「動画ファイルを送ってください」とお願いすると、必ずと言っていいほど返ってくる相談があります。「大きすぎてLINEに貼れない」「メールに添付できない」「クラウドに上げるのにアカウントを作るのが面倒」。実際の注文でも、この壁でやり取りが1日、2日と止まってしまうケースは珍しくありません。この記事では、アカウント登録なし・広告なしで大容量の動画データを直接送れる無料アプリ「AlterSend」の仕組みと使い方を、実務で使う場面に沿って整理します。
結論 — アカウント不要で直接送れるアプリがある
先に結論です。大容量の動画データを送りたいだけなら、クラウドストレージに登録する必要はありません。「AlterSend」というアプリを使えば、送る側と受け取る側の端末同士が直接つながり、ファイルをそのまま転送できます。会員登録もログインも不要で、広告も表示されません。Windows・Mac・Linux・iOS・Androidに対応しているため、スマホで撮った動画をそのままPCへ、逆にPCで編集した動画をスマホへ、といった組み合わせも問題なく行えます。
クラウドストレージ経由の共有が悪いわけではありません。ただ、「今だけ、1回だけ、大きいファイルを渡したい」という単発の用件に対して、アカウント作成からURL発行までの手順はやや大げさです。AlterSendはその単発の用件にちょうど合ったツールだと考えてください。
AlterSendとは — 何がどう動いているのか
AlterSendは、ファイルをクラウドのサーバーに一時保存する方式ではなく、送信側の端末と受信側の端末が直接つながるP2P(ピアツーピア)方式でデータをやり取りするアプリです。この違いが、使い勝手にそのまま効いてきます。
- サーバーを経由しない: 一般的なオンラインストレージは、いったんファイルを運営会社のサーバーにアップロードし、受け取る側がそこからダウンロードする形をとります。AlterSendは端末同士が直接つながるため、アップロード→ダウンロードという2段階の待ち時間が発生しません。インターネット経由はもちろん、同じWi-Fiにさえつながっていれば、外部の回線を介さずにローカルで転送することもできます
- 暗号化方式: 通信は「ChaCha20-Poly1305」という方式でエンドツーエンド暗号化されます。転送のたびに新しい鍵が生成される仕組みで、途中経路にあるサーバー側にファイルの中身が残ることもありません
- ファイルサイズの上限が実質ない: 公式には「1KBでも200GBでも同じ手順」とされています。編集済みの4K動画のような数十GB規模のファイルでも、扱い自体は数MBの書類と変わりません
- アカウント不要・広告なし: メールアドレスの登録もログインも必要なく、無料で使えます
セキュリティ面で気になる人への補足
「暗号化されている」と言われても、実際どこまで安心なのか気になる方もいるはずです。仕組みを分解すると次のようになります。
- 転送のたびに鍵が変わる: 一つの転送セッションごとに新しい暗号化鍵が生成されます。過去の転送で使った鍵が使い回されることはありません
- 経路上に平文のデータが残らない: 暗号化されたまま端末間を移動するため、途中の通信経路やアプリの運営側でファイルの中身が読み取られる余地がありません
- クラウドに複製が残らない: サーバー保存を経由しない方式のため、「アップロードした動画が運営会社のストレージにいつまでも残っている」といった心配も基本的には不要です
とはいえ、暗号化はあくまで「通信経路の安全性」を担保するものです。誰に送るか、送った後にその相手がどう扱うかは、暗号化技術とは別の話として、送信前にきちんと確認してください。
手順は大きく「ペアリング」と「送受信」の2段階です。一度ペアリングした端末同士は、次回以降コードの入力なしでやり取りできます。
まず、送る側・受け取る側の両方の端末にAlterSendをインストールします。入手先は端末によって異なります。
- iPhone・iPad: App Store
- Android: Google Play
- Windows: 公式サイト、またはMicrosoft Store
- Mac: 公式サイトからダウンロード
- Linux: 公式サイトから、対応するパッケージ形式を選んで導入
インストール後の初期設定は、特にこだわりがなければそのまま「スキップ」で問題ありません。設定画面の項目を一つずつ埋める必要はなく、数十秒でペアリング画面まで進めます。
ペアリングは次の3通りのいずれかで行います。
- 自分の端末にQRコードを表示し、相手に読み取ってもらう
- 相手が表示したQRコードを、自分のカメラで読み取る
- QRコードが使えない環境では、表示されたコードをメールやメッセージで伝え、相手が手入力する
ペアリングが済んだら、送りたいファイルを選び、送信先の端末を選ぶだけです。たとえばiPhoneで撮影した動画をPCに送る場合は、写真アプリでファイルを選び、共有アイコンから「AlterSend」を選択し、ペアリング済みのPCを送信先に指定します。受け取る側のPCでは、届いた転送を承認し、「すべてダウンロード」を押せば端末内に保存されます。逆方向(PCからスマホへ)も同じ手順で行えます。
ケース別の操作の流れ
同じ「送る」でも、組み合わせによって操作の起点が少し変わります。あらかじめ流れを知っておくと迷いません。
- スマホからスマホ: 送信側が写真アプリまたはファイルアプリで動画を選び、共有メニューからAlterSendへ。受信側は通知をタップして受け入れるだけで、カメラロールやダウンロードフォルダに保存されます
- パソコンからパソコン: AlterSendアプリ内の「送信」からファイルを選択し、ペアリング済みの相手を選びます。同じWi-Fi内であれば、ファイラー上での体感は「ローカルのフォルダにコピーする」のとほぼ変わらない速さです
- 複数ファイルをまとめて送る場合: 1回の操作で複数ファイルを選択できます。式典の動画を「メイン映像」「予備カメラ映像」「音声のみ」のように分けて撮影している場合も、まとめて一度に送れば取りこぼしがありません
- 同じ端末を複数人で共有している場合: 家族共有のタブレットなど1台を複数人が使う環境では、届いたファイルが誰宛かが分かるよう、送る前に一言添えておくと受け取り後の混乱を防げます
こんな場面で使える — ケース別の使い道
- ディスク作成の元データを渡すとき: 文化祭や卒園式、結婚式の動画など、撮って出しの元データはファイルサイズが大きくなりがちです。クラウドの無料枠に収まらない、あるいはアカウントを作りたくないという場合、AlterSendで直接渡す方法は選択肢のひとつになります
- 編集途中のやり取り: 制作側と依頼者の間で「この尺で合っているか」「この部分の音量はどうか」といった確認用の書き出しファイルをやり取りする場面でも、都度メールに添付するより手軽です
- 遠方の家族への共有: 編集が終わった記念動画を、離れて暮らす祖父母のタブレットへ、画質を落とさずそのまま送りたいときにも向いています
- 同じ部屋にいる相手への転送: 出先のカフェや会議室など、同じWi-Fiにいる相手であれば、インターネット回線の状態に左右されずローカルで完結させられます
- 発表会・イベントの複数カメラ映像をまとめるとき: 撮影担当が複数人いる現場では、各自のカメラやスマホから1台のパソコンへ、その場で映像を集約したいことがあります。会場のWi-Fiが使えれば、その場で全員分の素材を1台に集めてから編集に入れます
- 法人での社内動画・研修動画の受け渡し: 研修担当者から各拠点の責任者へ、社外のクラウドサービスを経由させたくない社内向け動画を渡したい場合にも使えます。ただし会社の情報セキュリティ規程で外部アプリの利用が制限されていないか、事前に確認してください
- 推し活・同人イベントの記録映像: ライブ映像や即売会のダイジェストなど、サイズの大きい映像素材を仲間内でやり取りする場面でも、アカウントを作らずその場で完結できるのは気軽です
使うときに気をつけたいこと
便利な反面、いくつか押さえておくべき制約があります。
まず、送受信の間は両方の端末でアプリを起動しておく必要があります。相手がアプリを閉じている、あるいは通知をオフにしていると、転送そのものが届きません。「送ったつもり」で終わらないよう、事前に一言連絡してから送るのが実務では安心です。また、ローカルWi-Fi経由で高速に送りたい場合は、送受信双方が同じネットワークに接続されている必要があります。外出先のフリーWi-Fiでペアリングを行う場合は、通信環境そのもののセキュリティにも注意してください。
もうひとつ大事な点は、権利関係です。AlterSendは「誰の動画でも簡単に送れる」ツールですが、送っていいかどうかは別の話です。式典や発表会の動画には、出演者や音楽・映像の著作権が関わることがあります。関係者以外への転送や、権利者の許諾がない音源・映像の共有は、ツールの便利さとは切り離して判断してください。最新の著作権の扱いについては、文化庁など公式の情報で確認することをおすすめします。
うまく送れないときの対処法
実際に使ってみると、まれに転送がうまく進まないことがあります。よくある原因は、だいたい次のどれかです。
- 相手のアプリが起動していない、または通知がオフ: バックグラウンドで通知を受け取れる設定になっているか確認してください。特にスマホ側は省電力設定でバックグラウンド通信を制限していることがあります
- 接続しているWi-Fiが「ゲスト用」や「隔離設定」になっている: 商業施設やホテルのフリーWi-Fiは、利用者同士の直接通信をセキュリティ上ブロックしていることがあります。ローカル転送が進まない場合は、モバイル回線に切り替えて試してください
- ペアリングが古いまま: 相手が端末を機種変更した、アプリを再インストールしたといった場合、以前のペアリング情報が無効になっていることがあります。この場合はQRコードの読み取りからやり直します
- ファイアウォールやセキュリティソフトの制限: 会社支給のパソコンなど管理者権限が制限された端末では、通信そのものがブロックされている場合があります。この場合は情報システム担当への確認が先です
一つずつ潰していけば、原因はそれほど多くありません。急いでいるときほど「相手がアプリを開いているか」から確認するのが近道です。
他の方法との比較
- LINEやメールの添付: もっとも手軽ですが、サービスごとに送信できる容量の上限があり、動画1本でも上限に触れることが少なくありません。画質を自動で落として圧縮される場合もあり、納品用の動画には不向きです
- クラウドストレージ(共有リンク): 容量の大きい動画も扱えますが、無料枠を超えると有料プランやアカウント登録が必要になります。継続的にやり取りする相手とは相性がよい一方、一度きりの受け渡しにはやや手間です
- USBメモリや外付けHDDに入れて手渡し: 画質も容量も一切気にせず渡せる、もっとも確実な方法です。ただし相手と直接会える距離にいる場合に限られ、返却の手間も発生します。遠方の相手にはそもそも使えません
- AlterSend: アカウント不要・容量の上限を気にしなくてよい・サーバーを経由しない、という3点で「単発・大容量」の用途に強みがあります。反対に、複数人へ同じファイルを繰り返し配布するような使い方には向いていません
正直なところ、この中に万能な正解はありません。継続的に何人にも同じ動画を配るならクラウド共有、相手と直接会えるならUSBメモリ、そして「今回だけ、この人にだけ、大きなファイルを渡したい」ならAlterSend——用途で使い分けるのが、実務では一番迷いのない整理です。
似たP2P転送ツールとの違い
アカウント不要でP2P転送ができるアプリは、AlterSendだけではありません。代表的なものに「LocalSend」があります。両者の違いを整理すると、選び方の軸がはっきりします。
- LocalSend: 同じWi-Fi・同じローカルネットワークに接続している端末同士でのみ転送できます。外部のインターネット回線を経由しない設計のため、社内LANなど閉じた環境での利用に向いています
- AlterSend: ローカルWi-Fiでの転送に加えて、インターネット経由でも直接転送できます。送信側と受信側が別々の場所にいても、離れたスマホとパソコンの間で送受信できるのが大きな違いです
「同じ部屋・同じオフィスの中だけで完結すればいい」ならLocalSend、「離れた場所にいる相手にも直接送りたい」ならAlterSend、という選び方になります。制作の現場では遠方の依頼者や家族とやり取りする場面が多いため、この記事ではインターネット経由でも使えるAlterSendを中心に紹介しています。
私たちディスクメーカーでも、ご注文は動画ファイルを送っていただくだけで受け付けています。大容量の動画データをどう送ればよいか迷ったときは、こうしたP2P転送アプリも選択肢に加えていただくと、やり取りがスムーズになるはずです。
動画データを送った後、ディスク作成はどう進むのか
参考までに、動画データをお預かりしたあとの流れにも触れておきます。ディスクへの書き込みを外部に依頼する場合、多くのサービスは「動画ファイルさえ届けば、あとはお任せ」という仕組みになっています。私たちのところでも、受け取った動画データをバーベイタム製のディスクに書き込み、盤面へのインクジェット印刷、ケース詰めまでを一貫して行い、最短即日で発送する流れです。
このとき依頼者側に求められる作業は、実質「動画ファイルを届けること」だけです。逆に言えば、その「届ける」の部分でつまずくと、せっかく撮影・編集した動画が手元で止まったままになってしまいます。AlterSendのようなアカウント不要のP2P転送ツールは、この最後の一手間を軽くするための道具だと捉えてください。1枚から注文でき、単価も1,500円〜と決まっているため、届いたデータをそのまま渡すだけで見積もりの手間もかかりません。
送る前に準備しておきたいこと
初めて使うときにつまずかないよう、送信前のチェックポイントを整理しておきます。
- 相手の端末にもインストール済みか確認する: 「送ったら見てもらえるはず」ではなく、事前に一言連絡し、アプリを開いた状態で待ってもらうのが確実です
- ファイルの拡張子と容量を把握しておく: 動画編集ソフトによっては書き出し形式が複数選べます。相手の再生環境(パソコンかスマホか)に合わせて、扱いやすい形式を選んでおくと親切です
- 通信環境を決めておく: 同じ場所にいるなら同一Wi-Fi、離れているならモバイル回線経由のインターネット転送、と事前にどちらで送るか決めておくと、当日の手間が減ります
- ペアリングは余裕を持って済ませておく: 当日ぎりぎりにペアリングから始めると、QRコードの読み取りがうまくいかないなどの小さなトラブルで焦ることになります。送る予定がわかった時点で先にペアリングだけ済ませておくと安心です
よくある質問
Q. 無料で使えますか?
A. はい、AlterSendは無料で利用できます。会員登録や課金なしで、広告表示もありません。
Q. ファイルサイズに上限はありますか?
A. 公式には「1KBから200GBまで同じ手順」とされており、実質的な上限は気にしなくて構いません。数十GB規模の動画データでも問題なく扱えます。
Q. パソコンとスマホの間でも送れますか?
A. はい。Windows・Mac・Linuxのパソコンと、iOS・Androidのスマートフォンの間で、双方向にやり取りできます。
Q. インターネットにつながっていなくても使えますか?
A. 送受信する端末同士が同じWi-Fiに接続されていれば、外部のインターネット回線を経由せずローカルで転送する使い方も可能です。
Q. 転送したファイルは相手のサーバーに残りますか?
A. AlterSendは端末間で直接データをやり取りする方式のため、運営側のサーバーにファイルの中身が保存される仕組みではありません。
Q. 受け取り側もアプリのインストールが必要ですか?
A. はい。送信側・受信側の両方の端末にAlterSendをインストールし、初回のみペアリングを行う必要があります。
Q. 一度ペアリングした相手とは、次からコード入力が不要になりますか?
A. はい。初回のペアリングさえ済ませておけば、2回目以降はアプリを開いて送信先を選ぶだけで転送できます。ただし相手が機種変更やアプリの再インストールを行った場合は、ペアリングをやり直す必要があります。
Q. 動画以外のファイルも送れますか?
A. 対応しています。写真、書類、圧縮ファイルなど、ファイルの種類を問わず同じ手順で送受信できます。制作の現場では動画データでの利用が中心になりますが、用途はそれに限りません。
Q. 転送中に相手がオフラインになったら失敗しますか?
A. 直接通信の性質上、送受信の間は両方の端末がネットワークにつながっている必要があります。転送の途中で相手側の通信が切れた場合は、再度アプリを開いてやり直してください。
Q. LocalSendなど他のP2Pアプリとどちらを使えばいいですか?
A. 同じ建物・同じネットワーク内だけで完結するならLocalSendのようなローカル特化型でも十分です。離れた場所にいる相手とやり取りしたい場合は、インターネット経由にも対応するAlterSendが選択肢になります。用途に応じて使い分けてください。
まとめ — 大容量動画は「渡し方」で悩まなくていい
大容量の動画データを送りたいだけなのに、送信手段の壁でやり取りが止まってしまうのはもったいないことです。アカウント登録なし・容量の上限なしで直接送れるAlterSendは、単発で大きな動画ファイルを渡したいときの現実的な選択肢のひとつです。ペアリングさえ済ませてしまえば、あとは選んで送るだけ。うまく届かないときも、原因の多くは「相手がアプリを開いていない」「Wi-Fiが隔離設定」のどちらかに絞られます。落ち着いて一つずつ確認すれば、それほど難しい話ではありません。次に大きな動画ファイルを誰かに渡す機会があれば、試してみてください。
なお、アプリの画面や操作の細部は、バージョンアップにともなって変わることがあります。この記事で紹介した手順は執筆時点のものです。実際に使う際は、ボタンの配置や表記が多少変わっていても慌てず、「ペアリング→ファイル選択→送信先を選ぶ」という3ステップの流れさえ覚えておけば迷いません。細かな仕様は公式サイトの最新情報も併せて確認してください。
この記事はディスクメーカー(diskmaker.jp)制作チームが、実際の制作・発送業務の経験をもとに執筆しています。

