この記事の要点
- 記録の抜けは撮影担当を3系統(ステージ引き・ステージ寄り・校内巡回)に分けることで減り、人数が足りないときは引きの固定撮影を最優先にします。
- クラス名簿を印刷して撮影チェック表に流用すると、舞台に立たない裏方や受付の生徒まで含めて、全員が一度は写る状態に近づけられます。
- 文化祭当日の演奏は非営利・無料・無報酬の3条件なら許諾不要ですが、録画して生徒に配る時点で複製にあたり、無料配布でもJASRACの手続きが必要です。
- 肖像権には明文の規定がなく裁判例の積み重ねで判断されるため、撮影告知の掲示と、来場者が大きく写るカットの編集除外を先に決めておきます。
- 共有URLは保存期限で消えるため、卒業後も手元に残す前提なら、データ配布と現物のディスクを併用する形がいちばん扱いやすくなります。
記録係を任された時点で、仕事は撮影だけではなくなっています。当日どこに誰を立たせるか、写っていない生徒をどう埋めるか、BGMをそのまま入れて配っていいのか、そして配ったデータが半年後にも開けるのか。撮り始めてから考えると、たいていは最後の配布で止まります。
この記事は、文化祭の記録映像をクラス全員の手元に届けるまでを、実行委員が実際に動く順番どおりに並べたものです。撮影担当の分け方とステージ・教室展示それぞれの撮り方、名簿を使って全員を写す方法、当日の演奏と配布用の録画で扱いが変わる著作権、来場者の写り込みへの対処、学校の許可の取り方、そしてデータと現物どちらで配るかの判断までを扱います。
法令や外部サービスの仕様は出典を確認したうえで書いています。ただし学校ごとの方針は異なるので、最終的な判断は担任や管理職への確認とあわせて進めてください。
文化祭の記録は「誰も全体を見ていない」という前提から始める
文化祭の当日、一日の流れを最初から最後まで見ている人はいません。実行委員は本部にいて、クラスの出し物には数分しか顔を出せない。演者はステージ袖にいて、教室展示がどんな様子だったかを知らない。受付に立っていた生徒は、自分のクラスの発表を見ていない。記録係の仕事は、この「誰も全体を見ていない」状態を、あとから一本の映像で埋めることです。
ここを出発点にすると、撮るものの優先順位が変わります。上手に撮ることより、抜けをなくすことが先になります。きれいなカットが30本あっても、体育館のステージ発表が丸ごと抜けていたら記録として成立しません。逆に、多少手ブレしていても全部の演目が残っていれば、編集でなんとかなります。
撮影計画は「何を撮るか」ではなく「誰がいつどこにいるか」で作る
最初に用意するのは、当日のタイムテーブルを1枚に落とした表です。縦に時間を10分刻みで並べ、横に場所(体育館ステージ/中庭ステージ/各教室/廊下・受付)を並べ、そのマスに撮影担当の名前を書き込みます。名前が入っていないマスが、そのまま記録の穴になります。
この表を作ると、たいてい二つの問題が見えます。ひとつは、ステージ発表と自分のクラスの出し物が重なる時間帯。もうひとつは、開場直後と撤収前で担当が空くことです。前者は交代要員を立てて埋め、後者は「設営と撤収も記録の一部」と割り切って担当を置きます。
準備期間の素材がないと、当日の映像だけでは薄くなる
完成した記録映像を見て物足りなくなる原因のほとんどは、当日しか撮っていないことです。段ボールを切っている放課後、体育館での通し練習、前日の設営、看板が立った瞬間。こうした場面は撮影に技術がいらないうえ、編集で冒頭に置くと一気に「クラスの記録」らしくなります。文化祭の2〜3週間前から、誰かのスマートフォンで週に2〜3回、30秒ずつでも回しておくと素材が足ります。
準備期間の撮影には、もうひとつ実務的な効果があります。当日の担当が撮り方に慣れることです。三脚の立て方、録画マークの確認、ファイルの受け渡し。本番前に一度通しておくと、当日の事故が減ります。
撮影担当は3系統に分けると当日の抜けが減る
ひとりで全部を撮ろうとすると、移動している間に演目が終わります。担当は次の3系統に分けます。人数が足りない場合は、表の上から順に確保してください。
| 系統 | 主に撮るもの | 機材 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| A ステージ引き | 体育館・中庭のステージ発表を舞台の全幅で | 三脚+スマートフォンまたはビデオカメラ | 動かさない。音の基準にもなる |
| B ステージ寄り | 演者の表情、客席の反応、袖で待つ様子 | 手持ち。ズームは控えめ | 引きが回っている前提で自由に動ける |
| C 校内巡回 | 教室展示、廊下、受付、裏方、準備と撤収 | 手持ち | 順路どおりに回る。1教室3〜5分 |
| (スチール) | 集合写真、名簿チェック用の顔 | カメラまたはスマートフォン | 動画班と別の人に任せる |
機材より先に、記録メディアと電源を数える
当日いちばん多い事故は、容量切れと電池切れです。撮影前夜に確認するのは3点だけです。空き容量(1080pで撮るなら1台あたり16GB以上、4Kなら32GB以上を目安に空けておく)、モバイルバッテリーの充電、三脚のホルダーが手持ちの機種に合うかどうか。予備のSDカードやケーブルは本部に置くのではなく、撮影担当が自分で持ちます。取りに戻る往復で演目がひとつ終わります。
スマートフォンで撮る場合、当日は撮影用の機体を「機内モード+Wi-Fi」にしておくと、通知でRECが中断される事故と電池の消耗を同時に減らせます。連絡は別のスマートフォンでやり取りする前提にします。
ファイル名と回収方法を撮る前に決める
撮影後にいちばんもめるのが素材の集約です。3人が3日撮れば、名前もばらばらのファイルが数十本集まります。「日付_場所_担当イニシャル_連番」の形式(例:0913_taiikukan_KT_01)を先に共有しておくと、編集担当が並べるだけで時系列になります。
回収は当日の解散前に、その場で共有ドライブへアップロードするところまでを担当の仕事に含めます。「あとで送る」は届きません。アップロード後にファイル数を読み上げて突き合わせ、数が合ったら解散、という手順にすると取りこぼしが見つかります。
ステージと教室展示では撮り方が逆になる|引きは止める、展示は順路どおり
同じ「記録」でも、ステージと教室展示ではやることがほぼ逆です。片方の撮り方をもう片方に持ち込むと、どちらも中途半端になります。
ステージは三脚で引きを回しっぱなしにする
ステージの引き(A担当)は、舞台の左右の端まで入る画角で三脚に固定し、演目が始まる前から終わって拍手が止むまで回し続けます。パン(左右に振る)もズームもしません。理由は二つあります。ひとつは、編集で他のカットをつなぐときの土台になること。もうひとつは音です。手持ちのカメラは動くたびに音が揺れますが、固定した1台の音を通しで使えば、映像を切り替えても音は途切れません。
ただし、機種によっては1ファイルの上限(4GB前後)や連続撮影時間の制限で勝手に止まることがあります。演目と演目の間で一度止めて録り直すと、制限に当たっても被害が1演目で収まります。撮影を始めるたびに録画マークが出ているかを目視する、これだけで「回っていなかった」事故がかなり減ります。
寄り(B担当)は、引きが保険になっている前提で自由に動けます。演者の顔、手元、袖で待っている表情、客席で笑っている生徒。ここは3〜10秒ずつ細かく撮っておくと、編集で挿しやすくなります。長回しは引きに任せます。
教室展示は入口から順路どおりに、止めて3秒
教室展示は「その場にいた人が思い出せる順番」で撮ります。入口の看板、中に入ったときの全景、装飾や仕掛けの細部、説明している生徒、来場者が反応している瞬間、という順です。歩きながら撮ると見づらいので、立ち止まって構図を決め、3秒静止してから次へ移ります。この「止めて3秒」を守るだけで、編集時に使えるカットの数が変わります。
教室は屋外より暗く、撮る側が窓を背にすると被写体の顔が黒く沈みます。自分が窓を背にするのではなく、被写体に窓の光が当たる向きへ立ち位置を変えるのが、いちばん簡単な対処です。お化け屋敷のように暗さが演出そのものの展示は、映像に暗いまま残しても何も見えないので、準備中の明るい状態を別に撮っておくと記録になります。
音は映像より先に劣化する
後から見返して「見られない」と感じる原因は、画質よりも音であることが多いです。体育館の客席後方で撮ると、周囲のざわめきばかりが入ります。可能なら、音響を担当している生徒に相談して、スピーカーの正面近くにICレコーダーやもう1台のスマートフォンを置かせてもらってください。編集で映像の音と差し替えるだけで、印象がはっきり変わります。
全員が最低一度は写る仕組みは、名簿にチェックを入れながら作る
配ったあとにいちばん出る不満は、画質でも編集でもなく「自分が写っていない」です。そして写っていない生徒は、たいてい裏方・受付・照明・調理担当のように、当日いちばん働いていた人たちです。舞台に立った人は放っておいても写るので、意識して撮るべきなのはそれ以外です。
クラス名簿を印刷して撮影チェック表にする
やり方は単純です。クラス名簿を1枚印刷してクリップボードに挟み、撮った生徒の名前にチェックを入れていきます。B担当かC担当のどちらかが持ちます。文化祭が2日制なら1日目の終了時点で未チェックの名前を見て、2日目の朝に「この人たちを狙う」と共有します。1日制なら午前の終わりに一度見ます。
チェック表があると、撮り方も具体的になります。「まだ写っていない5人は調理班だから、休憩に入る11時半に調理室へ行く」という判断ができるようになるからです。名簿は個人情報なので、当日持ち出しっぱなしにせず、終わったら回収して処分するところまで決めておきます。
それでも埋まらない分は、集合カットを時間割に入れる
全員を自然な流れで撮り切るのは、現実にはかなり難しいです。保険として、撤収後の10分を「クラス全員の集合カット」に充てるよう、事前に担任と時間割の調整をしておきます。整列した集合の画と、そのあとの数十秒の自由なカット(拍手する、手を振る、崩れる)を撮っておくと、記録映像の締めに使えます。ここまで用意しておけば、当日の撮り逃しがあっても全員が一度は登場する形になります。
写りたくない生徒の意思を先に聞いておく
クラスには、映像に残ることに抵抗がある生徒がいます。撮影を始める前に、担任を通じて「記録映像に写りたくない人は事前に伝えてほしい」と一度アナウンスしてもらってください。教室での挙手ではなく、担任への個別申告にするのが配慮です。伝えられた名前は撮影担当だけで共有し、編集時にも突き合わせます。この一手間を飛ばすと、完成後に作り直すことになります。
写りたくないという申し出があった生徒については、後ろ姿や集合の中に小さく入る程度なら構わないのか、一切写したくないのかまで確認しておくと、編集で迷いません。
BGMは配る時点で扱いが変わる|当日の演奏は許諾不要でも、録画の配布は手続きが必要
ここが記録映像でいちばん見落とされる部分です。文化祭で音楽を流すことと、その映像を配ることは、著作権のうえでは別の話になります。
当日の演奏・放送は3条件を満たせば手続きがいらない
著作権法38条1項は、営利を目的としない、聴衆や観衆から料金を受け取らない、出演者などに報酬を支払わない、この3つをすべて満たす上演・演奏・上映・口述について、権利者の許諾なく行えると定めています。JASRACも文化祭のページで、入場料をもらっていない、演奏する人に報酬を支払っていない、営利を目的としたものではない、という3条件を満たす場合は手続きが不要だと説明しています。あわせて、文化祭は「授業」の一環にあたるため、文化祭で演奏・放送するためだけにコピー・編集する場合も手続きはいらないとしています。
録画して配る時点で「複製」になり、無料でも手続きが必要
38条1項が対象にしているのは上演・演奏・上映・口述であって、複製や公衆送信は含まれていません。JASRACも同じページで、生徒などに配るために文化祭のもようを録音・ビデオ撮影する場合は手続きが必要であり、販売するときはもちろん、無料であってもみんなに配るときには手続きが必要だと明記しています。「無料だからいい」「校内だけだからいい」という整理は成り立ちません。学校のウェブサイトやクラスのグループに動画を上げる場合も、公衆送信として同じ検討が必要になります。
さらに、市販のCDやダウンロード購入した音源をそのまま使っている場合は、作詞家・作曲家の権利を管理するJASRACとは別に、レコード会社や実演家の了解も必要になります。実行委員のレベルで両方をそろえるのは現実的ではありません。
編集で足すBGMは、規約が明示された素材から選ぶ
オープニング、写真をつないだ部分、エンドロールなど、編集で足すBGMについては、利用規約で映像作品への使用が認められている無料音源を使うのが現実的な選択です。たとえばフリーBGMのDOVA-SYNDROMEは、規約に従う限りクレジット表記なしで利用でき、DVDなどの作品への利用も認められています。素材サイトごとに条件は違うので、使う前に規約ページを自分の目で読み、配布物に使ってよいかを確認してから選んでください。
ステージで流れた市販曲が映像に入る場合
問題が残るのは、クラスのダンスや劇で市販曲を使い、それが記録映像に不可避で入る場合です。取れる道は、その演目を映像から外す、無音や別の音源に差し替える、あるいは手続きを踏む、のいずれかになります。手続きの枠組みとしては、JASRACに「卒業記念用およびコンクール用録音・録画物に関する取扱い」があり、教育機関から依頼を受けて学校行事の様子を収録し、生徒などを対象に配布する目的の録音・録画物について、製作する事業者が事前に許諾契約を結ぶ形が用意されています。依頼先がこの枠組みに対応しているかは事業者ごとに異なるため、個別の確認が必要です。
実行委員が単独で判断せず、どの曲がどの演目で使われているかを一覧にして、担当の先生に相談する形にしてください。曲名・アーティスト名・使用した演目・使用時間を並べた表を作れば、相談は5分で済みます。
来場者の写り込みは、掲示・編集・共有範囲の3段で減らす
文化祭には他クラスの生徒、保護者、近隣の人、受験を考えている中学生とその家族が来ます。記録映像には他人が写ります。ゼロにはできない前提で、減らし方を決めておきます。
肖像権は明文の規定がなく、判断は学校の方針に寄る
肖像権は著作権のように条文で定められた権利ではなく、裁判例の積み重ねによって認められてきた権利です。そのため「何秒以上写ったらだめ」といった数値の基準はありません。学校における児童生徒の肖像の利用については、本人および保護者の意向を考慮して慎重に判断することが必要だとされています。つまり、実行委員が独自基準を作るのではなく、学校がすでに持っている方針に合わせるのが筋です。多くの学校は行事の写真掲載について何らかのルールを持っているので、まずそれを聞きに行きます。
入口の掲示とプログラムへの記載で、来場者に事前に伝える
受付と各入口に、記録用の撮影を行っていること、撮影した映像の用途(生徒への配布、校内での保存)、写りたくない場合の申し出先を書いた掲示を出します。プログラムやパンフレットにも同じ内容を1行入れます。文面は学校の確認を取ってから掲示してください。あわせて、来場者側の撮影とSNS投稿についてのルールを同じ掲示に書いておくと、当日その場での判断が楽になります。
編集で外すのは「正面・大きく・長い」が重なったカット
すべての来場者を消すのは不可能ですし、その必要もありません。実務では、正面から写っている、画面の中で大きい、数秒以上続く、この3つが重なっているカットだけを差し替えるかぼかす、という運用にすると作業量が現実的な範囲に収まります。背中や遠景で通り過ぎる人まで追いかけると編集が終わりません。
展示物に貼られたポスターやキャラクターのイラストが映り込む場合については、著作権法30条の2が、付随して対象となる著作物が全体の中で軽微な構成部分にとどまる場合の利用を認めています。2020年の改正で対象範囲は広がりましたが、「軽微」であることが前提です。他人のキャラクターを正面から大写しで長く撮れば軽微とはいえなくなると考えられるので、展示の一部として自然に入る程度にとどめるのが安全です。
なお、教室展示に貼られたイラストがそのクラスの生徒の手描きであっても、元になったキャラクターの権利は残ります。記録映像の中で看板やイラストを長く見せたい場合は、何を描いたものかを確認したうえで判断してください。
学校の許可は「誰に・何を・どこまで」を紙1枚で取る
「撮っていいですか」と口頭で聞いて「いいよ」と言われただけでは、配布の段階でもう一度止まります。撮影の許可と配布の許可は別物だからです。次の項目を1枚の紙にして、担任に出してください。
- 撮影する範囲(自分のクラスの展示、体育館のステージ、校内の廊下や受付など、場所を具体的に書く)
- 撮影する期間(準備期間を含むのか、当日だけか)
- 編集して1本の記録映像にまとめること
- 配る相手(クラスの生徒のみか、保護者を含むか、他クラスにも渡すか)
- 配る形式(データの共有リンクか、ディスクなどの現物か、両方か)
- 使用するBGMの一覧と、その入手元・利用条件
- SNSやウェブへの掲載の可否(原則として不可にしておくと扱いやすい)
- 費用が発生する場合の金額と集め方
特に最後の2つは早めに出します。SNS掲載を認めるかどうかは学校ごとに方針が分かれますし、生徒からお金を集めることについては学校のルールが関わります。ディスクにして配るなど費用がかかる方法を検討しているなら、金額の見込みを添えて相談する段階から一緒に出したほうが話が早く進みます。
提出は文化祭の2週間前まで
許可の相談は、担任から学年主任、必要に応じて管理職へと段階を踏むことがあります。文化祭の直前は先生も動けないので、遅くとも2週間前には最初の紙を出します。撮影の許可だけ先に取り、配布については当日以降に相談する形でも構いませんが、その場合は「配布方法は別途相談する」と紙に書いておいてください。あとから「そこまでは聞いていない」となるのを防げます。
他クラスの出し物を撮るときは、そのクラスにも一言
校内巡回で他クラスの教室に入るときは、入口で記録係だと名乗って一言断ります。劇や演奏など、そのクラスが時間をかけて作ったものを撮る場合は特に、事前に実行委員会経由で撮影する旨を伝えておくと当日もめません。撮った映像を自分のクラス以外にも配る予定があるなら、そのことも伝えます。逆に、他クラスから「うちの分も欲しい」と言われる展開もあるので、その場合の対応(配るのか、配らないのか)を先に決めておくと楽です。
データで配るか現物で配るかは、卒業後に残るかどうかで分かれる
編集が終わったら配布方法を決めます。判断材料は3つ、容量、期限、そして卒業後にも残るかどうかです。
データ配布は速いが、期限とアカウントの問題が残る
ファイル共有サービスで配るのがいちばん早い方法です。ただし保存期間があります。ギガファイル便は1ファイル300GBまでアップロードでき、保存期間は3日・7日・14日・21日・30日・60日・100日から選べますが、初期設定は7日で、アップロード後の延長や期限切れ後の復元はできません。最長を選んでも100日です。配る前に期間の設定を見直し、いつまでにダウンロードすればよいかをクラスに明記して伝えてください。
容量の見当もつけておきます。スマートフォンの動画は、1080p・30fpsで1分あたりおよそ60MB、4K・30fpsで1分あたりおよそ170MBが目安です。30分の記録映像なら1080pで2GB前後、4Kなら5GB前後になります。全員が自分の端末にダウンロードする前提なら、この容量は無視できません。書き出したあとに実際のファイルサイズを確認してから案内します。
学校が配布しているアカウントの共有ドライブに置く方法もありますが、卒業時にアカウントが使えなくなればアクセスもできなくなる可能性があります。学校の運用がどうなっているかを情報担当の先生に確認しておくと判断できます。
現物にすると、再生機とディスク規格の話になる
手元に長く残す前提なら現物です。DVDとブルーレイでは仕様が違います。DVD-Videoの映像は720×480、画素数にして約35万画素で、記録容量は片面1層で4.7GB。ブルーレイは1920×1080で約207万画素、片面1層で25GBです。スマートフォンやビデオカメラで1080p以上で撮った素材の解像感をそのまま残したいならブルーレイ、家庭にある再生機の幅広さを優先するならDVD、という分かれ方になります。文化祭の記録映像は劇やダンスなど動きの多い場面が中心なので、動きの見え方を重視するならブルーレイが向きます。
人数分を同じ内容でそろえる場面
クラス全員に配る場合、同じ内容のディスクを人数分そろえることになります。ディスクメーカーでは1枚1,500円からで、1枚単位で注文できます。同じ内容を複数枚用意する場合も1枚あたりの考え方は変わらないため、枚数×単価で予算の見込みが立てられます。動画データを再生できる形式へ組み立てるオーサリングは料金に含まれます。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷にも対応しているので、学校名・クラス名・年度を入れておくと、何年か後に棚から探せる形になります。
記録映像は演目や場面が多くなるので、メニュー画面の作成とチャプター分けを併せて頼んでおくと、見たい場面から再生できます。「オープニング/クラス劇/ステージ発表/教室展示/エンドロール」のように区切りを指定する形です。入稿はダウンロードできる共有URLで、ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorage などが使えます。編集済みのファイルをアップロードしてURLを渡すだけなので、容量が大きくても郵送の手間がかかりません。
納期は通常便のほか、お急ぎ(+1,500円、15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)、特急(+3,000円、15時までの注文・入稿で翌日発送)、当日店舗お渡し(+3,500円、平日12時までの注文・入稿で、大阪市北区の店舗で受け取り)が選べます。卒業式や学年末の配布に間に合わせたい場合は、渡したい日から逆算して選んでください。
なお、現物にしてもデータにしても「配布用の複製」であることは変わりません。前の章で触れたBGMの扱いは、どちらの形式でも同じです。手続きが必要な楽曲が入ったまま複製すると、そのまま問題が残ります。
当日から配布までを逆算する|2週間で回すスケジュール
最後に、当日から配布までの流れを時系列で並べます。編集を先に始めて権利の確認を後回しにすると、完成してから作り直しになります。順番が重要です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2週間前まで | 撮影・編集・配布の許可を紙1枚で担任へ提出。撮影担当と時間割表を確定する |
| 2〜3週間前〜当日 | 準備風景を週2〜3回、30秒ずつ撮影。BGM候補の規約を確認して一覧にする |
| 前日 | 空き容量・充電・三脚を確認。ファイル名の規約を担当全員に再共有する |
| 当日 | 3系統で撮影。名簿チェック表を随時更新。解散前に素材を共有ドライブへ集約する |
| 当日〜翌日 | 撤収後の集合カットを撮影。素材の欠けを確認し、2日制なら翌日に補う |
| 3〜5日後 | 粗編集。使用曲の一覧を作り、手続きが必要な楽曲を洗い出して先生に相談する |
| 1週間後 | 本編集。来場者が正面・大きく・長く写るカットを処理。写りたくない生徒の分を確認 |
| 10日後 | クラスの数人と担任に試写。名簿と照合して全員が写っているかを確認する |
| 12日後 | 配布方法を確定。現物にする場合は納期から逆算して入稿する |
| 2週間後 | 配布。データの場合はダウンロード期限を明記して伝える |
この表のうち、飛ばしても取り返しがつくのは試写だけです。試写は省いても配れますが、名簿との照合をここでやっておくと、配ったあとに「写っていない」と言われる事態を減らせます。逆に、使用曲の洗い出しと、写りたくない生徒の確認は後戻りが大きいので、前倒しにしてください。
期間に余裕があるなら、粗編集の段階で一度先生に見てもらうのも有効です。完成度が低い状態のほうが指摘を反映しやすく、直しの手戻りが小さくて済みます。
よくある質問
Q. 文化祭の記録動画に市販の曲をBGMとして使ってもいいですか?
A. 当日その場で流すだけなら、非営利・入場無料・出演者無報酬の3条件を満たす限り許諾は不要です。ただし録画して生徒に配る場合は複製にあたり、無料で配るときでもJASRACの手続きが必要になります。市販CDやダウンロード購入した音源をそのまま使う場合は、JASRACとは別にレコード会社や実演家の了解も必要です。編集で足すBGMは、映像作品への利用が規約で認められている無料音源から選ぶのが現実的な選択になります。
Q. 記録映像を学校のウェブサイトやクラスのグループに上げるのはだめですか?
A. 掲載そのものは学校の方針次第ですが、著作権のうえでは公衆送信にあたるため、配布と同じ検討が必要になります。著作権法38条1項が許諾なしで認めているのは上演・演奏・上映・口述で、複製や公衆送信は含まれていません。加えて来場者や他クラスの生徒が写っている以上、肖像の扱いも学校の方針に沿う必要があります。校外から見える場所への掲載は、事前に管理職まで確認を上げてから判断してください。
Q. 来場者が写り込んだカットは全部消さないといけませんか?
A. すべて消す必要はありません。実務では、正面から写っている、画面内で大きい、数秒以上続く、この3つが重なるカットに絞ってぼかすか差し替える運用にすると、作業量が現実的な範囲に収まります。背中や遠景で通り過ぎる程度まで追いかけると編集が終わりません。判断に迷うカットは担任に見てもらってから決めるのが早いです。あわせて、受付と入口に記録撮影中である旨の掲示を出しておくと、当日の説明も楽になります。
Q. 撮影担当は何人必要ですか?
A. ステージの引きを固定する1人、ステージ寄りの1人、校内を巡回する1人の計3人が目安です。加えて写真担当を動画班と別に1人置けると、名簿チェックが回しやすくなります。3人そろわない場合は、三脚に固定してステージの引きを回し続ける係を最優先で確保してください。引きさえ残っていれば、寄りが足りなくても編集で1本にまとまります。逆に引きがないと、演目そのものが記録から抜け落ちます。
Q. クラス全員が写っているかは、どうやって確認すればいいですか?
A. クラス名簿を1枚印刷し、撮影しながら写った生徒の名前にチェックを入れていく方法がいちばん手堅いです。午前の終わりや1日目の終了時点で未チェックの名前を見て、その人たちが当日どこにいるかを逆算して撮りに行きます。仕上げとして、撤収後の10分に全員の集合カットを撮る時間を担任と調整しておくと保険になります。編集後の試写でも名簿と照合してください。名簿は個人情報なので、終わったら回収します。
Q. データで配るのとディスクにするのは、どちらがいいですか?
A. 目的が違います。すぐ見られればよいならデータ、卒業後も手元に残したいなら現物です。ファイル共有サービスには保存期限があり、たとえばギガファイル便は3日から100日の範囲で、期限を過ぎたファイルは復元できません。学校配布のアカウントに置いた場合も、卒業でアクセスできなくなる可能性があります。両方を並行させて、データで早く見てもらい、現物は後日渡す形にすると無理がありません。
Q. 30分の記録映像はどのくらいの容量になりますか?
A. 撮影設定によります。目安として、1080p・30fpsで1分あたりおよそ60MB、4K・30fpsで1分あたりおよそ170MBです。30分なら1080pで2GB前後、4Kで5GB前後になります。編集後の書き出し設定でも変わるので、書き出したファイルのサイズを実際に見てから案内してください。ディスクにする場合、記録容量はDVDが片面1層で4.7GB、ブルーレイが片面1層で25GBです。
Q. 文化祭が終わってから編集を始めても間に合いますか?
A. 配布までに2週間ほどみておくと余裕があります。撮影の翌日までに素材を1か所へ集約し、3〜5日で粗編集、そこで使用曲の一覧を作って手続きが必要な楽曲を先生に相談します。本編集と写り込みの処理に数日、試写に1日、配布方法の手配に数日という配分です。現物のディスクにする場合は、納期を確認して入稿日から逆算してください。準備期間の素材があると、編集そのものは速く進みます。

