この記事の要点
- 先生が自分で撮った動画や自作のスライドのように、他人の著作物が入っていない教材なら、DVDにするのに許諾は要りません。
- 教科書の図版や新聞記事など他人の著作物も、学校で教員と児童生徒が授業の過程で使うためなら、必要と認められる限度で許諾なしに複製できます(第35条)。部数はその授業の教員と児童生徒の数までです。
- 児童生徒が買う前提のドリルやワークブック、市販の映像教材を、買う代わりにコピーすることは、著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例に挙がっていて、許諾が要ります。
- 欠席した子に授業の録画をDVDで届けるなら、SARTRASのFAQが手がかりです。第35条と運用指針に沿って著作物を使った授業の録画なら、児童生徒に郵送で配るのに許諾は不要と考えられる、とあります。
- 記念品として配る、学級通信に載せる、一般に売る、誰でも見られるように公開する、といった授業の外での使い方には第35条は使えず、原則として許諾が要ります。
理科の実験の手順を撮った動画、自作のスライドに解説の声を入れた動画、欠席した子のために録っておいた授業。こうした教材をDVDにしようとすると、どこまで自由にしてよく、どこから許諾が要るのかで手が止まります。分かれ目は2つです。教材の中に他人の著作物が入っているか。使う場面が授業の中か、外か。
分かれ目は、他人の著作物が入っているかと、授業の中で使うかの2つ
先生が自分で撮った映像や自作の資料だけでできた教材なら、DVDにするのに誰かの許諾を得る必要はありません。教科書や資料集の図版、新聞記事、市販のドリルや映像教材、曲など、他人の著作物が入るときに働くのが著作権法第35条で、学校で教員と児童生徒が授業の過程で使うためなら、必要と認められる限度で許諾なしに複製できます。ただし、ドリルを児童生徒に買わせずにコピーして配るような、著作権者の利益を不当に害する使い方は除かれます。記念品として配るDVDのような授業の外の使い方にも、この例外は使えません。
この記事の法律の説明は、e-Gov法令検索の条文、文化庁の冊子「学校における教育活動と著作権」、教育関係者・有識者・権利者でつくる「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」の「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」(以下、運用指針)、SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)の説明に書かれている範囲にとどめました。文化庁の冊子の第35条のフローチャートも、この運用指針をもとに作られています。書かれていない場面は、学校の管理職や設置者(教育委員会・学校法人など)を通して、文化庁の資料や権利者に確かめてください。
自分で撮った動画や自作のスライドは、DVDにするのに許諾は要らない
実験や実技の手本、板書の手順を解説した動画、自分で作ったスライドやプリント。他人の著作物を含まない教材なら、DVDにしてクラスの子に配る、家に持ち帰って見てもらう、といった使い方に著作権の手続きは要りません。他人の著作物が入っていなければ、次の節で説明する第35条の部数や使い方の条件もかかりません。
学校の仕事として作った教材の著作者がだれになるかは、著作権法第15条の条件で決まります。法人などの発意に基づいて、その業務に従事する人が職務上作り、法人などが自分の名義で公表するものは、作ったときの契約や勤務規則に別の定めがない限り、法人などが著作者になります。ほかの学校の先生に配る、研究会で頒布する、販売する、といった形で学校の外に出す前に、自分の教材がどちらに当たるかを、勤め先の決まりとあわせて管理職に確かめてください。
自作のつもりの教材にも、他人の著作物は入り込みます。教科書や資料集の図版、新聞の写真、インターネットのイラスト、BGMの曲、アニメやマンガのキャラクター。こうした部分には、次の節の第35条の条件がかかります。文化庁の冊子は、イラストに「著作権フリー」などの表示があっても、個人の利用は認めるが業務上の利用は認めない、といった条件を定めている場合があるとして、利用条件をよく確かめるよう勧めています。
後日見せる授業動画にアニメ映画やマンガのキャラクターの画像を貼る例について、SARTRASのFAQは、授業の目的に照らして「必要と認められる限度」にはあたらないと考えるのが権利者側では一般的なようだとし、個別に権利者に確かめるよう案内しています。
子どもが映る動画を配るときは、写る子の扱いも決めておきます。肖像権は法律で定めた権利ではなく、判例で確立されてきた権利です。文化庁の冊子は、他人の肖像を使う場合は、あとでトラブルが生じないよう、事前に本人や保護者の承諾を得ておく必要があるでしょう、と書いています。撮る範囲や配り方は、学校の決まりに従ってください。
第35条で、授業のために他人の著作物を複製できる条件
第35条1項は、営利を目的としない学校その他の教育機関で、教育を担任する者と授業を受ける者が、授業の過程で使うために、必要と認められる限度で、公表された著作物を複製し、公衆送信できると定めています。ただし書きで、著作物の種類と用途、複製の部数と態様に照らして、著作権者の利益を不当に害することになる場合は除かれます。文化庁の冊子のフローチャートと運用指針をもとに、確かめる順に並べました。
| 条件 |
確かめること |
非営利の 教育機関 |
幼稚園、小・中・高校、 特別支援学校、大学、 保育所など。 認可のない予備校・塾、 カルチャーセンターは 外れる。 |
教員と 児童生徒 |
教諭・講師などと、 実際に学ぶ児童生徒。 常勤か非常勤かは 問わない。 教員の間での使用は 外れる。 |
授業の 過程 |
学校行事・部活動・ 課外補習も含む。 教職員会議、保護者会、 PTA主催の 親子向け講座は 外れる。 |
必要と 認められる 限度 |
授業担当者が 必要性を客観的に 説明できる範囲。 部数は、授業の 教員と履修者の 数まで。 |
利益を 不当に 害さない |
ドリルなど、 買って使う前提の ものを、買う代わりに コピーしない。 長く残す製本や ライブラリにもしない。 |
公表と 出所の明示 |
公表された著作物を 使い、原則として 題名や著作者名を 示す。 |
表の最後の出所の明示は、第48条が求めるものです。文化庁の冊子は、無断で利用できる場合であっても、誰の著作物を利用しているかを明らかにすることが法律上要求されている、と説明しています。スライドやプリントの図版の下に書名・著作者名・出版社名を入れておけば、DVDにしたあとも出所が残ります。
「授業」に入るもの、入らないもの
運用指針の定義では、「授業」は、学校その他の教育機関の責任において、その管理下で教育を担任する者が学習者に対して行う教育活動です。講義や実習のほか、初等中等教育では学級活動、児童・生徒会活動、学校行事などの特別活動と、部活動、課外補習授業も含まれます。履修者による予習・復習も「授業の過程」とされ、授業用の資料を作る準備段階や授業後の事後検討での教員の複製、自らの記録として残しておくための教員や履修者の複製も、授業の過程での行為とされています。
外れるのは、教職員会議、保護者会、学校の施設で行われる自治会主催の講演会、PTA主催の親子向け講座などです。学級通信や学校のホームページにイラストを載せることも、文化庁の冊子によれば「授業の過程」における利用に当たらず、第35条は使えません。家庭向けの「学校便り」に新聞記事や歌詞を使って保護者にメールで送る例も、SARTRASのFAQは対象外としています。運動会や卒業式などの学校行事は授業に含まれますが、行事のあとで記念品として配るDVDは授業に当たりません。行事の映像と曲の扱いは、学校行事の録画・DVD配布と著作権にまとめました。
「必要と認められる限度」は、授業担当者が説明できる範囲
必要かどうかを第一義的に判断するのは授業担当者で、万一、紛争が生じた場合には授業担当者が説明責任を負う、と運用指針は書いています。主観だけで決めるのではなく、授業の内容や進め方との関係で、その著作物を複製する必要性を客観的に説明できなければなりません。運用指針が挙げる例は、「授業では使用しないものの読んでおくと参考になる文献を紹介するのであれば、題号、著作者名、出版社等を示せば足るにもかかわらず、全文を複製・公衆送信するようなことについて、必要性があると説明することは困難です」というものです。
ある授業で先生が複製した著作物と、同じ種類のものを別の授業で別の先生が同じ分量・方法で複製しても、授業の展開によっては、一方は「必要と認められる限度」に入り、他方は入らないことも理論的にはあり得る、と運用指針は続けます。そのうえで、「外形だけで判断するのではなく、個々の授業の実態に応じて許諾が必要か不要かを判断する必要があります」と書いています。
部数について、運用指針は「複製部数や公衆送信の受信者の数が、授業を担当する教員等及び当該授業の履修者等の数を超えるような場合は、そもそも「授業のために必要と認められる限度」を超えており認められません」と書いています。一方で、「授業参観や研究授業の参観者に、授業で配布する著作物と同一の著作物を配布することは、「必要と認められる限度」と考えられます」とも書いています。文化庁の冊子も、「履修者等の数を明らかに超える部数をコピーする」ことを、許諾が必要な例の一つにしています。
ドリル・ワークブック・市販の映像教材は、買う代わりにコピーできない
第35条の条件をすべて満たしていても、著作権者の利益を不当に害する使い方には許諾が要ります。その理由を運用指針は、学校で複製や公衆送信が行われることで、現実に市販物の売れ行きが低下したり、将来の潜在的な販路を阻害したりしないよう、十分に留意する必要があるから、と説明しています。
分かりやすいのがドリルです。「児童・生徒が全員購入し、利用する目的で販売されている問題集やドリルを、児童・生徒の購入の有無にかかわらず、教師が、授業の過程で児童・生徒に解かせるために複製又は公衆送信するようなことは、当該著作物の本来の流通を阻害することになります」と運用指針にあり、文化庁の冊子も「算数のドリルを児童生徒に購入させず、コピーして配布する」ことを許諾が必要な例に挙げています。
一律に何もできないわけではありません。同じ箇所で運用指針は、「児童生徒がドリルを忘れてしまった際に、ドリルの一部をコピーして渡すというような行為は、許容されるでしょう」とも書いています。児童生徒がすでに買っている問題集やドリルを、問題の解説などのためにオンライン授業で映す問いにも、授業に必要な部分に限って映し出すだけなら許諾は要らない、とSARTRASのFAQは答えています。
教員や児童生徒がふつう購入し、契約し、または借りて使う著作物を、購入などの代わりになる形で複製や公衆送信することを、運用指針は不当に害する可能性が高い例に挙げ、教科の指導では教師用指導書、参考書、資料集、問題集、ドリル、ワークブック、テスト・ペーパー、授業で教材として使われる楽譜、副読本、教育用映像ソフトを、特別活動などでは演劇の脚本、読書会用の短編小説、部活動で使われる楽譜を例示しています。「ただし、履修者全員が購入していることが確認されている場合であって、問題の解説等を行う目的で付加的に複製等を行うことは許容される余地がある」という一文も添えられています。
量や形にも線があります。同じ書籍から1回目の授業で第1章、2回目で第2章というように複製して、結果としてその書籍の多くの部分を使うこと。学習用の市販のアプリケーションソフトを1ライセンスだけ買って、学校の複数のパソコンにコピーすること。どちらも運用指針では不当に害する可能性が高い例です。反対に、採択された教科書の中の著作物、俳句・短歌・詩のような短い文章、新聞記事、写真や絵画、地図や図表は、授業に必要な限度の中であれば、全部を複製しても不当に害することにはならない可能性が高い例とされています。
市販のDVD教材や映画は、コピーせずに再生して見せる
市販のDVDの映像教材は、先に見た運用指針の例の「教育用映像ソフト」に当たります。映画やテレビドラマなどの市販のブルーレイやDVDを授業の教材に取り込んで配信する問いに対して、SARTRASのFAQは、家庭での私的な視聴を目的に売られているそれらのディスクには通常コピーガードがかけられていて、運用指針でも検討中とされているので、あらかじめ各映画・ビデオ会社に問い合わせるよう答えています。運用指針の本文も、コピーやアクセスの制限がかけられた著作物(例として、ブルーレイやDVDなどの映画の著作物)の複製を、フォーラムで検討を続けている項目に挙げていて、結論は示していません。
コピーせずに、買ったDVDを教室のプレーヤーで再生して見せるなら、それは上映です。第38条1項は、営利を目的とせず、観客から料金を受けない場合の上映を、許諾なしに認めています。文化庁の冊子は、テレビで放送された教育番組を録画して翌日の授業で見せる例について、授業で使うための録画は第35条で、録画した番組を再生して見せることは非営利・無料の上映として第38条1項で、どちらも問題ないと答えています。
分かれ目は、買って使う前提のものを買う代わりにコピーするかどうか
録画した番組をDVDに焼いて手元に残すときは、分量にも気をつけます。運用指針は、「放送から録画した映画や番組であれば、通常、全部を複製することは著作権者等の利益を不当に害する可能性が高いので、そのうちの必要な一部分にとどめて複製することが考えられます」と書いています。市販のディスクに使われているコピーガードの仕組みはコピーガードとはで、家庭での録画の決まりはテレビ番組の録画をDVDにできる?で説明しています。
授業を録画してDVDにし、欠席した子に渡すとき
病気や忌引きで休んだ子に、その日の授業を見てもらいたい。授業の録画には、先生の説明や板書のような先生自身の著作物と、授業で見せた教科書や資料、映像、曲のような他人の著作物が混ざっています。先生自身の部分だけなら、手続きは要りません。他人の著作物が映っている録画をDVDにして渡す場合については、SARTRASのFAQに近い問いがあります。
問いは、第35条と運用指針の範囲で著作物を使った、いわゆるスタジオ型授業(教員の前に児童生徒がいない場所から、児童生徒の自宅などへ配信する授業)の様子を録画して、公衆送信せずにDVDに収め、児童・生徒・学生に配る場合に許諾が要るか、というものです。答えは「著作権法第35条1項や運用指針にしたがって著作物等を利用した授業の様子を録画したDVDであれば、児童・生徒・学生に郵送で配布する場合に権利者の許諾は不要であると考えられます」でした。欠席した子に渡すDVDも、その授業で使った著作物が第35条と運用指針の範囲に収まっていることが前提になります。
複製の部数は、その授業の教員と履修者の数までです。同じ録画をほかのクラスの児童生徒や、保護者に配る例は、運用指針にも文化庁の冊子にもSARTRASのFAQにも見当たりません。そうした使い方を考えているときは、管理職や設置者を通して文化庁の資料で確かめるか、映っている著作物の権利者に確かめてください。次の年度にも見せたい場合は、後の「教材ライブラリ」の節の考え方になります。
DVDのほかにも、休んだ子に授業を届ける方法はあります。対面授業の様子をインターネットで生徒の自宅に同時に送信することは、運用指針で許諾不要・無償でできる例に入っています。教員が教科書を使った授業の動画を撮り、クラスの児童生徒だけがアクセスして見られる形で配信するのは、許諾不要で、学校の設置者が補償金を払う例です。
録画には、ほかの子どもの顔や声も入ります。写る子の扱いは学校の決まりに従い、必要に応じて本人や保護者の承諾を得てください。渡すDVDには、家族で見る範囲で使い、SNSなどに載せないでほしいことも、一言添えておきます。
録画に他人の著作物が映るなら、第35条の範囲で使った授業であることが前提
授業の録画に、市販の教材や曲が映り込んだら
授業を撮ると、先生が掲げた教科書のページ、スクリーンに映した資料集の写真、流した曲などが、そのまま録画に入ります。運用指針は、授業に使う著作物を単体で利用する場合と、録画の中に映る場合を分けて考えていて、「授業風景や解説の中継映像などの動画の中で影像の一部として、又は背景的にこれらの著作物が利用されている場合(専ら著作物等自体を提供するような行為でない場合)は、著作物の種類に関わらず、著作物の全部が複製又は公衆送信されていても著作権者等の利益を不当に害する可能性は低いと考えられます」と書いています。
授業を撮った動画の配信について、SARTRASのFAQも同じ方向の答えです。第35条の対象となるのは授業が行われる単位の児童生徒に配信する場合に限られるとしたうえで、動画に教科書(学校で採択している検定教科書)の著作物が映ったり、指導用教材の音声や映像が入ったりしても通常の場合は大丈夫で、先生が教科書を掲げる、読み上げる、スライドに埋め込むなど、授業の目的の範囲内なら方法は問わない、としています。
注意が要る例も、同じFAQに挙がっています。
- 音楽の教師用指導書に付いているCDの音源やDVDの動画は、著作隣接権の利用許諾が必要となる場合がある(発行会社に確かめる)
- 曲に合わせて踊りを教える授業で1曲全部を使う場合、担任する子へのリアルタイムの配信は補償金の範囲でできるが、配信を録画してオンデマンドで見られるようにするには、権利者の許諾が要る
- 絵本のお話の絵と文のすべてを読み聞かせる動画を、いつでも何度でも見られる状態にするのは、不当に害する可能性が高く、制度の対象外
市販のCDや配信の音源には、作詞者・作曲者の著作権のほかに、歌手や演奏家(実演家)とレコード製作者の権利が含まれ、後の2つを著作隣接権と呼びます(第89条)。第35条は著作隣接権にも準用されますが(第102条)、授業の外で録画を使うなら、曲の権利者に加えてレコード会社などの許諾も考えることになります。運用指針の特別活動追補版も、記念品として配る行事の映像について、市販のCD音源をコピーしてBGMにする場合は、著作権者だけでなくレコード会社などの著作隣接権者の許諾も必要だとしています。3つの権利の関係は結婚式ムービーのBGMと著作権でも説明しています。
次の年度も使う「教材ライブラリ」にするとき
作った教材を、次の年度の自分や、同じ学年を受け持つ先生にも使ってもらいたい。自作の部分だけでできた教材なら、残して使い続けるのに手続きは要りません。気をつけるのは、他人の著作物を第35条で複製した部分です。
文化庁の冊子は、著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例に「長期間の保存を目的とした製本や組織的に素材をストックし、ライブラリ化すること」を挙げ、許諾が必要な例として「社会科の資料集の写真を製本し、いつでも使える教材にする」ことを載せています。運用指針の許諾が必要な例にも、「教員が日本各地の祭りを撮影した写真集の中から写真を数十枚選んで紙にカラーコピーして簡易製本し、社会科の授業で複数年にわたって使える教材にする」、「授業に必要な範囲を超えて映像や音楽の全編をコンピュータに保存する」、テレビ番組を授業で自由に使えるように継続的に録画し、クラウド・サーバに蓄積してライブラリ化しておく、といった例が並んでいます。
先生どうしで分け合う場合も、考え方は同じです。文化庁の冊子は、第35条の利用者に当たらない例として「教員間での使用」を挙げています。SARTRASのFAQによれば、教材の製作に関わっていない先生と共有する場合は、同じ学校の先生でも別の学校の先生でも、権利者の許諾が必要です。
自らの記録として残しておくための教員の複製は、運用指針で授業の過程での行為とされています。一方、学校の教材として棚やサーバに集め、何年も使えるようにしておく形は、上に挙げた「ライブラリ化」や「複数年にわたって使える教材」の例と重なります。ライブラリにする教材は自作の部分で組み立て、他人の著作物を使った箇所には題名・著作者名・出版社名などの出所を書き残しておくと、次に使う先生がその年度の授業で改めて用意するときの手がかりになります。どこまでなら残してよいか(年数や、共有する先生の範囲)は運用指針に示されていないので、残したい著作物があるときは権利者に確かめてください。
授業の前後の複製は授業の過程。ライブラリ化や記念品は外れる
配信するなら、授業目的公衆送信補償金(SARTRAS)の範囲で
DVDに収めて渡すのは複製です。一方、授業の動画や教材をクラウドに置く、メールで送る、ネットで配信するのは公衆送信にあたります。第35条2項は、第35条1項の公衆送信を行う場合、教育機関を設置する者が相当な額の補償金を著作権者に払うと定めていて、この補償金を設置者から預かり権利者に分配するのが、文化庁長官が指定する団体のSARTRASです。
SARTRASの説明によると、この制度は2018年5月の法改正で作られ、2020年4月28日に施行されました。それまで無償でできた授業の過程でのコピー(複製)と遠隔合同授業での送信に加えて、それ以外の公衆送信も、補償金を払うことで許諾なしにできるようになりました。予習・復習用に先生が他人の著作物を使って作った教材を児童生徒の端末に送る、サーバにアップロードする、といった使い方です。どれも第35条と運用指針の範囲の使い方であることが前提で、整理すると次のとおりです。
| 使い方 |
扱い |
教室で配る・ DVDで渡す |
複製。許諾不要・ 無償(第35条1項)。 |
遠隔合同授業の 同時中継 |
許諾不要・無償 (第35条3項)。 |
クラスに限った 配信・送信 |
許諾不要。設置者が 補償金を払う (第35条2項)。 |
誰でも 見られる公開 |
第35条の対象外。 許諾が要る。 |
補償金を払うのは、教育委員会や学校法人などの設置者です。その年度に設置者が申請しているかは、SARTRASのサイトの「申請済教育機関設置者・教育機関の名称検索」で調べられます。第35条の範囲で授業に著作物を使うのに誰の許可も要らず、SARTRASが個別の利用許可を出すこともない、とSARTRASのFAQは答えています。
配信の相手は、その授業の児童生徒に限ります。運用指針は、IDとパスワードを児童生徒全員に設定する、非公開のURLを履修者だけに伝える、といった方法を挙げ、授業の過程で使うことを実質的にコントロールできているかどうかが重要だとしています。SARTRASのFAQによれば、YouTubeで配るなら「限定公開」か「非公開」に設定して運用します。ただし、YouTubeには授業目的の公衆送信かどうかを判断する仕組みはなく、機械的に著作権侵害の動画と判断されて配信・公開できなくなる事例も起きている、と同じFAQは書いています。全校生徒がいつでも見られるように合唱の動画を置く使い方も、この制度の対象外です(同じFAQ)。
授業の外で使うなら許諾が要る|記念品・学級通信・配布・販売
第35条が認めているのは、授業の過程で使うための複製と公衆送信です。授業のために作ったコピーを、あとから別の目的で配ったり、公衆に見せたりすると、複製を行ったものとみなされます(第49条)。権利制限規定で作った複製物を、作成の目的とは別の目的で配布したり公衆に提示したりするには、別に許諾を取る必要がある、と運用指針も説明しています。学校でよくあるのは、次のような場面です。
- 行事の記録を記念品として配るDVD。文化庁の冊子は、記念品として配る目的で特別活動の映像を保存する場合は授業に該当しないとし、運用指針の特別活動追補版は、DVDを1枚だけ作った場合も第35条の複製に当たらないとしている
- 学級通信、学校便り、学校のホームページに著作物を載せること(文化庁の冊子・SARTRASのFAQ)
- 授業の録画や教材を、学校のホームページや動画サイトで誰でも見られるように公開すること(文化庁の冊子の「許諾が必要」の例)
- 他人の著作物を使った教材を、ほかの学校の先生に配る、研究会で頒布する、販売すること(教員間での使用は第35条の外)
自作の部分だけでできた教材なら、配るのも売るのも著作者の判断です。学校の仕事として作った教材は、第15条の条件によっては学校の設置者が著作者になります。子どもが映る映像なら、写る子の扱いも改めて確かめます。行事の映像を保護者に配るときの段取りは、体育祭・運動会の映像をDVDで保護者に配布する方法で説明しています。
自作の教材動画をDVDにする前に決めること
教室のテレビにつながっているのがDVDプレーヤーなら、DVDで作ります。DVDプレーヤーではブルーレイを再生できません。家に持ち帰って見てもらう場合も、見る機器が分からなければDVDが無難です。MP4などの動画ファイルをDVD-Rにそのまま焼いたデータのディスクは、一般的な家庭用のDVDプレーヤーでは再生できないので、プレーヤーで見られる映像のDVD(DVD-Video)の形に組み立てます。形式やディスクの選び方、配る前の確かめ方は配るDVDを、どの家のプレーヤーでも見られるように作るにはに、DVDとブルーレイの選び方はDVDとブルーレイの違いにまとめました。
単元の実験を1本ずつ撮ったなら、1枚にまとめて実験ごとにチャプターを付けると、リモコンの「次へ」で見たい実験へ飛べます。区切る位置は「00:12:30」のように、編集を終えた動画の時刻で決めます。付け方と数の目安はチャプター分けとは?で説明しています。
DVDにする前に、動画を最初から最後まで見て、次の点を確かめます。
- BGMの曲、インターネットのイラスト、アニメやマンガのキャラクター、教科書や資料集の図版など、他人の著作物が入っていないか
- 入っているなら、第35条の範囲(その授業の教員と児童生徒の数まで)で使っているか、許諾を得たか、利用規約で認められているか
- 子どもが映っているなら、学校の決まりに沿って、写る子の扱いを確かめたか
- 何年度の、どの単元の教材か分かるように、ファイル名や盤面に単元名・学年・年度を入れたか
当社に頼む場合
当社(ディスクメーカー・大阪市北区梅田)は、動画データからDVD・ブルーレイを1枚から作る、書き込み代行の小さな店です。先生が自分で撮って編集した教材の動画を、ギガファイル便やGoogle ドライブなどにアップロードし、その共有URLを注文フォームに貼っていただければ、スマホからも入稿できます。プレーヤーで再生できる形に組み立て(オーサリング)、DVDは720×480、ブルーレイは1920×1080で書き込み、実際のプレーヤーで再生を確かめてから、ケースに入れて発送するか、店舗でお渡しします。お引き受けできるのは、撮った本人か権利者の許可がある動画です。
料金は、基本料金(DVD・1枚あたり)1,500円(税抜)、基本料金(Blu-ray・1枚あたり)1,500円で、同じ内容の2枚目からは追加コピー(同一内容の焼き増し・1枚あたり)1,000円です。単元ごとに内容が違うディスクはそれぞれ1枚目から数え、次の年度に追加で頼む場合も、新しい注文の1枚目から数えます。
実験ごとの区切りは、チャプター分け(1枚あたり)+1,500円を選ぶと開く「チャプター位置の指定」の欄に、2つ目以降の位置を時刻で入れてください。1つ目は動画の冒頭に自動で入り、1枚に最大50チャプターまでです。盤面に単元名や年度を入れるなら、盤面レーベル印刷(1枚あたり)+1,000円を選び、開いた欄に画像をアップロードするか、ギガファイル便のURLを入れます。何本かの動画を1枚に入れるときは、ファイル名の頭に「01_」「02_」と付けると、その順に収録します。注文の流れは動画をDVD・ブルーレイにする注文の手順にまとめました。
よくある質問
Q1. 先生が自分で撮った授業の動画をDVDにして、クラスの子に配ってもいいですか?
先生の説明や板書、自分で撮った実験の映像のように、他人の著作物が入っていない動画なら、DVDにして配るのに許諾は要りません。教科書の図版や曲など他人の著作物が映っているなら、第35条と運用指針の範囲で使っているかを確かめます。SARTRASのFAQは、その範囲で著作物を使った授業の録画をDVDにして児童生徒に郵送で配るのに、許諾は不要と考えられると答えています。写る子の扱いは学校の決まりに従います。
Q2. 教科書や資料集の図をスライドに入れて、授業で配ってもいいですか?
授業の過程で使うためなら、必要と認められる限度で許諾なしにできます(第35条)。文化庁の冊子も、授業用の資料に教科書や資料集の文章・図版を付けて配ることを、第35条の例に挙げています。部数は授業の教員と履修者の数までで、原則として題名や著作者名などの出所を示します。資料集の写真を製本して、いつでも使える教材にするのは、許諾が要る例です。
Q3. 市販のドリルを1冊だけ買って、人数分コピーしてもいいですか?
許諾なしにはできません。児童生徒が全員買って使う目的で売られている問題集やドリルを、購入の有無にかかわらず解かせるために複製することは、本来の流通を阻害すると運用指針は書いていて、文化庁の冊子も「算数のドリルを児童生徒に購入させず、コピーして配布する」ことを許諾が必要な例に挙げています。ドリルを忘れた子に一部をコピーして渡すことについては、「許容されるでしょう」と運用指針にあります。
Q4. 学校で買った市販のDVD教材を、コピーして各教室で使ってもいいですか?
運用指針は、教育用映像ソフトを購入の代わりになる形で複製することを、著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例に挙げています。コピーガードのかかったディスクの複製は運用指針で検討中とされ、SARTRASのFAQは各映画・ビデオ会社に問い合わせるよう案内しています。コピーせずに、買ったディスクを教室で再生して見せるのは上映で、営利を目的とせず料金を取らないなら許諾は要りません(第38条1項)。
Q5. 欠席した子のために、授業を録画したDVDを渡してもいいですか?
先生自身の説明や板書だけなら、手続きは要りません。教科書や資料などの著作物が映っている場合、SARTRASのFAQは、第35条と運用指針にしたがって著作物を使った授業の録画をDVDにして、児童生徒に郵送で配るのに許諾は不要と考えられると答えています。部数はその授業の教員と履修者の数までです。ほかのクラスや保護者に配る使い方は公式の資料に例が無いので、学校や権利者に確かめてください。
Q6. 授業の録画を、YouTubeの限定公開でクラスの子に見せてもいいですか?
第35条と運用指針の範囲の使い方で、公開先をその授業の児童生徒に限るなら、学校の設置者が補償金を払う制度のもとで許諾なしにできます。SARTRASのFAQは、YouTubeなら「限定公開」か「非公開」にして運用するよう案内しています。ただ、YouTubeには授業目的の送信かどうかを判断する仕組みがなく、機械的に侵害と判断されて見られなくなる事例もあるとしています。誰でも見られる公開は対象外です。
Q7. 授業で使った教材を、次の年度も使えるように学校に残してもいいですか?
自作の部分だけの教材なら、残して使い続けるのに手続きは要りません。他人の著作物を複製した部分は別で、文化庁の冊子は「長期間の保存を目的とした製本や組織的に素材をストックし、ライブラリ化すること」を、著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例に挙げています。運用指針も、写真を簡易製本して複数年にわたって使える教材にすることを、許諾が要る例にしています。
Q8. 学級通信や学校便りに、新聞記事やイラストを載せてもいいですか?
第35条は使えません。文化庁の冊子は、学級通信や学校のホームページにイラストを載せることは授業の過程における利用に当たらず、著作権者の許諾が必要だと答えています。家庭向けの学校便りに新聞記事や歌詞を使って保護者にメールで送ることも、SARTRASのFAQは対象外としています。引用(第32条)の条件に当たる場合は別です。「著作権フリー」の表示があっても、業務上の利用を認めない条件の場合があるので、利用規約を確かめます。
Q9. 自分で作った教材DVDを、ほかの学校の先生に配ったり、研究会で売ったりできますか?
他人の著作物が入っていない自作の教材なら、著作者の判断でできます。ただし、学校の仕事として作った教材は、第15条の条件(法人などの発意、職務上の作成、法人などの名義での公表など)によっては学校の設置者が著作者になるので、管理職に確かめます。他人の著作物を第35条で使った部分は、授業の外の使い方になり許諾が要ります。教材の製作に関わっていない先生と共有するにも許諾が必要だと、SARTRASのFAQは答えています。
Q10. 塾や予備校の授業でも、第35条は使えますか?
第35条の対象から、営利を目的として設置されている教育機関は除かれます。運用指針は、営利目的の会社や個人経営の教育施設、専修学校または各種学校の認可を受けていない予備校・塾、カルチャーセンター、企業や団体等の研修施設を「学校その他の教育機関」に当たらない例に挙げています。これらの場で他人の著作物を複製して配るなら、原則として権利者の許諾が要ります。保育所や認定こども園は、当たる例に入っています。
Q11. 研究授業を録画して、授業のあとの協議会や校内研修で見返してもいいですか?
運用指針は、授業後の事後検討における教員等による複製を「授業の過程」での行為としています。一方で、長期間の保存を目的とした製本や、組織的に素材をストックしてライブラリ化することは、著作権者の利益を不当に害する可能性が高い例に挙がっています。録画に教材として使った他人の著作物が映っているなら、協議会で見返したあとに校内の資料として長く残したり、ほかの学校に配ったりする分は、許諾を得るか、その場面を外して残します。写っている児童生徒の扱いは、学校の決まりと保護者への説明で決めてください(園の動画・写真を配るときの同意書|作り方と、使い道ごとに選べる文例)。
参考にした公式の情報
出典の一覧(10件)を開く
法律の運用や各団体の説明は、改正や更新で変わります。この記事は、2026年9月26日時点の法令と、文化庁・運用指針・SARTRASの公式の記載をもとにしたものです。個別の判断は、学校の管理職や設置者(教育委員会・学校法人など)、権利者に確かめてください。
ディスクメーカーへのご依頼・お見積りは以下からどうぞ。