラマンに人日で入ってもらうのか、撮影素材データの納品を求めるのかで、法律上の区分が変わるということです。

規模の条件

情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く)と役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理を除く)は、次のいずれかに当たれば適用対象です。

委託事業者(発注側) 中小受託事業者(受注側)
資本金5,000万円超の法人 資本金5,000万円以下の法人または個人
資本金1,000万円超5,000万円以下の法人 資本金1,000万円以下の法人または個人
常時使用する従業員100人超の法人 常時使用する従業員100人以下の法人または個人

従業員基準は2026年改正で加わったものです。資本金1,000万円のまま社員が150人いる制作会社や事業会社は、これまで対象外だったのに今年から委託事業者側に立つことになります。なお同じ映像でもプログラムの作成は別枠で、資本金3億円超/1,000万円超3億円以下/従業員300人超という区分になります。インタラクティブ動画やアプリ内再生の仕組みまで含めて発注する場合は、どちらの区分で判断するか整理が要ります。

発注書に書く項目|法定は12項目、映像で落ちやすいのは「検査完了期日」と「権利の範囲」

取適法第4条第1項は、製造委託等をした場合に「直ちに」明示するよう求めています。契約書とは別に、発注の都度、次の事項を書面または電磁的方法で示す必要があります。明示規則第1条が定める内容を実務の言葉に置き換えると、こうなります。

  • 委託事業者と中小受託事業者の名称(取引先コードなど識別できる番号・記号でも可)
  • 委託した日
  • 給付の内容(品目、数量、規格、仕様など)
  • 給付を受領する期日(納期)
  • 給付を受領する場所
  • 検査をする場合は、その検査を完了する期日
  • 代金の額
  • 支払期日
  • 一括決済方式で支払う場合の金融機関名、額、期間の始期、決済日
  • 電子記録債権で支払う場合の額、期間の始期、満期日
  • 原材料等を有償支給する場合の品名、数量、対価、引渡期日、決済期日・方法
  • 未定事項がある場合は、その理由と内容を定める予定期日

映像制作の発注書で実際に空欄になりがちなのは、6番目の検査を完了する期日です。初稿を見て確認する運用があるのに、いつまでに確認を終えるかを書いていない。ここが空いていると、受領の時点が曖昧になり、支払期日の起算日も曖昧になります。

知的財産権は「給付の内容」の一部として書く

もうひとつが権利の範囲です。テキストは、情報成果物の作成過程で受注側に知的財産権が発生する場合において、作成の目的たる使用の範囲を超えて権利を譲渡・許諾させることを含んで発注するときは、その譲渡・許諾の範囲を「給付の内容」の一部として明示する必要があるとしています。例として挙げられているのは「放送番組の作成委託における一次的放送権の許諾」です。

そして重要なのが後段で、この場合は代金に知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を加える必要があると書かれています。「著作権はすべて当社に帰属する」と一行入れて金額は据え置き、という発注書は、この記述と正面から矛盾します。二次利用の範囲(Web、交通広告、テレビ、期間、地域)を発注書側で区切り、範囲を広げるときは対価も動かす前提にしておくのが実務的です。

毎回同じ項目は「共通事項」として先に出せる

支払方法や検査期間のように一定期間共通する事項は、あらかじめ書面や電磁的方法で明示しておけば、発注の都度書かなくてよいとされています(明示規則第1条第3項)。ただし条件が2つあります。発注の都度、「支払方法等については現行の『支払方法等について』による」といった形で共通事項との関連性を明らかにすること。そして共通事項の書面には有効期間を明記すること(新たな明示まで有効とする場合はその旨を書く)です。発注書を1枚に収めたい会社は、この仕組みを使うと現実的な分量になります。

電磁的方法で送るときの条件

認められるのは、電子メール、EDI、SMS、第三者が閲覧できないSNSのメッセージ機能など受信者を特定して送信できる電気通信と、USBメモリ等の記録媒体の交付です。受注側のPCやスマートフォンの画面に文字として明確に表示されるものである必要があります。受信と同時に紙で出力されるFAXは「書面の交付」扱い、電磁的記録として保存できるFAXへの送信は電磁的方法扱いという整理になっています。

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仕様が固まらないときは、「未定」に理由と確定予定日を添えて書く

映像制作は、発注時点で尺も構成も決まっていないことがあります。取適法第4条第1項ただし書は、内容が定められないことにつき正当な理由がある事項については、その時点で明示しなくてよいと定めています。ただし放置は認められず、二段構えの手続きが要ります。

ステップ1|当初の明示

未定事項以外をすべて明示したうえで、未定事項について「内容が定められない理由」と「内容を定めることとなる予定期日」を書きます。テキストは、理由は簡潔でよく「ユーザーの詳細仕様が未確定であるため」といった書き方でよい、予定期日は具体的な日付が分かるように「○年○月○日」または「発注後○日」と示す必要がある、としています。つまり「未定」「別途協議」とだけ書いた発注書は当初の明示として不十分です。

ステップ2|補充の明示

未定事項は受注側と十分に協議したうえで速やかに定め、内容が確定した後は直ちに明示します。このとき、当初の明示と補充の明示の相互の関連性が確認できるようにしておく必要があります(明示規則第1条第4項)。発注番号を共通にする、当初発注書の番号を補充書面に明記する、といった対応で足ります。

発注時に仕様が決まらないときは、未定事項以外をすべて明示し、未定事項には決められない理由と内容を定める予定期日を書き、受注側と十分に協議して速やかに定め、確定したら直ちに当初の明示と関連づけて補充の明示をする、という4つの手順
「未定」「別途協議」だけでは足りず、理由と予定期日をセットで書く

「正当な理由」として認められる例と、認められない例

テキストが挙げる該当例のうち、映像・広告に直接関わるのは次の2つです。

  • 広告制作物の作成委託で、委託時点では制作物の具体的内容が決定できないため、「給付の内容」「代金の額」「受領する期日」が定まっていない場合
  • 放送番組の作成委託で、タイトル・放送時間・コンセプトは決まっているが具体的な内容が決定できず、「代金の額」が定まっていない場合

一方で明確に否定されているのが、「ユーザーとの取引価格が決定していないなど、代金の額を決定できるにもかかわらず決定しない場合」と、算定方法を明示することが可能な場合です。代理店が「クライアントの予算が確定していないので金額は空欄」とする運用は、この否定例に当たる可能性が高いと考えられます。

金額は「算定方法」で示す道もある

具体的な金額の明示が困難なやむを得ない事情がある場合は、金額を定めることとなる算定方法の明示で足ります(明示規則第1条第2項)。条件は、算定根拠となる事項が確定すれば具体的な金額が自動的に確定するものであること。テキストの例はプログラム作成委託ですが、考え方は映像でも同じで、「Aランク技術者の時間単価○○円×所要時間数+…+実費」のように、変数が埋まれば金額が一つに決まる式にする必要があります。

「実費精算」「都度見積り」では算定方法として成り立ちません。なお、具体的な金額を確定した後は速やかに受注側へ通知することが求められます。

実務としては、発注書に「基本構成費」「撮影日単価×日数」「編集単価×分数」「MA費」まで単価表を貼り込み、確定していない変数だけを未定事項として理由と確定予定日を添える形が、いちばん手戻りが少ない書き方だと考えられます。

支払期日の起算点は受領日、検査中でも60日は止まらない

取適法第3条は、検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内で支払期日を定めることを求めています。受領日は初日に算入します。ここを「検収完了後60日」と読み替えている発注書は少なくありませんが、条文はそうなっていません。

定め方を誤ったときのペナルティ

状況 法律上の支払期日
受領日から60日以内に定めた 定めた支払期日
支払期日を定めなかった 受領日そのものとみなされる
60日を超えて定めた 受領日から60日を経過した日の前日とみなされる

定めなかった場合に受領日が支払期日とみなされる点は、実務上かなり厳しい効果です。支払期日を書き忘れた発注書は、納品当日に支払期日が到来していることになります。

書き方は「具体的な日が特定できる」ことが条件

公正取引委員会のQ&Aは、支払期日の書き方を4パターンで整理しています。「○月○日まで」「納品後○日以内」は期限を示すだけで具体的な日が特定できないため認められません。「○月○日」と「毎月末日納品締切、翌月○日支払」は認められます。締め支払制度を採る会社は後者の書式にすれば足ります。

なお公正取引委員会のテキストは、「毎月末日納品締切、翌月末日支払」の制度で6月1日に受領した分を7月31日(61日目)に支払っても問題としていない、と明記しています。翌々月払いはこの説明の外に出るため、避けるのが無難です。

映像などの情報成果物だけに認められている受領日の例外

情報成果物作成委託には特則があります。作成の過程で、内容確認や今後の作業指示のために発注側が一時的に成果物を支配下に置くことがある。この時点では委託内容の水準に達し得るか明らかでない場合において、あらかじめ両者で「一定の水準を満たしていることを確認した時点で受領したこととする」と合意しているときは、支配下に置いた日を起算日としないという扱いです。外形から中身が分からない情報成果物に限って認められたもので、製造委託・修理委託では認められません。

ただし歯止めがあります。4条明示した納期に成果物が発注側の支配下にあれば、内容確認が終わっているかどうかにかかわらず、その納期に受領したものとして起算する。つまり「検収が終わらないから受領していない」という主張は、納期を過ぎた時点で通りません。この合意を使うなら、発注書の納期欄と、初稿提出日を分けて設計する必要があります。

映像などの情報成果物で、水準を確認した時点で受領とする合意がある場合の流れ。初稿の提出では受領としない、水準の確認を終えた日が受領日で1日目、確認が終わらなくても納期に成果物が手元にあればその日に受領扱い、支払期日は受領日から起算して60日以内
初稿を預かっても受領にしない合意はできるが、納期を過ぎれば受領として数える

やり直しをさせた場合と、遅延利息

受注側の責めに帰すべき理由があり、支払前(受領後60日以内)にやり直しをさせる場合は、やり直し後の成果物を受領した日が起算日になります。逆に言えば、発注側都合の修正では起算日は動きません。支払が遅れた場合の遅延利息は年14.6%で、受領日から起算して60日を経過した日から支払をする日までの日数に応じて計算されます。

納期そのものの設計も、支払期日と同じくらい発注書の精度に影響します。ディスク納品まで含む案件では、編集の完了日と盤の発送日を分けて書かないと納期欄が破綻します。工程ごとに実際にかかる日数の感覚はDVDを急いで作るときの締切と逆算の記事にまとめてあります。

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DVDとブルーレイの違い|画質・容量・再生機器と、どっちがいいか

納品物は「データか盤か、何枚か」まで給付の内容に書く

テキストは「給付の内容」について、受注側がその内容を見て理解でき、発注側の指示に即した給付を作成できる程度の情報を明示することが必要としています。映像制作でこの基準を満たしていない典型が、納品物の書き方です。

「本編動画一式」とだけ書かれた発注書で起きることは、だいたい決まっています。受注側はMP4データの納品で完了と考え、発注側は上映用ディスクまで含むつもりでいる。納品後に「ディスクが来ていない」となり、追加作業をお願いする形になるが、これは受領後のやり直しではなく新たな委託にあたる可能性が高く、その場合は改めて4条明示が要ります。費用を出さずに受注側にやらせれば、不当な給付内容の変更として問題になります。

発注書で切り分けておきたい4点

  • 最終納品物はデータか、盤か、両方か。両方なら、それぞれの受領期日と受領場所を分けて書く
  • 盤ならDVDかブルーレイか。尺と画質要件で決まる部分なので、判断材料はDVDとブルーレイの違い(画質・容量・互換性)を参照して先に決めておく
  • 枚数。1枚のマスターなのか、配布用の数十枚なのか、数百枚以上なのかで製造方法も単価構造も変わる。境目の考え方はプレスとコピーの違いにまとめています
  • 再生できる形にする作業を誰がやるか。動画ファイルを書き込んだだけのディスクは家庭用プレーヤーで再生できません。この工程がDVDオーサリングで、メニュー画面やチャプター分けもここに含まれます

ディスク工程を切り出すという選択

4点目は、制作会社に丸ごと任せるか、ディスク化だけを別に手配するかで整理の仕方が変わります。当社は、動画のデータからDVD・ブルーレイを作る書き込み代行の店で、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)から、1枚単位で注文できます。オーサリングは料金に含まれています。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも、オプションで対応しています。

入稿は、ギガファイル便のURLで受け取ります。制作会社から直接送ってもらう運用にする場合は、ギガファイル便での入稿の手順を発注書の受領場所欄に添えておくと、受け渡しの記録が残ります。

納期は、通常便のほかに次の3つから選べます。

  • お急ぎお届け(+1,500円/平日15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)
  • 特急お届け(+3,000円/平日15時までの注文・入稿で翌日発送)
  • 当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までの注文・入稿)

当日店舗お渡しは、大阪市北区の店舗での受け取りです。

なお、ディスク工程を別発注にする場合、その発注も規模要件を満たせば取適法の対象になります。データ納品を受ける形なら情報成果物作成委託、盤の製造として発注するなら製造委託と整理されることが多いと考えられます。後者は、資本金3億円超/1,000万円超3億円以下/従業員300人超という別の区分で判断することになります。1つの案件で2つの区分が並走する点は、発注書のフォーマットを分けて管理するのが安全です。

修正回数と追加費用は、協議した記録とあわせて先に決める

取適法第5条第2項第3号は、受注側の責めに帰すべき理由がないのに給付の内容を変更させ、または受領後にやり直させることで、受注側の利益を不当に害することを禁じています。発注の取消し(契約の解除)も「給付内容の変更」に含まれます。

費用を負担せずに変更・やり直しをさせられる3つの場合

  • 受領前に、受注側の要請により給付の内容を変更する場合
  • 受領前に内容を確認したところ、4条明示された委託内容と異なることが合理的に判断され、変更させる場合
  • 受領後、給付の内容が4条明示された委託内容と異なるためやり直しをさせる場合

3つとも「4条明示された内容」が基準です。発注書に書いていない要求は、この3つのどれにも当てはまりません。修正指示のたびに費用負担の議論が起きる会社は、多くの場合、発注書の「給付の内容」が粗いことが原因です。

逆に、費用全額を負担せずに要求できないケース

  • 受注側から委託内容を明確にするよう求めがあったのに、正当な理由なく仕様を明確にせず作業を続けさせ、後から「委託内容と違う」とする場合
  • 受注側が提案し確認を求めたところ発注側が了承したのに、後から「委託内容と違う」とする場合
  • 検査基準を恣意的に厳しくして「違う」とする場合
  • 直ちに発見できない不適合について、受領後1年を経過した場合(保証期間が1年を超え、それに応じた期間を定めている場合を除く)

映像特有の「価値判断」の扱い

テキストは、放送番組等の情報成果物作成委託について、成果物が当初の委託内容を満たしているかは発注側の価値判断により評価される部分があり、給付を充足する条件を事前に正確に明示することが不可能な場合があると認めています。そのうえで、明示内容上は必ずしも明確でない点についてやり直しをさせる場合は、やり直しに至った経緯を踏まえ、費用について受注側と十分に協議し、合理的な負担割合を決定して負担すれば違反にならないとしています。ただし発注側が一方的に負担割合を決めて利益を不当に害する場合は違反です。

Q&Aには、さらに詳しい整理があります。「十分な協議の上で、当初から何度もやり直しすることを見込んだ価格を設定している」場合について、当初の想定の範囲内でやり直しをさせることは問題ないが、それを理由に明示されていない事項について無制限にやり直しをさせられるものではなく、価格設定時に想定していない費用が発生するやり直しは、十分な協議のうえ合理的な負担割合を決めて負担する必要があるとしています。

ここから逆算すると、発注書に書くべきは「修正3回まで」という回数だけではありません。そろえるのは、何を1回と数えるか(初稿・二稿の構成変更と、テロップの誤字修正を同じ1回にするのか)、回数を超えた分の単価、その回数と単価をどう協議して決めたかの記録の3点です。この3点がそろって初めて、想定の範囲が主張できる形になります。

記録は法律上の義務でもある

第7条の書類作成・保存義務には、記録すべき事項として「給付の内容について変更またはやり直しをさせた場合は、その内容およびその理由」が明記されています。保存期間は2年です。修正指示をチャットだけでやり取りしている会社は、案件終了時に指示履歴を書き出して案件フォルダに残す運用を組み込んでおくと、この義務と実務が同じ動作で片付きます。

修正ややり直しの費用で揉めないために発注書と記録に残すことの一覧。給付の内容を具体的に書く、何を修正1回と数えるか、回数を超えた分の単価、回数と単価を協議して決めた記録、変更ややり直しの内容と理由の記録、記録を2年保存する置き場所
回数だけでなく、数え方・超過単価・協議の記録までそろえて想定の範囲になる

相手が個人なら、資本金に関係なくフリーランス法の明示義務がかかる

取適法は資本金と従業員数で線を引くため、資本金1,000万円以下・従業員100人以下の会社が個人のカメラマンに発注しても対象外になります。しかしそこで終わりではありません。2024年11月1日施行のフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、令和5年法律第25号)が別に適用されます。

2つの法律の適用範囲

取適法 フリーランス法
発注側の要件 資本金または従業員数の区分に該当すること 従業員を使用する個人、または2人以上の役員がいるか従業員を使用する法人
受注側の要件 資本金・従業員数が下位区分の法人または個人 従業員を使用しない個人等(特定受託事業者)
取引条件の明示 第4条(12項目) 第3条。業務委託の期間を問わず適用
支払期日 受領日から起算して60日以内 受領日から起算して60日以内。再委託の場合は元委託の支払期日から30日以内とする特例あり
禁止行為 11項目 受領拒否、報酬減額、返品、買いたたきなど。1か月以上の業務委託が対象

実務上とくに影響が大きいのが明示義務に期間の下限がない点です。1日だけの撮影を個人カメラマンに頼む場合でも、給付の内容、報酬の額、支払期日などの明示が要ります。また6か月以上の業務委託を中途解除する場合は、原則30日前までの予告が必要です。長期の連載動画や月次の編集契約を切るときは、この予告期間を見込んだスケジュールを組む必要があります。

再委託の30日特例を使う場合は、取引条件の明示(3条通知)のなかで再委託である旨、元委託者の名称、元委託の支払期日を示すことが条件です。代理店が制作を再委託するケースで支払サイトを揃えたいときは、この3点を発注書のフォーマットに項目として持っておくと運用が回ります。

やらなかった場合に何が起きるか

取適法第14条は両罰規定で、明示義務違反、書面交付義務違反、書類の作成・保存義務違反について50万円以下の罰金を定めています。罰せられるのは違反行為をした代表者・代理人・使用人その他の従業者で、あわせて法人も罰せられます。行政面では、公正取引委員会が違反委託事業者に勧告を行った場合、原則として事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等を公表することとされています。勧告に従わない場合は独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令に進むことがあります。

調査は待っていて始まるものではありません。公正取引委員会と中小企業庁は定期調査を実施しており、令和6年度は親事業者調査145,000名、下請事業者調査570,000名の規模で行われています。受注側への調査から発注側の運用が見えてくる構造なので、「これまで指摘されたことがない」は根拠になりません。

今日できる3つのこと

  • 発注書テンプレートの「下請法3条書面」という表記を「取適法第4条」に差し替え、支払期日欄が「納品後○日以内」になっていないか確認する
  • 検査完了期日と知的財産権の譲渡・許諾の範囲の欄を追加する
  • 修正回数の定義・超過単価・協議の記録と、変更/やり直しの内容と理由を2年保存する置き場所を決める

よくある質問

Q. 下請法の3条書面と発注書は何が違いますか?

A. 呼び名が違うだけで、実務上は同じ書面を指すことが多いです。旧下請法では発注書面の交付義務が第3条にあったため「3条書面」と呼ばれてきました。2026年1月1日施行の取適法(中小受託取引適正化法)では同じ義務が第4条に移り、公正取引委員会の資料では「4条明示」と表記されています。自社の注文書がこの法定項目をすべて満たしていれば、様式は自由です。逆に、法定項目が欠けた注文書は「発注書は出している」と言っても明示義務を果たしたことになりません。

Q. 動画制作の外注は下請法(取適法)の対象になりますか?

A. 取引内容と規模の両方を満たせば対象です。映像は法律上の「情報成果物」に含まれ、映画・放送番組その他影像または音声により構成されるものが明記されています。プロモーション動画や採用動画の外注も、自社が提供・請負する映像の作成を委託する場合や、社内に制作部門を持ち同種の映像を業として作っている場合は情報成果物作成委託にあたります。規模の条件は、発注側が資本金5,000万円超、または資本金1,000万円超5,000万円以下、または従業員100人超のいずれかで、受注側がそれぞれ下位の区分に当たることです。

Q. 発注書はメールやPDFで送ってもいいですか?

A. 認められます。2026年1月1日施行の取適法では、受注側の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法で明示できるようになりました。使えるのは電子メール、EDI、SMS、第三者が閲覧できないSNSのメッセージ機能など受信者を特定して送信できる電気通信と、USBメモリ等の記録媒体の交付です。受注側の画面に文字として明確に表示される必要があります。ただし受注側から書面の交付を求められたときは、原則として遅滞なく書面を渡す義務が残っているため、紙で出力して渡す手順も決めておくと安全です。

Q. 仕様が決まっていないときは発注書を出さなくてもいいですか?

A. 出す必要があります。内容が定められないことに正当な理由がある事項だけを未定にでき、それ以外は明示します。未定にする場合も、その事項について「内容が定められない理由」と「内容を定めることとなる予定期日」を当初の書面に書く必要があり、予定期日は具体的な日付が分かる形(○年○月○日、発注後○日など)で示します。「未定」「別途協議」とだけ書いた発注書は不十分です。内容が確定した後は直ちに補充の明示を行い、当初の書面との関連性が分かるようにします。

Q. 支払サイトを月末締め翌々月末払いにしてもいいですか?

A. 翌々月末払いは避けるべきです。取適法第3条は、検査の有無を問わず受領日から起算して60日以内(受領日を算入)のできる限り短い期間内で支払期日を定めるよう求めています。公正取引委員会のテキストは「毎月末日納品締切、翌月末日支払」の制度で、6月1日に受領した分を7月31日(61日目)に支払っても問題としていないと明記していますが、翌々月払いはこの説明の範囲を明らかに超えます。60日を超えて定めた場合は、受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます。

Q. 「納品後30日以内に支払う」という書き方は問題ありますか?

A. 認められません。公正取引委員会のQ&Aは、支払期日は具体的な日が特定できるよう定める必要があるとしており、「○月○日まで」「納品後○日以内」は期限を示すだけで具体的な日が特定できないため認められないと明示しています。認められるのは「○月○日」と「毎月末日納品締切、翌月○日支払」です。なお支払期日を定めなかった場合は受領日そのものが支払期日とみなされるため、書き忘れると納品当日に支払期日が到来していることになります。

Q. 修正は何回まで無料と発注書に書けば大丈夫ですか?

A. 回数だけでは足りません。費用を負担せずにやり直しをさせられるのは、成果物が発注書で明示した委託内容と異なる場合などに限られます。一方で映像は事前に条件を正確に明示できない面があるため、十分な協議のうえで何度もやり直すことを見込んだ価格を設定していれば、想定の範囲内のやり直しは問題ないとされています。ただし明示していない事項について無制限にやり直させることはできず、価格設定時に想定していない費用が出る場合は、協議のうえ合理的な負担割合を決めて負担する必要があります。何を1回と数えるか、超過分の単価、協議の記録の3点をそろえてください。

Q. 発注書を出さないとどうなりますか?

A. 取適法第14条は両罰規定で、明示義務違反、書面交付義務違反、書類の作成・保存義務違反について50万円以下の罰金を定めています。違反行為をした代表者・代理人・使用人その他の従業者が罰せられ、あわせて法人も罰せられます。行政面では、公正取引委員会が勧告を行った場合、原則として事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等が公表されます。勧告に従わない場合は独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令に進むことがあります。

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この記事の目次

  1. まず前提が変わった|2026年1月1日から「下請法3条書面」は「取適法の4条明示」
  2. 自社の発注が対象になる条件|映像制作は資本金5,000万円超・1,000万円超・従業員100人超が分岐点
  3. 発注書に書く項目|法定は12項目、映像で落ちやすいのは「検査完了期日」と「権利の範囲」
  4. 仕様が固まらないときは、「未定」に理由と確定予定日を添えて書く
  5. 支払期日の起算点は受領日、検査中でも60日は止まらない
  6. 納品物は「データか盤か、何枚か」まで給付の内容に書く
  7. 修正回数と追加費用は、協議した記録とあわせて先に決める
  8. 相手が個人なら、資本金に関係なくフリーランス法の明示義務がかかる
  9. よくある質問

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