この記事の要点
スキャン解像度は300dpiが基準 で、紙焼きを手元に残すなら300dpi、原本を処分するつもりなら600dpiという分け方が実務的です。
引き伸ばす予定があるなら必要dpi=出力dpi×(出力の長辺÷元の長辺) で逆算でき、L判からA4なら約702dpiという答えが出ます。
スライドショーにしてディスクへ残すならブルーレイの1920×1080に届く400dpi が下限で、ズーム演出を入れるなら600dpiを確保しておきます。
保存形式は長期保存がTIFF、閲覧と配布がJPEG で、JPEGは開いて保存し直すたびに劣化するため編集は必ず元データから行います。
スキャン時の自動補正は画像に焼き込まれて元に戻せない ため、色補正もシャープも切って素のまま取り込み、補正はコピーに対して行います。
アルバムから写真を剥がして、スキャナのふたを開けたところで手が止まる。解像度の欄に300、600、1200、2400と並んでいて、どれを選べば正解なのか分からない。とりあえず高いほうにしておこうかと思うものの、1枚で数十MBになると聞いたことがある気もする。データ化の作業でいちばん最初に詰まるのが、この設定画面です。
dpiの選択は、感覚ではなく計算で決められます。写真の実寸と、最終的に何をしたいか。この2つが決まれば必要な数値は算数で出ます。そして一度決めてしまえば、あとは同じ設定で流し続けるだけの作業になります。
この記事では、L判・2L判・A4という実際のサイズを使って、用途ごとに必要なdpiを数字で示します。引き伸ばし倍率からの逆算式、DVDやブルーレイにまとめる場合の下限、TIFFとJPEGの使い分け、数百枚をさばくときの現実的な妥協点、そして取り込んだ後のファイル名まで、手を動かせる粒度で順に説明します。
dpiは1インチあたりの点の数|スキャン設定のdpiは「元の紙の大きさ」に対する数字
dpiはdots per inch、1インチ(25.4mm)あたりに何個の点を並べるかという密度です。厳密には、スキャンして得られる画素の密度はppi(pixel per inch)と呼ぶのが正確ですが、機器やソフトの表示ではdpiと書かれていることが多く、国立国会図書館の「資料デジタル化の手引」でも「ほぼ同様の意味と解釈してよく、この手引ではdpiとして表記を統一した」として同じものとして扱っています。この記事でもdpiで統一します。
ここで最初に押さえておきたいのは、スキャン設定のdpiは「元の紙の実寸」に対して掛かる ということです。同じ300dpiでも、L判とA4では出てくる画素数がまったく違います。
実寸ごとの画素数(主なdpi設定)
原稿サイズ
300dpi
600dpi
1200dpi
L判(89×127mm)
1051×1500px 約158万画素
2102×3000px 約631万画素
4205×6000px 約2523万画素
2L判(127×178mm)
1500×2102px 約315万画素
3000×4205px 約1262万画素
6000×8409px 約5045万画素
KGサイズ(102×152mm)
1205×1795px 約216万画素
2409×3591px 約865万画素
4819×7181px 約3461万画素
A4(210×297mm)
2480×3508px 約870万画素
4961×7016px 約3481万画素
9921×14031px 約1億3920万画素
L判とA4のサイズは日本で流通している標準的な寸法です。L判は89×127mm、2L判は127×178mm、KGサイズは102×152mmで、家電量販店の印画紙はほぼL判と2L判になっています。手元の写真がどれか分からないときは、定規で長辺を測ってください。127mmならL判、178mmなら2L判です。
もうひとつ、画像ファイルの中には「解像度72dpi」「350dpi」といった情報が書き込まれていますが、これは印刷するときの目安として記録されているだけで、画質そのものとは関係ありません。実体は縦横の画素数だけです。あとから印刷ソフト側でいくらでも変更できるので、この数字に振り回される必要はありません。判断材料は常に画素数のほうです。
用途で決まる|画面で見て残すなら300dpi、原本を処分するなら600dpi
公的なデジタル化の基準では、保存用の画像は原資料に対して300〜400dpiとされています。国立国会図書館の「資料デジタル化の手引2017年版」は保存用画像・提供用画像ともに「原資料に対して300〜400dpi」と定めていて、同じ手引が紹介している海外機関の事例も、World Digital Libraryが「許容300dpi以上、推奨400dpi以上」、Library and Archives Canadaが300dpi、National Library of Australiaが400dpiと、ほぼ同じ帯に収まっています。
つまり300dpiは「とりあえずこれにしておけば後悔しにくい」下限として国際的に共有されている数字 で、迷ったときの初期値として妥当です。そのうえで、上げるかどうかを分ける実務的な基準がひとつあります。
紙焼きを手元に残すのか、処分するのか。残すなら300dpiで構いません。あとから「もっと大きく使いたい」となっても、原本があるので取り込み直せます。処分する、あるいは水濡れや退色で劣化が進んでいて次に触れる保証がないなら、そのスキャンが最後の機会になります。この場合は600dpiにしておきます。
用途別の目安
画面で見る、SNSやメッセージで送る:300dpi
同じサイズで焼き増しする:300〜350dpi
2L判やA4に引き伸ばす可能性がある:600dpi
原本を処分する、劣化が進んでいる:600dpi
ネガやポジフィルム:2400dpi以上(後述)
ここで注意したいのが、設定できる最大値と意味のある最大値は違うということです。スキャナの仕様表には「光学解像度」という項目があり、これがセンサーが実際に読み取れる密度です。設定画面ではそれを超える数値も選べますが、超えた分はソフトウェアが画素を水増ししているだけで、写っている情報量は増えません。ファイルだけが重くなります。お使いの機種の光学解像度を仕様表で確認し、それ以下の数値から選んでください。
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引き伸ばしは逆算できる|必要dpi=出力dpi×(出力の長辺÷元の長辺)
「大きく引き伸ばすかもしれない」という不安が、必要以上に高いdpiを選ばせます。ですが引き伸ばしに必要な解像度は、次の式で正確に出ます。
必要なスキャンdpi = 出力dpi × (出力したい長辺 ÷ 元の写真の長辺)
出力dpiは、一般的な写真印刷で使われる300dpiを入れます。L判(長辺127mm)をA4(長辺297mm)に伸ばすなら、297÷127=2.34倍なので、300×2.34=702dpi。つまり720dpiか、機器の設定に合わせて600dpiということになります。
L判の写真を引き伸ばす場合の必要dpi(出力300dpi換算)
出力サイズ
長辺
倍率
必要なスキャンdpi
L判(等倍)
127mm
1.00倍
300dpi
2L判
178mm
1.40倍
約420dpi
A4
297mm
2.34倍
約702dpi
A3
420mm
3.31倍
約992dpi
A2
594mm
4.68倍
約1403dpi
この表の読み方として現実的なのは、600dpiがどこまでカバーするかという見方です。L判を600dpiで取り込むと2102×3000pxになり、これをA4の長辺297mmいっぱいに印刷すると約257dpiです。300dpiには届きませんが、額に入れて壁に飾る距離で見るぶんには実用範囲に収まると考えられます。600dpiにしておけば、L判からA4までは一応使える と覚えておけば判断が早くなります。
ただし、逆算した数値どおりにスキャンしても、元の写真がピンボケだったり手ブレしていたりすれば、それが忠実に大きくなるだけです。解像度はレンズの失敗を回復しません。アルバムを開いて「これは大きくしたい」と思える1枚は、たいてい全体の数パーセントです。全部を高dpiにするのではなく、その数枚だけ600dpi以上で取り直すほうが合理的です。
動画やディスクにまとめる予定なら400dpiが下限|DVDは約35万画素、ブルーレイは約207万画素
写真をスライドショーにしてテレビで見る、という出口を考えている場合は、必要な解像度がもっとはっきり決まります。映像規格の画素数が決まっているからです。
DVD-Videoの映像は、日本を含むNTSC地域でFull D1と呼ばれる720×480ピクセルです。掛け算すると345,600、約35万画素 。圧縮方式はMPEG-2で、フレームレートは29.97fps です。一方ブルーレイ(BDMV)は最大1080i/1080p、つまり1920×1080ピクセルで、2,073,600=約207万画素 。数字だけで6倍の開きがあります。
L判の写真を横位置で使う場合の必要dpi
出口
必要な横方向の画素数
L判横位置(127mm)で必要なdpi
DVD(720×480)
720px
144dpi
ブルーレイ(1920×1080)
1920px
384dpi
ブルーレイ+1.5倍ズーム演出
2880px
576dpi
4K(3840×2160)
3840px
768dpi
ここから2つのことが分かります。ひとつは、DVDのスライドショーが目的なら150dpiでも足りる ということ。300dpiで取り込めばDVDに対しては倍以上の余裕があります。もうひとつは、ブルーレイのフルHDにきちんと届かせるには400dpiが実質的な下限 だということです。300dpiだとL判横位置で1500pxしかなく、1920pxに届きません。テレビ側で拡大表示されることになります。
そしてスライドショーで写真をゆっくり動かしたり寄ったりする演出を入れるつもりなら、ズームした分だけ余分な画素が要ります。1.5倍まで寄るなら2880px必要なので576dpi、切りよく600dpiです。あとから「もう少し寄りたい」と思ったときに素材が足りないという事態を避けたいなら、最初から600dpiにしておくのが安全です。
もうひとつ、写真をそのまま映像に流し込むと縦横比が合わない点は先に知っておいたほうがよいです。DVDの720×480は正方形のピクセルではなく、表示上は4:3か16:9になります。L判の縦横比は約1:1.43なので、横位置の写真でも左右に、縦位置ならさらに大きく余白が出ます。背景を黒にするか、写真をぼかして敷くか、動画を作る段階で決めておく項目です。
保存形式は長期保存がTIFF、閲覧と配布がJPEG|迷うなら両方を残す
解像度が決まったら次は形式です。実質的にTIFFとJPEGの二択で、性格がはっきり違います。
TIFFは可逆 です。非圧縮のほか、LZW方式やZIP方式といった情報を失わない圧縮が使えます。国立国会図書館の手引は保存用画像について「非圧縮の画像、もし圧縮の必要がある場合は、原則として、圧縮率を1/3程度にしたTIFF」と定めており、同時に「JPEG圧縮を行うことも可能であるが非可逆となるため、保存用画像には適さない」とも書いています。TIFFという拡張子の中にJPEG圧縮を入れることもできてしまうので、設定でLZWかZIP、あるいは非圧縮を選んでください。
JPEGは非可逆 で、圧縮率に比例して画質が落ちます。ただし同じ手引には「通常1/10程度の圧縮であれば人間の目では劣化を判別できないとされている」とあり、要求される品質に応じて1/5〜1/50の範囲で運用するとされています。日常の閲覧や共有には十分ということです。
容量の目安(L判1枚、24bitフルカラー)
設定
画素数
非圧縮TIFF
JPEG(1/10圧縮の目安)
500枚換算(TIFF)
300dpi
約158万画素
約4.5MB
約0.45MB
約2.2GB
600dpi
約631万画素
約18MB
約1.8MB
約8.8GB
1200dpi
約2523万画素
約72MB
約7.2MB
約35GB
TIFFの数値は画素数×3バイトで計算した理論値です。JPEGの実サイズは絵柄によって変わるので、あくまで目安として見てください。空や壁のような平坦な面が多い写真は小さく、木立や砂利のような細かい絵柄は大きくなります。
実務上の落としどころは、元データをTIFFか最高品質のJPEGで1本持ち、閲覧用にリサイズした品質85〜90前後のJPEGをもう1本作る という二階建てです。閲覧用のほうを日常的に開いたり送ったりして、元データは触らずに置いておきます。
この二階建てにする理由がひとつあります。JPEGは開いて保存し直すたびに再圧縮がかかり、少しずつ劣化が積み上がります。トリミングや色調整を繰り返すなら、必ず元データから読み込んで、結果を別名で書き出してください。同じJPEGを上書きし続ける運用だけは避けます。
なお、スマートフォンで一般的なHEICや、Webで使われるWebPは、同じ画質でもファイルが小さく済みますが、対応していない機器やソフトがまだあります。10年後20年後に開けるかどうかを重視する保存用としては、実績のあるTIFFとJPEGに寄せておくほうが安全だと考えられます。
色補正とゴミ取りはスキャン時にやらない|戻せない加工を素材に焼き込まない
スキャナの付属ソフトには「退色復元」「逆光補正」「明るさ自動調整」「シャープネス」といった機能が並んでいて、初期設定でオンになっていることがあります。取り込みを始める前に、これらは全部オフにしてください。
理由は単純で、スキャン時にかけた補正は結果の画像に焼き込まれ、元に戻せないからです。あとで「色が転んでいる」「シャープが効きすぎて輪郭に白い縁が出ている」と気づいても、やり直す手段はスキャンし直すことしかありません。100枚取り込んだあとで気づけば100枚やり直しです。素のまま取り込んでおけば、補正はコピーに対して何度でも試せます。
特にシャープネスは、あとから画像編集ソフトでかけたほうが結果を確認しながら調整できますし、JPEG圧縮との相性も考慮できます。スキャン時に強くかけた画像を圧縮すると、輪郭のまわりにノイズが出やすくなります。
例外がひとつあります。赤外線を使ったゴミ・傷の自動除去機能は、スキャン時にしか使えません。可視光のランプと赤外線ランプで2回読み取り、赤外線で検出したゴミの位置を後処理で埋めるという仕組みのため、取り込んだあとの画像には適用できないからです。
ただしこの機能には原理的な限界があります。銀の粒子で像を作る従来の白黒フィルムでは、銀粒子が赤外線をゴミと同じように反射してしまうため正しく働きません。カラーポジのKodachromeも、シアン層が赤外線を吸収するため対象外です。白黒ネガやKodachromeを取り込むときは、この機能をオンにしても効かないか、かえって画像を壊す可能性があります。 該当する場合はオフにして、ホコリは物理的に落としてから取り込んでください。
紙焼き写真の場合は、そもそもガラス面と写真の表面をブロアーや乾いた柔らかい布で払っておくほうが確実です。ガラスに付いた1粒のホコリは、その位置に置いた全部の写真に写り込みます。10枚ごとに一度ガラスを確認する習慣にしておくと、あとの修整作業がまるごと減ります。
ビット深度をどうするか
色の階調は通常24bitフルカラー(赤・緑・青が各8bit)で足ります。国立国会図書館の手引もファイルサイズの計算例で24bitを前提にしています。ただし、大きく退色していて後工程で強い色補正をかける予定があるなら、48bit(各色16bit)で取り込んでおくと階調が破綻しにくくなります。その代わりファイルは単純に倍になります。全数を48bitにする必要はなく、補正を予定している数枚だけで十分です。
フィルムやネガは桁が違う|35mm判は24×36mm、2400dpiで約772万画素
ネガやポジのフィルムが出てきたら、紙焼きとは別の基準で考えます。35mm判(135フィルム)の標準的な画面サイズは24×36mm。L判の89×127mmに比べて面積で10分の1以下しかありません。同じdpiで取り込んでも、得られる画素数はまったく違います。
35mm判(24×36mm)のdpiと画素数
dpi
画素数
非圧縮TIFF(1コマ)
36枚撮り1本
1200dpi
1134×1701px(約193万画素)
約5.5MB
約200MB
2400dpi
2268×3402px(約772万画素)
約22MB
約800MB
4800dpi
4535×6803px(約3085万画素)
約88MB
約3.2GB
必要なdpiは、紙焼きと同じ式で逆算できます。フィルムの長辺36mmを基準に、出力したいサイズを入れるだけです。
L判(127mm)にプリント:約1058dpi
2L判(178mm)にプリント:約1483dpi
A4(297mm)にプリント:約2475dpi
A3(420mm)にプリント:約3500dpi
つまり2400dpiがA4プリントに対応する実用ラインで、フィルムの標準的な設定値としてはここが基準 になります。1200dpiだとL判をわずかに超える程度で、2L判にすると足りません。フィルムはもともと本数が限られていることが多いので、紙焼きのように枚数で妥協する必要は薄く、最初から2400dpiで通してしまうほうが後戻りがありません。
4800dpi以上にするかどうかは、フィルムの粒子との兼ね合いになります。ある密度を超えると増えるのは像の情報ではなく粒子そのものの形になっていくと考えられ、ファイルだけが膨らみます。大きく引き伸ばす予定の数コマに限って使うのが現実的です。
機材の前提もひとつあります。ネガやポジは光を透かして読む必要があるため、原稿を上から照らすだけのフラットベッドスキャナでは取り込めません。ふた側に光源が入った透過原稿ユニット付きの機種か、フィルム専用機が必要です。手持ちの機種にフィルムホルダーが付属していなければ、まず対応しているかを仕様で確認してください。
ネガの色反転についても、多くの場合はスキャナ側の機能で処理されますが、これは「解釈」を伴う変換です。同じネガでもソフトによって色の出方が変わります。仕上がりに納得できないときは、反転前の状態で保存しておいて後から調整するという選択肢もあります。
枚数が多いときの妥協点|全数は300dpi、選抜だけ600dpiの二段構え
アルバム10冊、写真にして1000枚。これを全部600dpiのTIFFで取り込むと、単純計算で約18GBです。時間もかかります。ここで多くの人が途中で力尽きます。
現実的な進め方は二段構えです。全数は300dpiで通しで取り込み、引き伸ばす可能性のあるものだけを後から600dpiで取り直す。 紙焼きが手元に残っている限り、再スキャンはいつでもできます。最初から完璧を狙うより、まず全部が最低限のかたちでデータになっている状態を作るほうが、結果的に取りこぼしが減ります。300dpiなら1000枚でも約4.5GBです。
作業時間を縮める具体策
複数枚を並べて1回で取り込む。 多くのスキャナには、ガラス面に並べた写真を自動で切り分けて別ファイルにする機能があります。A4サイズのガラス面は62,370mm²、L判1枚は11,303mm²なので理論上は5枚入りますが、写真どうしと縁に間隔が必要なため、実際は4枚が扱いやすい枚数です。
写真の向きは揃えて置く。 自動切り出しは傾きも補正してくれますが、縦横が混在すると後で並べ替える手間が増えます。縦位置だけ、横位置だけでまとめて流したほうが速いです。
プレビューを毎回やらない。 同じ設定で同じ配置なら、プレビューを飛ばして本スキャンだけを繰り返せます。1回あたり数秒でも、200回繰り返せば効きます。
アルバム台紙から剥がれないものは台紙ごと取り込む。 無理に剥がすと写真が裂けます。台紙ごとスキャンして、あとから画像編集ソフトで切り出せば済みます。
A4のガラス面全体を600dpiで取り込むと、非圧縮TIFFで1回あたり約100MBになります。4枚ずつ切り出す前提なら、この1ファイルから4枚分が取れる計算です。
逆に、やらないほうがよいのが「とりあえず全部1200dpi」です。300dpiと比べて容量は16倍、作業時間も相応に伸びますが、画面で見ても等倍でプリントしても違いは出ません。差が出るのは引き伸ばしたときだけで、その用途に該当する写真は全体のごく一部です。
そして数百枚規模になると、必ず中断します。1回の作業=1フォルダにして、フォルダ名に日付とアルバム名を入れておいてください。「どこまでやったか分からなくなった」で止まるのがいちばん多い失敗で、これを防ぐだけで完走率が上がります。
ファイル名は「年月+連番」の半角英数字|スキャナは撮影日をExifに書かない
取り込みが終わったあと、意外に効いてくるのがファイル名です。ここを最初に決めておかないと、あとで数百枚の名前を付け直すことになります。
まず知っておきたい事実として、スキャン画像には撮影日が残りません。 デジタルカメラの写真にはExif(富士フイルムが開発し、当時の日本電子工業振興協会で規格化された形式)に撮影日時が記録されますが、国立国会図書館の手引は「スキャナの場合は、一般的な作業ではTIFFで保存し、タグに一部の情報は記録されるが、EXIFなどのメタデータ形式には対応していないことが多い」と明記しています。つまりファイルの日時として残るのは「スキャンした日」です。1985年の運動会の写真が、パソコン上では今年の日付として並びます。
撮影年月を残す場所は、ファイル名かフォルダ名しかありません。次のルールで付けておけば、並び順も崩れず、どの機器でも読めます。
年月を先頭に置く。 「1985-08」または「198508」。時系列で自動的に並びます。
連番はゼロ埋めする。 「1」「2」…「10」だと10が2の前に来ます。4桁のゼロ埋め(0001)にしておけば9999枚まで崩れません。
半角英数字とハイフン・アンダースコアだけを使う。 全角文字、空白、記号は避けます。
例:1985-08_undoukai_0001.jpg
半角英数字を勧めるのは、ディスクや外部媒体に移したときの互換性のためです。CD/DVDの基本規格であるISO 9660は、Level 1で「8文字+拡張子3文字」、Level 2/3で31文字までという制限があり、日本語や長い名前を扱うには拡張が要ります。Joliet拡張は最大64文字、Rock Ridgeは最大255文字に対応しますが、どの拡張で書かれたディスクをどの機器が読むかは組み合わせ次第です。短い半角英数字にしておけば、切られたり文字化けしたりする余地がありません。
撮影年が分からない写真は、年だけ入れるか「0000」にしておき、あとで分かった時点で直せるようにします。国立国会図書館の手引も、ファイル名の付与ルールを決めたうえで「ファイル名の一覧表」をテキスト形式・TSV形式・CSV形式のいずれかで作ることを求めています。表計算ソフトでファイル名と写っている内容の対応表を作っておくと、家族に聞いて回った情報をそこに書き足していけます。
データにしたあと、どこに置くか
データ化が終わってからの最大のリスクは、保存先が1か所しかない状態です。パソコンの内蔵ドライブだけ、あるいは外付けHDD1台だけという置き方は、その1台が壊れた時点で作業が全部無駄になります。最低でも性質の違う2か所、たとえば手元のドライブとクラウド、あるいは手元のドライブと光ディスクに分けておきます。
光ディスクが向いているのは、内容を固定して配る用途です。書き換えができないぶん誤操作で消える心配がなく、実家や兄弟に同じものを1枚ずつ渡す、といった形にしやすい。写真をスライドショーの動画にまとめてしまえば、テレビにディスクを入れるだけで再生でき、パソコンの操作を前提にしなくてよくなります。前述のとおり、ブルーレイなら1920×1080まで扱えるので、400〜600dpiで取り込んだ写真の解像度をほぼそのまま活かせます。
ディスクメーカーでは、動画データからDVD・ブルーレイを制作しています。1枚1,500円からで、1枚から注文できます。再生できる形式に組み立てるオーサリングは料金に含まれていて、年代ごとのメニュー画面やチャプター分けにも対応しているので、「1985年」「1990年」といった単位で頭出しできる形にまとめられます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷にも対応しているため、棚に並べたときにどの年代のディスクか背から分かるようにできます。入稿はギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなど、ダウンロードできる共有URLをお送りいただく形です。
納期は通常便のほか、お急ぎ(+1,500円/15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)、特急(+3,000円/15時までの注文・入稿で翌日発送)、当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までの注文・入稿、大阪市北区の店舗で受け取り)から選べます。法事や誕生日など日付が決まっている場面に合わせやすい構成です。
よくある質問
Q. 写真のスキャンは300dpiと600dpiのどちらにすべきですか
A. 紙焼きを手元に残すなら300dpi、処分するつもりなら600dpiという分け方が実務的です。300dpiは公的なデジタル化基準でも保存用の下限とされている数値で、L判なら1051×1500px(約158万画素)になり、画面での閲覧や同じサイズでの焼き増しには十分です。原本が残っていれば、あとから必要になった写真だけ600dpiで取り直せます。反対に写真を処分する、または退色や水濡れで劣化が進んでいて次に触れる保証がないなら、そのスキャンが最後の機会になるので600dpiにしておきます。
Q. 600dpiでスキャンすると1枚あたりのファイルサイズはどれくらいになりますか
A. L判(89×127mm)を600dpi・24bitフルカラーで取り込むと2102×3000ピクセル、約631万画素になり、非圧縮のTIFFで約18MBです。JPEGで1/10程度に圧縮すれば約1.8MBが目安ですが、実際のサイズは絵柄によって変わり、空や壁のような平坦な面が多い写真は小さく、木立や砂利のような細かい絵柄は大きくなります。500枚をTIFFで揃えると約8.8GB、JPEGなら約900MBという規模感です。300dpiならTIFFで約4.5MB、500枚で約2.2GBに収まります。
Q. JPEGとTIFFはどちらで保存すべきですか
A. 長期保存を目的にするならTIFF、日常的に見たり送ったりするならJPEGで、余裕があれば両方を残すのが確実です。TIFFは非圧縮やLZW・ZIPといった情報を失わない圧縮が使え、国立国会図書館の手引でも保存用画像の形式とされています。JPEGは非可逆ですが、同手引には1/10程度の圧縮なら人間の目では劣化を判別できないとされる、という記述があります。注意点として、JPEGは開いて保存し直すたびに再圧縮で劣化が積み上がるため、トリミングや色調整は必ず元データから行い、結果を別名で書き出してください。
Q. 色あせた写真はスキャンするときに色補正したほうがいいですか
A. スキャン時の補正はオフにして、素のまま取り込むことをお勧めします。退色復元や逆光補正、自動シャープといった機能は結果が画像に焼き込まれてしまい、あとから元に戻せません。仕上がりに納得できなければスキャンし直すしか手がなく、100枚取り込んだあとで気づけば100枚やり直しになります。素のデータを確保しておけば、コピーに対して何度でも補正を試せます。強い色補正を予定している写真だけ、24bitではなく48bit(各色16bit)で取り込んでおくと、階調が破綻しにくくなります。
Q. ネガフィルムは何dpiで取り込めばいいですか
A. 35mm判(画面サイズ24×36mm)なら2400dpiが実用的な基準です。2400dpiで2268×3402ピクセル、約772万画素になり、A4サイズにプリントするのに必要な約2475dpiにほぼ相当します。1200dpiだとL判をわずかに超える程度で、2L判に伸ばすと足りません。なおネガやポジは光を透かして読む必要があるため、透過原稿ユニットが付いた機種かフィルム専用機が必要です。上から照らすだけの一般的なフラットベッドスキャナでは取り込めないので、まず手持ちの機種が対応しているか仕様を確認してください。
Q. スキャンした写真をDVDにまとめたいのですが、何dpi必要ですか
A. DVD-Videoの映像は720×480ピクセル(約35万画素)なので、L判を横位置で使う場合は144dpiあれば画素数としては足ります。つまり300dpiで取り込んでいればDVDには十分すぎる余裕があります。ただしブルーレイは1920×1080ピクセル(約207万画素)で、横方向1920pxに届かせるには384dpi、実質400dpiが下限です。さらにスライドショーで写真に寄るズーム演出を入れるなら、1.5倍で2880px必要になるため576dpi、切りよく600dpiを確保しておくと後から自由が利きます。
Q. ファイル名は日本語で付けても大丈夫ですか
A. パソコン内で完結するなら問題ありませんが、ディスクなどの媒体に移すことを考えるなら半角英数字を勧めます。CD/DVDの基本規格であるISO 9660はLevel 1で8文字+拡張子3文字、Level 2/3で31文字までという制限があり、日本語や長い名前を扱うにはJoliet(最大64文字)やRock Ridge(最大255文字)といった拡張が必要です。どの拡張で書かれたディスクをどの機器が読むかは組み合わせ次第なので、短い半角英数字にしておけば切られたり文字化けしたりする余地がありません。
Q. スキャンした写真に撮影日を残すにはどうすればいいですか
A. ファイル名かフォルダ名に書くのが確実です。デジタルカメラの写真は撮影日時がExifに記録されますが、国立国会図書館の資料デジタル化の手引は、スキャナはExifなどのメタデータ形式に対応していないことが多いと記しています。そのためファイルの日時として残るのはスキャンした日で、1985年の写真が今年の日付として並びます。「1985-08_undoukai_0001.jpg」のように年月を先頭、連番をゼロ埋め4桁で付けておけば時系列で並びます。年が不明なものは0000にして、表計算ソフトで対応表を作り、分かった時点で直せるようにしておきます。