この記事の要点
- 会場で曲を流すだけなら式場の包括契約でまかなわれますが、ムービーやディスクに音源をコピーする行為は複製権の手続きが別に必要になります。
- ISUMはJASRAC・NexToneの著作権と日本レコード協会の著作隣接権をまとめて処理できる窓口で、登録楽曲は36,389曲(2026年8月5日時点)です。
- 権利料の目安は、動画素材のプロフィールムービーで市販曲3曲・DVD1枚なら10,530円+消費税(ISUM料金表からの試算・代行手数料別)です。
- 月額制サブスクリプションの音源は使えず、市販CDか曲単位で買える正規ダウンロード配信の音源に限られ、収録アルバムごとに可否が変わります。
- 個人はISUMに登録できないため、式場や映像業者を通して申請するか、JASRACと日本レコード協会へそれぞれ直接申請することになります。
プロフィールムービーに使う曲が決まって、いざ作りはじめる段階になると「この曲、勝手に使っていいんだろうか」という不安が出てきます。式場の担当者から「ISUM(アイサム)の申請は済んでいますか」と聞かれて、はじめてその名前を知る人も少なくありません。
この話がややこしいのは、同じ一曲でも「会場で流す」と「ムービーに載せてディスクに焼く」で扱いがまったく変わるからです。前者は式場が済ませている手続きでまかなわれ、後者は別に手続きが要ります。混同したまま進めると、式の直前に上映を断られたり、曲の差し替えに追われたりします。
この記事では、演奏権と複製権の線引き、ISUMという仕組みの位置づけ、公表されている料金表にもとづく権利料の試算、申請前に決めておく項目、そして音源選びで実際につまずきやすい点を、順を追って整理します。ディスクを作る側から見て何を確認するかも最後にまとめました。
式場で流すことと、ディスクに複製することは別の手続き|線引きは「音源がコピーされたか」
結婚式で市販の曲を使うとき、手続きが要るかどうかは「会場で音を鳴らしたか」ではなく「音源が新しい入れ物にコピーされたか」で分かれます。ここを取り違えると、話が最後までかみ合いません。
披露宴の入退場やケーキ入刀で、買ってきたCDや配信音源をそのまま流す。これは演奏・上映にあたります。多くの結婚式場はJASRACと「各種営業施設・教室等での演奏・上映」の手続きを済ませていて、JASRACのブライダル案内にも、すでにその手続きをしている会場では演奏・上映部分の報告は不要と明記されています。つまり、流すだけなら新郎新婦の側で動く場面ではありません。
一方で、プロフィールムービーに曲を載せてDVDに焼く、BGM用のCDを焼く、当日の様子を市販曲が流れている状態で撮影してディスクにする。これらはすべて複製です。会場の契約とは切り離して、曲ごとに手続きが要ります。JASRACはブライダルでの利用例として、プロフィールビデオの製作、会場内BGMの音源製作、記録用ビデオの製作、披露宴のオンライン中継、会場内の生演奏やBGM・ビデオ上映を挙げていますが、このうち前の三つが複製側です。
迷いやすい三つのケース
- 友人が生演奏してくれる/演奏そのものは演奏権の話なので、会場の契約でまかなわれます。ただしその演奏を録音してムービーやディスクに入れるなら、作詞家・作曲家側に対する複製権の手続きが別に要ります。
- 式当日の記録ビデオ/会場に流れていた市販音源が映像に入るため、複製にあたります。業者が撮影する場合も、自分たちで撮る場合も同じです。
- ムービーをあとでSNSや動画サイトに上げる/これは複製とは別の権利(公衆送信権・送信可能化権)の話です。ISUMの案内でも、代行できるのは披露宴等で演奏・上映・記録撮影する範囲に市販音源を複製することのみで、ネット公開には別途権利者の許諾が要ると説明されています。
裏を返せば、会場のスピーカーから流すだけで済ませるなら手続きは増えません。プロフィールムービーを外注せず当日にスライドを手送りする、といった形なら論点はぐっと減ります。手続きの量は演出の設計段階でほぼ決まる、と考えておくとスケジュールが立てやすくなります。
演奏権と複製権の違い|結婚式が「私的使用」に当たらない理由
著作権法は、曲の使い方ごとに別々の権利を用意しています。人前で演奏したり再生したりするのが演奏権(第22条)、録音・録画などの形で複製するのが複製権(第21条)です。同じ曲でも、この二つは別の許諾で、別の相手に対して処理します。
さらに市販音源を使う場合は、権利が二階建てになります。一階が著作権で、作詞家・作曲家・音楽出版社が持ち、実務上はJASRACやNexToneが管理しています。二階が著作隣接権で、そのレコードを作ったレコード会社などが持ちます。著作権法第96条は「レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する」と定めていて、ブライダル分野ではこの窓口を日本レコード協会(RIAJ)が担っています。市販CDから音を取ってムービーに載せる行為は、この二つの権利に同時に触れます。「JASRACの手続きをしたから大丈夫」で終わらないのは、このためです。
家庭内なら自由に複製できるのでは、という疑問
著作権法第30条は、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使うための複製を認めています。自分で買ったCDをスマートフォンに入れるのはこれに当たります。では結婚式はどうか。ISUMはこの点について、招待客が列席するウェディングシーンは「私的使用」の範囲を超えるため、別途権利者への手続きが必要になると説明しています。親族だけの少人数の会であっても、招待して人を集めている以上は家庭内に準ずる範囲とは言いにくい、という整理です。
手続きをしないまま市販音源を複製した場合、それは著作権侵害にあたります。ISUMの説明では、著作権および著作隣接権の侵害は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方、著作者人格権・実演家人格権の侵害などは5年以下の懲役または500万円以下の罰金、あるいはその両方とされています。現行法では著作権侵害は原則として親告罪なので、権利者が告訴して初めて処罰の対象になりますが、罰則の話とは別に、式場が上映を受け付けないという現実的な壁のほうが先に来ます。
もう一点、編集の範囲にも触れておきます。ISUMは、楽曲の内容そのものを変えると同一性保持権(著作権法第20条第1項)や実演家の同一性保持権(第90条の3)に触れる可能性があるとしたうえで、サビから再生を始める、終わりをフェードアウトさせるといった再生範囲の調整であれば可能だと案内しています。曲をつないでメドレーにする、テンポを変える、といった加工は判断が難しくなるので、権利者への確認が要る領域だと考えられます。
ISUMの位置づけ|二つの窓口を一回にまとめる仕組み、登録は36,389曲
ISUM(一般社団法人 音楽特定利用促進機構)は、ブライダルで市販音源を複製利用するときの権利処理を、事業者に代わって一括で行う団体です。前の章で見たとおり、市販音源の複製には著作権と著作隣接権の二つの手続きが要りますが、ISUMを通すとこれを一回の申請にまとめられます。JASRACも自社サイトで、ブライダル分野では手続きの簡便化のために代行団体を設けており、録音・録画物の製作についてはISUM、オンライン中継についてはBmas(一般社団法人ブライダル音楽申請システム)が窓口になると案内しています。
ISUMで扱える三つのコンテンツ区分
ISUMは対象を次の三つに分けています。申請のときにどれに当たるかを選ぶので、先に自分の作るものがどこに入るかを把握しておくと話が早くなります。
- ①音声演出コンテンツ/披露宴などで流すBGMを選曲して録音したCDなどの記録媒体。
- ②映像演出コンテンツ/オープニングムービー、プロフィールムービー、エンディングムービー、余興映像など。市販音源に写真・動画・アニメーションを組み合わせて複製したDVDなどが対象です。
- ③記録ビデオ/当日の模様を、市販音源が流れている状態で撮影した記録作品。
楽曲データベースには、各権利者から複製利用の許諾が得られた曲だけが載っています。登録数はISUMのサイトで随時更新されていて、2026年8月5日時点で36,389曲です。曲名やアーティスト名のほか、迎賓・入場・ケーキ入刀・乾杯・中座・プロフィールムービー・花嫁の手紙・エンドロールといった15の利用シーンからも探せます。使いたい曲がここに載っているかどうかが、最初の分岐点になります。
新郎新婦が自分でISUMに申請することはできない
ここが実務上いちばん誤解されている点です。ISUMは登録対象を「ブライダル関係事業を行われている法人または個人事業主」に限定していて、FAQでも、個人のお客様からは直接受け付けられない旨を明示しています。JASRACのブライダルページにも「ISUMでは個人の方の登録を受け付けていません」と書かれています。登録には初期登録料として個人事業主30,000円・法人100,000円(いずれも税抜)がかかり、年度ごとの更新も必要です。式のために一度だけ使う個人が入る仕組みにはなっていません。
したがって新郎新婦がISUMを使うルートは、式場、提携の映像制作会社、あるいはISUM登録事業者である申請代行サービスを通すことになります。登録事業者であれば専用システムから申請でき、データベース収載曲なら即日利用可能とされています。自作ムービーであっても、申請だけを受けてくれる事業者を探せば同じ枠組みに乗れます。
権利料の実額|3曲・DVD1枚のプロフィールムービーで10,530円+消費税
ISUMは料金表を公開しています。金額は、著作隣接権使用料(A)+著作権使用料(B)+Meleteシステム利用料(C=(A+B)×8%)の合計で、これに消費税が別途かかります。2026年4月1日からの表は次のとおりです。
| 区分 | 管理事業者 | ①音声演出 | ②映像演出 | ③記録ビデオ |
|---|---|---|---|---|
| A 著作隣接権 | RIAJ | 1曲2,000円/1個 5曲まで5,000円(同コンテンツの製品3個まで) |
1曲2,000円/1個 5曲まで5,000円(同コンテンツの製品3個まで) |
1曲2,000円/1個 5曲まで5,000円 1催事あたり10,000円 |
| B 著作権 | JASRAC | 1曲950円 1催事あたり4,750円 |
静止画は1曲950円/動画は1曲1,900円または3〜5曲4,750円 | 1曲1,900円または3〜5曲4,750円 1催事あたり9,500円 |
| B 著作権 | NexTone | 1曲1,000円 1催事あたり5,000円 |
静止画は1曲1,000円/動画は1曲2,000円または3〜5曲5,000円 | 1曲2,000円または3〜5曲5,000円 1催事あたり10,000円 |
| C システム利用料 | ISUM | (A+B)×8% | ||
いずれも「同製品3個まで」という単位が付いていて、ISUMは1催事あたりの使用料について複製個数3個ごとに同額が加算されると説明しています。同じ挙式で作るコンテンツをまとめて申請すると、曲数と複製個数がまとめられ、安いほうの使用料で計算されるとも書かれています。
試算:JASRAC管理曲3曲、動画素材のプロフィールムービー、DVD1枚
- A(RIAJ)/1曲2,000円×3=6,000円と「5曲まで5,000円」を比べ、安いほうの5,000円
- B(JASRAC・②映像演出の動画)/1曲1,900円×3=5,700円と「3〜5曲4,750円」を比べ、4,750円
- C/(5,000+4,750)×8%=780円
- 合計 10,530円+消費税
これは料金表から機械的に計算した額です。実際の請求は申請内容によって決まりますし、申請を代行する事業者の手数料はこれとは別に発生します。相場感をつかむための出発点として使ってください。
金額が動く条件を先に知っておく
- 5分を超える曲は複数曲として数える/ISUMは5分以上の著作物について、5分を超えるごとに1曲として計算するとしています。4分59秒なら1曲、5分00秒なら2曲、10分00秒なら3曲です。長尺のバラードをフルで使う設計は、それだけで料金が跳ねます。
- 静止画のスライドショーは加算がある/JASRAC管理楽曲で②の素材が静止画の場合、使用料額に50%を加算するとISUMは注記しています。写真だけで作るムービーは安く済むとは限りません。
- 複製枚数が増えると加算される/3個を超えると同額が積み上がります。親族に配る分を含めて何枚作るかは、申請の前に決めておく必要があります。
- 保護期間が切れた曲は著作権使用料がかからない/ISUMは著作権消滅(PD)曲について著作権使用料は不要としています。ただし市販のレコード音源を使えば著作隣接権は残ります。
- 特定音楽出版者の外国曲は別料金/ショットミュージック、日音、日本アメリカーナ音楽出版、ピアーミュージック、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング(Walt Disney Music Companyなどの原出版者が管理する楽曲)が権利者となる外国曲は、権利者の指定した基本使用料が別途必要になるとされています。
申請の流れと必要な情報|先に決めておく五つと、個人で直接やる場合の手順
式場や映像業者を通して申請する場合、こちらが用意するのは情報だけです。ただし後から変えにくい項目が混ざっているので、依頼の前にそろえておくと差し戻しが減ります。
申請前に決めておく五つ
- 曲名とアーティスト名/同名異曲・カバーがあるので、どのアーティストの版かまで特定します。
- 使う音源/市販CDならどのアルバムに入っているものか(規格品番)、配信で買ったものならその旨。ISUMのデータベースはCD音源と配信音源を別の曲として登録していて、配信音源は曲名の横に【配信音源】と書かれています。
- コンテンツ区分/①音声演出、②映像演出、③記録ビデオのどれか。ムービーと当日の記録ビデオは別枠です。
- 複製する枚数/上映用に加えて、記念用・親族配布用に何枚作るか。3個ごとに料金が加算されるので、ここは金額に直結します。
- 挙式日/申請は特定の一つの催事に紐づきます。
事業者を通せないとき、個人で直接申請する
式場も映像業者も申請を受けてくれない場合、二つの窓口へ別々に申請することになります。ISUM自身も、事業者を通じて申請できない場合は個人で各権利者へ申請が必要で、それぞれ最短2週間程度かかる可能性があると案内しています。
著作権側(JASRAC)の手順は公開されています。まず作品検索データベース「J-WID」で使う曲の権利関係を調べ、作品コードを控えたうえで、管理状況のうち「複製」の該当区分(動画コンテンツ/静止画コンテンツ/BGM用CD)を確認します。次に市販音源を使うなら日本レコード協会の許諾を得ます。そのうえで「ブライダル個人専用フォーム」から申し込むと、1〜5営業日で許諾書と許諾番号がメールで届き、この時点で利用できるようになります。請求書は許諾番号の通知から1〜2か月後に送られます。JASRACは製作前に手続きするよう案内しています。
個人手続きの使用料の目安として、JASRACは動画コンテンツ1曲2,000円、静止画コンテンツ(スライド)1曲1,000円(歌詞も表示する場合は1曲1,500円)、BGM用CD 1曲1,000円を示しています。なお、前章で挙げた特定音楽出版社の外国曲について指定額の支払いが必要になるのは動画コンテンツの場合で、静止画コンテンツとBGM用CDでは不要とされています。ディズニー系の曲を写真スライドで使う設計なら、この指定額の壁を回避できる可能性がある、ということです。
著作隣接権側(日本レコード協会)は、楽曲リストで使用可能かを確認したうえで、個人向け申請ページから申し込みます。使用料規程(令和3年10月1日実施)では、包括的利用許諾契約によらない場合は1利用単位あたり1曲5,000円と定められています。あわせて規程の備考には、営利を目的とせずに利用する個人については、利用状況等を参酌して規程の範囲内で使用料を決定することができる、という定めも置かれています。実際にいくらになるかは申請時の案内を確認してください。
数字を並べて分かるとおり、曲数が増えるほどISUM経由のほうが総額は抑えやすくなります。加えて、二つの窓口とやり取りする手間と待ち時間が要りません。まずは式場か映像業者に申請を受けられるか聞き、断られたときに直接申請を検討する、という順番が現実的です。
データベースにない曲への三つの選択肢|洋楽が少ないのは「指し値」だから
使いたい曲を検索して出てこなかったとき、まず知っておきたいのは、なぜ載っていないのかです。ISUMは、洋楽や外国のアニメ・映画の音楽など、権利者に外国人の作家や海外の音楽出版者が含まれる楽曲を動画・ムービーで使う場合、使用料が権利者の指定した金額、いわゆる「指し値」になることがあると説明しています。金額が楽曲や権利者ごとに異なり、その都度問い合わせが要るため、定額サービスを提供しているISUMでは扱えない、という理屈です。曲が悪いのでも、使ってはいけないのでもなく、定額の枠に収まらないという話です。
選択肢は三つあります。
1. 楽曲リクエストを出して待つ
ISUMには、未登録の曲の追加登録を依頼するリクエスト制度があります。費用はかからず、事業者登録の有無を問わず誰でも送れます。送られたリクエストは日本レコード協会を通じて各レコード会社へ回り、代行可能と回答があった曲から順にデータベースに追加されます。ISUMは、早いもので1か月前後で回答が得られるものもあるが、期間や結果は約束できないとしています。個別の返答は行われないので、結果はデータベースを見て確認します。式まで半年ある段階なら、とりあえず出しておく価値はあります。
2. 権利者へ直接申請する
データベースに載っていない曲でも、著作権・著作隣接権それぞれの権利者に直接手続きすれば使えるものがあります。ISUMは、①楽曲名 ②アーティスト名 ③利用予定日 を明記して問い合わせれば、権利者への手続き先を案内すると説明しています(登録楽曲以外は案内が難しい場合もあるとされています)。時間と手間はかかりますが、どうしてもその曲でなければ、という場合の道です。
3. 差し替える
同じアーティストの別の曲がデータベースにあることは珍しくありません。また、市販されているインストゥルメンタル版・カラオケ音源であれば通常の楽曲と同様にISUMで手続きできる、とされています。ただしカラオケ店の機器で録音した音源はISUMでは扱えず、カラオケ事業者への直接の問い合わせが必要です。
登録は取り下げられることがある
見落としやすい点として、いったん登録された曲がデータベースから削除されることがあります。著作隣接権の許諾が不可に変わった場合や、管理状況の変更で日本レコード協会への委託が外れた場合、著作権使用料が指し値になった場合などです。ISUMは、削除前に申請が完了していれば削除後の利用も問題ないとしたうえで、早めの楽曲確定と申請を呼びかけています。曲を決めたら、式まで日があっても申請だけ先に済ませておくのが安全です。
音源選びで落ちる罠|サブスクの音源は使えず、アルバム違いでも通らない
曲がデータベースに載っていても、手元の音源が要件を満たしていなければ申請は通りません。ここでつまずく人がとても多いので、買う前に確認してください。
月額制サブスクリプションの音源は対象外
ISUMが扱う市販音源は、市販CDと、曲・アルバムごとに購入できる正規ダウンロード配信サービス(レコチョク、iTunes、Amazonなど)の音源です。月額制サブスクリプションサービスで提供される音源は利用できないと明記されており、例としてApple Music、Spotify、Amazon Music Unlimited、LINE MUSIC、TOWER RECORDS MUSIC、AWA、YouTube Music Premiumが挙げられています。普段サブスクで聴いている曲をムービーに使うなら、あらためてCDを買うか、曲単位で購入し直すことになります。
収録アルバムによって可否が変わる
同じ曲・同じアーティストでも、その音源が入っているアルバムによって著作隣接権者が違うことがあります。ISUMはこれを音源単位でレコード会社が判断しているため、楽曲ごとに「申請可能アルバム一覧」を掲載しています。手持ちのアルバムが一覧になければ、そのアルバムの音源では申請できません。オリジナルアルバムは通り、ベスト盤は通らない、といったことが起こります。音源を用意する前に一覧を確認する、という順番を守ると無駄が出ません。載っていない場合は、楽曲詳細ページからアルバム単位でリクエストを送れます。
そのほか、実務でよく聞かれる点
- 中古CD/正規に購入したものであれば問題ないとされています。
- CD音源と配信音源/別の曲として登録されているため、どちらを使うかで申請対象が変わります。配信音源は曲名の横に【配信音源】と表示されます。
- 編集の範囲/サビから再生を始める、終わりをフェードアウトさせるといった再生範囲の調整は可能とされています。曲そのものの改変は同一性保持権に触れる可能性があります。
- 歌詞や楽譜を画面に出す場合/ISUMの注記では、映像に楽曲と同時に歌詞や楽譜を表示する場合の使用料は含まれるとされています。ただし静止画素材については加算のルールがあるため、実額は申請時に確認してください。
ここまでの条件をすべて満たしたうえで申請が通り、はじめて手元の動画データを堂々とディスクに焼ける状態になります。逆に言えば、音源の出どころが曖昧なままデータだけ完成させると、後から差し替えのために編集をやり直すことになります。曲の確定と音源の購入は、映像の編集を始める前に済ませておくのが結局いちばん早い進め方です。
フリー音源という選択肢|「無料」と「自由に使える」は別のこと
手続きの手間や費用を避けたい、あるいは使いたい曲がどうしても扱えないとき、市販曲以外の音源を選ぶ道があります。ただし「著作権フリー」という言葉は幅が広く、そのまま鵜呑みにすると別の問題を抱え込みます。
保護期間が切れた曲(パブリックドメイン)
著作権の保護期間は、TPP11の発効にともない2018年12月30日から、原則として著作者の死後70年に延長されました。実演は実演が行われた後70年、レコードは発行後70年です。改正前にすでに保護期間が切れていたものが、さかのぼって延長されることはありません。クラシックの楽曲そのものは保護期間が終わっているものが多く、ISUMも著作権消滅(PD)曲については著作権使用料はかからないとしています。
ただし、ここに落とし穴があります。曲の著作権が切れていても、それを演奏して録音した市販のCDには著作隣接権が生きています。クラシックだから何でも自由、ではありません。市販録音を使うなら隣接権側の手続きは残ります。
ロイヤリティフリー音源を使う
配布サイトや定額サービスの音源を使う場合、確認するのは価格ではなく利用規約です。少なくとも次の四点は目を通してください。
- 結婚式での利用が許可されているか/個人利用のみ可、商用不可といった条件の解釈が分かれる場面です。
- 映像に同期させる利用が許可されているか/音源を映像と合わせる使い方(シンクロ利用)が明示的に認められているかを見ます。
- クレジット表記の要否/表記が条件になっている場合、エンドロールや映像の末尾に入れる必要があります。
- 複製物の配布が許可されているか/ディスクに焼いて親族に配る行為が、規約上の再配布に当たらないかを確認します。
式場によっては、上映するムービーについて権利処理の状況を確認されます。フリー音源を使った場合は申請番号が出ないので、音源の入手元と利用規約のページを保存しておき、聞かれたらすぐ示せるようにしておくと話が早く済みます。購入履歴やライセンス証書がある形式のサービスを選んでおくと、この場面で困りません。
自分たちで演奏・歌唱した音源を使う
もうひとつの手が、市販のレコード音源を使わず、自分たちや友人が演奏・歌唱したものを録音する方法です。ISUMの料金表には、演奏・歌唱音源の場合は著作隣接権使用料はかからないと注記されています。レコード会社側の権利が発生しないぶん、作詞家・作曲家側の手続きだけで済むと読めます。またISUMは、データベースの登録楽曲に限り、演奏・歌唱した音源の複製利用について市販音源とまとめて申請できるとしています。手作り感のある演出をしたい場合、費用と権利処理の両面で選びやすい選択肢です。
業者に依頼する場合の確認事項|見積の内訳と「何枚作るか」を先に固める
式場や映像業者に任せる場合でも、任せきりにすると当日に近づいてから慌てます。発注のときに確認しておきたいのは次の点です。
- 権利料が見積に含まれるか、代行手数料はいくらか/ISUMへ支払う権利料と、事業者が受け取る代行手数料は別ものです。「ISUM申請込み」と書かれていても、どちらまで含むのかは必ず内訳で確かめます。
- 申請するコンテンツ区分/プロフィールムービーは②映像演出、当日の記録ビデオは③記録ビデオです。両方を作るなら両方の申請が要ります。片方だけ処理されていた、という食い違いが起きやすい場所です。
- 何枚作るか/複製個数3個ごとに料金が加算されます。上映用の1枚しか申請していないところへ、あとから「両親と親族の分も」と追加すると、申請内容と実際の枚数がずれます。配布分まで含めた総枚数を最初に決めてください。
- 式場側の提出期限/申請そのものは登録事業者なら即日可能とされていますが、式場が上映データの提出期限を別に設けていることがあります。編集・申請・ディスク納品の三つを、式場の期限から逆算します。
- 上映後の使い道/ムービーを動画サイトやSNSに上げる予定があるなら、複製とは別の手続きが要ります。発注段階で伝えておくと、後から相談しやすくなります。
ディスク制作を頼むときに、こちら側から見えていること
私たちディスクメーカーは、お預かりした動画データをDVDやBlu-rayに書き込む立場です。データを見ただけでは、そこに使われている音源の権利処理が済んでいるかどうかは分かりません。市販曲を使ったムービーであれば、権利処理はご自身または式場・映像業者の側で進めていただくことになります。発注前にその状況を整理しておいてください。
制作面で先に決めておくと後が楽なのは、やはり枚数です。当日の上映用に1枚、ご両親に1枚ずつ、遠方の親族に何枚。この総数が申請時の複製個数と一致していれば、あとから追加して申請とずれる事態を避けられます。当社は1枚から承っていて、料金は1枚1,500円からです。再生できる形式への組み立て(オーサリング)は料金に含まれるため、編集済みの動画ファイルをそのまま渡していただければ、DVD/Blu-rayとして再生できる形にして納品します。盤面へのレーベル印刷、ケースと背表紙の印刷、メニュー画面の作成、チャプター分けにも対応しています。
入稿はダウンロードできる共有URLをお送りいただく形です。ギガファイル便、Google Drive、Dropbox、OneDrive、WeTransfer、firestorageなどが使えます。納期は通常便のほか、お急ぎ(+1,500円/15時までの注文・入稿で翌々日までに発送)、特急(+3,000円/15時までの注文・入稿で翌日発送)、当日店舗お渡し(+3,500円/平日12時までの注文・入稿、大阪市北区の店舗で受け取り)から選べます。式の直前に編集が終わった、という場面でも間に合わせやすい選択肢を用意しています。
権利処理は時間のかかる工程で、ディスクの製造はその後に来ます。曲を決める、音源を買う、申請する、編集する、焼く。この順番を守れれば、直前の差し替えという一番つらい作業は避けられます。
よくある質問
Q. 結婚式のプロフィールムービーに市販曲を使うと、いくらかかりますか?
A. ISUMが公開している料金表(2026年4月1日から)で計算すると、JASRAC管理の曲を3曲使い、動画素材でDVDを1枚作る場合、著作隣接権5,000円、著作権4,750円、Meleteシステム利用料780円で合計10,530円に消費税がかかる計算になります。これは料金表からの試算で、実際の請求は申請内容によって決まります。申請を代行する事業者の手数料はこれとは別にかかるため、見積では権利料と手数料の内訳を確認してください。
Q. ISUMの申請は新郎新婦が自分でできますか?
A. できません。ISUMは登録対象をブライダル関係事業を行う法人または個人事業主に限定していて、個人からの直接の申し込みは受け付けていないとFAQで明示しています。JASRACのブライダルページにも同様の記載があります。新郎新婦は式場、映像制作会社、ISUM登録事業者である申請代行サービスのいずれかを通して申請することになります。どこも受けてくれない場合は、JASRACと日本レコード協会へそれぞれ直接申請する方法が残されています。
Q. Apple MusicやSpotifyで聴いている曲をムービーに使えますか?
A. その音源は使えません。ISUMが扱うのは市販CDと、曲やアルバムごとに購入できる正規ダウンロード配信サービス(レコチョク、iTunes、Amazonなど)の音源です。月額制サブスクリプションで提供される音源は利用できないとされ、Apple Music、Spotify、Amazon Music Unlimited、LINE MUSIC、AWA、YouTube Music Premiumなどが例として挙げられています。同じ曲でもCDを買うか曲単位で購入し直せば申請できます。
Q. 使いたい曲がISUMのデータベースにありません。どうすればいいですか?
A. 三つの道があります。ひとつはISUMの楽曲リクエストで、費用はかからず誰でも送れます。ISUMから日本レコード協会を通じてレコード会社へ確認が回り、早いもので1か月前後で回答が得られますが、期間や結果は保証されていません。二つ目は、曲名・アーティスト名・利用予定日を添えてISUMに問い合わせ、権利者への手続き先を教えてもらって直接申請する方法です。三つ目は、同じアーティストの別曲や市販のインストゥルメンタル版に差し替えることです。
Q. ディズニーの曲は結婚式ムービーに使えないのですか?
A. 使えないと決まっているわけではありませんが、手続きのハードルが上がります。権利者に海外の音楽出版者が含まれる楽曲を動画で使う場合、使用料が権利者の指定額(指し値)になることがあり、定額サービスであるISUMでは扱えないためデータベースに載りにくくなっています。なおJASRACの個人手続きの案内では、この指定額が必要になるのは動画コンテンツの場合で、静止画コンテンツ(スライド)とBGM用CDでは不要とされています。演出の形を変えると条件が変わる可能性があります。
Q. ISUMの申請はいつまでに済ませればいいですか?
A. データベース収載曲であれば、ISUM登録事業者は専用システムから申請して即日利用できるとされています。ただし曲が未収載でリクエストが必要な場合は最短1か月前後、個人が各権利者へ直接申請する場合はそれぞれ最短2週間程度かかる可能性があると案内されています。またデータベースの登録が取り下げられることもあり、申請完了後であれば削除後も利用できるため、曲が決まったら早めに申請しておくほうが安全です。
Q. 完成したムービーをYouTubeやSNSに載せてもいいですか?
A. ISUMの申請ではカバーされません。ISUMが代行できるのは、披露宴などで演奏する音声コンテンツ、上映する映像演出コンテンツ、記録撮影映像に市販音源を複製することまでです。インターネット上に公開するには、送信可能化権(著作隣接権)と公衆送信権(著作権)について別途権利者から許諾を得たうえで手続きが必要になります。JASRAC管理曲については、動画投稿サイトでの音楽利用の案内が別に用意されています。
Q. 親族に配る分のディスクを追加すると料金は変わりますか?
A. 変わります。ISUMの料金は「同製品3個まで」を単位としていて、1催事あたりの使用料は複製個数3個ごとに同額が加算されると説明されています。上映用の1枚だけで申請したあとに配布分を追加すると、申請した個数と実際に作る枚数がずれてしまいます。ご両親の分、遠方の親族の分まで含めた総枚数を先に決めてから申請するのが確実です。ディスクの製造自体は1枚から承っていますが、申請とのずれは後から直しにくい部分です。

