この記事の要点
- 講師の話は、講演として著作物になりえます(著作権法第10条)。録画してDVDで配るなら、録画する範囲、配る相手と枚数、販売や配信をするかまで、講演の前に講師の了解をもらいます。演奏や朗読をする出演者にも、録音・録画の権利があります(第91条)。
- 企業の研修や、会社・個人が開く有料のセミナーでは、スライドに使った他人の図表・写真・曲に、学校の授業の例外(第35条)が使えません。引用の条件に当たらなければ、参加者だけに無料で配る場合も権利者の許諾が要ります。
- 客席やオンラインの画面に写る参加者は、誰か分かれば個人情報です。申し込みのときに録画と配り方を知らせ、写りたくない人の席や質疑応答の扱いを決めておきます。
- DVDの映像は720×480で、フルHDで録った画面は縦の画素が半分以下になります。スライドの小さな文字が読めなければ、ブルーレイ(1920×1080)にするか、資料を紙やファイルで別に配ります。
- すぐ見てもらうなら配信、手元に残して繰り返し見る教材ならディスクが向きます。講座名・開催日・版番号をファイル名と盤面でそろえ、元の動画を残しておくと、追加の配布や改訂で取り違えません。
講演会の録画を、当日来られなかった会員にも届けたい。社内研修の映像を、各拠点で繰り返し見られる教材にしたい。ウェビナーの録画を、ネットに不慣れな受講者へDVDで送りたい。動画のファイルさえあれば、ディスクそのものは作れます。配ったあとで困りやすいのは、映像の中に入っているものの扱いです。
講師の了解と参加者への案内は講演の前に済ませるのが確かで、配ったディスクは集め直せません。この2つを先に済ませておけば、残りは動画ができてから決めても間に合います。
法律の説明は、e-Gov法令検索の著作権法・個人情報保護法の条文と、文化庁の「著作権テキスト(令和8年度版)」・学校向けの冊子、個人情報保護委員会のガイドラインとQ&Aに書かれている範囲にとどめました。講師との契約の中身や個別の判断は、権利者や弁護士などに確かめてください。
講演会の映像を配る前に決める5つのこと
表の上の3つは権利と個人情報の話で、講演の前に講師や参加者と済ませておきたいことです。下の2つは、映像ができてから、見る人に合わせて決めます。
| 決めること |
確かめること |
講師の 了解 |
録画してよい範囲、 配る相手と枚数、 販売や配信の有無、 編集と名前の出し方。 |
| 資料と曲 |
スライドの図表・写真、 会場で流した曲。 自作か、許諾済みか、 引用に当たるか。 |
写る 参加者 |
客席の顔、質問の声、 画面に出る名前。 申し込みのときに 知らせたか。 |
資料の 文字 |
DVDの画質で読めるか。 読めなければ ブルーレイか、 資料を別に配る。 |
| 配り方と版 |
配信かディスクか。 講座名・開催日・ 版番号をそろえ、 元の動画を残す。 |
主催者だけでは決めきれない項目もあります。講師が外部の人なら講演の依頼や契約のときに録画と使い道を話し合い、会社の研修なら社内の情報の扱いの決まりに沿って進めます。決めたことは、講師への依頼文、参加の申し込みの案内、配るときの添え書きの3か所に同じ言葉で書いておくと、あとで食い違いません。
講師の話は著作物になりうる|録画して配るなら講師の了解が要る
著作権法の第10条は、著作物の例の最初に「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」を挙げています。文化庁の著作権テキストも、言語の著作物の例に講演を入れ、原稿なしの講演も保護の対象になると説明しています。著作物は、考えや気持ちを創作的に表現したもの(第2条)なので、事務連絡や決まり文句のあいさつまで当たるとは限りません。それでも講演の本題は、講師が自分で組み立てた話です。講師の著作物が入っているものとして扱うのが確かです。
録画は、著作権法の「複製」に当たります。第2条は複製を、印刷、写真、複写、録音、録画などの方法で形のあるものに再製すること、と定めています。複製する権利は著作者のもので(第21条)、文化庁も、生の講演を録音したり筆記したりする行為に、この複製権がはたらくと説明しています。講演を録画してDVDにし、参加者に配るには、講師の了解が要ります。
了解は、もらった範囲でしか使えません。第63条は、許諾を得た人は、その許諾に係る利用方法と条件の範囲内で著作物を利用できる、としています。「参加者に配る」という了解のまま、あとから一般に販売したり、ネットに載せたり、次の年度の研修で使い続けたりすると、範囲の外に出るおそれがあります。講演の前に、次の点を講師と決めておきます。
- 録画する範囲。講演だけか、質疑応答や休憩の前後も入れるか
- 配る相手と枚数。参加者だけか、欠席者や会員全員にも配るか
- 販売するか。配信やネットに載せるか。するなら、その期間
- 編集でどこを切るか。仕上がりを講師が確かめるか
- 盤面や映像の冒頭に出す名前と肩書き
- 講師の顔と声が写ること
編集と名前の出し方も、講師の権利にかかわります。著作者には、自分の著作物を意に反して変更・切除されない権利(第20条の同一性保持権)と、名前を実名で出すか、別の名前で出すか、出さないかを決める権利(第19条)があります。質疑応答を短くする、話の一部を切る、といった編集は、講師に見てもらってから進めます。決めたことは、依頼状や契約書、メールなど、あとから読み返せる形で残してください。
演奏や朗読をする出演者がいるとき
講演の合間に、演奏や朗読が入る催しもあります。著作権法は、著作物を演じたり、演奏したり、歌ったり、朗詠したりすることを「実演」、それをする人を「実演家」と呼んでいます(第2条)。実演家には、その実演を録音・録画する権利があり(第91条)、文化庁の著作権テキストは、自分の生の実演をディスクやテープなどに録音・録画することに関する権利だと説明しています。
出演を頼む段階で、録画するか、どう配るかまで伝えて了解をもらいます。実演の許諾にも、了解した範囲でしか使えないという第63条の決まりが当てはまります(第103条)。
スライドの図表・写真・曲|企業の研修や有料セミナーは第35条の外
講師の話の次に確かめるのが、スライドや会場で使った他人の作品です。本や報告書から写した図表、ネットで見つけた写真やイラスト、新聞記事、冒頭や休憩中に流した曲や動画。著作権法の例示では、図表は「図形の著作物」、写真は「写真の著作物」、曲は「音楽の著作物」として挙がっていて(第10条)、録画に写り込めば、ディスクにするときに一緒に複製されます。
学校の授業なら、第35条の例外があります。学校や公民館などの営利を目的としない教育機関で、教える人と授業を受ける人が、授業の過程で使うために必要な限度で、他人の著作物を複製できる、という決まりです。ところが文化庁の学校向けの冊子は、企業や団体等の研修施設、カルチャーセンター、営利目的の会社や個人経営の教育施設、認可を受けていない予備校・塾を、第35条の教育機関に当たらない例に挙げています。学校の施設で開く自治会主催の講演会や、PTA主催の親子向け講座も、「授業」に当たらない例です。会社の研修や、会社・個人が開く有料のセミナー、自治会やPTAが主催する講演会で映した図表や写真、流した曲は、第35条では複製できません。学校の授業で使う教材の扱いは授業の教材をDVDにするときの著作権で説明しています。
会場で曲を流したこと自体は、営利を目的とせず、入場料を取らず、演奏する人に報酬を払わない、といった条件がそろえば、許諾なしにできる場合があります(第38条)。ただ、文化庁はこの例外を、上演・演奏・上映・口述のためのもので、複製や譲渡は含まれないと説明しています。会場で流すのは許諾なしにできても、録画して配る映像に曲が入っていれば、原則として手続きが要ります。
参加者に配るためのDVDは、私的使用のための複製(第30条)にも当たりません。文化庁は第30条を、家庭内など限られた範囲で、仕事以外で使うために、使う本人が複製する場合の例外と説明しています。
参加者だけに無料で配っても、「公衆」への頒布になりうる
参加者だけに無料で渡すなら構わない、と考えたくなるところです。けれども著作権法の「頒布」は、有償か無償かを問わず、複製物を公衆に譲渡したり貸与したりすることで(第2条)、その「公衆」には特定かつ多数の人も含まれます(第2条5項)。文化庁は、会員だけが対象だから不特定の人向けではない、といった脱法行為を防ぐための決まりだと説明しています。何人以上が「多数」かは、著作物の種類や使い方によって異なり、何人と決めて言うことはできない、ともしています。無料で参加者だけに配る場合も、講師の了解と、スライドや曲の許諾は同じように要ります。
引用の条件に当たる図表なら、許諾なしに使える
他人の図表を、話の中で取り上げて論じるために示すなら、引用(第32条)として許諾なしに使える場合があります。文化庁が挙げる条件は、公表された著作物であること、引用する必然性があること、引用した部分が区別できること(文章ならカギ括弧など)です。加えて、自分の話が主で引用が従であること、分量が必要最小限であること、出所を明示することも求められます。話の中身と関係なく飾りとして置いた写真やイラストは、文化庁が引用に当たらない例として挙げる「自己の著作物に登場する必然性のない他人の著作物の利用」に当たると考えられます。
録画の前にスライドを1枚ずつ見て、出所の分からない写真やイラストは、自分で撮ったものや許諾のある素材に差し替えておくと、配る段階で慌てずに済みます。文化庁の冊子は、「著作権フリー」などの表示があっても、個人の利用は認めるが業務上の利用は認めない、といった条件を定めている場合があると注意しています。利用規約で、録画して配ることや販売することまで認められているかを見てください。
企業の研修や有料セミナー、自治会やPTAの講演会は第35条の外
写る参加者の顔・名前・質問の声は、どう扱うか
講演の録画には、講師のほかに参加者も写ります。客席の後ろ姿や横顔、質疑応答で立ち上がって名乗った名前と所属、オンラインの画面に並ぶ顔と表示名、チャットの書き込み。個人情報保護委員会のガイドラインは、本人が判別できる映像を個人情報の例に挙げ、映像や音声による情報も個人に関する情報に含めています。誰か分かるように写っていれば、個人情報として扱います。
申込者の名簿などを使って催しを開く主催者は、個人情報保護法の「個人情報取扱事業者」に当たることがあります。委員会のガイドラインによれば、営利か非営利かは問わず、法人格のない任意の団体や個人でも、名簿などを事業に使っていれば当たります。個人情報取扱事業者は、個人情報を何に使うかをできる限り特定し(第17条)、本人に知らせるか公表します(第21条)。特定した使い道の外で使うには、原則として、あらかじめ本人の同意が要ります(第18条)。
そこで、申し込みの案内に「当日は録画し、DVDにして参加者に配ります」のように、録画することと使い道を書いておきます。あとから販売やネットでの公開に広げるなら、改めて参加者に聞きます。委員会のQ&Aは、会社の行事で撮った写真を社内で展示する例について、プライバシーの権利や肖像権の侵害にあたる場合もあると注意しています。そのうえで、展示の期間を限る、不特定多数に渡すときは本人の同意を得る、といった取り組みを望ましいとしています。同意の取り方としては、書面を受け取ることや、確認の欄へのチェックがガイドラインの例に挙がっているので、申込書にチェックの欄を設けておくと、あとで確かめられます。
肖像権は、自分の肖像をみだりに他人に公開されない権利で、法律に定めはなく、判例によって確立されてきた権利です。文化庁は学校向けの冊子で、他人の肖像を使うときは、あとでトラブルにならないよう、事前に本人や保護者の承諾を得ておくよう勧めています。
当日の撮り方でも、写り方は変えられます。
- カメラは講師とスクリーンに向け、客席を正面から撮らない
- 写りたくない人のために、カメラに入らない席を決めて案内する
- 質疑応答は、名乗らずに質問してもらうか、名前の部分を編集で切る
- オンラインの録画は、参加者の映像や表示名、チャットが写っていないかを見る
- 受付の名簿や、休憩中の雑談が入った部分は、配る前に切る
使い道ごとに「はい・いいえ」を選べる同意書の欄の分け方は、園向けの記事ですが園の動画・写真を配るときの同意書が参考になります。
スライドの文字はDVDで読めるか|720×480と1920×1080の差
DVDの映像(DVD-Video)は720×480で、約35万画素です。ブルーレイは1920×1080のフルHDで、約207万画素。1枚の画面を描く点の数に、6倍の差があります。講演の録画でこの差が出やすいのは、動きの少ない講師の姿より、スライドの細かい文字です。
1枚の画面を描く点の数に6倍の差。スライドの小さな文字に差が出やすい
フルHDで録った講演をDVDにすると、計算上、縦の画素は1080から480へ約0.44倍、横は1920から720へ0.375倍に減ります。画面の中の文字も、同じ割合で粗い点で描かれます。見出しの大きな文字は読めても、表の中の数字、図の注記、出典の小さな文字は、読み取れなくなることがあります。会場の後ろから撮ったスクリーンのように、録画の段階で文字が小さく写っていれば、なおさらです。
確かめ方は単純です。いちばん文字の小さいスライドが映る数分を選び、試しにDVDにして、見る人と同じくらいの大きさのテレビで見ます。パソコンの画面を近くで見ると、テレビを離れて見るより読めてしまうことがあるので、ふだん座る距離から見てください。読めないときの手は3つです。
- ブルーレイにする。見る人がブルーレイの機器を持っている場合に限られます
- 資料を紙やPDFで別に配り、映像では話の流れを追えれば足りる、と割り切る
- 編集で、スライドが映る場面を大きく拡大するか、スライドの画面を直接録った映像に差し替える
3つ目は、録画した元の映像にスライドの細かさが残っている場合の手です。元の録画が粗ければ、ブルーレイにしても、編集で拡大しても、細かさは戻りません。
ブルーレイにするなら、見る人の機器を確かめる
DVDプレーヤーでは、ブルーレイを再生できません。ソニーは、DVDプレーヤーの赤色レーザーではブルーレイの細かな記録を読みこめないと説明しています。反対に、ブルーレイのプレーヤーやレコーダーの多くと、PS5(ディスクドライブ付き)・PS4は、DVDも再生できます。参加者全員に配るならDVDを基本にして、資料の細かさが要る人やブルーレイの機器がある人にだけブルーレイも作る、という分け方ができます。細かさや容量の違いはDVDとブルーレイの違いで比べています。
会社の会議室や研修室のパソコンで見てもらうなら、ディスクのドライブと再生ソフトがあるかも見ておきます。Microsoftの案内では、Windows 10・Windows 11のWindows Media Player(従来版)に、DVDの再生機能は含まれていません。
資料は、映像のディスクとは別に渡す
資料のPDFも一緒に渡したいときは、映像のDVDとは別の形で考えます。家庭用のDVDプレーヤーで見られるのは、プレーヤーで再生できる形に組み立てた映像のDVD(DVD-Video)です。パナソニックも、パソコンの動画をそのままDVDに書き込んでも、一般的な家庭用DVDプレーヤーでは再生できないと説明しています。ファイルを入れたデータのディスクと、映像のDVDの違いはデータDVDと映像DVDの違いにまとめました。
資料は紙で配るか、PDFをメールや共有のURLで渡すと、受け取る側が迷いません。資料に入っている他人の図表や写真の扱いは、スライドと同じです。
配信とディスク、どちらで配るか
録画の届け方は、URLで見てもらう配信と、DVD・ブルーレイのディスクに分かれます。配信は、URLを送ればすぐ見てもらえる一方、ネットにつながるスマホやパソコンが要ります。URLで送った動画は、受け取った人が転送すれば広がります。ディスクは作って届けるまでに日数がかかりますが、DVDならDVDプレーヤーでもブルーレイの機器でも見られることが多く、手元に物として残り、URLのように転送では広がりません。
| 場面 |
向く形 |
すぐに 見返したい |
配信(URL)。 ネットにつながる 機器で見てもらう。 |
ネットを 使わない人 |
DVD。プレーヤーで 見られる映像の DVDにする。 |
会議室で そろって見る |
DVDかブルーレイ。 その部屋の機器で 先に試す。 |
毎年 直す研修 |
配信で差し替えるか、 版番号を付けた ディスクにする。 |
手元に 残す教材 |
DVDかブルーレイ。 元の動画も 別に残す。 |
社外に 出さない 研修 |
配る相手と枚数を 決めたディスクか、 見る人を絞った配信。 |
両方を使う配り方もあります。すぐ見てほしい参加者には配信で知らせ、ネットを使わない人や手元に残したい人にはディスクを渡す、という分け方です。配信の公開の期間や、見られる人を限る設定は、使うサービスの機能と規約で違うので、サービスごとの案内を読んでください。
すぐ見てほしい人には配信、ネットを使わない人や手元に残したい人にはディスク
ウェビナー(Zoom)の録画をDVDにするとき
ウェビナーの録画をDVDにするときは、会議のURLではなく、書き出して保存した動画ファイルを使います。オンラインの録画には、講師の画面のほかに、参加者の顔や表示名、チャットが写ることがあります。前の節の点に目を通し、待機中の画面や、配らない質疑応答を編集で切ってから進めます。Zoomでの録画の保存から、DVDにするまでの手順はZoom録画をDVDにする方法にまとめています。
研修の教材にするとき・教材として売るとき
参加者に配る記録にくらべて、研修で繰り返し使う教材や、売る教材では、見ておく範囲が広がります。
社内研修の教材にするとき
社員が講師をした研修なら、著作者が会社になることがあります。第15条は、会社などの発意に基づいて、その業務に従事する人が職務上作り、会社などが自分の名義で公表するものは、作ったときの契約や勤務規則に別の定めがない限り、会社などを著作者とする、と定めています。当たるかどうかは、社内の決まりとあわせて確かめてください。外部の講師の講義を社内の教材にするなら、社内で繰り返し使うこと、拠点に配ること、使う期間まで、了解の中に入れておきます。
企業の研修施設は第35条の教育機関に当たらないので、スライドに入れた他人の図表や写真、曲は、社内だけで使う場合も許諾か引用の条件が要ります。社外に出したくない内容なら、盤面やケースに「社外秘」などの表示を入れ、配った部署と枚数を記録しておくと、回収や作り直しのときにたどれます。録画のデータを外の業者に送るときは、会社の情報の扱いの決まりに沿って、受け取った動画をいつまで持っていて、いつ消すのかを、注文の前に業者へ尋ねておきます。
1巻に入れる範囲は、ディスクの容量だけで決めず、学ぶ内容のまとまりで区切ると使いやすくなります。入門・実務・応用のように巻を分け、どの巻にどの話題が入っているかの一覧を添えておきます。
教材として販売するとき
講演のDVDを教材として売るなら、講師の了解に販売が含まれているかを最初に確かめます。了解は、了解された方法と条件の範囲でしか使えないからです(第63条)。スライドの図表や写真、曲の許諾も、配るところまでか、販売まで認められているかを見直します。写る参加者については、申し込みのときに販売まで知らせていなければ、映らないように編集するか、改めて同意をもらいます。
商品の説明には、収録時間、内容、見るのに要る機器を書いておきます。DVDかブルーレイかが分からないまま買った人は、手元の機器で再生できずに困ります。かかる費用は、ディスクを作る費用のほかに、送る費用や、販売に使う仕組みの手数料などもあるので、別々に見積もっておきます。
版の管理と追加の配布|講座名・開催日・版番号をそろえる
講演の映像は、配ったあとに直したくなることがあります。誤字の訂正、差し替えたスライド、切り忘れた個人の名前。直した動画は別の版として扱い、どの版をだれに配ったかが分かるようにしておきます。
名前は、ファイル名、盤面、メニューのタイトルで同じにします。たとえば「2026-10-15_安全講習_v2」のように、開催日、講座名、版番号の順に並べると、ファイルを名前順に並べたときに開催日の順にそろいます。何本かの動画を1枚にまとめるなら、頭に「01_」「02_」と付けて収録の順を決めます。長い講演を2枚に分けたら、盤面に「1/2」「2/2」も入れます。
残しておくものは、次のとおりです。
- 編集前の録画と、完成した版の動画
- スライドと、配った資料
- チャプターの時刻と題を並べた表
- 盤面やケースの原稿
- 講師の了解、素材の許諾、参加者への案内の記録
- 配った相手、枚数、版の一覧
編集で前半を短くすると、後ろのチャプターの時刻はすべてずれます。直した版は新しい動画として時刻を測り直し、もう一度1枚目を作って再生を確かめてから残りを作ります。後日、追加で配るときは、講師や権利者の了解が追加の枚数と期間まで含んでいるかを見直します。そのうえで、前に配ったものと同じ版かを、版番号と元の動画で照らし合わせてから頼みます。
直した動画は別の版として扱い、どの版をだれに配ったかを残す
セミナーの録画からDVDを作るまでの段取り
- 講演の前に、講師の了解(録画する範囲・配る相手・販売や配信)と、スライドの素材の許諾を済ませる
- 参加の案内に、録画することと使い道を書き、写りたくない人の席を決める
- 当日は講師とスクリーンを中心に撮る。スライドの細かさが要るなら、スライドの画面も別に録る
- 編集で待機時間、休憩、個人の名前、配らない質疑応答を切り、完成した版の動画を書き出す
- 長さを確かめ、ディスクの枚数と、DVDかブルーレイかを決める
- 話題ごとのチャプターの時刻と、盤面の文字を決める
- 1枚目を作り、何台かの機器で最初から最後まで再生して、文字と音を確かめる
- 残りを作って配り、配った相手と版を記録する
1層のDVDに無理なく入るのは、レコーダーのSPモードと同じくらいの画質で約2時間です。午前と午後に分かれた講演会のように2時間を超えるなら、講演ごとに2枚に分けるか、ブルーレイにします。2層のDVDもありますが、カナダ保存研究所は、1層のディスクのほうが2層より、記録や再生の機器との相性がよいとしています。ディスクに入る時間の計算はDVDに何分入る?ブルーレイに何時間入る?で説明しています。
チャプターは、本編の中に打つ区切りです。リモコンの「次へ」で次の区切りへ飛べるので、講演なら話題ごと、登壇者ごと、質疑応答の始まりに打っておくと、見たい場面をすぐ出せます。位置は「00:12:30」のように、編集を終えた動画の時刻で決めます。付け方と数の目安はチャプター分けとは?にまとめました。
1枚目の確認は、種類の違う機器で行います。ソニーのレコーダーの説明書は、記録済みのDVD-Rなどは、傷や汚れのほか、記録状態や記録した機器、ソフトの特性などで再生できないことがあると書いています。会場や会議室のプレーヤー、家のブルーレイのレコーダー、DVDだけのプレーヤーで、本編が始まるか、最後まで止まらずに流れるか、チャプターで飛べるか、音の大きさと映像のずれ、スライドの文字を見ます。配る前の確かめ方は配るDVDを、どの家のプレーヤーでも見られるように作るにはに詳しく書きました。
当社に書き込みを頼む場合の流れ
当社(ディスクメーカー)は、大阪市北区・梅田にある、DVD・ブルーレイの書き込み代行の小さな店です。受け付けるのは完成した動画のデータです。編集を終えた講演の動画は、ギガファイル便、Google ドライブ、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorage などにアップロードしてください。その共有URLを注文フォームに貼っていただければ入稿でき、スマホからも送れます。受け取った動画は、当社がプレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、店舗でお渡しします。DVDは720×480(NTSC 29.97fps・MPEG-2)、ブルーレイは1920×1080で作り、注文は1枚からです。
料金は、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)1,500円で、同じ内容の2枚目からは追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)1,000円です。講演ごとに内容が違うディスクと、DVD・ブルーレイの組み合わせは、それぞれ1枚目から数えます。あとで追加を頼むときも、新しい注文の1枚目からです。
話題ごとの区切りは、チャプター分け(1枚あたり)+1,500円を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に、2つ目以降の位置を時刻で入れてください。1つ目は動画の冒頭00:00:00に自動で入り、1枚に最大50チャプターまでです。盤面に講座名や開催日、版番号を入れるなら、盤面レーベル印刷(1枚あたり)+1,000円を選び、開いた欄に画像をアップロードするか、ギガファイル便のURLを入れます。メニュー画面作成を選ぶと「メニュー画面のご希望(任意)」の欄が開き、メニュータイトルとご希望を書けます(空欄ならデザインはお任せ)。オプションの金額は料金表に載せています。
見る人の機器や配る日などは注文フォームの備考欄に、注文の前に確かめたいことは相談・問い合わせフォームに書いてください。通常便は受付から5営業日で発送し、お届けは発送から2〜3日です(営業日は土日祝・休業日を除いて数えます)。配る日から逆に数えて、1枚目を確かめる日も入れて頼んでください。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。画面の欄に沿った注文の流れは動画をDVD・ブルーレイにする注文の手順で、ほかの業者と見積もりを比べるときの見方はDVD・ブルーレイ作成を業者に頼むときで説明しています。
よくある質問
Q1. 講演会の録画をDVDにして参加者に配るのに、講師の了解は要りますか?
要ると考えて準備してください。著作権法は著作物の例に講演を挙げ、文化庁も、生の講演を録音・筆記する行為に講師の複製権がはたらくと説明しています。了解は、了解された方法と条件の範囲でしか使えません(第63条)。録画する範囲、配る相手と枚数、販売や配信をするか、編集で切る範囲まで、講演の前に決めて、依頼状やメールで残しておきます。
Q2. 参加者に無料で配るだけなら、手続きは要りませんか?
無料でも要ります。著作権法の「頒布」は有償か無償かを問わず、「公衆」には特定かつ多数の人も含まれます。文化庁は、会員だけが対象だから不特定の人向けではない、といった脱法行為を防ぐための決まりだと説明しています。講師の了解、スライドの図表・写真や曲の許諾、写る参加者への案内は、無料で配る場合も同じように要ります。
Q3. 企業の研修や有料のセミナーでも、学校の授業の例外(第35条)は使えますか?
使えません。第35条は、営利を目的としない教育機関が、授業の過程で使う場合の例外です。文化庁の冊子は、企業や団体等の研修施設、カルチャーセンター、営利目的の会社や個人経営の教育施設を、教育機関に当たらない例に挙げています。会社や個人が開くセミナーで、スライドに他人の図表や写真、曲を使うなら、引用の条件に当たる場合を除き、権利者の許諾を取ります。
Q4. 客席の参加者が映っている映像を配ってもいいですか?
誰か分かる映像は個人情報に当たります(個人情報保護委員会のガイドライン)。申し込みのときに録画することと配り方を知らせ、それを超えて使うなら、原則として本人の同意を取ります。委員会のQ&Aは、写真の展示の例で、不特定多数に渡すときは本人の同意を得る取り組みを望ましいとしています。写りたくない人の席を決める、客席を正面から撮らない、といった準備も合わせてします。
Q5. スライドの小さな文字は、DVDで読めますか?
読めないことがあります。DVDの映像は720×480で、フルHD(1920×1080)で録った画面は、縦の画素が半分以下になります。本番の前に、いちばん文字の小さいスライドを含む数分で試しのDVDを作り、見る人と同じくらいのテレビで確かめてください。読めなければ、ブルーレイにするか、資料を紙やPDFで別に配ります。
Q6. 講演の録画は、配信とDVDのどちらで配るのがいいですか?
見る人の環境で決めます。配信はURLを送ればすぐ見てもらえますが、ネットにつながる機器が要り、URLは転送されれば広がります。DVDはDVDプレーヤーでもブルーレイの機器でも見られることが多く、手元に物として残り、転送では広がりません。すぐ見てほしい人には配信、ネットを使わない人や手元に残したい人にはディスク、と分けて配る方法もあります。
Q7. ウェビナー(Zoom)の録画もDVDにできますか?
録画を動画ファイルとして保存してあれば、ほかの講演の録画と同じ手順でDVDにできます。使うのは会議のURLではなく、書き出した動画ファイルです。オンラインの録画には、参加者の顔や表示名、チャットが写ることがあるので、配る前に見直し、必要なら編集で切ります。長さが2時間を超えるなら、2枚に分けるか、ブルーレイにします。
Q8. 講演のDVDを教材として販売するときは、何を確かめればいいですか?
講師の了解に販売が入っているか、スライドの図表や曲の許諾が販売まで含むか、写る参加者に販売まで知らせてあるか、の3つです。了解は、了解された方法と条件の範囲でしか使えません(第63条)。商品の説明には、収録時間と内容、見るのに要る機器(DVDプレーヤーか、ブルーレイの機器か)を書いておくと、買った人が再生できずに困ることを減らせます。
Q9. 社員が講師をした社内研修の動画は、だれの著作物になりますか?
会社の発意に基づいて社員が職務として作り、会社の名義で公表するものは、契約や勤務規則に別の定めがない限り、会社が著作者になります(第15条)。当たるかどうかは社内の決まりとあわせて確かめます。外部の講師の講義や、スライドに使った他人の図表・写真・曲は別で、企業の研修は第35条の外なので、許諾か引用の条件が要ります。写る社員の扱いと、配った先の記録も決めておきます。
Q10. あとから追加で配りたくなったら、どうすればいいですか?
まず、講師や権利者の了解が、追加の枚数や期間まで含んでいるかを見ます。次に、前に配ったものと同じ版かを、版番号と元の動画で照らし合わせます。編集し直したなら別の版として、もう一度1枚目を作って再生を確かめてから残りを作ります。元の動画と盤面の原稿、チャプターの時刻表を残しておけば、同じものを作り直せます。
Q11. 公民館の講座や、習い事の教室・スクールの授業を、教材のDVDにして受講生に配るときは?
講演会と同じく、先に講師の了解を取り、スライドに使った図表や写真・曲の権利と、写る受講生の扱いを確かめます。学校の授業の例外(第35条)は、公民館のような営利を目的としない教育機関で、授業の過程で使うために必要な限度に限られます。文化庁の冊子は、カルチャーセンターや、営利目的の会社や個人経営の教育施設を、教育機関に当たらない例に挙げているので、習い事の教室やスクールの教材では、引用の条件に当たる場合を除き、権利者の許諾が要ります。公民館の講座を記録してあとから配るときも、第35条で足りるかを主催の公民館と確かめます。作り直しに備えて、講座名・開催日・版番号を盤面にそろえておきます。
Q12. 熟練の職人の技を映像に残し、社内の教材にするときは?
講演会と同じく、写る人に何に使うかを伝えて了解を取ります。社外に出さないなら盤面やケースにその旨を入れ、配った部署と枚数を記録しておきます。あとから作り直せるよう、元の動画は教材のディスクとは別に残しておきます。
Q13. 建設や製造の現場の安全教育の動画を作って、ディスクで配るときは?
労働安全衛生法第59条は、雇い入れたときや作業の内容を変えたときの安全衛生教育と、危険や有害な業務につかせるときの特別の教育を、事業者に求めています。特別教育を行ったら、受講者や科目などの記録を作って3年間保存します(労働安全衛生規則第38条)。動画で教えるなら、その記録とは別に、どの版の動画を誰が見たかも残しておくと、教材を作り直したときに追えます。現場で撮る動画には作業員が写るので、撮る前に使い道を伝えて了解を取り、協力会社にも配るなら、その範囲も決めておきます。元の動画は教材のディスクとは別に残しておきます。
参考にした公式の情報
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法律の運用や各社の案内は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月26日時点の法令と、文化庁・個人情報保護委員会・各社の公式の記載をもとにしたものです。講師との契約や個別の判断は、権利者や弁護士などに確かめてください。
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