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音声トラック・字幕多重化の基礎|多言語対応ディスクの作り方

2026 9/01
音声トラック・字幕多重化の基礎|多言語対応ディスクの作り方

レンタルDVDを再生していて、リモコンの「音声」ボタンや「字幕」ボタンを、なんとなく押したことはないでしょうか。日本語だったはずの音声が英語に切り替わり、画面の隅の表示が「字幕1」から「字幕OFF」に変わる、あの機能です。

実はあの仕組み、自主制作のディスクでもそのまま使えます。国際交流イベントの記録、外国人スタッフを迎えた企業の研修動画、海外に家族がいるご家庭の記念映像——「日本語だけでは、観る人の半分にしか届かない」という場面は、思っているより身近にあります。この記事では、DVD・Blu-rayが1枚に複数の音声・字幕を収められる仕組みと、実際に使う場面、そして発注時に業者へ何を伝えればいいかを、まとめて整理します。

結論 — 「1枚に何ヶ国語も」は、規格が最初から想定している機能です

先に答えを言ってしまうと、1枚のディスクに日本語・英語・中国語といった複数の音声と字幕を収録することは、特別な裏技でも、一部の業者だけが持つ秘密の技術でもありません。DVD-VideoもBlu-rayも、規格そのものが「1枚のディスクを複数の言語圏で使う」ことを想定して設計されています。

海外の映画のDVDが、日本語吹き替え・日本語字幕・英語音声・英語字幕をまとめて1枚に収めているのは、まさにこの規格の機能をそのまま使っているだけです。市販のソフトだけの特権ではなく、自主制作のディスクでもまったく同じ仕組みが使えます。国際交流イベントの映像に日本語と英語の音声を両方入れる、外国人スタッフ向けの研修動画に日本語・ベトナム語・インドネシア語の字幕を切り替え式で用意する——こうした対応は、特別な機材やソフトを持ち出さなくても、通常のディスク制作の延長線上でできることです。

なぜ1枚に収められるのか — 音声・字幕を「並べて編み込む」仕組み

誤解されやすいのですが、多言語ディスクは「日本語版と英語版、2本の映像をそのまま1枚に詰め込んでいる」わけではありません。もしそうなら、90分の映像を言語の数だけ丸ごと複製することになり、容量は単純に数倍必要になってしまいます。実際の仕組みはもっと効率的にできています。

映像そのものは1本だけ。そこに、音声と字幕だけを言語の数だけ並列に用意し、ごく細かい単位で編み込むように記録します。これを多重化(マルチプレクス)と呼びます。プレーヤーは再生中、この編み込まれたデータを順番に読み進めながら、視聴者が選んだ音声・字幕の番号だけを取り出して再生する仕組みです。ディスクの中で「日本語音声の場所」まで探しにいっているわけではなく、常に同じ流れの中から必要な部分だけを拾い上げている、とイメージすると近いはずです。

レンタルDVDのリモコンに必ずある「音声」「字幕」ボタンは、この機能を呼び出すためだけに存在するボタンです。あの1回のクリックの裏側で、いま説明した多重化の仕組みが働いています。DVD-Videoの規格では、1つのタイトルに音声ストリームを最大8本、字幕ストリームを最大32本まで収録できると定められています。実務でここまで使うことはまずありませんが、企画段階から多言語対応を織り込んだ設計だと分かります。Blu-rayはさらに上限が緩やかで、必要な言語数で困ることはまずありません。

この多重化を実装する工程がオーサリングと呼ばれる作業です。チャプター分けやメニュー画面と同じ、ディスクの中身を組み立てる工程の中に、音声・字幕の多重化という項目がある——という位置づけで理解しておくと迷いません。市販の海外映画DVDが何ヶ国語分もの音声・字幕を1枚に収めているのは、リージョンコードで地域ごとの販売権を管理しながらも、製造そのものは1つの版で複数の国に対応させたいという、商業的な効率の理由も背景にあります。1枚の版を多くの国で使い回せれば、それだけ製造コストを抑えられるからです。

音声トラックと字幕トラックでは、容量の重さがまるで違います

音声を1本追加するのは、見た目以上に容量を使います。DVDで一般的なドルビーデジタルという圧縮形式では、1言語あたりおよそ毎秒192〜448キロビットの帯域を使い、90分の映像であれば1言語につきおおよそ130〜300メガバイト程度が目安です。3言語分の音声を用意すれば、それだけで400〜900メガバイト近くを音声だけで使う計算になります。CDの音質の基礎で触れた44.1kHz/16bitのような固定の型が音楽CDにあるように、DVD・Blu-rayの音声にも規格上の型があり、圧縮方式によってデータ量が変わってくるのです。

一方、字幕は文字と簡単な図形の情報でしかないため、1言語分を追加しても数メガバイト〜十数メガバイト程度で収まります。極端に言えば、字幕は何ヶ国語入れてもほとんど容量を気にしなくていい存在です。

  • DVD(1層4.7GB・2層8.5GB): 映像の画質を保ったまま音声を2〜3言語分載せると、それだけで容量の多くを使ってしまうことがあります
  • Blu-ray(1層25GB・2層50GB): 音声を4〜5言語入れても、映像の画質にまだ余裕が残ります
  • 字幕は言語をいくつ足しても、容量への影響はほぼ無視できる水準です

DVDとBlu-rayの違いは画質だけの話だと思われがちですが、多言語対応を考えるときは、この音声トラックの重さこそが、メディアを選ぶ実質的な分かれ目になります。「音声を何ヶ国語入れたいか」が決まれば、DVDで足りるのか、Blu-rayにすべきなのかは、ほぼ自動的に決まってくるものです。

具体的な数字で見てみましょう。90分のイベント記録映像に、日本語・英語・中国語の音声3本と、日本語・英語・中国語・韓国語の字幕4本を収録するとします。音声だけでおよそ500〜700メガバイト、字幕は4言語分を合わせても20メガバイト程度です。映像を標準的な画質でおさめれば、DVD1枚(2層8.5GB)でもぎりぎり収まる範囲ですが、映像の画質を上げたい、あるいは音声をさらに増やしたいとなると、Blu-rayに切り替えたほうが安全です。「まず音声・字幕の合計を見積もってから、映像に割ける容量を決める」という順番が、多言語ディスクの容量設計では実務的です。

多言語対応が必要になる場面 — 「日本語だけ」で足りないとき

  • 国際交流イベント・姉妹都市交流の記録。 自治体や国際交流協会が主催する式典・交流会には、海外からの来賓が並びます。式典の映像を、来賓の母国語字幕付きで先方に贈り、同じ映像を日本語字幕で地域住民向けの広報にも使う——自治体が動画業務を外部委託する場面でも、多言語対応は年々当たり前の仕様になりつつあります。住民向け広報での多言語対応と同じ発想が、記念映像にもそのまま応用できます
  • 外国人スタッフのいる企業の研修動画。 技能実習生や特定技能の人材を受け入れる製造業・介護施設では、安全教育や作業手順の動画に、日本語に加えて出身国の言語を用意するニーズが増えています。研修動画のディスク教材化や、採用動画の多言語対応でも触れたとおり、映像は言葉の壁を越える力を持っています
  • 海外にルーツを持つ家族の記録。 国際結婚のご家庭、海外に移住した親族がいるご家庭では、七五三や誕生日、結婚式といった記念映像に、日本語と配偶者の母国語、両方の字幕をつけたいという要望が珍しくありません。海外の家族へディスクを届けることを考えるとき、字幕の多言語対応は再生環境の確認と並んで大事な検討項目です

共通しているのは、「同じ映像を、複数の言語圏の人が、同時に、あるいは別々に見る」という状況です。この条件が揃ったら、多言語対応の出番だと考えてください。

副音声とバリアフリー字幕 — 多重化のもうひとつの使い道

ここまで「言語」を切り口に説明してきましたが、追加の音声・字幕トラックの使い道は多言語対応だけにとどまりません。副音声解説(音声ガイド)は、映像のせりふの合間に、画面で起きていることをナレーションで説明する音声トラックです。視覚に障害のある方が、画面を見なくても式典や物語の進行を追えるようにする工夫で、追加の音声トラックという、ここまで説明してきた仕組みそのものの応用です。

バリアフリー字幕は、聴覚に障害のある方向けの字幕です。せりふをそのまま文字にするだけでなく、拍手や音楽が流れている、といった音の情報や、いま話しているのが誰かを示す表記を加えるのが、外国語字幕との大きな違いです。どちらも技術的には「音声・字幕のトラックをもう1本増やす」という、この記事で説明してきた仕組みそのものです。多言語対応とバリアフリー対応は、規格の上では地続きの話だと考えておいてください。

式典や卒園式、結婚式といった家族の記念映像でも、耳の遠くなった祖父母や親族がいるなら、バリアフリー字幕は十分に検討する価値のある選択肢です。誰か一人のために作った工夫が、実は同じ映像を観る全員にとって「聞き取りやすい」「分かりやすい」ものになる——これは副音声やバリアフリー字幕に共通する、地味だけれど確かな効能です。

公共性の高い映像ほど、この配慮は重要になります。自治体の広報映像でも触れたとおり、手話通訳や字幕は情報保障の基本的な配慮として位置づけられています。学校行事や地域のイベント記録でも、参加者の中に耳の不自由な方がいると分かっているなら、企画段階のうちにバリアフリー字幕を検討できないか、一度確認してみてください。追加の費用は、映像を撮り直す費用に比べればずっと小さく済みます。

ケーススタディ — 3つの現場から

姉妹都市交流30周年、記念映像を1枚の字幕切り替えでまとめた国際交流協会。 ある地方都市の国際交流協会が、姉妹都市提携30周年の式典を記録した映像を、日本語音声・日本語字幕に加えて英語字幕を多重化した1枚のディスクに仕上げました。式典には姉妹都市からの来賓十数名が出席しており、当初は「来賓用に英語版、住民配布用に日本語版」と2種類の編集を別々に作る案も検討されていたそうです。しかし字幕を切り替え式にすることで、映像そのものは1本に統一。ディスクの製造も1種類で済み、来賓への贈呈用と地域の公民館での上映用を、同じ在庫でまかなえたといいます。

技能実習生の安全教育を、1枚のディスクに3言語まとめた金属加工会社。 ベトナムとインドネシアからの技能実習生を受け入れている金属加工会社が、工場の安全教育動画を、日本語・ベトナム語・インドネシア語の音声3本を多重化したディスクとして製作しました。社内では言語ごとにディスクを分ける案も出ていましたが、「新しく入った実習生に、まず1枚だけ渡せば済む」という運用のしやすさを優先し、あえて1枚への多重化を選んでいます。メニュー画面に国旗のアイコンを添えて言語を選べるようにしたところ、日本語がほとんど読めない実習生でも迷わず操作できたそうです。担当者は「言語ごとに在庫を管理する手間がなくなったのが、いちばんの効果だった」と話していました。

国際結婚のご家庭が、遠くの祖母と近くの祖父、両方のために字幕を足した七五三の記録。 日本人の父親とフィリピン出身の母親を持つご家庭が、子どもの七五三の記録映像を仕上げた例です。日本語の音声はそのままに、フィリピンにいる祖母のためにタガログ語の字幕を追加。あわせて、耳が遠くなった日本側の祖父のために、話者の名前を添えるバリアフリー字幕も収録しました。1枚のディスクの中に、海の向こうにいる祖母と、隣に座る祖父、両方への配慮が収まった格好です。届いたディスクを、祖母は字幕を頼りに何度も見返しているそうです。

発注時に業者へ伝えるべき仕様 — 「言えば伝わる」項目のチェックリスト

多言語対応のディスクは、通常のディスク発注に比べて決めることが増えます。あらかじめ整理しておくと、打ち合わせがぐっとスムーズになります。たとえば、次のように整理してから問い合わせると、やり取りが一往復で済みます。

音声: 日本語(原音)+英語(吹き替え・音源ファイル支給)
字幕: 日本語/英語/ベトナム語(いずれも選択式、翻訳データは支給)
デフォルト再生: 日本語音声・字幕なし
収録時間90分、メディアはBlu-rayを希望

この4行があるだけで、業者側は必要な作業範囲と容量の見立てをすぐに立てられます。伝える項目を、もう少し細かく分解しておきます。

  • 音声トラックの数と言語。 「日本語・英語の2本」のように具体的に伝えてください。あわせて、新しい言語の音声は原音のまま字幕だけで済ませるのか、ナレーションを録り直す吹き替えまで必要なのかを決めておくこと。吹き替えの場合、翻訳とナレーション収録は基本的に依頼主側で用意するものと考えておくのが実務的です。すでに翻訳台本と収録済みの音声ファイルがあれば、動画ファイルの形式と同じように、事前に形式を確認しておくだけで作業はぐっと早く進みます
  • 字幕データの形式とタイムコード。 テキストベースの字幕データ(せりふと表示タイミングを記した台本形式)があれば、多くの業者で対応できます。翻訳がまだの場合は、翻訳の手配込みで相談できるか、納期に翻訳期間を含めて考えているかを確認してください
  • デフォルトで再生される言語。 ディスクを入れた直後、何も操作しなくても流れる音声・字幕をどれにするかは、地味に忘れられがちな項目です。海外の親族に送るなら先方の言語を、社内研修用なら日本語をデフォルトに、というように用途で決めてください
  • メニュー画面自体の多言語化が必要か。 音声・字幕を切り替えられても、選択画面の文字が日本語のままでは、日本語が読めない視聴者は選べません。メニューの表示言語まで含めて仕様に入れるかどうかは、対象者の日本語の理解度に応じて判断してください
  • 選択式の字幕か、焼き付き字幕か。 リモコンで表示・非表示や言語を切り替えられる選択式が基本ですが、常に画面に焼き付けた字幕にすると、対応言語の数だけ映像そのものを作り分ける必要が生じ、1枚への多重化のメリットが薄れます。よほどの理由がなければ選択式をお勧めします
  • 1枚に多重化するか、言語ごとにディスクを分けるか。 研修用ディスクの多言語展開でも触れたとおり、受け取る一人ひとりの言語が決まっているなら、言語ごとにディスクを分けたほうが「渡せばそのまま再生される」分かりやすさがあります。盤面に言語を大きく印刷しておけば取り違えも防げます。逆に、来場者や家族に複数言語の話者が入り混じる場面では、1枚への多重化のほうが在庫も運用もシンプルになります

当店でも、音声・字幕の仕様については発注前にご相談をいただくことがよくあります。素材(映像・翻訳済みの字幕データ・ナレーション音源)さえお預かりできれば、多重化のオーサリング作業は当店の作業範囲です。迷ったら、まず今お手元にある素材の状態を伝えていただくところから始めてください。

よくある質問

Q. 音声・字幕は最大何ヶ国語まで入れられますか?
A. 規格上はDVDで音声8本・字幕32本、Blu-rayはさらに上限が緩やかです。ただし実務で使われるのはせいぜい音声2〜4本、字幕はそれより少し多い程度です。本当に必要な言語数を絞り込むほうが、容量にもメニュー画面の分かりやすさにも余裕が生まれます。

Q. 翻訳やナレーターの手配も業者に頼めますか?
A. 対応の幅は業者によって差があります。翻訳済みの台本やナレーション音源をお預かりして多重化する作業は多くの業者で対応できますが、翻訳そのものやナレーターの手配は別途相談が必要なことが多いです。素材をどんな形式で渡せばいいかは、早い段階で確認しておくと手戻りがありません。

Q. 言語ごとにディスクを分けるのと、1枚に多重化するのと、どちらがいいですか?
A. 受け取る人の言語が1人ひとつに決まっているなら、分けたほうが親切です。盤面に言語を大きく印刷しておけば、取り違えも防げます。逆に、来場者や家族に複数言語の話者が混在する場では、1枚への多重化のほうが在庫も運用もシンプルになります。

Q. 音声・字幕を増やすと画質は落ちますか?
A. 直接の原因にはなりません。ただし容量の中で音声・字幕が占める割合が増える分、映像に割ける容量は相対的に減ります。画質を保ったまま多言語対応もしたい場合は、Blu-rayへの切り替えが現実的な選択肢になります。

Q. バリアフリー字幕は誰が作成するのですか?
A. せりふの書き起こしに加えて、音の情報や話者名を書き添える専門的な作業のため、専門の字幕制作会社に依頼するのが一般的です。すでに作成済みの字幕データがあれば、ディスク制作業者はそれを映像に多重化する工程を担当します。

Q. まずは1枚だけ試作して、内容を確認してから本発注したいのですが。
A. 十分可能ですし、お勧めの進め方です。小ロット対応の業者であれば、1枚だけの試作にも応じてもらえます。音声・字幕の切り替えが意図したとおりに動くか、まず自分の目と耳で確かめてから枚数を決めると安心です。

Q. 発注する業者は何を基準に選べばいいですか?
A. 通常の複製業者選びの基準に加えて、多重化を含むオーサリング作業の実績があるかを確認してください。音声・字幕の切り替えが正しく動くかどうかを、検品の段階で実際に再生して確かめてもらえるかも、あわせて聞いておくと安心です。

Q. 家庭用のオーサリングソフトでも、複数の音声・字幕は自作できますか?
A. 無料・市販のオーサリングソフトの中にも、複数音声・字幕の多重化に対応するものはあります。ただし設定項目が多く、書き出したあとで「音声が切り替わらない」「字幕がずれる」といった不具合が起きやすい領域でもあります。1〜2枚のテスト用途なら挑戦する価値がありますが、本番の枚数を作る段階では、一度業者に相談してみることをお勧めします。

言葉の壁は、映像そのものを作り直さなくても越えられます。1本の映像に、必要な言語の分だけ音声と字幕を重ねていく——規格が最初から用意していたこの機能を知っているかどうかで、多言語対応にかかる手間も費用も大きく変わります。次に多言語対応の映像を作る機会があれば、まず「音声は何本必要か」「字幕は選択式でいいか」の2点を整理してみてください。それだけで、業者との打ち合わせは驚くほど早く終わるはずです。

ディスクメーカー(diskmaker.jp)では、音声・字幕の多重化を含むオーサリングを、動画ファイルと素材をお送りいただくだけで承っています。1枚1,500円〜、最短翌日発送、バーベイタム製ディスクへの書き込みと盤面印刷まで一括対応です。まずは今お手元にある映像と字幕データの状態を、お問い合わせフォームからお聞かせください。料金の詳細はこちら。

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